第2章 国内情報セキュリティ市場調査結果の詳細とその分析
2.2. 国内情報セキュリティサービス市場の分析
2.2.2. 情報セキュリティサービス市場のカテゴリ別分析
2.2.2.4. 情報セキュリティ教育市場
図 22 国内セキュリティ運用・管理サービス市場推移
図 23 2013 年度の情報セキュリティ教育市場
「情報セキュリティ関連資格認定および教育サービス」市場は、対象者が資格取得を目的とす る個人に特定されるため、基本的には小規模な市場である。しかし、企業において、上記②のた めの教育や、情報セキュリティ対策に従事する技術者のスキルレベルの確認手段として、グロー バルな「世界標準の情報セキュリティ資格」を活用するニーズが強くなってきている。そのため 資格取得に向け費用面の会社負担やインセンティブの提供の事例が増加している。また、人材採 用に際して資格保有を必須または優遇条件とする等の活用策も見られる。このような動きを背景 に、企業の指示によるものや、自らのキャリアパスのために個人の負担で資格に挑戦する受講者 も増えていると見られる。
③については、情報システム部門や情報セキュリティ管理責任者にとって、経営者の理解をい かに得られるかは、予算や人材の確保のために重要な課題である。近年は情報セキュリィに対す る社会的認知も進み、脅威や事故の報道も盛んなことから、状況は改善されつつあるが、費用対 効果をどう測り、どう見せるかは引き続き難問である。この分野では経営コンサルティングや会 計監査の提供企業もサービスを提供している。
(2) 市場規模とその推移
表13に国内情報セキュリティ教育市場規模の実績推定値と予測値を、図24にその市場規模の 推移のグラフを示す。
「情報セキュリティ教育」カテゴリは、情報セキュリティサービス全体の市場に占める割合が
8%弱程度と比較的小さい市場であり、2013 年度の市場規模は 270 億円程度と推測さる。2014
年度は標的型攻撃による被害の深刻化や、内部や外注先からの情報漏えい対策への注力が継続的 に増加していることを反映して市場は拡大し、12.6%増の304億円となった。2015年度も脅威は より一層深刻度を増しており、伸び率は鈍るものの拡大傾向は続き、10.7%成長して336億円程 度になるものと推測される。2016年度も同じ増大傾向が続くものと見られ、9.7%増で369億円 規模に達するものと予測する。
表 13 国内情報セキュリティ教育市場規模 実績と予測
市場規模(百万円) 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 情報セキュリティ教育の提供サービス 23,575 26,508 29,158 32,074 情報セキュリティ関連資格認定及び教育サービス 2,483 2,935 3,523 3,875 その他の情報セキュリティ教育サービス 922 922 922 922
合計 26,979 30,365 33,603 36,871
構成比
情報セキュリティ教育の提供サービス 87.4% 87.3% 86.8% 87.0%
情報セキュリティ関連資格認定及び教育サービス 9.2% 9.7% 10.5% 10.5%
その他の情報セキュリティ教育サービス 3.4% 3.0% 2.7% 2.5%
合計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
対前年度比成長率
情報セキュリティ教育の提供サービス - 12.4% 10.0% 10.0%
情報セキュリティ関連資格認定及び教育サービス - 18.2% 20.0% 10.0%
その他の情報セキュリティ教育サービス - 0.0% 0.0% 0.0%
合計 - 12.6% 10.7% 9.7%
このセグメントの大部分、約87%を占める「情報セキュリティ教育の提供サービス」が成長を 牽引しており、ここには上記で触れた「情報セキュリティ教育のe-ラーニングサービス」が含ま れる。市場規模は2013年度に236億円、2014年度には265億円(前年度比成長率+12.4%)、2015 年度には292億円(同+10.0%)、2016年度は321億円(同+10.0%)と、大幅に拡大すると予測さ れる。
図 24 国内情報セキュリティ教育市場推移
一方、「情報セキュリティ資格認定及び教育サービス」は、2013年度において25億円のマーケ 236
25
9
270 265億円
29億円
9億円
304 292
35
9
336 321
39
9
369 0 50 100 150 200 250 300 350 400 情報セキュリティ教育の提供サービス
情報セキュリティ関連資格認定及び教育サービス
その他の情報セキュリティ教育サービス
合計
2013年度 2014年度 2015年度 2016年度
億円
報漏えい事件・事故の発生によりさらに、資格取得傾向が高まると想定されるので20.0%成長の 35億円が見込まれる。2016年度も同様に10.0%増の39億円に拡大するものと考えられる。
昨今の情報漏えい事件を受けて、企業の対策強化や投資拡大、また定年を迎える団塊世代が 第二の人生の武器として資格取得に取り組むといった要因、更には景気の好転を背景にした個人 の自分への投資といった要因から、新たな展開が期待できる。また、スマートデバイスやBYOD 対策等情報セキュリティに関する教育の需要はますます増加傾向にある。