第 3 章 構文木の差分を利用した版管 理システム向きマージ手法理システム向きマージ手法
3.4 システムの実装
3.3 節で述べたアルゴリズムを,既存の版管理システムである subversion への 拡張として実装した.
46
以下, 3.3.2 節で述べたリポジトリからのソースコードの取得と格納の実装に
ついて3.4.1節で,3.3.4 節で述べたマージの実装について3.4.2節でそれぞれ説明
する.
3.4.1 取得と格納の実装
subversion システムは,リポジトリを管理するサーバと,ワークコピーを管理
するクライアントから成る.クライアントには,リポジトリからファイルを取得 してワークコピーを作る時や,ワークコピーをリポジトリに格納する時に,改行 文字を変換したり,特定のキーワードを置き換える機能がある(図3.14).
ここで, subversion クライアントに,以下の機能を追加する
1. ツリーからソースコードへの変換機能 2. ソースコードからツリーへの変換機能
ツリーの表現には,XML に基づく独自の記述言語を用いる.システムの拡張は,
クライアントにのみ行い,サーバには手を加えない.これらの機能追加を施した subversion システムの概略図を図3.14 に示す.
ファイルが特別なメタデータsvn:conversion-handlerを持っていない場合は,
既存の subversionクライアントと同じ処理を行う.
開発者の編集しているソースコードが,メタデータsvn:conversion-handler を持っている場合には,ソースコードを格納する際に,クライアントがソースコー ドを XML に変換する.クライアントがリポジトリからファイルを取得する際に は,XML をソースコードに変換し,ワークコピーを作る.
3.4.2 マージの実装
既存の subversionシステムでは,subversionクライアントが,行を単位とした マージ処理を行う(図3.15).マージ処理の入力は,ワークコピーと,差分の計 算を行うためのリポジトリに格納された 2 つのファイルである.まず,ワークコ ピーの改行文字の変換と,キーワードの縮約を行う.そして,リポジトリ内の 2 つのファイルから,行単位の差分を計算する.そして,得られた差分を,変換し たワークコピーに適用する.最後に,適用結果の改行文字と,キーワードの展開 を行い,ワークコピーを上書きする.
ここで, subversion クライアントに,以下の機能を追加する
subversion
subversion
図 3.13: subversion におけるファイルの格納と取得
subversion
subversion
X M L
X M L
図 3.14: ソースコードの木構造を考慮した格納と取得
48
subversion
subversion
図 3.15: subversionのマージ
subversion
subversion
X M L
X M L
X M L
X M L
X M L
X M L
X M L
!
X M L!
X M L!
X M L!
X M L (
! ! "
) X M L!
X M L!
X M L!
X M L (
! "
)!
X M L!
X M L!
X M L(
)
!
X M L!
X M L!
X M L(
)
図 3.16: 木構造に対応したマージ
2. ソースコードからツリーへの変換機能 3. ツリーの差分計算の機能
4. ツリーの差分適用の機能
(1) と (2) の機能については,3.4.1 節で説明したものである.これらの機能追加 を施した subversion のマージ機能の概略図を図3.16 に示す.3.4.1 節で説明した ように,リポジトリにはXML文書が格納されており,ワークコピーはソースコー ドである.
まず,格納の時と同様に,開発者の編集したワークコピーをXML に変換する,
そして,2つの XML ファイルをリポジトリから取得し,差分計算を行う.この差 分を,ワークコピーから作った XML ファイルに適用することで,マージ結果の XML ファイルが得られる.
マージ結果が1 つだけ得られた場合は, XML ファイルをソースコードに変換 してワークコピーを上書きする.マージ結果 2 つ以上得られた場合には,開発者 が複数のマージ結果の候補から1 つを選択し,ワークコピーを上書きする.この 複数のマージ結果の候補は, 3.3.4 節で説明した点数によって整列されている.