1.各種の産業政策
グリーンパワーIC 関連技術は、第三期科学技術基本計画(2006~2010 年度)では、情報 通信分野とナノテクノロジー・材料分野に記載されている。その通信分野では、重要な研究 開発課題の詳細として、非シリコンデバイスの一つとしてパワーデバイスを挙げ、「高効率イ ンバータの開発」と「高効率スイッチング電源の開発」を進めるとしている。さらにナノテ クノロジー・材料分野では、重要な研究開発課題の中の研究開発目標の一つとして、「2011 年までに、シリコントランジスタにとって代わる、炭化シリコンのナノサイズ成膜技術を活 用したパワーデバイスにより高効率インバータを実現し、また、炭化シリコンの上にナノサ イズの化合物半導体の薄膜を形成することでシリコン半導体の間接遷移型半導体とは動作原 理の全く異なる直接遷移型半導体を実現し、350GHz 級の高周波デバイスを実現する」として いる。
第四期科学技術基本計画(2011~2015 年度)でも、省エネ化のため、超低電圧デバイスと 高効率パワーエレクトロニクスの研究開発を経済産業省が行うことが盛り込まれる見込みで あり、2020 年までにパワー半導体の電力損失を 1/100 にすることを目標としている5。
経済産業省が 2009 年 4 月に策定した七つのイノベーションプログラムにおいて、「IT イノ ベーションプログラム」と「エネルギーイノベーションプログラム」の中に「グリーン IT プロジェクト」が含まれている。また「ナノテク・部材イノベーションプログラム」と「IT イノベーションプログラム」で「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」
が進められている。また「エネルギーイノベーションプログラム」・「ナノテク・部材イノベ ーションプログラム」・「IT イノベーションプログラム」として、「窒化物系化合物半導体基 板・エピタキシャル成長技術の開発」が進められている6。
経済産業省は 2008 年 3 月に「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」を発表した。その 中で、2050 年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半減するために、21 の技術が挙げられ ており、パワーエレクトロニクスは部門横断技術の一つになっている。開発すべき技術、実 用化時期については、SiC 系、GaN 系パワーデバイスでは 2015 年頃の実用化、ダイヤモンド 系パワーデバイスでは 2020 年頃の実用化を目指すとしている7。
2009 年 6 月に産業技術総合研究所(以下、産総研)、物質・材料研究機構及び筑波大学が 中核となって、「つくばイノベーションアリーナ」が形成された8。「つくばイノベーションア リーナ」では、世界的なナノテク研究拠点の構築を目指すために、経済産業省と文部科学省 が連携して、ナノテクの産業化と人材育成を一体的に推進している。六つのコア研究領域が あり、パワーエレクトロニクスはその一つである。
5
http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu91/haihu-si91.html
6
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80516a04j.pdf
7
http://www.enecho.meti.go.jp/policy/coolearth_energy/coolearth-gaiyou.pdf
8
http://tia-nano.jp/
産総研では 2010 年 4 月に「先進パワーエレクトロニクス研究センター」を設立した9。こ こでは、電力エネルギーにおける省エネルギー技術と新エネルギーの技術導入のための高効 率電力変換技術等、電力エネルギー制御・有効利用のために、SiC や GaN 等のワイドバンド ギャップ半導体による、パワースイッチングデバイス及び電力変換器の技術確立と実証を目 的としている。
上記のほかに、民間主導の活動として、「技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス技 術開発機構(FUPET)」と「SiC アライアンス」がある。
FUPET は、2009 年 8 月に 9 機関で設立され、NEDO から「次世代パワーエレクトロニクス技 術開発(グリーン IT プロジェクト)」の研究を受託して活動を開始した。2010 年 5 月には、
デバイスメーカー中心の組合であった FUPET が、材料メーカーや自動車メーカー等と共同で、
経済産業省の「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」に応募し、採択さ れたことを契機に、これら共同提案企業を組合員に加え、川上産業から川下産業に至るまで の企業、大学、公的研究機関が結集する 25 機関の組合に拡大された。
これに加えて 2010 年 5 月に、拡大 FUPET 組合員のみならず、SiC に関連する企業や大学な ど産学官が幅広く集結するオール・ジャパンの枠組みとして、SiC アライアンスが発足した10。 このアライアンスでは、世界トップを目指した先端的研究により、内閣府が進める「最先端 研究開発支援プログラム」における超高耐圧 SiC デバイス開発を目指したプロジェクトや、
応用物理学会の「SiC 及び関連ワイドバンドギャップ半導体研究会」の活動を含め、産官学 それぞれが行う全ての SiC 研究開発を俯瞰し、相互連携を図ることを目的としている。
2.技術戦略マップ 2010 との対応関係
経済産業省が 2010 年 5 月にまとめた「技術戦略マップ 201011」において、パワーデバイ スが関連する分野としては、情報通信における①半導体分野及び④ネットワーク分野、ナノ テクノロジー・部材の②部材分野及び④グリーン・サステイナブルケミストリー分野、並び に、エネルギーの①エネルギー分野がある。これらのパワーエレクトロニクスに関係する部 分に記載された導入シナリオ、技術マップ及び技術ロードマップから、この分野の現状と今 後の研究開発目標などを調査した。
技術戦略マップ 2010 の改訂の主なポイントの一つとして、グリーンイノベーションへの 対応がある。これはグリーンイノベーションに関わる昨今の動向を踏まえ、エネルギー分野 において、技術ロードマップの中から主要な 18 の技術分野を抽出し、技術内容や研究開発動 向を掘り下げて解説している。
情報通信における①半導体分野では、半導体を情報家電、自動車、産業機械、医療器械等、
様々な製品の付加価値を高める非常に重要な産業のコア部品と位置付け、2010 年から 2019 年までの 10 年間の技術ロードマップを作成している。
技術マップにおいては、パワーデバイスは non-CMOS 技術のディスクリートデバイスに位 置付けられ、Si 系パワーデバイスとワイドバンドギャップ半導体パワーデバイスにカテゴリ
9
http://unit.aist.go.jp/eserl/ci/index.html
10
http://www.sicalliance.jp/
11
http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/kenkyu_kaihatu/index.html#shokai
ー分けされている。最重要課題としては Si 系を超える超高速、大パワー密度、低消費電力、
新機能等を有することを期待されている。
技術ロードマップでは、SiC 系パワーデバイスの MOSFET の定格電流は 2012 年に [email protected]、
2016 年に [email protected] を目標とし、重要課題は大容量化、高耐圧化としている。
さらに、情報通信の半導体分野以外では、④ネットワーク分野で超高周波高出力デバイス として一部触れられている。ここでは GaN on SiC が 2009 年、GaN on Si が 2010 年、ダイヤ モンドが 2016 年頃とされている。
情報通信の半導体分野のパワーデバイスの技術ロードマップを図 5-1 に示す。
ナノテクノロジー・部材の②部材分野では、ニューガラス分野にパワーデバイスがあり、
技術マップでは情報家電分野の半導体関連部材にパワーデバイス部材がある。求められる機 能を発現する高度部材として、窒化物半導体/SiC/ダイヤモンド/CNT パワーデバイス等が ある。技術ロードマップでは、結晶成長で、SiC、GaN、ダイヤモンド等が挙げられている。
SiC 基板転位密度は、2010 年に 1000/cm2、2015 年に 100/cm2がスペックとされている。
ナノテクノロジー・部材の④グリーン・サステイナブルケミストリー分野では、IT 向け化 学品(電子材料)として SiC、GaN 等のワイドバンドギャップ半導体材料が研究課題として挙 げられている。
図 5-1 情報通信の半導体分野のパワーデバイスの技術ロードマップ
分野構造 評価パラメータ 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
DRAM ハーフピッチ(nm)→ 45 40 36 32 28 25 22.5 20 17.9 15.9
Flash メモリハーフピッチ(nm)→ 32 28 25 23 20 18 15.9 14.2 12.6 11.3
大項目 中項目 小項目
重要課題
ロジック M1 ハーフピッチ(nm)→ 45 38 32 27 24 21 18.9 16.9 15 13.4
ウエハ 口径(インチ) 6 8
IGBT の低損失化
(薄ウエハ化) 厚さ(μm) 85 65
SiC パワー
デバイス MOSFET の低損失
化(SJ 型) オン抵抗(mΩcm2) 5@600
40@1200
2.5@600 15@1200
口径(インチ) 4 5
ウエハ 転位密度(1/cm2) <10000 5000 1000
チャネル移動度 cm2/Vs 50 100
ゲート酸化膜信頼
性 寿命(年)@温度(℃) 30@150 30@250
MOSFET オン抵抗
(mΩcm2)@耐圧(V) 10@1200 5@1200 3@1200
低損失化・高耐圧
化 SBD Vf(V)@耐圧(V)
(200A/cm2) 1.4@1200 2.2@3000
MOSFET 電流(A)
@耐圧(V) 10@1200 30@600 30@1200
60@600 60@1200
100@600 100@
1200 大容量化・高耐圧
化 IGBT 電流(A)
@耐圧(V)
20@
>100000
100@
>100000 SiC
パワー デバイス
材料・プロセス・
デバイス技術 材料・デバイス構造
口径(インチ) 4
ウエハ 転位密度(1/cm2) 10000
ヘテロエピ基板 GaN/Si 基板口径
(インチ) 8
低損失
スイッチングデバイス オン抵抗(mΩcm2)@
耐圧(V)
1@600 GaN
パワー デバイス
材料・プロセス・
デバイス技術 材料・デバイス構造
高出力パワー密度 変換器出力パワー
密度(W/cm3) 10 15 20 30
回路・制御技術 回路・制御技術
ディスクリートデバイス パワーデバイス
回路・制 御・実装 技術
実装技術 高温実装
出典:技術戦略マップ 2010 技術ロードマップから関連部分を抜粋(経済産業省)
SiC-SBD SiC-MOSFET
SiC-IGBT
GaN・スイッチングHEMT:ノーマリON
ノーマリOFF
ワイドバンドギャップ半 導体 デバイス特 性 に適した回 路・制 御技 術
デバイス温度 225℃動 作 実装 技 術