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エネルギー環境税導入による既存税制との調整

(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)について

7.1 スウェーデン

1991年に直接税の減税と間接税の強化という大規模な税制改革のひとつとして二酸化炭 素税(250SEK/t-CO2)が導入された。導入にあたり、産業用の燃料に対する既存エネルギ ー税の税率を 2分の1に低減した。二酸化炭素税とエネルギー税を合算すると、化石燃料 への課税は実質増税となった。また、所得税は30%の水準までに軽減された。VATは、1990 年の3月から航空用燃料を除く燃料に対して導入(税率23.46%(同年7月から25%))さ れている。

1993年1月には、税率がそれまでの250SEK/t-CO2から320 SEK/t-CO2に引き上げられ た。その際、産業用燃料のエネルギー税の税率に関する見直しが行われ、石炭、重油、軽 油、電力に関し、エネルギー税の対象外とされた上、国際競争力の低下による国内産業の 空洞化を懸念したため、産業の国際競争力を維持するために家庭用の税率の約4分の1(約 80SEK/t-CO2)とされた。

表7.1.1 主要燃料別のエネルギー税と二酸化炭素税の税率の推移(スウェーデン)

1990 1991-1992 1993

燃料(単位) エネルギー

税 エネルギー税 CO2税 エネルギー税 CO2税 産業用石炭

(SEK/t) 460 230 620 - 200 発電用石炭

(SEK/t) 460 230 620 230 800 無鉛ガソリン

(SEK/kl) 2,920 2,400 580 3,140 740 産業用重油

(SEK/kl) 1,078 540 720 - 230 産業用軽油

(SEK/kl) 1,078 540 720 - 230 家庭用、自動車用

軽油(SEK/m3) 1,078 540 720 90-290-540

(注) 920

産業用電力

(SEK/kWh) 0.05 0.05 - - - 家庭・業務用電力

(SEK/kWh) 0.022-0.072 0.022-0.072 - 0.035-0.085 -

(出所)OECD/IEA, Energy Prices and Taxes 1994、同2003等

(注)環境クラス1、2、3の燃料の税率

7.2 ノルウェー

  1991年、ノルウェーでは所得税減税や投資減税、更に雇用者が支払う社会保障料の引き 下げなどからなる一連の税制改革が実施されたが、同時に温室効果ガスの排出を抑制する 為の政策措置として交通用(ガソリン、軽油)、熱利用(重油、軽油、灯油)、石油/ガス 採掘に伴う消費(軽油、天然ガス)に対して二酸化炭素税を導入した。その後1992年には 石炭も課税対象に含めた。

ノルウェーの二酸化炭素税は、税制改革の一環で導入されたものであり、その他の税の変 更点は、法人税の限界税率(最高税率)の引き下げ(一方、基本税率を引き上げ)、所得税 の限界税率(最高税率)の引き下げ、VAT税率の引き上げ(20%から22%へ(1993年))、

雇用者の社会保障費用負担の軽減などである。

1992年にエネルギー税体系の変更がなされ、二酸化炭素税、および交通用ガソリン、電 力のエネルギー税の税率が引き上げられた。一方で、直後の1993年には熱利用燃料(軽油、

重油など)のエネルギー税が廃止された。

表7.2.1 主要燃料別のエネルギー税と二酸化炭素税の税率の推移(ノルウェー)

1990 1991-1992 1993

燃料(単位) エネルギー税 エネルギー税 CO2税 エネルギー税 CO2税 無鉛ガソリン

(NKR/kl) 2,630 2,770 800 3,070 800 軽油

(NKR/kl) 310 170 300 0 400 重油(NKR /kl) 310 170 300 0 400

石炭(NKR/t) - 300 - 400 400 電力(NKR

/kWh) 0.0385 0.0415 - 0.046 -

(出所)OECD/IEA, Energy Prices and Taxes 1994、同2003等

(注)NKR:ノルウェー・クローネ

7.3  フィンランド

財政改革における所得税・法人税などの直接税から、消費税などの間接税への税構造の 転換の一環として 1990 年に二酸化炭素税(名称は環境損失税(Environmental Damage Tax)、以下、二酸化炭素税と表記)が導入された。二酸化炭素税が導入される以前は、交 通用(ガソリン、軽油)にエネルギー物品税が課されていたが、二酸化炭素税導入時に自 動車用軽油のネルギー物品税が軽減(845FIM/klから730FIM/kl)された。

1993年から1994年には、EU域内の鉱油税最低税率調和を目的とした指令発効16の流れ

16 Council Directive 92/81/EEC of 19 October 1992 on the harmonization of the structures of excise

を受け、エネルギー物品税が軽油、重油(熱利用)に導入され、交通用(ガソリン、軽油)

の税率は引き上げられた。その後1997年に、重油に対する二酸化炭素税が増税されると同 時にエネルギー税は廃止され、軽油に対しては増税されている。

表7.3.1 主要燃料別のエネルギー税と二酸化炭素税の税率の推移(フィンランド)

1990 1994 1997 燃料(単位) エネルギー税 CO2税 エネルギー税 CO2税 エネルギー税 CO2

有鉛ガソリン

(FIM/kl) 1,280 270 2,310 71 3,369 164 自動車用軽油

(FIM /kl) 730 270 1,100 78 1,599 186

重油(FIM /t) - 20 25 93 - 221

軽油(FIM /kl) - 20 42.8 80 104 186 天然ガス

(FIM /m3) - 0.01 - 0.065 - 0.071 石炭(FIM /t) - 16 - 67.2 - 169

(出所)OECD/IEA, Energy Prices and Taxes1994、同2003等

(注)FIM:フィンランド・マルッカ

duties on mineral oils and Council Directive 92/82/EEC of 19 October 1992 on the approximation of the rates of excise duties on mineral oils

参考資料:対象各国のエネルギー環境税に関する試算について

参考資料−1.エネルギー環境税のエネルギー価格に占める割合について(主要な燃料と電力に 対する各国税額の比較)

対象各国において、主要な燃料と電力に課されている既存のエネルギー税と温暖化対策 との関係で導入された税(以下、環境税という)が、エネルギーの価格に対してどの程度 影響を及ぼしているかを明らかにするため、種々の用途における税抜き価格と、既存エネ ルギー税、環境税として実際に適用されている税率を円換算し比較した図を示す。

 試算中の既存エネルギー税において、日本の石油石炭税に関しては平成19年4月1日か らの税率を入れている。また日本の環境税の欄には、環境省 中央環境審議会温暖化対策税 専門委員会 温暖化対策税制の具体的な制度の案(平成15年8月)より3,400円/t-Cを参 考として入れている。なお、本試算に用いたデータ類は、要請があれば開示する(問合せ 先 :( 財 ) 日 本 エ ネ ル ギ ー 経 済 研 究 所   環 境 技 術 ユ ニ ッ ト   環 境 ・ 省 エ ネ グ ル ー プ

(03-5547-0231))。

(1)自動車用燃料(ガソリン、軽油)

 低硫黄ガソリンと軽油においては、ドイツ、スウェーデン、オランダ(軽油については デンマークにおいても課税)において環境税が課されており、円換算した場合の 1 リット ル当りの税率は、スウェーデンの二酸化炭素税が最も高くガソリン約24.6円、軽油約30.3 円となっている(参考図1.1.1、参考図1.1.3)。 

0 20 40 60 80 100 120 140

国名

¥/リットル 税抜き価格 既存エネ税 環境税

環境税 19.60 24.64 1.64 2.15

既存エネ税 95.74 64.00 75.26 40.92 80.54 69.42 55.84 税抜き価格 36.59 37.68 32.64 43.95 48.03 47.85 46.90

英国 ドイツ フランス スウェーデン オランダ デンマーク 日本

ガソリン( 低硫黄)

非課税 未導入 非課税

参考図1.1.1 ガソリン(低硫黄)の税率

(出所)税抜き価格:IEA、Energy Prices & Taxes 2003 3rd Quarter20031st Quarterの値、税率:

各国関連法令など。

(注1)既存エネルギー税の税率において、日本の石油石炭税に関しては平成19年(2007年)41

からの税率を入れている

(注 2)日本の環境税の欄は、環境省 中央環境審議会温暖化対策税専門委員会 温暖化対策税制の具体的

な制度の案(平成158月)より3,400円/t-Cを参考として入れている

(注3)換算レートは20031月〜3月の平均(英国(£):190.76円、 ドイツ、フランス、オランダ

(ユーロ):127.73円、  スウェーデン(SEK(スウェーデン・クローネ):13.92円  デンマーク(DMK

(デンマーク・クローネ):17.2円)

1% 2%

29%

19%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

英国 ドイツ フランス スウェーデン オランダ デンマーク 日本

%

税抜き価格 既存エネ税 環境税

 

参考図1.1.2 環境税導入によるガソリン(低硫黄)の価格への影響

(出所)税抜き価格:IEA、Energy Prices & Taxes 2003 3rd Quarter20031st Quarterの値、税率:

各国関連法令など。

(注1)既存エネルギー税の税率において、日本の石油石炭税に関しては平成19年(2007年)41

からの税率を入れている

(注 2)日本の環境税の欄は、環境省 中央環境審議会温暖化対策税専門委員会 温暖化対策税制の具体的

な制度の案(平成158月)より3,400円/t-Cを参考として入れている

(注 3)スウェーデンでは、二酸化炭素税の導入時に既存エネルギー税を調整しているため現時点での分析で

は価格上昇率が過大になっている

0 20 40 60 80 100 120 140 160

国名

¥/リットル

税抜き価格 既存エネ税 環境税

環境税 19.59 30.26 1.81 4.64 2.43

既存エネ税 101.62 40.49 50.06 13.98 43.08 47.20 34.14 税抜き価格 40.23 42.66 32.51 51.04 46.57 53.64 48.50

英国 ドイツ フランス スウェーデン オランダ デンマーク 日本

軽油(交通用)

非課税 未導入

  参考図1.1.3 軽油(交通用)の税率

(出所)税抜き価格:IEA、Energy Prices & Taxes 2003 3rd Quarter20031st Quarterの値、税率:

各国関連法令など。

(注1)既存エネルギー税の税率において、日本の石油石炭税に関しては平成19年(2007年)41

からの税率を入れている

(注 2)日本の環境税の欄は、環境省 中央環境審議会温暖化対策税専門委員会 温暖化対策税制の具体的

な制度の案より3,400円/t-Cを参考として入れている

(注3)換算レートは20031月〜3月の平均(英国(£):190.76円、 ドイツ、フランス、オランダ

(ユーロ):127.73円、  スウェーデン(SEK(スウェーデン・クローネ):13.92円  デンマーク(DMK

(デンマーク・クローネ):17.2円)

5% 3%

2%

47%

24%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

160%

英国 ドイツ フランス スウェーデン オランダ デンマーク 日本

%

税抜き価格 既存エネ税 環境税

 

参考図1.1.4 環境税導入による軽油(交通用)の価格への影響

(出所)税抜き価格:IEA、Energy Prices & Taxes 2003 3rd Quarter20031st Quarterの値、税率:

各国関連法令など。

(注1)既存エネルギー税の税率において、日本の石油石炭税に関しては平成19年(2007年)41

からの税率を入れている

(注 2)日本の環境税の欄は、環境省 中央環境審議会温暖化対策税専門委員会 温暖化対策税制の具体的

な制度の案(平成158月)より3,400円/t-Cを参考として入れている

(注 3)スウェーデンでは、二酸化炭素税の導入時に既存エネルギー税を調整しているため現時点での分析で

は価格上昇率が過大になっている   

(2)家庭・業務用燃料など(天然ガス、電力)

 家庭用の天然ガスをみてみると、ドイツ、スウェーデン、オランダ、デンマークにおい て環境税が課されており、スウェーデンの税率が最も高い(約3万円/ton)(参考図1.2.1)。

また家庭用の電力については、オランダのエネルギー規制税の税率が最も高い(約 8.2 円 /kWh)。英国の気候変動課徴金では、天然ガス、電力に課税しているが、家庭における使用 は免税となっている(参考図1.2.3)。 

 

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