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タミル・ナド州海水淡水化事業

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(1) 調査実施概要

インドで深刻化する水不足解消のため、海水淡水化プラントをはじめとする上 下水道施策に対し、日系企業の技術的支援を実現させることを目的に、インドに おける水需給の実態、海水淡水化技術の概要およびインドにおける普及状況、日 系企業のインド海水淡水化事業への参画意向とその課題、などを調査するととも に、海水淡水化を含む上下水道分野における本邦企業の技術や実績等をインド側 関係者に紹介することを主たる目的としたワークショップをタミル・ナド州チェ ンナイにおいて実施した。

(2) インドの水需給

インド国全体では、人口の増加、経済発展などにより深刻な水不足に陥ってい る。特に南部は、気候的な条件から潜在的に水不足が懸念される地域である。

タミル・ナド州の州都チェンナイでは、水不足を解消するために、インド初の 海水淡水化プラントを市北部のMinjurに2010年に建設し(容量100MLD)、次 いで2013年に市南部のNemmeliに100MLDの容量の海水淡水化プラントが建 設された。その他、沿岸の州を中心に海水淡水化プラントの建設が計画されてい る。

図表:要-10 チェンナイ都市圏における水需給ギャップ(予測値)

出所:CMWSSBの予測を基に調査団作成

(3) 海水淡水化プラント

海水等を淡水にする技術は、蒸発法と膜法に 2 分されるが、蒸発法は原料水の 適用範囲が広く、大量の淡水を生成できるという利点があるが、熱エネルギーを 大量に使用するため、主にエネルギー原価が安い中東産油国で用いられており、

インドを含むその他の地域では膜法の1手法である逆浸透法(RO)が主流である。

ROは近年インドでの海水淡水化プラントで採用されているが、以前は欧州の離島 やイスラエルなど先進国のプラントで実施され、機器、運用、メンテナンスも当 該国企業が実施してきた。日本企業は、中東での海水淡水化プラントの実績は豊 富であるが、RO方式の経験が乏しく、インド国内でのプラント建設・運用は、す でに自国での実績が豊富な欧州系企業が主流となっている。

インドにおける初の一般向け海水淡水化プラントは、2010年に稼働を開始した チェンナイ都市圏のMinjurプラント(100MLD)であるが、現在インドには工業 団地向けなどの特別な用途のものを含めると、22施設の海水淡水化プラントが確 認できる。そのうち一定規模(10MLD)以上のプラントを以下に示す。

図表:要-11 インドにおける主な海水淡水化プラント

所在地 容量(MLD) 用途 稼働年 手法

Minjur タミル・ナド州 100.0 一般向け 2010 RO

Nemmeli タミル・ナド州 100.0 一般向け 2013 RO

Kattupalli Village

タミル・ナド州 26.37 工場向け 2009 RO

Vallur タミル・ナド州 19.8 工場向け 不明 RO

Kudankulam

タミル・ナド州 10.1 工場向け 不明 VCD

Jamnagar グジャラート州 160.0 工場向け

1997 2005 2007

MED Vadinar Refinery

グジャラート州 16.9 工場向け 2006 MED

Mundra グジャラート州 25.2 工場向け 2010 RO

Bhavnagar グジャラート州 10.0 工場向け 不明 RO

Mumbai マハラシュトラ州 12.0 工場向け 不明 不明

注:RO(逆浸透法)、VCD(蒸気圧縮法)、MED(多重効用法)

出所:India Infrastructure Research『Water and Wastewater 2012』を基に調査団作成

(4) 日系企業のインド海水淡水化事業への関心

今後案件化するインド海水淡水化事業への参画意向と日系企業の強み、課題に ついて、海水淡水化プロジェクトに関連する日本企業に対するヒアリング調査に より明らかにした。ヒアリング対象企業は、商社(3 社)、エンジニアリング会社

(3社)、高圧ポンプメーカー(3社)、RO膜メーカー(2社)である。

図表:要-12 ヒアリング調査結果

事業プロセス 日本企業の参画可能性 TN州海淡プロジェクトに関 する意向

設計 入札支援 施工監理

・欧米コンサルタントは海水淡水化の 特別部隊を所有しており、かつ経験 も豊富であるが、日本企業には経験 がなく参画困難。

・現時点では日本企業に参画 の可能性が少ないためヒ アリングは実施せず(該当 なし)

EPC 事業運営

(O&M)

・欧州(スペイン、フランス、イスラ エル等)に比べ経験がない。

・日本は蒸発方式(多段フラッシュ)

では中東などで経験があるが、近年 主流の逆浸透(RO)方式では実績は ない。

・淡水化プラントは設置場所が少し異 なるだけで仕様を変更する必要があ

D社:興味はあり、円借款と しての案件化を期待。ただ し PPP スキームは時期尚 早。

A社:経験不足やリスクの観 点から本件についてはあ まり興味を示さなかった。

E 社:EPC およびO&Mに

事業プロセス 日本企業の参画可能性 TN州海淡プロジェクトに関 する意向

り、設計、運営におけるノウハウの 蓄積が重要。

・事前資格審査(PQ)の評価基準に、

プラント設計、運営の実績が存在し た場合、日本企業単独での応募では 通過できない。

興味を示しているが、実績 が不足している。

B社:インドの海淡事業への 参画可能性は低い。

高圧ポンプ

・RO 方式が主流になってから、海外 の海淡事業における日本企業の存在 感は低下している。

・しかし、エネルギー回収装置の製品 化により、欧米企業と同等の競争力 になることが期待される。

・エネルギー回収装置の大手は、米ERI 社、ドイツ、スイスのメーカー。日 本企業では4社が製品化または来年 製品化を予定している。

G社:関心がある。ただし、

RO方式での実績に乏しい ため欧州のプラントメー カーと組む必要がある。

G社:エネルギー回収装置を 来年製品化の予定。

I 社:実証試験を終え、実績 を積みたい意向。

RO膜

・RO膜は日本企業を含む大手 3 社で 世界市場の70%のシェアを占める。

J社:インド市場に興味があ り、既に顧客(プラントメ ーカー)を対象としたセミ ナーも開催している(ムン バイ、チェンナイ等)

J社:あくまでも製品販売で あり、運営主体としての参 画の可能性は低い。

K社:チェンナイでの納入実 績がある。

出所:企業ヒアリングを基に調査団作成

(5) 上下水道分野における本邦技術ワークショップ

インドにおける水問題の解決に日系企業の技術力を貢献させるため、日系企業 の技術、経験、サービスに関し、インド側の州政府、実施機関の理解が深まるよ うな取組みが必要である。その目的を達成するため、タミル・ナド州およびチェ ンナイ都市圏の上下水道関係機関を一同に集め、日系企業が自社の技術および事 業経験をプレゼンテーションする、「タミル・ナド州およびチェンナイ都市圏上 下水道公社に対する本邦上下水道技術ワークショップ」を開催した。

図表:要-13

上下水道技術ワークショップ実施概要 日時 2015年2月20日 9:30~13:00

場所 インド国チェンナイ市内 Radisson Blu Hotel Chennai 主催 経済産業省

参加者 インド側:タミル・ナド上下水道局(TWAD Board)チェンナイ都市 圏上下水道公社(CMWSSB)、タミル・ナド水開発公社(TWIC) 等 日本側:経済産業省、他公的機関、企業関係者 等

事務局 (株)日本総合研究所 総合研究部門 出所:調査団作成

タミル・ナド州政府の協力も得て、インド側 3 団体15名、日本側 10団体19 名で開催し、活発な議論が行われた。

図表:要-14

上下水道技術ワークショップ参加団体 インド側出席者

組織名 人数

チェンナイ都市圏上下水道公社(CMWSSB) 7名 タミル・ナド上下水道局(TWAD Board) 7名 タミル・ナド水開発公社(TWIC) 1名

合計 15名

日本側出席者

組織名 企業数 人数

経済産業省 1名

在チェンナイ日本総領事館 1名

日本貿易振興機構 1名

エンジニアリング会社 2社 3名 高圧ポンプメーカー 3社 5名

RO膜メーカー 1社 5名

商社 1社 3名

合計 10団体 19名

出所:調査団作成 ワークショップの成果は以下のとおりである。

a) インド側の日系企業に対する認識の構築

本ワークショップ実施により、タミル・ナド州の上下水道関係実施機関に対し、

日系企業の技術力と経験が、インド、タミル・ナド州における水供給が持つ課題 を解決する可能性があるという認識を得ることに成功した。

b) インド側へのチャネル構築

本ワークショップにおいて、日系企業と発注者の要人が直接ディスカッション をすることで、今後の企業のPR活動実施にあたってのチャネルを構築することが できた。

(6) まとめ

a) チャネルを活用した企業のPR活動

ワークショップを通じ、日系企業と上下水道供給実施機関とのチャネルが構築 できたため、今後は、企業努力により、さらなるチャネルの強化や技術、製品の PR活動を行うことが必要である。

b) 地方政府および実施機関への日系企業の技術力周知

今回タミル・ナド州で実施したようなワークショップを他州においても実施し、

広くインド国内の上下水道関係機関に、日系企業のプレゼンスを向上させる取り 組みを、官民協力のもと行うことが重要である。

c) 総合的な上下水道ソリューションの提供

インドにおける水需給逼迫の解決方法としては、供給量の拡大、漏水率の低下 など水供給システムの高度化、再生水利用の促進など方法はさまざまにある。そ のため、日系企業の下水処理技術や配水技術とともに、地方公共団体が積み重ね てきた漏水防止、運用のノウハウなど、総合的な上下水道サービスの供給に対す るソリューションの提案を行うことも検討すべきである。

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