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ゴマリグナン類のマウスを用いた経口投与による脳内移行の検 討

第 3 章 ゴマ( Sesamum indicum の種子)の β‐セクレターゼおよびコ リンエステラーゼ阻害作用

第 2 節 ゴマリグナン類のマウスを用いた経口投与による脳内移行の検 討

第 2 節 ゴマリグナン類のマウスを用いた経口投与による脳内移行の検

3-2)LC-MS/MSによる脳内移行成分の定量分析

マウスの血清および脳の分析試料は以下の方法により調製した.分析試料は

LC-MS/MSを用いて下記の条件で分析し,31および32の定量分析を実施した.

分析試料の調製

血清;血清100 μLにacetonitrile 500 μLを加え,ボルテックス(約3 min)に よって抽出後,遠心分離(760 × g,10 min)し上清を採取した.有機溶剤 除去後,残留物をacetonitrile 50 μLで溶解した.

大脳および小脳;脳30 mgを精秤し,acetonitrile 150 μLで超音波抽出(10 min)

後,遠心分離(760 × g,10 min)し上清を採取した.有機溶媒 除去後,残留物をacetonitrile 75 μLで溶解した.

LC-MS/MS条件(sesamin)

装置;Shimadzu Lab-solutions system (LC-30AD)

カラム;Shimpack XR-ODSⅡ(2.0 i.d.×75 mm,2.2 μm,島津製作所)

流速;0.2 mL/min

移動相;MeOH:5 mM ammonium acetate water solution(4:1,v/v)

R.T.;2.25 min 注入量;1 μL

検出器;MS(LCMS-8050)

インターフェース電圧;2.5 kV イオン化モード;ESI (+) イオン源温度;100 ℃ 脱溶剤ガス流量;10 L /min

LC-MS/MS条件(sesamolin)

装置:Shimadzu Lab-solutions system (LC-30AD)

カラム;Shimpack XR-ODSⅡ(2.0 i.d.×75 mm,2.2 μm,(株)島津製作所)

流速;0.2 mL/min

移動相;MeOH:5 mM ammonium acetate water solution 0 min(4:1,v/v)→ 2.5 min(1:0,v/v)

R.T.;2.55 min 注入量;1 μL

検出器;MS(LCMS-8050)

インターフェース電圧;4.0 kV イオン化モード;ESI (+) イオン源温度;225 ℃ 脱溶剤ガス流量;10 L /min 脱溶剤温度;150 ℃

コーン電圧;27 V

MRM条件;Sesamolinのプリカーサーイオンとして[M+NH4]+=m/z 388.2,プ ロダクトイオンとして[M-C12H12O5+H]+= m/z 135.0を測定した.定 量値は標準品により作成した検量線より求めた53)

Ⅲ.実験結果および考察

3.Sesaminとsesamolinの薬物動態試験

化合物31および32投与群で顕著な病理的変化はみられなかった.血清および臓器 中の化合物 31 および32濃度を測定するにあたりそれらの濃度がそれぞれ ng/gおよ

びng/mLレベルと非常に低く高感度に検出する必要性があるためLC-MS/MSを使用

し,MRMにて良好なピークを得てそれぞれの濃度を測定した(Fig. 36).

Fig. 36 LC-MS/MS chart of cerebellum samples prepared from mice injected with sesamin and sesamolin

a) TIC of a cerebellum sample from a mouse injected with sesamin, b) MRM of a cerebellum sample from a mouse injected with sesamin, c) TIC of a cerebellum sample from a mouse injected

[M+NH4-C7H5O2-H2O]+ = m/z 233.05 [M+NH4]+ = m/z 372.20 Sesamin

a)

b)

(x100,000,000)

(x1,000,000)

(x100,000,000)

(x1,000,000)

Sesamolin c)

d)

[M-C12H12O5+H]+ =m/z 135.00 [M+NH4]+ =m/z 388.20

AbundanceAbundanceAbundanceAbundance

化合物31および32は1 mg/head投与において,血清中で38.3および174.8 ng/mL,

大脳中で28.9および88.7 ng/gおよび小脳中で6.4および67.7 ng/g検出された.ま た,5 mg/head投与においては,血清中でそれぞれ218.2および328.8 ng/mL,大脳 中で68.7および183.8 ng/gおよび小脳中で57.9および137.5 ng/g検出された.さら に,50 mg/head投与においては,血清中でそれぞれ281.2および624.3 ng/mL,大 脳中で54.9および305.8 ng/gおよび小脳中で96.0および232.6 ng/g検出された(Fig.

37).これは,31 および 32 をマウスに経口投与することにより,血液脳関門を通っ て脳に移行したことを示唆すると考えられる.化合物 31 に関しては,ラットを使用 した経口投与により血清中に移行すること54),また血液脳関門を介して脳に移行する という報告がある 55).しかし,化合物32 のマウスを用いた経口投与による脳への移 行確認は本研究が初めてである.

Fig. 37 Concentrations of sesamin and sesamolin in mouse a) serum, b) cerebrum and c) cerebellum

Data are shown as averages with error bars (standard error). Vertical axis: ng/mL indicates the concentration of the compounds in serum, and ng/g indicates the concentration of the compounds in cerebrum or cerebellum.

ゴマはその栄養価の高さから世界中で食され,栄養機能についての報告が多数ある.

なかでも抗酸化作用が着目され,その抗酸化作用の主成分が化合物31および32であ ることが報告されている56).化合物31および32の抗酸化力に関するPC12細胞を用 いた研究では,酸化ストレスによるアミロイド β の蓄積抑制効果が報告されている

57-59)

上記の報告に合わせて,本研究において31および32にβ‐セクレターゼ阻害作用 が明らかになったことで,アミロイド βの生成を抑制し,認知症予防に効果があるこ とが期待された.

Ⅳ.小括

本研究でゴマ中の31および32は,マウスを用いた薬物動態試験では,経口投与に より脳内まで移行することが確認された.生のゴマ中の31および32の含量はそれぞ れ 0.8~1.1%,0.1~0.7%であり,合計で 0.6~0.9%との報告がある 60).このように 31および32を多く含むゴマを毎日食することで認知症の予防に繋がる可能性がある ことが示唆された.古来,このゴマを積極的に食事に取り入れてきたインド,中国,

中東諸国の人々,また日本人もゴマを日常的に食することで認知症の予防に役立って いた可能性が示唆された.