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第 2 章 理論モデル及び解析手法 19

2.4 変分モンテカルロ法の技術的な点

2.4.2 サンプルの抽出法

式(2.24)を計算するために、確率(式(2.23))に依存したサンプルを抽出しなければならな い。確率P(R)に従うサンプルの抽出法には、マルコフ過程を基礎に置いた、メトロポリス

第2章 理論モデル及び解析手法 29

法 [45–47]を使用する。マルコフ過程は未来の状態が現在の状態にのみ決定され、それ以前の

過去の状態には無関係であるという性質を持つ確率過程である。このような過程は例えば、確 率的にしか記述できない物理現象の時間発展の様子が見られる。本研究では任意の配置R1か らR2 を、R2 からR3 をと、前の配置から各サイトごとに確率分布P(R)に従うように、そ れぞれランダムウォークさせ、新しい配置を作成していく。

また、前の配置Rmから新しい配置Rm+1 を選択する方法としてメトロポリス法を用いる。

この方法は一様乱数 ξ(0≤ ξ≤ 1)を利用し、一次的に作成した試行配置RtRm+1 として 採択するか否かを判断をする方法である。具体的には、RmからRm+1を作成するために、ま ずRmの配置を持つ電子をそれぞれランダムウォークさせ、試行配置Rt を作る。その上で、

新しい配置Rm+1は、ξ の値に応じて次式により決定する。

Rm+1 =

{ Rt (P(Rt)/P(Rm)> ξ) · · ·(i)

Rm (P(Rt)/P(Rm)≤ξ) · · ·(ii) (2.25) 式(2.25)は(i)の場合、試行配置Rt へと更新し、(ii)であれば前の配置 Rt を採択する。ま た、P(Rt)/P(Rm)>1となる場合、乱数は0≤ξ 1の範囲しか取れないので、この範囲に ある新しい配置は乱数 ξに依存せず、必ず更新されることになる。(図2.4(c)(d)の緑の範囲) そのため、図2.4(c)など乱数ξに依存しない地点が特に広すぎる場合、ほとんどの試行配置が 新しい配置として盲目的に更新され、確率P(R)に依存していない。

本来なら配置が採択される際、Rc など採択される確率が低い配置は式(2.25)に従って採択 されにくいため、上記のようなことが起こる場合は少ない。しかし、Rc が初期配置として選 ばれてしまった場合、次に採択される配置は確率P(R)によらない。そのため、作成されたサ ンプルの序盤の配置は確率P(R)を基に作成されているのかどうか、疑わしい問題となる。

これを防ぐため、式(2.24)の平均を求めるのに使用するサンプルは、統計的な平衡(Rd の ような状態)に達した後に生成されたものでなければならない。従って平衡に達するまではラ ンダムウォークを空回しさせ、最初のいくつかの配置は捨てる必要がある。この手続きは試運 転(thermalization)と呼ばれている。

また、式(2.25)(ii)の判断が続き、延々と配置が更新されない場合、個々のサンプルの統計

的な独立性が保てない場合がある。これを防ぐために、抽出するサンプルとサンプルの間でラ ンダムウォークを何度か空回しさせる必要がある。十分な空回しの度合いを調べるため、あ る電子配置に対して粒子数だけ、式(2.25)の試行を適用させた過程をモンテカルロステップ

(MCS)と定義し、そのMCSの間、試行配置が新しい配置として採択された割合(配置の更新

率、acceptance ratio)を求める*2。試運転中の配置の更新率から、サンプリング間隔に必要な MCSの目安を見積もる。

こうして、ランダムウォークを続けていくと、配置RmP(R)に従い、確率が大きい配 置が頻繁に生じることになり、結果として、全サンプルは漸近的に確率P(R)に基づく配置の

*2例として36電子の場合は、式(2.25)の試行を適用させた回数が36回を1MCSとする。また、試行の前後で 更新された電子が18電子ある場合、更新率は0.5となる。多くの場合、更新率は0.3を超えていれば、前の配 置とは十分独立しているとみなせる。

第2章 理論モデル及び解析手法 30

2.4 (a)ある確率分布P(R)のグラフ。(b)(c)(d)(a)P(Rb)P(Rc)P(Rd) をそれぞれ基準にした場合のP(R)のグラフ。(b)の赤の範囲はある式(2.25)(ii)に対応 しており、試行配置が採択される範囲をしめしている。また、青の範囲は(ii)に対応する。

(c)(d)の緑の範囲はP(Rt)/P(Rm)>1の部分を示しており、どのような乱数ξにおい ても試行配置が採択される範囲を表す。

集まりとなる。この過程を繰り返すことでNsample個のサンプルが得られる。また、サンプル が確率P(R)を完全に再現し、式(2.24)のサンプルによる平均が式(2.22)の積分した結果と 一致するのは、Nsample =の場合のみである。

以下では本研究で行ったサンプルの取り方と条件である。

1. 初期配置を任意に定め、更新率θを計測しつつ、試運転を2000MCS回行う。

2. 試運転し終えた配置に対して、式(2.25)の試行を適用しサンプルとして保存していく。

この際、抽出サンプルの配置の更新率を0.3以上になるようにするため、θ < 0.3であ れば数回MCSを行い(θ = 0.1であれば3回のMCS)、その後サンプルを保存する。

3. 集めたNsample= 250,000個のサンプルを使用し、式(2.24)の計算を行う。

モンテカルロ計算に伴う統計誤差σは、Qを全サンプルのある物理量Qiの平均値とすると、

σ = vu ut 1

Nsample

Nsample

i=1

(Qi−Q)2 (2.26)

で求められるが、計算速度を優先するために以下のような方法を取り、計算精度の目安として いる。全サンプルをNG個のグループに均等に分け、各グループ内での物理量の平均値Ql

第2章 理論モデル及び解析手法 31 求めることによって、σを以下のように見積もる。

σ = vu ut 1

NG NG

l=1

(Ql−Q)2 (2.27)

式(2.26)と式 (2.27)は表式は違えど、求められるσ に違いはない。本研究ではNG = 20を としている。

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