第 2 章 基礎理論 9
2.3.5 ゼロモードの具体形
ここではいくつかの具体的な状況を想定し、Bogoliubov方程式のゼロモード解を 導出する。
例1 : 大域的位相変換に対するゼロモード
GP方程式は大域的位相変換に対し不変である。そこで、ここでは大域的位相変 換対称性に対するゼロモードを考える。
ηを微小な定数とすると、大域的位相変換の微小変換は
ξ(x)→ξ(x) +iηξ(x), (2.3.58)
である。すなわち、(2.3.50)より大域的位相変換対称性に対するゼロモードは ( ξ(x)
−ξ∗(x) )
, (2.3.59)
である。BECが存在する場合、系は大域的位相変換対称性が自発的に破れている。
そのため、少なくとも位相のゼロモードが存在する [44, 45]。
例2 : 並進変換に対するゼロモード
一様系(Vex = 0)のGP方程式は並進変換に対し不変である。そこで、ここでは 並進対称性に対するゼロモードを考える。ここでは簡単のため一方向への並進のみ 考える。
dを微小な定数とすると、x方向への並進の微小変換は ξ→ξ+d ∂
∂xξ, (2.3.60)
である。すなわち、(2.3.50)より並進変換対称性に対するゼロモードは ( i∂x∂ξ(x)
−i∂ξ∂x∗(x) )
, (2.3.61)
である。
今後はゼロモードを複数持つ場合の議論を行うため、各対称性に対応するゼロモー ドを見分けるためにゼロモードにはそれぞれの対称性に関するラベルを貼っておく。
例えば、大域的位相変換対称性に対するゼロモードにはy0,θ、x方向の並進対称性 に対するゼロモードはy0,xと書く事にする。
一様系におけるゼロモード
凝縮状況でも空間一様性を保つ場合の一様系におけるゼロモードを議論する。凝 縮体の分布(ξ=定数)と化学ポテンシャルはGP方程式を解くことにより
ξ=eiθ
√N0
V , µ= gN0
V , (2.3.62)
と求まる。この場合のゼロモードは、大域的位相変換対称性の破れに対するもの
y0,θ = ( ξ
−ξ∗ )
, (2.3.63)
のみである。また、共役モードと規格化因子は式(2.3.25)より
y−1,θ = ∂
∂N0
(ξ ξ
)
= 1
2√ N0V
(eiθ eiθ
)
, I = g
V , (2.3.64)
となる。
ソリトン解に対するゼロモード
g >0かつVex(x) = 0であるGP方程式には定数解以外にも次のような解析解が あることが知られている:
ξ(x) =√
nctanh{κ(x−x0)}, µ=gnc, (2.3.65) この解はダークソリトン解と呼ばれる[34]。ただし、κ=√
mgnc/ℏ、ncはバルクの 凝縮体密度である。凝縮原子数Ncは
Nc =
∫ L/2
−L/2
dx|ξ(x)|2 =nc
[ L− 2
κtanh (κL
2 )]
(2.3.66) と表される。ただし、系のサイズをLとした。
このダークソリトン解は明らかに系の持つ並進対称性を破っている。そのため、
ダークソリトン解に対するゼロモードは大域的位相変換対称性の破れと並進対称性 の破れに対するもの2つが現れる。このときのゼロモードy0,i = (fi −fi∗)の成分は
fθ =ξ(x), (2.3.67)
fx =i d
dxξ(x) = i√
ncκsech{κ(x−x0)} , (2.3.68) となる。また、共役モードy−1,i = (hi h∗i)と規格化因子は
hθ =
√g
2L [tanh{κ(x−x0)}+κxsech{κ(x−x0)}] , (2.3.69) hx =−i
4, (2.3.70)
Iθ = g
L, Ix =− g
4κ, (2.3.71)
と求まる。
それぞれの関数形を図2.3.1に示す。ダークソリトン解は極形式で
ξ(x) =
|ξ(x)| = |ξ(x)|ei0 (x > s)
−|ξ(x)| = |ξ(x)|eiπ (x < s)
(2.3.72)
と表すことができる。これは、ソリトン中心を境に凝縮体の位相がπ飛ぶというこ とを意味している。
-4 -2 0 2 4
Fig. 2.3.1: ソリトン解に対するゼロモードと共役モードの概形を示す。この図ではℏ=g=m= 1、
x0= 0とした。太い実線と細い実線はそれぞれ位相のゼロモードfθと並進のゼロモードfxを表す。
点線と破線はそれぞれ並進の位相の共役モードhθと共役モードhxを表す。