(Neary NM. J Clin Endocrinol Metab 2004;89:2832-2836.) (Cummings DE, et al. Diabetes 2001;50:1714-1719.)
42
代わっています。Dyspepsiaという言葉は、い わゆる消化器症状ととっていただければいい と思います。要するに、「潰瘍がないけれども Dyspepsia、消化器の症状がある」というもの です。
そこで、グレリンがこの FDにどう影響して いるかというのを見ます。胃酸の分泌に作用 するガストリンというホルモンとグレリンを、
ラットを使って見てみますと、グレリンは、ガ ストリンに負けないくらい酸分泌亢進作用があ ります。ここまで強いというのは、恐らく今ま で気づいていなかったのではないかと思いま す。ガストリンと同等の酸増加作用がある。
グレリンを注射すると、胃の収縮運動が活 発化していることもわかります。糖尿病性胃不 全麻痺の人、胃腸が動かないという人でも、
グレリンで動きが良くなるということです。特 発性胃不全麻痺の人も、グレリンを注射する と胃排出能が良くなってくるということがグレ リンの作用としてあります。
FD 症状、もたれ感の症状もグレリンを注射 すると良くなるということで、グレリンは、食 欲だけではなくて、胃の動き、胃酸分泌、そう いうものも良くしていることがわかります。
Dyspepsia の症状もよく改善していることがわ かります。
また、ピロリ菌の感染によって起きることに もグレリンが影響しているかもしれないとい う考えに、私たちも同感しています。ピロリ 菌がいる人といない人でグレリンの血中濃度 を測りますと、明らかに、グレリンの血中濃度 はピロリ菌がいない人が高いことがわかりま す。
トータルのグレリンの値もピロリ菌がいると 低くなっています。いない人は、正常な状態 で高いままです。ですから、ピロリ菌感染者 ではグレリン分泌は低下していることが考えら れます。
そして、ピロリ菌陽性群と陰性群の集団で 胃粘膜萎縮の程度を見ると、ピロリ菌がいな い人の場合はほとんど萎縮のない胃粘膜でし た。逆にピロリ菌がいる人は、胃粘膜は中等 度から高度な萎縮のある集団でした。つまり、
胃粘膜萎縮とともにグレリンは低下している のではないかと考えられます。
ストレスでも胃の動きが落ちるのは、われわ れも日常的に経験することですが、それ以外に、
胃粘膜萎縮によってグレリンが減少して、FD 症状、食欲低下があるかもしれません。治療 するには、ピロリ菌がいた場合は、除菌治療 をして食欲を回復させることも1つの可能性と してあると思います。
■
やかび・こうじ東京大学医学部卒業、東京大学医学部第三内科入局後、ミシガン大学消化器内科に留学。帰国後、帝京大学第3内科助教授、同学の市 原病院副院長補佐。平成 16年からは埼玉医科大学医学部内科教授、同時に同学の総合医療センター消化器・肝臓内科の診療科長も兼 任。日本消化器学会評議員、消化器内視鏡学会評議員・指導員、日本内科学会理事、日本潰瘍学会理事等を務める。
S e c t i o n 3
肥 満 と 病 気 の 相 関
関 係
肥満はさまざまな病気の原因 とされてきましたが、実態はど うなっているのでしょうか。肥 満と死亡率の関連、肥満と肥 満症の違い、痩せ過ぎの弊害 について、最新の知見を紹介 し、日本独自の診断基準が物 議をかもすメタボリックシンド ロームをはじめ、肥満と疾病 について、疫学調査の結果な どから問題提起します。
44
われわれはこれまで、さまざまな病気の原因 究明とそれぞれに対する有効な予防法の開発 を目的として、いろいろな研究を行ってきまし た。ここでは、日本のさまざまな地域に住む 40〜 59歳の男女約4万人を対象とした 1990 年から 10年以上にわたる疫学調査の結果に 基づいてお話ししたいと思います。
欧米では、肥満は確かに心臓病や糖尿病、
がんなどの主な原因の1つになっています。し かし日本では、肥満の程度や健康障害の内容 が欧米とは大きく異なっています。われわれが 行った10年以上にわたる追跡調査では、肥満 と死亡率の関係ではこれまで望ましいと考え られていたBMI 19.0〜22.9で死亡率が最も低
国立がんセンター 予防研究部長