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第3章 日本企業と欧米企業との比較分析

2. グローバル企業の海外展開の歴史と戦略

(2) 具体的なグローバル企業の戦略

次に、M&A 等を通じて、事業領域や海外拠点の拡大を図っている企業の例として、

ネスレとハイネケン・ホールディングの歴史を取り上げる。

① ネスレ

ネスレは、1866 年創業のスイスの食品企業である。1900 年代前半から海外進出を開 始し、1913 年には日本支店を開設している。2012 年時点の主要製品は、飲料(構成比:

21.7%)、水(同:7.8%)、乳製品・アイスクリーム(同:20.1%)、栄養関連(同:

11.6%)、調理用食品・調味料(同:15.7%)、チョコレート・菓子(同:11.3%)、

ペットケア(同:11.7%)である。

同社は古くより欧米をはじめとする外国企業の買収を実施してきた。2000 年以降は、

特に水、栄養関連、アイスクリーム事業の買収を積極的に展開している。栄養関連で は、2007 年に米国のガーバー・プロダクツから乳幼児食品部門を買収(55 億ドル)し、

北米及び南米市場の取り込みに成功。また、2012 年 11 月には、米国ファイザー・ニュ ートリションの買収(118.5 億ドル)により、成功著しい新興国における乳児用栄養食 品事業の拡充を実現した。このように、買収により収益性の高い市場への参入や事業 拡張を着実に実施してきている。

図表 図表 図表

図表 3333----5555:グ:グ:グローバル食品企業の:グローバル食品企業のローバル食品企業のローバル食品企業の海外展開と海外展開と海外展開と M海外展開とMMM&&&&AAAA 実績実績実績実績(ネスレ)(ネスレ)(ネスレ) (ネスレ)

年号 歴史と主なM&A

1866 前身の「Anglo-Swiss Condensed Milk Company」設立 1867 前身の「Sociéité Anonyme Farine Lactée Henri Nestlé」設立

1905 両社合併。「Nestlé and Anglo-Swiss Condensed Milk Company」と改称

1900年代前半 第一次世界大戦後までに米国を初めとする海外での事業に着手

1929 ペーター・カイエ・コーラー・チョコレートを吸収合併 1960 イギリスのクロス&ブラックウェル(調理用食品)を買収 1973 米国のストウファー(冷凍食品)を買収

1977 「Nestlé S.A.」と改称

1985 米国のカーネーション・カンパニー(乳製品、アイスクリーム等)を買収 1988 イタリアのブイトーニ・ペルジーナグループ(パスタ、調理用食品等)を買収 1988 イギリスのロントリー(チョコレート、菓子)を買収

1992 フランスのペリエグループ(ミネラルウォーター)を買収 1993 イタリアのフィニタルジェル(アイスクリーム、冷凍食品)を買収 1994 米国のアルポ(ペットフード)を買収

1998 イギリスのスピラーズ(ペットフード)を買収 2001 米国のラルストン・ピュリナ(ペットフード)を買収 2002 米国のシェフ アメリカ(冷凍食品)を買収 2003 米国のドライヤーズ(アイスクリーム)を買収 2004 フィンランドのバリオからアイスクリーム事業を買収

ドイツのワグナー(冷凍食品)を買収

オーストラリアのムサシ(エナジー飲料)を買収 フランスのプロティカ(プロテイン食品)を買収 2006 アンクル・トビー(スナック、スープ、シリアル)を買収

スイスのノバルティスのヘルスケアニュートリション事業を買収 米国のガーバー・プロダクツ(ベビーフード)を買収

スイスのヘニエ(ミネラルウォーター) を買収

2008 韓国のプルムウォンウォーター(ミネラルウォーター)を買収 2009 米国のスウィートリーフティー(紅茶)を買収

2010 米国のクラフトフーズの冷凍ピザ事業を買収

2012 米国のファイザー・ニュートリション(乳幼児栄養製品)を買収 2005

2007

出所:ネスレ社ウェブサイトより大和総研作成 近年、成長市場を狙っ

たM&Aを活発化

図表図表

図表図表 3333----6666:::商品棚を占めるネスレの商品:商品棚を占めるネスレの商品商品棚を占めるネスレの商品商品棚を占めるネスレの商品

(左)フィリピン、(右)マレーシア、

出所:大和総研撮影

② ハイネケン・ホールディング

ハイネケン・ホールディングは、1864 年創業のオランダのビールメーカーである。

2012 年時点で、同社は 178 ヵ国で商品を展開し、70 ヵ国に拠点を有している。

「ハイネケン」ブランドのビール製造は 1873 年に遡る。同社は 1900 年にアフリカ 向けの輸出に着手し、海外向けの販売を開始した。1931 年には、シンガポールの Fraser

& Neave とマレーシアに合弁企業の Malayan Breweries(後の Asia Pacific Breweries)

を設立した。翌年にはアジア地域で高いシェアを誇るタイガービールの製造を開始し た。その後、同社は欧州を中心に各国のビールメーカーを次々に買収し、欧州でのシ ェアを拡大。また、2010 年には、中南米最大の飲料大手であるフォメント・エコノミ コ・メヒカーノ(FEMSA)のビール事業を買収し、中南米の新興国市場へ事業を拡張し た。

さらに、2012 年 8 月には同社も株式を保有していたマレーシアの Asia Pacific Breweries(APB)の買収を完了。これまで、アンハイザー・ブッシュ・インベブ等の 大手酒類メーカーから後れをとっていたアジア新興国における売上シェアを伸ばすべ く、本買収に踏み切った。Euromonitor によれば、APB 取得後の 2012 年のハイネケン のシェアは、アジア各国で劇的に上昇している(図表 3-8)。同社のターゲットブラン ドを絞り込んだ戦略的な買収の実践が奏功した結果といえる。

新興国のビール事業 買収を積極的に実施

APB買収によりアジア 各国でのシェアが上 昇

図表図表

図表図表 3333----7777:::グローバル食品:グローバル食品グローバル食品グローバル食品企業の企業の企業の企業の海外展開と海外展開と海外展開と M海外展開とMMM&&&&AAAA 実績実績実績実績(ハイネケン)(ハイネケン)(ハイネケン) (ハイネケン)

年号 歴史と主なM&A

1864 Gerard Adriaan Heinekenがアムステルダムでビール会社を買収 1873 ハイネケンとしてビール製造を開始

1900 アフリカへの輸出を開始

1931 Fraser&Neave(シンガポール)との合弁でマレーシアにMalayan Breweriesを設立 1932 Malaysia BreweriesがTiger Beerの製造を開始

1933 アメリカへの輸出を開始(アルコール禁止令の解禁)

1937 インドネシアでハイネケンの製造を開始

1939 オランダ証券取引所(現 アムステルダム証券取引所)へ上場 1946 ナイジェリアへ進出

1968 オランダの大手ビール会社Amstelを買収 1974 イタリアのビール会社Dreher Groupを買収 1985 アイルランドのビール会社Murphy'sを買収

1991 ハンガリーのビール会社Kamarom Breweryを買収(マジョリティー取得)

2003 オーストリアのBrau Unionの東欧諸国での事業を買収 2004 オーストラリアで合弁設立

2007 チェコのKrusovice Breweryを買収 チェコのDrinks Unionを買収 ルーマニアのBere Muresを買収

スコットランドの酒類メーカーScottish & Newcastleを買収 2009 インドで合弁設立

2010 メキシコ飲料大手FEMSAのビール事業を買収 2011 ナイジェリアで5社、エチオピアで2社を買収

2012 マレーシアのAsia Pacific Breweriesの全株式を取得 2008

注:Asia Pacific Breweries の前身

出所:ハイネケン社ウェブサイト、Annual Report 等より大和総研作成

図表図表

図表図表 3333----8888:::ハイネケンのアジア諸国における企業占有率の変化(:ハイネケンのアジア諸国における企業占有率の変化(ハイネケンのアジア諸国における企業占有率の変化(2011ハイネケンのアジア諸国における企業占有率の変化(201120112011 年→年→年→年→2012201220122012 年)年)年)年)

3.5

10.7

5.7 3.8

8.9

49.3 48.6

40.7

4.2

12.6

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0

インドネシア シンガポール マレーシア タイ ベトナム

(%) 2011年 2012年

注 1:データはビール市場におけるハイネケン社の企業占有率の変化を示したもの

注 2:ハイネケン社は、2009 年までインドネシアにおいて 50%以上のシェアを有していたが、アジア事業 の再編策として APB へのビンタンビールの株式売却を実施したこと等により、2010 年にはシェアを 下げていた

出所:Euromonitor International より大和総研作成