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シミュレーション方法

第 4 章 微細析出相により阻止される刃状転位の分子動力学シミュレーション 23

4.2 シミュレーション方法

図4.1に示した3つのモデルに対して解析を行った.いずれも,純Niマトリックス 中に立方体形状の純Ni3Al析出相が格子状に配置された理想的なγ/γ構造を想定し,

そのすべり面に沿った平板状の部分を解析対象としている.また,前章と同様,モデ ルの単純化を行い,γ相へのAlの固溶や第三元素の効果はここでは考慮していない.

Model I  実際のγチャンネルの幅に近い41.20nmの間隔で隣り合う2つの立方体γ 相を想定し,その頂点近傍の平板状領域を解析対象とするモデルである(図4.1(a)).こ こで,解析対象とした2つのγ相頂点が同一すべり面上にのるように,右のγ相に 対して左のγ相を[1 0 0],[ 0 0 1]方向に20.60nmずつシフトさせている.これにより,

シミュレーションにおいて転位が発生する端面と2つのγ相までの距離を等しくして いる.平板状セルの大きさは厚さ4.30nm,せん断方向([0 ¯1 1],x方向)長さ60.01nm,

横方向([2 ¯1 ¯1],y方向)長さ72.11nmであり,1,671,467個の原子を有する.γ相のエッ

ジ部は4.41nmの丸みを有するものとした.いずれの方向にも周期境界を適用できな

いため,すべてのセル端面では,法線方向の原子運動を拘束し平面内に制限する境界 条件を用いた.

Model II 立方体γ相の一辺の長さが57.50nm,γチャンネルの幅が14.38nmと,実 材料と比べ1オーダー小さいγ/γ構造とし,せん断方向に対して横方向に周期境界条 件が適用可能な平板状領域を解析対象とするモデルである(図4.1(b)).セルの大きさは 厚さ2.39nm,せん断方向([¯1 ¯1 2],x方向)長さ88.04nm,横方向([1 ¯1 0],y方向)長さ 101.65nmであり,1,920,000個の原子を有する.γ相のエッジ部の丸みはR=7.09nm とした.周期境界が適用できない厚さ方向とx方向には,原子運動を平面内に制限す る境界条件を用いた.

Model III  対象とするγ/γ構造のスケール,シミュレーションセルの大きさ,境界

条件およびせん断方向などは全てModel IIと同じであるが,立方体γ相のエッジおよ び頂点を原子レベルで鋭利なものとした(図4.1(c)).

4.2 シミュレーション方法 25

[112]

[110]

x y

(b) Model II δ

101.65 nm2.39 nm

88.04 nm

γ '

γ '

γ '

A B

D C

δ

101.65 nm2.39 nm

88.04 nm

γ '

γ '

γ '

A B

D C

Wall atoms (planar motion)

(c) Model III (a) Model I

Wall atoms (planar motion) δ

50.48 nm 4.30 nm

60.01 nm Displacement

72.11 nm

γ' γ'

0.04µm

Simulation area γ '

γ '

[011]

x y [211]

[011]

x z [111]

x z [111]

[112]

D

A B

C 57.50nm

14.38nm

Fig.4.1 Simulation models.

26 第4章 微細析出相により阻止される刃状転位の分子動力学シミュレーション

Total displacement d, nm

Time t, fs Magnification

1000fs

d

(b) Crystallographic orientation

Atom on upper plane Atom on lower plane

Distance to the 1st neighbor:

0.1447nm >> ∆δ = 0.0088nm

(a) Loading procedure

Model I

Distance to the 1st neighbor:

0.125nm >> ∆δ = 0.0100nm

Model I I, Model III [011]

x y [211]

[112]

[110]

x y

Fig.4.2 Schematics of loading procedure and crystallographic orientation.

いずれのモデルも,初期配置作成時にはγγ,および,その界面の格子長さには 差を与えず,NiとNi3Alの格子定数3.5200˚Aと3.5670˚A を相加平均した値3.5435˚Aを 用いた.したがって,γ/γ界面は格子ミスフィットδ = (aγ −aγ)/aγが0の整合界面 である.まず,5000fsの初期緩和計算を行い,γとγの間の内部ひずみを再配分させ た.その後,x=0の端面において,厚さ中心から上半分に微小変位∆δを与え1000fs の緩和計算を行った.この微小変位増加/1000fsの緩和計算のステップを繰り返して端 面変位を増加させた(模式図4.2(a)).ここで,微小変位増分∆δの大きさは,せん断方 向が[0 ¯1 1]であるModel Iでは0.0100nm,せん断方向が[¯1 ¯1 2]であるModel IIおよび Model IIIでは0.0088nmとした.いずれも,図4.2(b)に模式的に示したように,すべ り面上の原子の隣接サイトまでの距離(部分転位のバーガースベクトルの大きさ)と比 べ十分小さい.この変位増加により端面から結晶内部に刃状転位を発生させ,すべり 面上を運動しγ/γ界面に接近する転位挙動をシミュレートした.温度は速度スケーリ ングにより300Kに制御した.

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