調査方法は既往調査と同様とし、平成 23 年度と同じ箇所に調査ライン(長さ
100m×幅5m)を15本設定し、確認個体数を記録した。調査ラインを図 3.2-29
に示す。
なお、現地調査においては、調査中に成虫が周辺に飛散し近隣ラインのデータ が偏る可能性が考えられるため、隣り合ったラインは連続して調査しないように 配慮した。
写真 3.2-7 カワラハンミョウ(成虫)・ヤマトバッタ調査実施状況
図 3.2-29 カワラハンミョウ(成虫)・ヤマトバッタ調査ライン
133
2) カワラハンミョウ(幼虫)
調査方法は既往調査と同様とし、平成23年度とほぼ同じ箇所に、堤防より海に 向かう方向に幅5mのラインを設定し、カワラハンミョウ幼虫の巣穴を1m間隔(5
㎡=1m×5m)毎に計数した。調査ラインの基点及び終点を表3.2-38及び図 3.2-30 に示す。
写真 3.2-8 カワラハンミョウ(幼虫)の調査実施状況
表 3.2-38 カワラハンミョウ幼虫調査ラインの起点と終点 ライン
No.
起点 終点
緯度 経度 緯度 経度
L-01 N34°46' 24.5" E136°32' 36.2" N34°46' 23.5" E136°32' 38.9"
L-02 N34°46' 23.1" E136°32' 35.3" N34°46' 22.0" E136°32' 38.0"
L-03 N34°46' 21.6" E136°32' 34.5" N34°46' 20.6" E136°32' 37.2"
L-04 N34°46' 20.2" E136°32' 33.6" N34°46' 19.1" E136°32' 36.3"
L-05 N34°46' 18.7" E136°32' 32.6" N34°46' 17.7" E136°32' 35.3"
L-06 N34°46' 17.3" E136°32' 31.8" N34°46' 16.3" E136°32' 34.5"
L-07 N34°46' 15.9" E136°32' 30.9" N34°46' 14.8" E136°32' 33.6"
L-08 N34°46' 14.4" E136°32' 30.0" N34°46' 13.4" E136°32' 32.7"
L-09 N34°46' 13.0" E136°32' 29.1" N34°46' 11.9" E136°32' 31.8"
L-10 N34°46' 11.5" E136°32' 28.2" N34°46' 10.5" E136°32' 30.9"
L-11 N34°46' 10.1" E136°32' 27.3" N34°46' 9.1" E136°32' 30.0"
L-12 N34°46' 8.7" E136°32' 26.4" N34°46' 7.6" E136°32' 29.1"
L-13 N34°46' 7.2" E136°32' 25.5" N34°46' 6.2" E136°32' 28.2"
L-14 N34°46' 5.8" E136°32' 24.6" N34°46' 4.7" E136°32' 27.3"
図 3.2-30 カワラハンミョウ(幼虫)調査ライン
135
3) エサキアメンボ
調査範囲のうち図 3.2-31 に示すエサキアメンボの生息環境である水域を踏査 し、目視観察により生息確認を行った。
写真 3.2-9 エサキアメンボ調査実施状況
図 3.2-31 エサキアメンボ調査範囲
137
(4) 調査結果
1) カワラハンミョウ(成虫)・ヤマトバッタ
カワラハンミョウ(成虫)・ヤマトバッタの調査を行った4区域15ラインの植 生等の状況を表 3.2-39に示す。
すべてのラインが不安定帯または不安定帯~半安定帯の海浜部であった。最も 海側に近いラインでは植生がみられず、打ち上げられたゴミ等が散在している。
内陸側のラインではコウボウムギ、ハマボウフウ、ビロードテンツキなどの海浜 植物群落がみられる。
また、区域4のライン15ではクロマツの植栽が行われている。
表 3.2-39 カワラハンミョウ成虫・ヤマトバッタ調査ラインの状況 区域 ライン 設置場所 植生の状況
1 1 不安定帯 植生は見られない。まばらな植生帯に隣接している。打ち上げ られたゴミが多い。
2 不安定帯~半安定帯 コウボウムギ群落。植被率50~60%程度。
2
3 不安定帯 植生は見られない。打ち上げられたゴミが多い。
4 不安定帯~半安定帯 コウボウムギ群落。植被率10~20%程度。
5 不安定帯~半安定帯 コウボウムギ群落。植被率25~30%程度。
6 半安定帯 ビロードテンツキ群落。植被率30%程度。
3
7 不安定帯 植生は見られない。打ち上げられたゴミは多い。
8 不安定帯 植生はほとんど見られない。まばらな植生帯に隣接している。
9 半安定帯 コウボウムギ群落。植被率40~50%程度。
10 半安定帯 コウボウムギ群落。植被率40~50%程度。
4
11 不安定帯 植生は見られない。打ち上げられたゴミがみられる。
12 不安定帯 植生は見られない。まばらな植生帯に隣接している。打ち上げ られたゴミがみられる
13 不安定帯~半安定帯 コウボウムギ群落。植被率25~50%程度。密度にばらつきが大 きい。
14 半安定帯 コウボウムギ群落。植被率25~50%程度。密度にばらつきが大 きい。
15 半安定帯 ビロードテンツキ群落。植被率70~80%程度。クロマツが植栽 されている。
注)砂浜海岸の植生は波、風、温度、水分、塩分、砂の移動などに支配されており、これらの影響は一般 に波打ち際が強く、奥地にいくにつれて弱くなり、全体として奥地ほど環境が安定する。波打ち際近 くの環境の変化が激しいところを「不安定帯」、環境の変化がほとんどないところを「安定帯」といい、
その中間のところを「半安定帯」という。
① カワラハンミョウ(成虫)
カワラハンミョウの生態情報等を表 3.2-40に、調査結果を表 3.2-41に、平成 14 年度から平成 24 年度までの経年比較を表 3.2-42 及び図 3.2-32~図 3.2-33 に示す。
現地調査の結果、カワラハンミョウ成虫は区域1では確認されなかったが、区 域2~4では広い範囲で多くの個体が確認された。特に、区域3の個体数が最も多 い結果であった。
ライン別では、海に近いラインや植被率が高いラインでは少なく、植生が所々 にみられる不安定帯~半安定帯ラインで多く確認される傾向があった。
また、経年変化については、確認個体数は平成19年をピークにその後は減少に 転じており、平成24年度も確認個体数は減少していた。1回目の調査では平成23 年度と同程度の確認個体数であったが、2 回目の調査では確認個体数が少なく、
全体の平均値が下がるという結果であった。
昆虫類の個体数は年による増減があり、また、その年の気候条件などによって も個体数が変動する。
今後も継続して調査を行い、個体数の増減状況について留意する必要がある。
表 3.2-40 特筆すべき種の生態及び確認状況(カワラハンミョウ)
カワラハンミョウ ハンミョウ科 保存法 種の - 環境省 RL EN 三重県 RDB CR
生態
体長 14~17mm。海岸・川原・湖畔などの砂浜に生息する。成虫は7月下旬から 10
月上旬にかけて出現し、越冬することなく死亡する。日中に活動し、地表をすばや く走り廻り、驚いたりすると飛翔する。他の昆虫類を捕食し、ハエ類の多い汀線近 くで活動する個体も多い。幼虫は草本がごくまばらに生えた、やや硬く締まった砂 地にほぼ垂直の穴を掘り、穴入り口付近で餌となる昆虫などが近づくのを待ち伏せ する。振動には非常に敏感で、人が近づくと穴の中深くに潜り込み、しばらく出て こない。
確認 状況
調査範囲内に広く生息していた。
カワラハンミョウ成虫 平成24年9月12日撮影
139
表 3.2-41 カワラハンミョウ成虫の確認個体数
区 域 ライン 1回目
9月12日
2回目
9月13日 平 均
1 0 0 0.0
2 0 0 0.0
3 2 0 1.0
4 1 0 0.5
5 1 0 0.5
6 2 9 5.5
7 1 0 0.5
8 20 0 10.0
9 2 1 1.5
10 7 1 4.0
11 1 3 2.0
12 5 3 4.0
13 4 5 4.5
14 5 2 3.5
15 2 1 1.5
53 25 39.0
合計 区域1
区域2
区域3
区域4
表3.2-42 カワラハンミョウ成虫のライン別の確認個体数の経年比較
区域 ライン H14 H15 H16 H17 H18
(2回 の 平 均 )
H19
(2回 の 平 均 )
H20
(2回 の 平 均 )
H21
(2回 の 平 均 )
H22
(2回 の 平 均 )
H23
(2回 の 平 均 )
H24
(2回 の 平 均 )
1 0 1 0 0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
2 0 1 0 0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
3 1 0 0 5 1.5 18.5 9.5 0.0 8.0 0.5 1.0
4 16 0 2 2 5.0 24.5 14.5 1.0 3.5 3.0 0.5
5 12 4 2 0 9.0 5.0 4.0 5.0 12.0 8.5 0.5
6 3 11 1 8 14.0 30.5 21.5 11.0 6.0 10.5 5.5
7 1 1 2 1 10.0 13.5 6.5 0.0 3.5 4.5 0.5
8 12 4 0 3 11.5 41.0 11.0 0.5 3.0 3.0 10.0
9 21 5 1 6 9.5 4.5 1.0 1.0 2.5 4.5 1.5
10 5 2 0 1 13.0 9.0 4.5 5.5 3.5 2.0 4.0
11 5 5 14 2 11.0 21.5 22.0 0.0 3.5 4.0 2.0
12 25 10 5 6 14.0 69.5 38.0 4.5 10.0 4.5 4.0
13 10 8 9 4 19.0 23.0 6.0 3.5 8.5 2.5 4.5
14 9 29 14 6 24.5 23.5 13.5 12.0 3.0 8.0 3.5
15 1 7 1 5 1.0 3.5 3.5 7.0 4.0 0.0 1.5
121 88 51 49 144.5 287.5 155.5 51.0 71.0 55.5 39.0
合計 区域1
区域2
区域3
区域4
0 10 20 30 40 50 60 70
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
区域1 区域2 区域3 区域4
確認個体数
調査ライン H14
H15 H16 H17 H18(2回の平均) H19(2回の平均) H20(2回の平均) H21(2回の平均) H22(2回の平均) H23(2回の平均) H24(2回の平均)
図 3.2-32 カワラハンミョウ成虫 ライン別の確認個体数の経年比較
0 5 10 15 20 25 30
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24
5m×100mエリアの平均個体数
年度
区域1の平均 区域2の平均 区域3の平均 区域4の平均
0 50 100 150 200 250 300 350
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24
5m×100mエリアの平均個体数
年度
全体合計数
図 3.2-33 カワラハンミョウ成虫 確認個体数の経年比較
141
② ヤマトバッタ
ヤマトバッタの生態情報等を表 3.2-43に、調査結果を表 3.2-44に、同じ調査 ラインで実施している平成15年度から平成20年度までの区域ごとのヤマトバッ タ個体数の経年比較を表 3.2-45及び図 3.2-34に示す。現地調査の結果、ヤマト バッタは区域1~4の全調査区域で広く確認された。
ライン別では、ライン1、3、7、11といった海側の植生が殆ど生育していない 調査ラインで個体数が少なく、ライン2、5、9、10、14などのビロードテンツキ、
ハマボウフウ、コウボウムギなどの海浜植生がみられる不安定帯~半安定帯のラ インで多く確認される傾向があった。この傾向は、過年度調査結果と同様であっ た。
また、経年変化については、平成19年度をピークに、その後は減少していたが、
平成23年度より回復しつつあり、平成24年度の調査では平成19年度とほぼ同じ 確認個体数となった。
なお、調査地区にはヤマトバッタと生態的に競合するマダラバッタが生息して いるが、確認されたマダラバッタはヤマトバッタの10%程度の個体数であり、ヤ マトバッタの生息を圧迫し、駆逐するような状況ではなかった。
表 3.2-43 特筆すべき種の生態及び確認状況(ヤマトバッタ)
ヤマトバッタ(ヤマトマダラバッタ)
バッタ科
種の
保存法 - 環境省
RL - 三重県
RDB NT
生態
体長30~35mm。中型のバッタ。海岸や大河川の砂浜に生息する。淡褐色で暗褐色の
斑紋が点在し、砂地に対して保護色となっている。後翅は透明で基部は淡青色。年 1化。成虫は7~10月に出現する。
確認 状況
調査範囲内に広く生息していた。
ヤマトバッタ 平成24年9月12日撮影
表 3.2-44 ヤマトバッタの確認個体数
表 3.2-45 ヤマトバッタ確認個体数の経年比較
図 3.2-34 ヤマトバッタ確認個体数の経年比較 区域 ライン 1回目
9月12日
2回目
9月13日 平均
1 0 0 0.0
2 25 17 21.0
3 0 1 0.5
4 2 3 2.5
5 42 40 41.0
6 19 11 15.0
7 0 0 0.0
8 1 0 0.5
9 55 51 53.0
10 59 71 65.0
11 0 0 0.0
12 1 1 1.0
13 22 38 30.0
14 28 56 42.0
15 16 10 13.0
270 299 284.5
合計 区域1
区域2
区域3
区域4
区域 ライン H15 H16 H17 H18(2回の 平均)
H19(2回の 平均)
H20(2回の 平均)
H21(2回の 平均)
H22(2回の 平均)
H23(2回の 平均)
H24(2回の 平均)
1 0.0 0.0 11.0 3.5 12.5 4.5 3.0 1.5 2.0 0.0
2 42.0 17.0 9.0 20.0 48.0 40.0 22.5 11.0 29.5 21.0
3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.5 0.0 5.5 0.0 0.5
4 5.0 4.0 7.0 1.0 11.5 20.0 3.0 7.5 15.5 2.5
5 23.0 28.0 17.0 8.5 60.0 29.0 48.0 24.5 62.0 41.0
6 10.0 3.0 7.0 8.0 7.5 8.0 10.0 14.5 16.0 15.0
7 2.0 0.0 0.0 2.0 0.0 2.0 0.0 4.5 1.5 0.0
8 3.0 2.0 0.0 1.5 0.5 5.0 3.5 6.5 7.5 0.5
9 34.0 14.0 11.0 24.5 29.0 13.0 19.0 34.5 40.0 53.0
10 51.0 21.0 29.0 32.0 49.0 26.5 49.0 21.5 17.0 65.0
11 0.0 0.0 6.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.0 2.5 0.0
12 0.0 1.0 13.0 1.0 1.0 0.0 1.5 3.5 1.0 1.0
13 10.0 21.0 22.0 5.0 24.5 6.0 3.5 26.5 7.5 30.0
14 41.0 19.0 26.0 40.0 37.5 20.5 38.5 16.0 46.5 42.0
15 10.0 2.0 9.0 3.0 8.5 5.0 3.0 7.0 9.0 13.0
231.0 132.0 167.0 150.0 289.5 183.0 204.5 185.5 257.5 284.5
全体 区域1
区域2
区域3
区域4
0 10 20 30 40 50 60 70
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
区域1 区域2 区域3 区域4
確認個体数
調査ライン H15
H16 H17
H18(2回の平均) H19(2回の平均) H20(2回の平均) H21(2回の平均) H22(2回の平均) H23(2回の平均) H24(2回の平均)
143
2) カワラハンミョウ(幼虫)
① 調査結果と経年比較
同じ調査ラインで実施している平成15年度から平成24年度までの調査結果を 図 3.2-35~図 3.2-44に、平成15年度から平成24年度までの確認された巣穴数 の経年変化を表 3.2-46 及び図 3.2-47 に示す。現地調査の結果、今年度は図
3.2-44に示したとおりライン 3~6 に生息密度の高い部分がみられた。経年変化
については、全体の巣孔数は平成19年度の約2,800をピークに減少し、平成22 年度に約360と最も少なくなった。その後、平成23年度に約760まで回復し、平 成24年度も引き続き増加しており、巣穴数は843個確認された。
平成23年度からの増減を調査ライン別にみると、調査範囲南側のライン10~
13で減少しているが、調査範囲北側のライン3及び4では顕著に増加していた。
平成19年度のピークからの個体数の減少は、成虫も同様の傾向を示していた。
一般に、カワラハンミョウの減少要因は、河川や海岸工事による生息地の消失及 び分断化、車両等の乗り入れによる巣孔の破壊、レジャー等による砂浜環境の劣 化等が想定される。白塚海岸では現在のところこのような原因による大きな環境 変化は見られていないが、今年度も巣孔数が減少している南側のエリアでは、ク ロマツが植栽されている箇所があり、クロマツの根張りや落葉による砂浜環境の 変化、植栽作業時の踏み固め及び植栽箇所に搬入された土による草原化の進行等 が、カワラハンミョウの生息環境を悪化させた可能性が考えられる。この他、調 査範囲では、ゴルフの練習等による砂面の攪乱や踏み固めが生じており、これら もカワラハンミョウの生息に影響を及ぼしている可能性が考えられる。
一方、巣孔確認数が増加している北側の区域では、地元住民等によるオオフタ バムグラ等の外来植物の除去作業が継続的に行われており、この結果、良好な生 息環境が維持、拡大し、巣孔数増加につながっている可能性が考えられる。
カワラハンミョウについては、幼虫の巣孔数が昨年度に比べてやや増加してい るものの、ピーク時の1/3以下であり、また、成虫の個体数も昨年度から減少し ていることから、今後も慎重に追跡していく必要がある。
② カワラハンミョウとビロードテンツキの分布域の関係
カワラハンミョウの幼虫の調査結果と、植物調査として実施したビロードテン ツキの分布域とを重ね合わたものを図 3.2-45~図 3.2-46に示した。
カワラハンミョウの幼虫の分布域とビロードテンツキの分布域は、過年度同様 に近似していることが示された。ビロードテンツキが生育する場所は、カワラハ ンミョウの餌となる他の小動物の隠れ家等となり、餌の供給をもたらしている可 能性も考えられる。