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カワウ保護管理事業に必要な対話・教育・普及啓発活動における課題

 

対話・教育・普及啓発活動は,全ての野生鳥獣や環境問題に関して,様々な立場の 多くの人々がかかわって解決に向かうために重要な活動である.対話・教育・普及啓 発活動の重要性については,ラムサール条約第7回締約国会議の議決にも見ることが できる(環境庁自然環境局 2000).カワウ問題においても,都道府県において保護管 理事業を円滑に進めていくために,関係者の間でカワウの保護管理に関わる情報を共 有し,合わせて広く都道府県民の間に理解を広げる必要がある. 

教育や普及啓発は,情報をまだ充分知っていない人々に,さまざまなプログラムに よって効果的に伝えるという上から下へのニュアンスが含まれる.一方,対話(原語

「Communication」は広報または情報伝達の訳語が使われているが,並列のニュアンス を活かすためにここでは対話という訳語を採用する)は,カワウ問題にかかわる様々な 立場の人々が,それぞれの得手とする情報を発信して,関係者をはじめ多くの人々に 共有されるという,並列のニュアンスが含まれる(付録2:用語解説参照). 

 

(1)  窓口となる担当者 

行政として対話・教育・普及啓発活動を行う場合は,窓口となる担当者を決めて関 係する人々と連携して計画的に進めていく必要がある.対話・教育・普及啓発活動は,

時期的にも長期にわたり,また対象とする人々や団体・機関も,カワウ問題へのかか わりや,地域(都道府県内,広域的な地域,全国)・分野・世代なども多岐にわたって いる点から,特定計画の中心となる担当者とは別に,鳥獣センターに属する湿地や鳥 類を専門とするスタッフ等に窓口となる担当者となってもらい各方面との連携を図る 必要もあろう. 

   

(2)  対話(広報,情報伝達) 

基本的には,対話(情報伝達)の考えは,専門家による科学委員会やさまざまな立場 の代表による協議会,パブリック・オピニオンの募集,公聴会の開催などとして特定 鳥獣保護管理計画を進めるシステムの中に多く含まれる. 

広域保護管理指針や都道府県の特定鳥獣保護管理計画の策定の過程では科学的調査 を行い,多くの基礎資料が作成される.それぞれの計画策定の根拠となる資料は,関 係者しか利用できないクローズな情報となってしまうことを避ける必要がある.すみ やかに引用可能な科学的な報告書として編集公表され,また多くの人々が理解できる 形にして公開される必要がある.このような報告書の編集公表作業には,編集能力を 持った鳥獣センター等のスタッフのサポートが必要となる. 

既に多くの哺乳類についての都道府県の特定計画がウェッブサイトで公表されてい る.カワウの特定計画関連の情報についてもウェッブサイトによる積極的公表が必要 である.ウェッブサイトを利用する上では,カワウ問題にかかわる多様な情報を発信 し,また情報の交流を計ることが可能なような工夫が望ましい. 

このようなウェッブサイトをつくり,さらに,さまざまな形のシンポジウムや講演 会,現地視察や現場の人々との交流の機会を含む観察会などを開催することによって,

特定計画のシステムを円滑にすすめることが可能と考えれられる. 

 

(3)  教育と普及啓発活動 

カワウに関する教育(環境教育の一環となる)や普及啓発活動を行う上で重要なのは,

カワウの生態や生息環境,カワウ問題の特質や対策に関して,多くの人々に理解が可 能なツールを作成することである.特に地域的な情報や対策の部分については,都道 府県が中心となって取りまとめる必要があるが,カワウの生態や生息環境に関しての

全国的な情報などは他の機関や団体の作業と連携(情報の交流や支援)して作成する必 要がある.また,都道府県内のカワウ問題にかかわる研究機関,博物館,あるいはコ ロニーをかかえるビオトープ型の都市公園(生き物の生息場所を自然な形で残し,ま たは復元させた公園)などにおける活動との連携も重要となろう. 

カワウに関する教育や普及啓発活動の計画を考える上で当面重要と思われる点を以 下3点指摘する.   

 

1)カワウに関する情報がまとまった書籍作成の必要性 

カワウに関しては鳥学関係の学術誌や野鳥に関する普及誌などの特集もあるが,単 行本として公刊されている書籍はまだない.特定計画が進む哺乳類や,鳥類でもカラ スなどに関しては多くの書籍が刊行され,幅広い人々が容易に基礎的な情報を得るこ とができるが,カワウに関しては裾野を広げて問題にとりくむことが困難な状況とな っている. 

カワウの生態やカワウ問題の解決のために必要でありながらまだまとまっていない 分野の情報をまとめるとともに,このようなカワウに関する書籍の出版を計画するこ とが必要である. 

子供向き(幼児から小学校高学年)の科学絵本や写真集の中には,鳥類の種の生活 史・生態を通して,自然への関心を深めるものが多い.カワウの生態やひきおこす問 題が理解できるような子供向きの本を通して,さらに年代を超えて,多くの人々への 関心を増すことができる.カワウ問題は,おそらく今後数十年は継続するであろうこ とを考えると,このような本をきっかけとして問題解決への関心を持つ若い世代の 人々を増やすことも大切である. 

 

2)カワウに関しての映像番組作成の支援や活用 

現在まで,全国あるいはローカルなテレビ局でカワウ問題を扱った報道番組やニュ ースが多く放映され,今後も放映されることと思われる.このような番組は,カワウ を通しての環境教育や,カワウの現状や問題を短時間に普及啓発する際のツールとし て非常に便利である.このような番組の作成においては,カワウにかかわる人々によ る調査結果の紹介やよく検討された対策などに関する積極的な情報提供が欠かせない.

また,放映された番組の内容を集積して,カワウ問題に関してのメディアの関心を把 握しておくことも,今後のメディアとの連携をスムーズにする上で大切と思われる. 

 

3)カワウのコロニーや集団ねぐらがある都市公園(野鳥公園など)における活動との連携  近年カワウがビオトープ型の都市公園(野鳥公園などを含む)でコロニーや集団塒 地を形成する例が増加している.このような公園は,人々の干渉を受けにくい池や樹 林帯があってカワウが安心して集結できる条件を持っていることが多い. 

集結している樹林帯の枯死や隣接する住宅地への悪臭などの問題をかかえているが,

野鳥公園ではカワウの多少の生息は許容する方針をとっている場合が多い.沿岸海域 を主たる採食地とすることが多く,水産業との軋轢は少なく,また都市部であるので 銃猟などによる強度の対策はとりにくい.一方で,ビオトープ型の都市公園では,野 鳥を通して身近な自然を伝える目的のネーチャーセンターや観察舎があって,カワウ に関してさまざまなプログラムを実施している例もある. 

このような場所で,カワウの生態やカワウが引き起こす問題や管理方針などに関心 を持ってもらって理解を計るための展示やリーフレット,あるいはコロニーの観察会 の企画などについて,各地のスタッフ間で経験の交流もおこなわれている(国営武蔵丘 陵森林公園 2004).このような都市公園の活動と連携を図ることは,より効果的な環 境教育や普及啓発の手法を開発する上で有効であろう. 

【参考・引用文献】 

阿部誠一, 2003. 青森県のカワウ.シンポジウム「河川に生きるカワウと人との共存 の道を探る」講演要旨集.日本野鳥の会,11‑12. 

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