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コーシー列 29

ドキュメント内 I, II 1, A = A 4 : 6 = max{ A, } A A 10 10% (ページ 39-43)

さて,世の中の収束する数列の中には,単調列でないものもたくさんある.そのようなものが本当に収束するか を判断するには,前節の単調列の定理だけでは足りない.そもそも,ある数列が収束する事の必要十分条件は何な のだろう?この答えは以下の「コーシー列」で与えられる(コーシー偉い!)

定義 3.4.1 (コーシー列) 数列an が以下の性質を満たすとき,これを コーシー列(Cauchy sequence)という.

任意の(小さい)² >0に対し,(十分大きな)整数N(²)がとれて,

すべてのm, n≥N(²)に対して ¯¯am−an¯¯< ² とできる. (3.4.1)

(注)この定義そのものがなかなか理解しにくいようだ.「次の数列がコーシー列かどうか判定せよ」というような,

定義そのものを訊く問題でさえ,テストになると珍解答が続出するので要注意である.

n ε2

ε1

N(ε1) N(ε2)

すぐには呑み込めないかもしれないが,この定義と次の定理の意味を各自で良く理解してほしい.収束先がわか らないような数列を考えるのだから,収束先とanの差を計算する事はできない.それでも,anamの差(のm, n が無限大になった極限)を見れば収束するかどうかが判定できる,というのである.これは実用上,非常に重要だ.

定理 3.4.2 (コーシーの収束条件;教科書の定理11,非常に大事) 数列anが(何かの値に)収束することと,

anがコーシー列であることは同値である.つまり,数列が収束することの必要十分条件は,その数列がコー シー列であることだ.

コーシー列の応用(重要性)

今までにも強調した通り,ある数列が「収束する」ことと「コーシー列である」ことは同値だ.だから,「コーシー 列」であるかどうかは,収束するかどうかの 最強の判定条件 といえる.実際,ある数列が収束するかどうかの判定 のほとんどはコーシー列かどうかで行うと言ってもよい.(有界単調列かどうかの判定の方が簡単だが,世の中それ ほど甘くはなく,問題の数列が単調である事はそんなにない.前節でやったlim supとlim infが役に立つ事はかな りある.)

29教科書の2.4節に相当.ぼんやり聞いているとコーシー列の概念はなかなかわからないだろう.²-δに次ぐこの科目の鬼門だから,心する ように.教科書もちゃんと読むこと

3.4.3 「コーシー列」の定義を理解する問題.以下の数列はすべて収束する数列であるから定理3.4.2によれば、

コーシー列のはずである.そこで,コーシー列の定義に従って,以下の数列のそれぞれがコーシー列であることを 示せ.特に,N(²)をどのようにとれば十分か,できるだけギリギリの評価を与えよ.

an:= 1

n bn:= 1

n2 cn:= (1)n

n dn:= (1)n

√n

3.4.4 「コーシー列」または「有界単調列」の考えを用いて,次の数列{an},{bn},{cn}が収束する事を証明せ よ(αは正の定数).また,cnの極限値を求めよ.

an:=logn+

n k=1

1

k bn:=

n k=1

(1)k1 k c1:= 1, n≥1 では cn+1:= 1

2 (

cn+ α cn

)

正直,cnはそこそこ難しいと思うが,ともかくan, bnはできるようになろう.

3.4.5 以下の(例)のそれぞれが収束する事を実際に証明せよ.(3.2.4)の例にも挑戦してみよう.コツがわかれ

ば,そんなに難しいものではないですよ.

(例)コーシー列の考えを使うと収束が証明できるものの典型例(コーシー列を使わなければ証明できないとい う訳ではないが)を挙げておこう.

既に言ったけど,exのテイラー展開ex=

n=0

xn

n!30すべての実数xで収束する.x >0なら有界単調列の 性質を用いても証明できるが,コーシー列になっていることを確かめた方がすべてのxができて簡単だ.と はいえ,実際にコーシー列になっていることを示すには,ある程度の計算力が必要だ.腕に覚えのある人は挑 戦してみるとよい.

sinx=x−x3!3 +x5!5 x7!7 +· · · もすべての実数xで収束する.この場合もコーシー列になっていることを確 かめるのが簡単だろう.

0< r <1を定数とする.数列{an}が,|an+2−an+1| ≤r|an+1−an|(n= 1,2,3, ...)を満たすとき,この 数列はコーシー列であって,従って収束する.(この例をより一般の空間に拡張したものは「縮小写像の原理」

とよばれ,関数解析の強力な手法の一つになっている.)

収束列ならコーシー列,の証明

これは簡単だ.数列an の収束先をαと書くと,収束の定義から,勝手な(小さな)² >0に対してN(²)をとっ て,全てのn > N(²)では|an−α|< ²/2 とできる.つまり,m, n > N(²/2)では

|am−α|< ²

2, |an−α|< ²

2 (3.4.2)

となっている訳だ.でも三角不等式から,このようなm, nでは

|am−an|=¯¯(am−α) + (α−an)¯¯≤ |am−α|+|α−an|< ² 2+ ²

2 =² (3.4.3)

が成り立つ.これはコーシー列の条件(3.4.1)が成り立っていることを意味する.

30この段階では,これがなぜexかは理解していないことになっている.だから,左辺のexは単なる記号だと思ってください

コーシー列なら収束列,の証明

こちらの証明が大変だ.実数の連続性,上極限・下極限を延々とやってきたのは,この証明をやりたかったから である.証明の概略を述べるが,上極限,下極限がうまく使われているところを噛み締めて欲しい.

1.まず,コーシー列は有界な数列である.これは簡単だから,各自で証明すべし.

2.有界な数列は有限の上極限,下極限をもつ(定理3.3.2)から,これを β:= lim inf

n→∞ an, γ:= lim sup

n→∞ an (3.4.4)

と書こう.もちろん,β ≤γである.以下では記号を簡単にするため,(3.3.2)で定義された数列も考える,つまり,

bN := inf

mNam,cN := sup

nN

an

3.定理3.3.2によれば,β =γ を言えば十分であるから,これを目指そう.そのために{an}がコーシー列であ

るとの条件を使う.コーシー列だから,

∀² >0, ∃N (

`, m≥N =⇒ |a`−am|< ² )

(3.4.5) が成り立っているが,最後の絶対値を外した

∀² >0, ∃N (

`, m≥N = a`−am< ² )

(3.4.6) も当然なりたつ.

4.最後の不等式の両辺でN, mを固定したまま`≥N に関するsupをとると,sup

`N

a`=cN であるから,

∀² >0, ∃N (

m≥N = cN−am≤² )

(3.4.7) が得られる.

0.今度はここでm≥Nに関するinfをとってみると inf

mNa`=bN であるから,

∀² >0, ∃N cN −bN ≤² (3.4.8)

が得られる.

5.さて,常にcn ≥bnであることは何回も注意した.また,{bn}は広義の単調増加,{cn}は広義の単調減少 であるから,{cn−bn}は広義の単調減少である.従ってあるNにてcN −bN ≤²であれば,すべてのn≥N で もcn−bn≤²である.つまり,(3.4.8)から

∀² >0, ∃N (

n≥N =⇒ |cn−bn| ≤² )

(3.4.9) が結論できる.これは lim

n→∞(cn−bn) = 0 を²-Nで書いたものに他ならず,β=γが結論できる.

最後に,これまでの数列の収束(n→ ∞)に関する収束条件を,関数の収束x→aに書き直した定理を挙げて おこう.

定理 3.4.6 (コーシーの収束条件;教科書の定理11,非常に大事) lim

xaf(x)が存在するための必要充分条件は,

f(x)が以下のコーシーの条件を満たす事である:

(C)  任意の² >0に対してδ(²)>0がとれて,0<|x−a|< δ(²)かつ0<|y−a|< δ(²)なる    任意のx, yに対して|f(x)−f(y)|< ² が成り立つ

証明:

xlimaf(x)が存在するならばコーシーの条件が成り立つのは,数列の場合の定理3.4.2の証明と同様にできるから,

略(各人でちゃんと確かめる事!).

コーシーの条件(C)が成り立っておれば lim

xaf(x)が存在することの証明をこれから行おう.そのために,以前に 簡単に触れた定理2.3.1を用いる.定理2.3.1によると,lim

xaf(x) =bということは,

an6=aかつ lim

n→∞an =aであるすべての数列{an}について lim

n→∞f(an) =bである と同値であった.そこで,上が成り立っている事を証明しよう.

さて,コーシーの条件(C)は,an6=aかつ lim

n→∞an=aである数列{an}をもってくると,数列{f(an)}がコー シー列になっている事を保証する.よって,lim

n→∞f(an)は存在する.

ところがこれで終わりではない.上では数列{an}を決める毎に lim

n→∞f(an)が存在することが保証されたけども,

この極限が{an}の取り方に依らないことも証明しなければ,定理 2.3.1をつかうわけに行かないからだ.しかし,

極限が{an}の取り方に依らないことは,またもやコーシーの条件(C)から簡単に証明できる.(例えば,極限が2 つ以上あったとして,これが(C) に矛盾する事を示せば良い.)

4 連続関数

さて,実数の連続性やコーシー列をやったので,連続関数をちゃんと扱えるようになった.まずは高校でもやっ たはずの定義を思い出そう.

ドキュメント内 I, II 1, A = A 4 : 6 = max{ A, } A A 10 10% (ページ 39-43)

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