3. 深層防護レベル 4 及び 5 の核燃料施設の地震リスク評価の定量化方法
3.3. インタラクション・マルチレイヤ・モデルと他手法との比較
3.2.において有効性を確認したインタラクション・マルチレイヤ・モデルについて、本 手法と類似し、体系だったリスク評価手法である Mohaghegh のハイブリッドモデル[23]と、
その特徴を定性的に比較することによりインタラクション・マルチレイヤ・モデルの優位 性について考察した。
Mohaghegh が考案したハイブリッドモデルは、システムダイナミックス理論とベイジア ンネットワーク、イベントシーケンス図とフォールトツリーを統合したリスク評価の体系 で、相互作用及びフィードバックのあるシステムのリスク評価を行うことが可能である。
なお、文献[23]では主に人間の間の相互作用、特に組織間の相互作用に着目したリスク評 価手法としている。
Mohaghegh のハイブリッドモデルの概略図を図 3-20 に示す。ハイブリッドモデルでは従 来の PRA で用いるイベントシーケンス図を構築し、対応するイベントにフォールトツリー を割り当て、システムの PRA モデルを構築する。このフォールトツリーの基事象には、ベ イジアンネットワークにより随時更新された確率値を供給する。ここでシステムの PRA モ デルは従来の PRA 手法であるため、Element間の相互作用、フィードバックは考慮できる 構造になっていない。同様に、ベイジアンネットワークは、有効非巡回グラフであるため、
相互作用、フィードバックは考慮できない。このため、ハイブリッドモデルでは、システ ムの PRA モデル及びベイジアンネットワークにシステムダイナミックスモデルに基づいて 構築されたストック&フローダイアグラムを結びつけて、Element 間の相互作用及びフィ ードバックの影響を考慮できるようにしている。ストック&フローダイアグラムは、個々 の要素に状態変化のモデルを割り当て、システムの PRA モデルの状態を入力とし、そのシ ステムを構築する機器等の状態を更新するもので、その情報をベイジアンネットワークに 引き渡すことにより、基事象の確率値を更新する。表 3-6 に Mohaghegh のハイブリッドモ デルとインタラクション・マルチレイヤ・モデルとの対応関係を示す。
ハイブリッドモデルとインタラクション・マルチレイヤ・モデルの大きな違いは、ハイ ブリッドモデルはシミュレーションベースのリスク評価モデル[23]であるのに対し、イン タラクション・マルチレイヤ・モデルは分析ベースとシミュレーションベースとを合わせ たリスク評価手法である。インタラクション・マルチレイヤ・モデルでは、マルチレイヤ を構築する際の手順の中で、システムの構成をよく分析して整理することとしているほか、
リスク評価の際、STAMP/STPA 手法を用いたハザード分析を実施することとしているため、
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シミュレーションを実施せずとも、システムの定性的なリスクを抽出できる。また、EPLを 分析することにより、事故に対する対策の信頼性を定性的に評価できる特徴がある。さら に、インタラクション・マルチレイヤ・モデルでは、動的な定量評価にシステムダイナミ ックスシミュレーションの一種であるマルチエージェントシミュレーションを適用するこ とを想定していることから、ハイブリッドモデルと同様、シミュレーションによる定量的 なリスク評価が可能である。
このようにインタラクション・マルチレイヤ・モデルは分析ベースのリスク評価が可能 であることから、シミュレーションによる動的な定量評価では抽出が困難な、潜在的なリ スクを抽出・評価するのに適しているという優位点がある。
なお、ハイブリッドモデルではベイジアンネットワークを用いて機器の損傷確率等の更 新を実施しているため、因果律に基づいて前ステップの状態を明確に反映することが可能 である。インタラクション・マルチレイヤ・モデルの動的定量評価では、この点を明確に 検討していないため、今後の定量化の検討に含めるものとする。
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図 3- 20 Mohaghegh のハイブリッドモデルの概要
システムダイナミックス
イベントシーケンス図
ベイジアンネットワーク
フォールトツリー 頂上事象の発生確率
ストック&フローダイアグラム
システムの状態
個々の要素が採りうる状態の 確率等
システムの状態
更新された個々の損傷確率等
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表 3-6 インタラクション・マルチレイヤ・モデルと Mohaghegh のハイブリッドモデルと の対応
Mohaghegh のハイブリッドモデル インタラクション・マルチレイヤ・モデル イベントシーケンス図 イベントツリー
フォールトツリー フォールトツリー マルチレイヤ第 3 層 システムダイナミックス マルチエージェントシミ
ュレーション
マルチレイヤ第 1 層
~第 2 層(拡張した STAMP/STPA 手 法 で 構築)
ベイジアンネットワーク --
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