6 ゴルフスイング向上支援システムの提案
6.10 比較レイヤ
27
図 6-13: スケール調整後スイングデータ(角速度)
また、教師データのバックスイング開始時刻、ダウンスイング開始時刻、インパクト時刻、
フィニッシュ時刻は表 6-1に示す通りとなっていた。
表 6-1: 教師データのバックスイング、ダウンスイング、インパクト、フィニッシュの時刻
動作 時刻t[5msec]
バックスイング開始 0
ダウンスイング開始 214
インパクト 295
フィニッシュ 421
28 の精度を高める目的もある。
表 6-2: セクション・教師データ時刻対応表
セクション\
項目
開始時刻 t[5msec]
終了時刻
t[5msec] 終了時の動き アドバイス時の呼び 方
セクション① 0 50 手が右足のと
ころに来た バックスイング前半
セクション② 51 135
腕が水平に近 づいた (ハーフウェイ
バック)
バックスイング中盤
セクション③ 136 214 トップまで バックスイング後半
セクション④ 215 248
切り返して腰 がアドレスの 位置に戻った
ダウンスイング前半
セクション⑤ 249 270 左手が最下点 ダウンスイング中盤
セクション⑥ 271 295
手がアドレス の形にもど り、ボールに
当たった
ダウンスイング後半
図 6-14: セクション分け図説
29
6.10.2 セグメント (Segment)
セクションと各センサの計測軸の組み合わせを以降でセグメント(Segment)と呼ぶ。セグ メントのイメージを図 6-15に示す。各部位のデータはセクションで分けられており、セク ションの下には 3 軸の加速度と角速度が格納されているイメージである。センサ毎にセグ メントは36個存在し、センサは3つあるので、合計108のセグメントが存在する。表 6-3 に本論文で用いるセグメント名の対応表を示す。
図 6-15: セグメントイメージ
30
表 6-3: セグメント名対応表
セクション
①
セクション
②
セクション
③
セクション
④
セクション
⑤
セクション
⑥
X軸加速度 セグメント 1XA
セグメント 2XA
セグメント 3XA
セグメント 4XA
セグメント 5XA
セグメント 6XA
Y軸加速度 セグメント 1YA
セグメント 2YA
セグメント 3YA
セグメント 4YA
セグメント 5YA
セグメント 6YA
Z軸加速度 セグメント 1ZA
セグメント 2ZA
セグメント 3ZA
セグメント 4ZA
セグメント 5ZA
セグメント 6ZA
X軸角速度 セグメント 1XV
セグメント 2XV
セグメント 3XV
セグメント 4XV
セグメント 5XV
セグメント 6XV
Y軸角速度 セグメント 1YV
セグメント 2YV
セグメント 3YV
セグメント 4YV
セグメント 5YV
セグメント 6YV
Z軸角速度 セグメント 1ZV
セグメント 2ZV
セグメント 3ZV
セグメント 4ZV
セグメント 5ZV
セグメント 6ZV
6.10.3 比較
各セグメント内の各時刻tで以下のm(t),r(t),d(t)を求める。図 6-16に示すように、Player(t) とは、時刻tにおけるプレイヤのセンサ値であり、Expert(t)とは時刻t における教師データ のセンサ値である。
m(t) =
{
0|(𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡)|
≤ 𝑡ℎ𝑟𝑒𝑠ℎ𝑜𝑙𝑑)
(7)
1 |(𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡)|
> 𝑡ℎ𝑟𝑒𝑠ℎ𝑜𝑙𝑑)
r(t) =
{
0 (𝑠𝑎𝑚𝑒 𝑑𝑖𝑟𝑒𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 𝑓𝑜𝑟𝑐𝑒)1 (𝑟𝑒𝑣𝑒𝑟𝑠𝑒 𝑑𝑖𝑟𝑒𝑐𝑡𝑖𝑜𝑛 𝑓𝑜𝑟𝑐𝑒) (8)
31 d(t) =
{
3 ∗ |𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡) − 𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)
𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡) | + 𝑟(𝑡) |(𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)|
> 𝑡ℎ𝑟𝑒𝑠ℎ𝑜𝑙𝑑)
(9) 𝑚(𝑡) + 𝑟(𝑡) |(𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)|
≤ 𝑡ℎ𝑟𝑒𝑠ℎ𝑜𝑙𝑑)
図 6-16: 左手甲セグメント5YA(section⑤のY軸加速度)での比較
6.10.3.1 閾値
m(t)は、プレイヤのセンサ値の絶対値が閾値thresholdよりも大きいかどうかを示す値であ
る。センサ値の絶対値が小さい場合は、誤差による影響が大きく正確性が減少するため、閾 値よりも小さい場合は、その情報を持つこととする。また後述するd(t)の計算式の問題対策 のためでもある。 threshold の値は d(t)の時に使用されるものと同じであり、加速度の場合
は2,400[0.1mG]、角速度の場合は2,000[0.01dps]である。
6.10.3.2 逆向きの力
r(t)は力が逆向きに掛かったかどうかを示す値である。加速度や角速度が逆向きに掛かる ということは、加速度や角速度が単に強い/弱いものよりも、大きく異なる動きをする(例え ば教師データでは飛球線方向に加速しているにもかかわらず、プレイヤは減速している等) ことを示す。そのため逆向きに力がかかったかどうかという情報を各時刻で保持する。角速
32
度の場合は単純にPlayer(t)とExpert(t)の符号が違う場合、逆向きと判断するが、加速度の場 合は、重力加速度の影響もあり、単純に符号の不一致だけでは判断できない。そこでPlayer(t)
とExpert(t)の差が1G以上あり、かつ符号が異なっている場合に逆向きに力が掛かったと判
断する。
6.10.3.3 スイング類似距離 d(t)
d(t)の値が主な比較の結果となり、どれくらい教師データとプレイヤのスイングが違うの かを示す値である。これをスイング類似距離と呼ぶ。𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡)−𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)
𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡) は、Expert(t)の値に
比べ、Player(t)とExpert(t)がどのくらい離れているのかを表している。実際はこの式の結果 が1以上になれば、値を1、-1以下になれば、値を-1としている。𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡)−𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)
𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡) はExpert(t) の値が小さい場合に式の値が大きくなる傾向があり、またその時は僅かな動作や誤差の影 響で値が極端な値になる可能性がある。そこで、Expert(t)の絶対値が6.10.3.1節で述べた閾 値よりも小さい場合はm(t)とr(t)の値を足した値をd(t)の値とした。
また 𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡)−𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)
𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡) に3をかけている理由としては、 𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡)−𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)
𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡) が1になると
き、Player(t)はExpert(t) の2倍以上の値であるが、m(t)が1になる時は、閾値より大きいと きである。m(t)が1の時でも、閾値に近い、離れている、かなり離れているというような状 況が考えられ、そのままの値を扱うと正確さが欠けてしまう恐れが想定された為、今回は
𝑃𝑙𝑎𝑦𝑒𝑟(𝑡)−𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡)
𝐸𝑥𝑝𝑒𝑟𝑡(𝑡) に3を掛けることで調整した。d(t)のとる値の範囲は0から4であり、0に
近づくほど教師データに似ており、4 に近づくほど教師データとは似ていないことを示す。