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第 6 章 ズレを考慮した処理 27

6.4 ズレを許容した結果

前節で説明したズレを許容した差画像を作成する方法による処理結果を図

6.4,

6.5

,図

6.6

,図

6.7

,図

6.8

,図

6.8

,図

6.9

に示す.単純に差画像を取る場合で は見られたズレが消えて,欠陥部位のみが正しく抽出される結果が得られている.

(a) 正解画像 (b) 膨張画像

(c) 縮小画像 (d) 判別画像

6.4

誤差を許容した判別結果(良品)

(a) 検査対象画像 (b) 膨張差画像

(c) 縮小差画像 (d) 判別画像

6.5

誤差を許容した判別結果(断線)

(a) 検査対象画像 (b) 膨張差画像

(c) 縮小差画像 (d) 判別画像

6.6

誤差を許容した判別結果(欠け)

(a) 検査対象画像 (b) 膨張差画像

(c) 縮小差画像 (d) 判別画像

6.7

誤差を許容した判別結果(出っ張り)

(a) 検査対象画像 (b) 膨張差画像

(c) 縮小差画像 (d) 判別画像

6.8

誤差を許容した判別結果(泊残り)

(a) 検査対象画像 (b) 膨張差画像

(c) 縮小差画像 (d) 判別画像

6.9

誤差を許容した判別結果(蛇行)

7 章 不良判別まとめ

§ 7.1 不良判別結果

1650

個の製品画像からズレを許容した不良判別処理を行った結果を表

7.1

に示 す.不良判定は全て黒となったら良品,それ以外は目視で判定した.左から実際 に良品判別できた結果,不良品を不良と判別できた結果,実際は良品だが不良品 と判定した誤判定結果,実際は不良品だが良品と判定した見逃し結果である.表

7.1

の通り断線,出っ張り,欠け,泊残りなどの起伏の大きい不良判別処理は正確 に実行できる.しかし主に原因はゴミなどだが,製品上に乗ってしまい良品だが 不良判別されるという誤判定が非常に多い.また,起伏の小さい蛇行などは、モ ルフォロジー変換の許容範囲に入ってしまい,図

7.1

のように見逃しなどを起こす などの問題が存在した.

7.1 1650

個の製品不良判別結果

     正答 誤答

良品判定 不良判定 良品だが不良判定 不良だが良品判定

断線

0 27 119 0

出っ張り

0 19 49 0

欠け

0 9 38 0

泊残り

0 2 6 0

蛇行

0 1 3 9

合計  

1368 58 215 9

(a) 検査対象画像 (b) 膨張差画像

(c) 縮小差画像 (d) 判別画像

7.1

誤差を許容した結果(蛇行判別失敗)

§ 7.2 処理時間

現在の画像処理時間を表

7.2

で表す.1シート分

330

個の製品で合計

58

秒となっ た.これはスキャナ画像が得られているとして,画像の入力から差画像の出力ま での処理時間である.

HSV

変換,

2

値化,差画像などの簡単な計算処理は合計し ても

10s

掛からなかった。しかし,位置合わせや区分けなどのテンプレートマッ チングや回転の複雑な計算が必要な処理は多くの時間が掛かる.さらに短縮を目 指すならば画像処理ハードウェアによる計算支援(

GPU

ボードによる並列計算処 理)やテンプレートマッチングの範囲を狭めるなどの改良によって可能であると 考えられる.

7.2

処理時間 画像処理 時間

[ms]

位置合わせ

13181

HSV

変換

2493

2値化

171

区分け

35133

差画像

7488

8 章 まとめ

§ 8.1 結論

フラットベッドスキャナを用いてシート状製品の配線パターンの画像を取得し,

この画像を用いて外観検査を行う手法の開発に取り組んだ.まず,フラットベッド スキャナ画像の幾何精度を評価したその結果,幾何補正を行えば,検査に必要な 精度が十分得られることを確認した.なお,評価結果から,スキャナ画像の歪は 場所に依存せず一様であるため,同じ歪みを受けた正解画像を用いれば幾何補正 の必要はないと判断した.

次に良品画像と検査対象画像の位置合わせと製品の切り分けを行い,差画像処 理によって欠陥の可能性のある部分の抽出を行った.しかし,単純な差画像処理 では配線パターンの境界が浮き出てしまい,欠陥出ない部位が欠陥として抽出さ れるという問題点が生じる.そこで本研究では,位置合わせの誤差を考慮した良 品画像の許容範囲を設けることで,欠陥でない部分の誤検出を低減した.これに より,断線や一定の大きさ以上の出っ張りなどは問題なく検出が可能である.

§ 8.2 今後の課題

今後は不良を見逃してしまう蛇行の失敗をなくすために,テンプレートマッチ ングの精度向上.色空間しきい値によるゴミの影響の除去や幾何補正による,フ ラットベッドスキャナ精度改善のプログラムの開発や,判別結果からの不良要因 の解析,また製造現場で実際の検査に用いるために精度および処理時間の改善な どが課題に挙げられる.

謝辞

伊藤直史先生には研究等におきまして御指導,助言いただき深く感謝しており ます.また,製品提供にあたり東京測器研究所の萩原智宣氏,江沢俊介氏にはご 協力いただき心より感謝いたします.

また,研究室の皆様のおかげで充実した日々を過ごせました.本当にありがと うございました

.

なお,この研究は共同研究「画像処理によるセンサ製品不良判別の高度化」の 助成を受けて実施されたものである.記して謝意を表す.

・学会発表

内田隆太,伊藤直史,,伊藤直史,萩原智宣,江沢俊介,フラットベッドスキャナ 画像を用いた配線パターン不良判別自動化の試み,第

61

回自動制御連合講演会,

907/911

2018

参考文献

[1]

秦清治

:

外観検査の自動化現状と展望

:

精密工学会誌

, Vol. 56, No. 8, pp. 1366-1370 (1990).

[2]

宮田瞳

,

桂木俊哉

,

篠崎真

:

フラット・ベッド・スキャナの基礎性能の検討 − 寸法と輝度の安定性について−

:

日本印刷学会誌

, Vol. 39, No. 4, pp. 237–

248(2002).

[3] C. Zhu, et al., Algorithm 778: L-BFGS-B: Fortran subroutines for large-scale bound-constrained opti-mization, ACM Trans. on Mathematical Soft-ware, Vol. 23, No. 4, pp. 550–560 (1997).

[4]

小枝正直

,

上田悦子

,

中村恭之

: OpenCV

による画像処理入門改訂第

2

, pp. 3–

9 (2018).

フラットベッドスキャナ画像を用いた配線パターン不良判別自動化の試み An attempt to automatize failure detection in wiring pattern

using flatbed scanner image

○内田 隆太1 伊藤 直史1 萩原 智宣2 江澤 俊介2 群馬大学大学院理工学府1 東京測器研究所2

*Ryuta Uchida1 Tadashi Ito1 Tomonori Hagiwara2 and Shunsuke Ezawa2 Gunma University1,Tokyo Measuring Instruments Laboratory Co.,Ltd.2 Abstract Process of product inspection which distinguishes between good and no-good is indis-pensable for certification of product quality. In industry, automatized visual inspection using CCD camera images is widely utilized, however, manual inspection is still also used to deal with the rapid growing of product diversity and inspection complexity. In this study, an automatize failure detection in wiring pattern on a sheet-like product using flatbed scanner images is attempted.

We experimentally estimated dimensional accuracy of flatbed scanner image and confirmed that candidates for failure part can be successfully detected from difference image between reference product and product under inspection.

Key Words: Image Inspection,Pattern Recognition,Fladbed Scanner

1

はじめに

製品が良品かどうかを確認する検査工程は品質確保 のため必要不可欠である.製品の外観検査においては,

CCDカメラで取り込んだ画像による検査の自動化が産 業界で広く用いられている.

しかし,製品の多様性や検査の複雑化のため,人手 による外観検査も未だに用いられているのが実情であ る.人の目による検査は時間がかかり生産コストの上 昇を招くほか,検査者の主観的判断に依存するので品 質がばらつくなどのデメリットがある.このため,こ れまで自動化されていない検査についても自動化を推 し進め,定量的に不良判別を行うことで品質の均一化 やコスト削減を行うことが急務となっている[1]

本研究で検査対象とするのは,複雑で微細な配線パ ターンをもつシート状の製品である.欠陥には正規の 配線パターンからの余剰な出っ張り,不足している欠 けや断線,両方の特徴を持つ蛇行不良などの様々な形 態がある.

本研究では検査対象の画像取得にフラットベッド スキャナを用いる.フラットベッドスキャナは最も 一 般 的 で 広 く 普 及 し て い る ス キャナ で あ り,透 明 な 原 稿 台 の 上 に 撮 像 対 象 を 固 定 し て ,下 か ら 光 を 照 射 し 反 射 光 を 読 み 取 る タ イ プ も の で あ る .検 査 対 象 の 全 体 の 寸 法 は 約 100×30mm,配 線 パ タ ー ン の 最 小 配 線 幅 は0.05mmで あ る .フ ラット ベッド ス キャナならば製品全体画像を得ることができ,分解能 6400dpi(1画素の大きさ0.0039mm)で画像を取得した 場合,最小幅の配線でも約13画素の線幅で取得できる

ので,検査機器として適していると考えられる.また,

画像入力装置として,光学系の調整や校正なしに寸法 を精度良く得ることができるのはCCDカメラに対す る利点となる[2].ただし,今回用いたフラットベッド スキャナは民生用のものであるため,寸法精度を評価 して用いることが必要である.

その他,フラッドベッドスキャナを用いる利点とし ては,高解像度のカメラなどに比べて安価かつ簡便で あることが挙げられる.フラッドベッドスキャナは民 生であるがゆえに取り扱いが容易かつ安価で入手しや すく,製品寿命が長く繰り返しの使用にも耐えるなど の利点がある.このことは,検査工程のコスト低減に 大きく寄与すると考えられる.

今回,フラットベッドスキャナの精度評価を行い画 像の光学的な歪を補正する手法を開発した.さらに,

OpenCVなどの画像処理ライブラリを利用した不良判

別自動化システムの開発に着手し,不良個所の候補を 検出する段階まで進展したので報告する.

2

フラットベッドスキャナ画像の精度評価

2.1 精度評価の方法

今回の実験で使用するフラットベッドスキャナは Fig. 1に示すEPSON社製GT-X980を使用した.仕 様をTable 1に示す.

フラットベッドスキャナ画像の寸法精度を調べるため に,キャリブレーション用グリッドパターン(渋谷光学

社製CBG01-150T)を撮像対象として使用した.この

グリッドパターンは,大きさが縦160mm×横160mm×

13C1

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