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シグマ デルタ オーバサンプリング AD 変換器

ドキュメント内 ( ) : 1997 (ページ 47-52)

第 6 章 応用回路 41

6.7 シグマ デルタ オーバサンプリング AD 変換器

オーバサンプリング法(oversampling method)は通常の AD 変換器(AD convertor)と大きく 異なり、アナログ入力からいきなり12 bitのようなパラレル (あるいはシリアル)のディジタル出 力を出すのではなく、まず 1 bitのAD 変換(AD conversion)をして、シングルディジタル出力 を得る。それを計算機処理して複数bit の出力にするものである。

通常のAD変換器と同じクロックでサンプルすると、情報は明かに不足するので、オーバサン プリング(over-sampling)といって、通常の数十倍から数万倍のクロックで変換する。また、1 bit AD変換器にはΣ∆ AD変換器が用いられる。

6.7.1 デルタ変調

+

-x y

S/H Integrator

図6.2: ∆ 変調器

シグマ デルタAD変換器の基礎には、デルタ変調(delta modulation)という概念が存在してい る。この回路を図6.2に示すが、まず、入力とフィードバック信号との差を調べ、入力の方が大き いと正の一定出力、小さいと負の一定出力を出す比較器がある。その出力をクロックに合せて定期 的に取り出し、次のクロックの来るまで出力を維持する遅延回路 D (Sample/Hold)がある。さら

にその結果を積分し、一定速度で増加あるいは減少するフィードバック信号を作り出す積分器が ある。

これら入力とフィードバック信号との差は、クロックごとにしかチェックされないので、フィー ドバック信号は一つ前のクロックのときの値から ±∆ しか変化していないこととなり、クロック ごとに一定幅の上下移動のみが許された尺取虫のようなものとなる。この移動のみでアナログ原波 形を追いかけることとなる。例えばアナログ波形が正弦波のときには、図6.3のようになる。この 際の+∆/∆の移動を1/1 に対応させて出力とする。当然、アナログ原波形が増加傾向にあ ると1の出力が増え、逆に減少傾向にあると-1の出力が増える。つまり微分に近い概念であると 言える。

-10 -5 0 5 10 15

0 20 40 60 80 100 120

input output sum

図6.3: デルタ変調波形 このディジタル出力波形の周波数スペクトルを図6.4に示す。

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

-60 -40 -20 0 20 40 60

power

図6.4: デルタ変調波形のスペクトル

この波形のスペクトルを見ると周波数 0付近に存在するアナログ入力の原波形の周波数成分以 外に、左右の高周波部にランダムな成分を持っている。これは、パルス波形に変換した際の量子化 雑音である。しかし、積分器を含んだフィードバックループの存在のため、それらの成分は高周波 領域にのみ存在する。

6.7.2 シグマ デルタ変調

x + y

-S/H Integrator

図6.5: シグマ デルタ変調器

図6.3の入力を積分したものにデルタ変調をかけると、そのディジタル出力はアナログ原波形 に近い概念になる。構造は図6.5に示すように、入力側に入れた積分器とフィードバック信号側に 元々入っていた積分器を一体化した構成となっている。また、波形を図6.6に示す。

-5 0 5 10 15 20 25

0 20 40 60 80 100 120

input output sum

図6.6: シグマ デルタ変調波形

このディジタル出力波形の周波数スペクトルを図6.7に示す。この量子化雑音も高周波領域にの み存在する。

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

-60 -40 -20 0 20 40 60

power

図6.7: シグマ デルタ変調波形のスペクトル

6.7.3 シグマ デルタ オーバサンプリング AD 変換器

シグマデルタAD変換器(sigma-delta AD convertor)のわかりづらいのは、従来のAD変換器 の考え方とまったく異なる点である。従来の AD変換器は、元のアナログ波形をそのままディジ タル符号化することを考えていた。

しかし、シグマデルタAD変換器では、元のアナログ波形から、シグマデルタ変調を利用して、

それと近い周波数スペクトルを持つディジタル波形を作り出す。この中間的なディジタル波形は、

最終的に出力されるディジタル符号列とは似ても似つかないものである。むしろアナログ波形に似 ている。しかし、ディジタルであるので、ディジタル処理が可能なのである。

この中間的なディジタル波形を、量子雑音を除去するための低域通過型ディジタルフィルタの入 力に直接入れると、その出力はディジタル数値化された出力波形となる。出力がディジタル数値化 されているということは、これをそのまま最終のディジタル符号化出力として利用できるはずであ る。つまり、AD変換が成立したことになる。

この発想の転換に追従できないと、このAD変換器は永久に理解できない。

元のアナログ波形の持つ周波数に対し、量子化雑音の持つ高周波成分を十分高くするために、サ ンプリングの周波数は十分高くとる。この比率をどのくらいとるかは、最終的に必要な bit 幅で 決定される。どの程度、通常の数十倍から数万倍のクロックで変換するので、これを、オーバサン プリング法(oversampling method)という。最終的に12 bitのディジタル出力を得ようとすると、

少なくとも212倍程度のオーバーサンプリングが必要である。

また積分器をもう少し複雑なsの関数とすると量子化雑音をもっと抑えることができる。こう した概念を取り入れたものが、二重積分型と呼ばれるものである。

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