第 5 章 ハイブリッドトラッキングシステムの評 価と動作確認価と動作確認
5.2 ジャイロ・加速度センサを用いたトラッキングの評価
表 5.12: マッチング結果(直線検出併用) 1枚目 2枚目 類似度 閾値による判定結果
15 21 0 ○
16 21 1.08779 ×
• 提案した直線検出を併用することで、明らかに角と関係ない位置の特徴点を除外 することができた。
• 直線検出の精度が悪く、正しく角を検出しているにも関わらず除外されてしまう 特徴点が数多く見られた。これには、実験で写したモータは、自然特徴点検出に適 した角や直線を多く含むが、塗料の影響で光の影響を受けやすいためであり、照 明状態によってマッチング結果が変化することを示唆している。
• 直線検出は、多くの計算負荷がかかり、リアルタイムでの利用は困難である。
図 5.15: SK-JYRO
図 5.16: 1軸分のジャイロセンサユニット
図 5.17: ジャイロセンサの実験システム
0秒から1.6秒位までと、3.4秒以降は静止しているため出力は0(V)であり、本来積 分した角度の値は変化しないはずである。しかし、測定結果ではどちらのジャイロセ ンサからも負の電圧が出力されていて、その結果静止しているはずのジャイロセンサ が、少しずつ負の方向へ動いているように見える。そこでこのドリフト成分を除去す るために、このような状態の2つのセンサに対して、3.5.3項で述べたアルゴリズムを 適用する。図5.20に適用した結果を示す。
単独では、ドリフト成分により負の方向へ動いていた0秒から1.6秒位までと、3.4 秒以降で、静止状態が確認できる。
加速度センサのドリフト除去 ジャイロセンサと同様に、加速度センサについても1軸 分のセンサユニットを作成し、ドリフト除去を確認する実験を行った。実験は図5.21 に示すように、加速度センサユニットを定規に沿って動かし、出力をオシロスコープ で観測する。
図5.22、5.23に、加速度センサから得られた出力と、その値を積分して得られた速
度、および速度を積分して得られた位置を示す。
微少ではあるが、加速度センサでもドリフト成分によって静止しているセンサから 正の出力がある。3.5.3項で述べたアルゴリズムを適用した結果を図5.24に示す。
単独の時は、静止時でもドリフト成分により正の方向へ動いていたが、ドリフトキャ ンセル手法により静止状態が確認できる。
図 5.18: ジャイロセンサAの出力
図 5.19: ジャイロセンサBの出力
図 5.20: ジャイロセンサAの出力 - ジャイロセンサBの出力
図 5.21: 加速度センサの実験システム
図 5.22: 加速度センサAの出力
図 5.23: 加速度センサBの出力
図 5.24: 加速度センサAの出力 - 加速度センサBの出力
5.2.2 ジャイロ・加速度センサによる位置・姿勢算出の精度評価
ジャイロセンサが検出した回転の変化量と、加速度センサが検出した位置の変化量 から、作業員の現在の位置・姿勢を算出する際の算出精度について評価する。実験は、
図5.25のようにマーカ座標系のx-y平面とカメラ座標系(センサ座標系)のx-y平面が 平行になるようにマーカボックスとカメラ・センサユニットを設置した状態で、セン サユニットの基準電圧測定と初期化を行う。初期化作業が成功し、ジャイロセンサ・加 速度センサによるトラッキングが始まるのを確認する。その状態から、カメラ座標系 のx軸正の方向に、ゆっくりと30cm動かし、位置・姿勢の精度を評価する。
ジャイロセンサによるトラッキング結果と、同じ時刻に人工マーカを用いて行ったト ラッキング結果を示す。図5.26はジャイロセンサによる姿勢推定結果のZYZオイラー 角表現である。
図5.27は加速度センサによる位置推定結果である。
実験結果から考察を述べる。
• ジャイロセンサ・加速度センサともに、ノコギリ波のように見えるのは、3.5.4で 述べたセンサ値補正アルゴリズムによって、位置と姿勢が再設定されたためであ る。実験ではセンサからのデータに対して、人工マーカによるトラッキング結果 が周期的に設定されている。その結果、動きの正負や動き始め、動き終わりの検
図 5.25: ジャイロ・加速度センサによる位置・姿勢算出の精度評価実験の配置
図 5.26: ジャイロセンサと人工マーカによる姿勢推定結果
図 5.27: 加速度センサと人工マーカによる姿勢推定結果
出には利用可能な精度になった。
• ジャイロセンサ・加速度センサともに、値は大きくずれているが、動きの方向は 検出できている。
• 加速度センサの結果に、一部大きく値がずれた所がある。人工マーカによるトラッ キング結果を見ると、この箇所と動かしはじめの急な動きの部分とは一致する。グ ラフの右端にも大きな変化が見られるが、これは動きを止めた時と一致する。以 上のことから、加速度センサは急激な動きの影響を受けやすいことが分かる。
• 本システムが行った、人工マーカによるトラッキング結果を用いた周期的な補正 で効果が見られたのは、ドリフト成分が除去されているため、温度や環境に依存 した不規則な誤差がないためである。しかし、動きはじめや止まったときは、影 響を大きく受けている。
以上のことから、試作したジャイロセンサ・加速度センサユニットは、位置・姿勢 を算出できるほどの精度は確保できなかったが、ドリフト成分を除去できたことから、
補正手法の改良によっては、画像処理によるトラッキングと同精度程度まで精度向上 が期待できると思われる。