• 検索結果がありません。

テレビゲームが人間に与える影響についての今後の課題と提言

ドキュメント内 finalゲーム調査報告書_目次_本編.PDF (ページ 166-185)

5.1 「親の声」からの課題

表 1 に委員の七海 陽氏が 2003 年 2 月、都内の区立小学校において、「情報メディア 社会における子育てについて考える」ことを目的に、保護者(母親中心)を対象に、

メディアの影響に関して現状わかっていること、わかっていないことなどを整理して 情報提供を行い、その後グループディスカッションを実施した。終了後のアンケート 調査の結果のサマリーを示す。 

アンケートはテレビゲーム、パソコン、インターネット、携帯電話など新しい情報 メディア全般について行われたもので、テレビゲーム以外についても含まれている。 

表1に示したアンケート結果は次のように総括できる。 

(1) 親は、テレビゲームなどの電子メディアが関わると、自分の子どもであるのにコ ントロールが効きにくい状態に陥ってしまっている。

(2) 自分が育ってきた人生経験と比較できないので、何を拠り所に判断をしてよいか わからなくなっている。

(3) (1)、(2)のようなことの累積が親自身の子どもの育て方、子どもや自分自身 を信頼することなどに対する自信を失わせている。

(4) 個人的に声を上げたり、他の親とともに話し合ったり、他の人からアドバイスを もらうことが出来にくい状況にある。

(5) その結果メディアの情報や研究の知見に頼らざるを得なくなっている。

(6) 親は得体の知れない不安を抱えながら子どもとの日常で孤軍奮闘している現状が ある。

 

このような親の声から次のような課題が抽出できる。 

 

(1) テレビゲーム、パソコン、インターネットなどの新しい情報メディアに親が触れ、

経験する機会を作る。

(2) 脳研究などの最新の結果を偏見なしにわかりやすく解説する教育及び情報提供の 場を作る。

表1  親の声の例

(区立小学校PTAのアンケートより)

質問 回答の分類 回答例

【 時 間 の 長 さ が 心配、止めさせる ことが難しい、自 制できない】

・テレビ、ゲームだけでなく、パソコン、インターネ ットと日々係わる率が多くなっており、時間が一つ一 つ心配

・長時間ゲームで遊ぶこと

・テレビゲームをする時間が長くて困っている

・時間のコントロール

・テレビゲームをしだすと続けてしまうこと

・ゲームをやめさせる時

・自分で自制ができないこと

・長時間ゲームをしているのをどうやってやめさせる か、一家庭だけの問題ではない

・テレビ、ビデオを見ている時間が長いのが心配

・テレビ、ビデオを制限なく見てしまう

・テレビを消すタイミングに困っている

・家にいるとテレビを見る時間が長くなってしまう

・長く、だらだらと見てしまうことが多い 1.日常生活で、子

ど も と 情 報 メ デ ィア(テレビ、ゲー ム、パソコン、イ ンターネット、携 帯 な ど)と の 係 わ りで困っている、

心 配 し て い る こ と

【友達関係、家庭 間の問題、家庭内 (兄 弟 姉 妹)の 影 響】

・ゲームが無いと友達と係われないのではないかと心 配

・どうやってやめさせるかは、一家庭だけの問題では ない

・兄弟がいて、上の子どもがゲームをしていると、下 の子どももするようになってしまった

【 コ ミ ュ ニ ケ ー ション、社会性、

ゲ ー ム 遊 び 実 態 への懸念】

・小さい頃から友達と一緒にいてもしていることがゲ ームなこと

・ゲームボーイアドバンスで遊んでいることが当然で 自然な姿となり馴染んでいるが、この状態で今後良い のかどうか

・携帯電話がかかせない中・高校生が将来人間として のコミュニケーションがとれなくなることが心配

・携帯電話での友達とのメールが多い

【心身への影響】 ・ゲームに夢中になった後の落ち着きのなさ、イライ ラ

・ゲームを長時間することは、具体的にどう良くない のか、心身にどのような影響がでるのか

・身体的な問題はないかどうか

・ゲームをしている時間が長いと視力が悪くなったり 思考がどうなるのか

【 コ ン テ ン ツ に ついての心配】

・ゲームの内容によっては、子どもが"人の死、命の大 切さ"に対して無関心になってしまうのではないかと 心配になる

・テレビの中での暴力シーンや残酷なシーンを見せた くない

【 他 の 遊 び へ の 興味】

・ゲームがあまりに面白いと、他の室内遊びがみなす さんでしまう

【自分側の不安】 ・ゲームに夢中になった後の落ち着きのなさ、イライ ラが、全てゲームのせいなのか、本人の状態なのかが わからないことがある

・自分自身が、情報、その内容についていけない

【 情 報 化 社 会 に ついて】

・個人情報が漏れて悪用されること、情報に振り回さ れること

・大学ではレポートも卒論も、就職活動にも必需品の パソコンについて

【脳との関係】 ・情報メディアと脳の関係について、もっと詳しく研 究してほしい

【 障 害 と の 因 果 関係】

・情報障害、機能障害との因果関係、追跡調査(数十年 かけて)

【あらゆる事】 ・研究が進むことを期待

・何が悪いのかはっきりしないので、とにかく何でも いい。情報が欲しい

・今日の話のもっと詳しいデータと分析、更なる研究

・もっとはっきり、やりすぎがどうなるのか、わかる ようになればと思う

【悪影響】 ・悪影響を及ぼすこと

【電磁波】 ・携帯電話、テレビ、PC など、身近に常にあるもの から発せられる電磁波の身体への影響

【 睡 眠 不 足 の 影 響】

・テレビを遅くまで起きて見ていること

【 心 身 の 発 達 へ の 影 響 、 因 果 関 係、メディア別の 統計】

・子どもの発達への影響との因果関係

・子どもの心と身体の発達について、詳しく知りたい

・子どもにとって、あらゆるメディア別の精神や身体 に及ぼす影響を、統計的に知ることができればと思う 2.子どもと情報メ

デ ィ ア と の 係 わ り の 研 究 に つ い て知りたいこと

【 コ ン テ ン ツ の 影響】

・ゲームの内容によっては、子どもが"人の死、命の大 切さ"に対して無関心になってしまうのではないかと 心配になる

【 他 の 人 の 考 え や 家 庭 の 様 子 が 聞けてよかった】

・他の家庭の様子が聞けたので良かった

・ディスカッションで皆の考えを知ることができて参 考になった

・個人的にはなかなか声があげにくいことだったので、

この企画はとても良かった

・話し合いの時間を設けてもらったことで、他の人が どのように考えているかとてもよくわかって、良かっ た

【 デ ー タ 提 示 が よかった】

・関心があったことなので、データを提示した話はと てもよかった

3.その他の感想、

意見など

【 自 分 の 中 で 得 られたこと(安心 感、考え、自信、

決意など)】

・自分の直感も捨てたものではないような気がした

・メディア接触時間と「同等かそれ以上」の直接体験 時間を設けてあげる、という話はそのとおりではない かと感覚的に思った

・結局、コミュニケーションの時間を増やし、ゲーム からなるべく話す努力をしていけば、現状を極端に変 えなくてもよいかと思った

・親と子どものコミュニケーションが大事

・結論はでなくても、共に考えていくことが大事だと 思った

・まだまだ明らかにされていることが少ない様なので、

ゲームやメディアとうまく共存できる道を、親が探し ていくようにしたい

・親次第なんだと改めて思った

・バランスを保てば問題はないのではないかと、安心 した

【 個 人 で の 対 処 の難しさ、地域、

国への要望】

・個人個人では、なかなか対処できないので、学校、

地域、国レベルで考えてもらいたい、まっとうな人間 に育ってもらいたい

 

5.2 ゲームと人間の関係の研究における今後の課題

ゲームと人間の関係について今後必要な研究課題を表2に整理する。これらのうち 脳への影響についてはテレビゲームに関する研究は未だ多くない。実データも不足し ている。とくに生体反応や脳機能を評価する計測器は多種類あり、それぞれの計測器 で計測できる対象が異なる。表3にその代表的なものを示すが、まず大切なのは非侵 襲性であり、テレビゲーム実施時に実時間的に計測できることである。その意味で近 赤外線スペクトロスコープ、脳波周波数解析などが非侵襲性で、ゲームをしながらの 状態で測定できる点で優れている。このような計測法で比較すべきゲームの種類を表 4に示す。表4のような種々のゲームについて習熟度に応じて複数の被測定者を対象 に比較測定する必要があろう。こういう多くの実データを比較検討すること、特に古 くから行われているクラシック音楽を聴いたり、単に将棋や囲碁を対面ですることと の比較によりテレビゲームに問題がありそうかどうかが明確になろう。 

ただ、このような生理的な現象は一時的なものであり、テレビゲームなどの影響が 子どもの脳機能の発達までに及んでいるかどうかは、生理学的に把えるのは困難であ り、むしろ心理学的研究になる。 

暴力性などテレビゲームのコンテンツに関わる問題についても長期的で本格的な研 究が必要である。こうした研究の成果などを生かして、情報メディアの倫理、いわゆ るメディアエシックスを確立していく必要があろう。このようなメディアエシックス は社会全体として形成することが大切で、レーティングに反映させるだけではなく、

親が子どもに見せていいかどうかを判断するガイドラインに反映させることも大切で ある。さらにこのようなメディアエシックスはテレビゲームの制作者に対するガイド ラインもあることが望ましい。特に発達過程の子どもに対しては暴力シーンの多いコ ンテンツが実生活に影響しないかどうか、影響する場合はその度合いと継続時間など の科学的検証が必要である。

脳に関して研究が必要なことに中毒症状の問題がある。特にオンラインゲームはア メリカでは heroinware(ヘロインウェア)等と呼ばれるほどネットワーク中毒になり、

ネットワークにはまりきりのものが増えていると言われている。オンラインゲームの 盛んな韓国でも同様の問題が社会問題化しつつある。中毒症状を脳科学的に心理学的 に、さらに精神医学的に研究することは、わが国にとっても急がれている。この問題 については先行する米国や韓国との共同研究も視野に入れる必要がある。 

「ポケモン事件」でクローズアップされた光刺激によるけいれん発作などに関連し てテレビやテレビゲームに関する多くの生理現象がわかってきた。2001年に財団

ドキュメント内 finalゲーム調査報告書_目次_本編.PDF (ページ 166-185)

関連したドキュメント