ジボワールコート
アビジャン リベリア
ヤムスクロ(首都) ガーナ ギニア
ブルキナファソ マリ
去る
2
月20
日から24
日にかけて、西アフリ カのコートジボワール・アビジャンにおいて、日本政府の任意拠出事業によりコメと水産 養殖の生産振興を目的としたワークショッ プが開催されました。その概要を紹介します。
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ワークショップの目的
コートジボワールには、それぞれ政府のお
墨付きを得た
「国家コメ開発戦略」 「国家水
産養殖戦略」がありますが、大統領選後の 混乱に伴う政治不安でその実施が遅れてい ました。このようななか、今回のワークショップは、
幅広い関係者の参集のもと、戦略の中での 優先分野は何か、そこにどのようなプロジェ クトが必要か、ということについて議論し、
FAO
技術協力局事業調整官 鶴崎一郎コートジボワールのコメ生産と
のプロジェクトでどこまでそれがカバーされ ているか(リソース分析)
」 「
どの部分に支援が 足りていないか(GAP
分析)」を検討したう
えで、今後どこに焦点を当てるべきかの優 先分野を特定します。そのうえで、その優 先分野における具体的なプロジェクト案を 話し合いました。こうした分析・議論の手 法は、CARD
(アフリカ稲作振興のための共同 体)で行われているやり方を採用させていた だいたものです。■
また、この日本の任意拠出事業は「南南協 力」がひとつの大きな特徴で、フィリピンか ら来たコメの専門家、ベトナムから来た養 殖の専門家がそれぞれの分科会に加わり、
合意を得ることを目的に行われました。
ワークショップの概要
ワークショップには、コメ関係者・養殖関係 者ともに行政、民間、農家を合わせて約
30
名が参加し、5
日間にわたって行なわれまし た。
1
日目の午前中は、開会式に続き、全体 会合で「コメ戦略」「養殖戦略」について総
合討議を行い、午後からはコメ、養殖のそ れぞれの分科会に分かれての議論が行われ ました。それぞれの分科会とも、種子(種苗)、水 管理、栽培技術、機械化、マーケティング といった個々の小セクターごとに、
「戦略は
何を目指しているものか(ニーズ分析)」 「現行
左上:ティラピアの餌。原料を調達して自前 で配合していた。左下:出荷できるサイズ
(20cmくらい)になったティラピア。右:ティ ラピアの養殖池。すべてアビジャン郊外のバ ンジェビル(Bingerville)にて。
上:開会式の来賓の方々。向かって右から2 人目がコートジボワールの動物水産資源大臣、
3人目が農業大臣。下:コメ分科会にて、議 論の進め方を熱心に説明するCARDのコンサ ルタント。
全体会合の風景。共通の議題 についてはコメ・養殖双方の関 係者が一堂に会し議論した。
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各々の国における取り組みを発表するともに、
グループ討議で適宜助言を行いました。参加 者は、アジアの進んだ技術や制度に非常に関 心を寄せていました。
3
日目の午後には、現地視察を行いました。机上の議論だけではなく、実際に現場では何 が問題になっているのかというイメージを持っ てもらうためです。
■
ほぼ丸
4
日間における熱心な議論の結果、コ メ・養殖両方の分科会とも、次のようなプロジ ェクト案に合意することができました。コメ
①用水関連インフラのリハビリ・維持、②資 金へのアクセス、③資材へのアクセス、④マー ケティングへの支援、⑤機械化への支援 養殖
①施策手法の強化、②中小事業家に対する 資材・マーケティングへの支援、③内政混乱 により影響を受けた地域の復興
異なった関係者がそれぞれ知恵を出し合い ながら “具体的に何をすべきか” という点に合 意した意義は大きいと思います。
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これからの動き
しかし、これで終わりではありません。プロ ジェクト案は今後、肉付けされ、政府の予 算当局やドナーと交渉して予算を勝ち取り、
実施されなければなりません。
両分科会とも、最後に「今後の進め方」
のセッションを設け、政府が責任を持ってプ ロジェクト案を肉付けし再度関係者に諮る、
など、今後の役割分担について話し合いま した。
このワークショップで生まれたプロジェク トの卵が、将来、実際のプロジェクトとして 育ち、同国の食料安全保障に寄与すること を切に願っています。
左:簡易脱穀機。右:水田風景。日 本やアジアの風景とあまり変わらない。
P h o t o J o u r n a l
C o t e d ’ I v o i r e
現地のコメ普及員(右端は筆者)。
現地視察でコメ農家の説明を 熱心に聴く参加者。コートジボ ワール南部のアグボビル(Agbo ville)にて。
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