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シンポジウム、セミナーによる県民への周知啓発

ドキュメント内 1章 (ページ 33-52)

 

熊本県では 2007 年度に、県民に対して道州制等の周知啓発を図ることを目的として、

シンポジウムやセミナーを開催した。ここでは、実施したシンポジウム及びセミナーの概 要や論点を整理するとともに、当日のアンケート結果を概観する。 

 

1.地域から考える地方分権改革と道州制シンポジウム 

全国知事会議の熊本県開催に先立ち、6月 24 日に都市政策研究会「地域から考える地 方分権改革と道州制シンポジウム」を開催した(主催:熊本大学政策創造研究教育センタ ー、後援:熊本県)。 

 

シンポジウムの概要  日 時 2007年6月24日(日)13時30分〜16時 場 所 熊本大学工学部百周年記念館

主 催 熊本大学政策創造研究教育センター、熊本県(後援)

主な内容

・基調講演「九州における道州制議論について        内田安弘 熊本県総合政策局企画課長

・報告

 1 熊本大学大学院法曹養成研究科 教授 中川義朗   「地方分権と地方自治の視点からの道州制について」

 2 熊本大学政策創造研究教育センター 教授 上野眞也   「政治学的視点からの地方分権改革と道州制について」

 3 熊本大学政策創造研究教育センター 准教授 柿本竜治   「都市経済学的視点からの地方分権改革と道州制について」

・報告者による討論

・質疑応答

 

①シンポジウム開催の趣旨 

地方分権改革の中で、国、経済界、地方において様々な道州制をめぐる議論が加速して いるが、他方で、道州制は地方分権に実質的にどう寄与するのか、また、広域自治体とし てどのような権限と機能を有するのか、その内容や方向性は十分に議論されているとは言 えない状況にある。 

そのことからこのシンポジウムでは、道州制の目指すべき姿、あるいは地方自治のあり 方はどのようにあるべきと考えるのか、地方分権と道州制をテーマとして取り上げながら、

未来へ向けた地域をどう創るのかについて、大学から問題提起し、市民の参加者とともに 考えていった。 

 

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②基調講演「九州における道州制議論について」 

    (内田安弘 熊本県総合政策局企画課長) 

内田氏の講演では、都道府県合併、都道府県連合、道州制、連邦制の基本的考え方を整 理した上で、国と地方の関係を巡る地方分権改革の議論の推移について概観した。 

その上で、九州の道州制議論のベースになると考えられる九州地域戦略会議 道州制検 討委員会「道州制のあり方に関する答申」について、道州制の必要性、道州制によって目 指す九州の姿、九州の道州制のイメージについて概観した。 

今後の道州制議論を考えるポイントとして、答申より道州制導入に向けた3つの仕組み づくりについて示した。第一に国、道州、市町村の役割分担の明確化、第二に役割に応じ た地方自治体の自主財源を確保するための仕組みづくり、第三に道州制を支える市町村の 行政能力を強化するための仕組みづくりである。 

また、答申における国民的議論を喚起するための3つの方策について触れながら、今後 道州制を議論していくにあたっては、制度面及び生活面から議論を行っていく必要がある としている。 

   

③「地方分権と地方自治の視点からの道州制について」 

    (中川義朗 熊本大学大学院法曹養成研究科教授) 

中川氏の講演では、まず戦前から始められている道州制の経緯に触れながら、道州制を 国家的な組織の改造という視点から考えるのか、それとも地方分権や地方公共団体、地方 自治体の強化・拡大という視点から考えるのかによって、異なった方向性が見えてくると いう点を指摘し、その上で、地方分権的な社会を作るのが一つの将来の形として我々が目 指すべき社会の形ではないかと言及している。 

市町村合併の進展と政令指定都市・中核市の増加によって基礎自治体の強化が進められ る中で、都道府県の権限を大都市が担ってきている現状があることから、道州制の一つの 論点として、都道府県レベルの広域的な区域改革、都道府県の役割、位置づけをどのよう に考えるべきか、という点が見えてくると指摘している。さらに住民と基礎自治体を中心 に考えるならば、基礎的な地方公共団体をどのように強化・拡充するか、行財政体制をど うすべきか、という視点も重要なポイントとなるとしている。 

このように、都道府県の役割の見直し、あるいはそれに変わる広域的地方政府としての 道州を、我々はどう展望しうるのかということが分権自治の担い手としての道州を評価す る、あるいは位置付ける 1 つのポイントになってくるのではないかとしている。 

他方、道州が実質的に国の機関に取り込まれてしまう、あるいは国家機関化してしまう 危険性や心配があるのではないか、という点も考えておかなければいけないと指摘してい る。また、道州内での自治論、分権をどういう形で具体的・実質的に確保していくのか、

考えておかねばならないとしている。 

     

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④「都市経済学的視点からの地方分権改革と道州制について」 

    (柿本竜治 熊本大学政策創造研究教育センター准教授) 

柿本氏は、道州制の目的にある行財政の効率化を住民の側から見た場合どうなるのか、

という観点から講演を行った。 

まず経済学の観点から、公共財の配分と住民の行動について概観した上で、経済学から 見た地方分権について整理している。 

経済学において、地方分権とは、地方政府が地域住民の固有なニーズに応じて公共サー ビスの内容を選ぶとともに、そのために必要となる財源を得るために自由な税率を定める 権限を与えることと定義されるとしている。 

地方分権の必要性としては、第一に、それぞれの住民の選好にあったサービス・税率を 提供できること、第二に、政策メニューに制約がなくなることで地方政府が創造性を発揮 する可能性が拡大すること、第三に、地方政府の責任が明確になり政府の職員や議員が住 民の要求に応えるような政策を実施するように努力するインセンティブを持つようにな ること、第四に、中央政府からの補助金に伴う非効率性を改善することが期待できること をあげている。 

一方、地方分権の問題点としては、第一に、公共サービスが地域間で外部効果を及ぼす 場合、地方分権では効率的な供給水準が達成されないこと、第二に、各地域の政府が自由 に租税政策を選択することによって、租税競争や租税輸出のように社会全体として非効率 な結果をもたらすことを掲げている。 

以上の点を踏まえると、小さい自治体が多い方が住民の選好にあった自治体を選ぶこと ができるが、大きい自治体の方が供給費用は安くなるというトレードオフの関係が発生し てくることになる。道州制を考える上では、地方政府が担う機能をどこが担っていくのか、

という点を整理しながら考えていくと住民の側から見た道州制を考えやすくなるのでは ないかと指摘している。 

   

⑤「政治学的視点からの地方分権改革と道州制について」 

    (上野眞也  熊本大学政策創造研究教育センター教授) 

上野氏は、政治学、行政学の視点から道州制について講演した。まず、明治より始まり 120 年近く行ってきた都道府県制の変遷について触れたのち、道州制の議論が行われてい る背景について説明している。 

80 年代以降グローバルゼーションが進展する中で、国が現行体制を維持できなくなっ てきており、経済界、政治家等の中で国を効率的に運営していくかということに関心が高 くなってきている。その問題解決の方法の一つとして、地方政府を小さくする必要性があ るという議論が行われ始めているとしている。その受け皿論の議論として市町村合併があ り、地方の行財政改革と地方分権が議論されてきている。 

現在分権と行政改革が合わせて議論されている理由には、国が様々な再分配をしながら 均衡ある国土発展を目指すという中央集権的な制度が十分に機能を果たし得なくなって きたということ、グローバリゼーションによって世界が一つの市場として捉えられるよう になり、経済界から身軽な政治、コストのかからない国になるべきではないか、という要

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請も高まってきていることをあげている。 

分権では、1999 年の地方分権改革一括法により、国の機関として地方自治体を使うと いうやり方は廃止されたが、現実的には法定受託事務と自治事務という形に分けられてお り、「未完の改革」となっているとしている。三位一体の改革についても、結果的に地方 が受け取る税財源が大きく減少している。今後、税財源の移譲や移譲された業務の自由度 向上が求められるとしている。 

最後に、現在想定されている道州制議論の展開について示している。第一に、都道府県 を解体して道州を設置し、国の権限を移譲するものである。この点については、地方ブロ ックの税収の偏りをどのように解決するのかという問題があるとしている。第二に、分権 を先行して行うものであり、都道府県の市町村への分権が進んだ後、道州制の議論を行っ ていくというものである。第三に、中央主導で中央政府、地方政府をダウンサイジングし て改革を成功させるものである。ある意味で分権の名を借りた集権化の手法であるが、そ の効率性から現在進められているものであるとしている。 

   

⑥研究討論会 

報告を行った三氏により研究討論会が行われた。討論会では各氏が前段での報告につい ての補足を行うとともに、会場からの事前質問を受けて、地方分権、道州制の課題、あり 方について意見を交わした。 

 

研究討論会において議論されたテーマ   

○都道府県廃止、道州設置の憲法上の課題 

○地方分権のもたらす自由競争、地域格差 

○政府権限・財源の移譲に伴う関係省庁の抵抗、利害調整の困難さ 

○人口移動による教育・福祉の地方負担の問題 

○州内分権による均衡的発展と集中・選択による投資のバランス 

○住民自治、基礎自治体の観点からの道州制議論の不足 

○基礎自治体間の格差と道州制での補完行政の役割 

○道州制の導入による行政階層と行政コスト・住民便益の均衡   

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