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インタビュー調査からみる地域子育て支援拠点事業(センター型)における 地域支援活動の現状と課題

1.はじめに-問題の設定

本論では、非利用者への支援の必要性を提示し、なかでも拠点事業に特化した上で、担 当者が拠点事業において、いかに支援していくことができるのかを検討している。非利用 者への支援法の 1 つとして、拠点事業のセンター型(以下、センター型と記)における地 域支援活動がある。そこで、本章は、在宅で子育てを行う子育て家庭1への支援として、中 心的な役割を持つと考えられる拠点事業のセンター型(以下、センター型と記)における 地域支援活動に焦点をあてながら、その現状と課題を検討することを目的とするものであ る。

地域支援活動は 2007年に再編された拠点事業において初めて明記され、センター型に おいてはその活動義務項目の1 つであった。センター型における地域支援活動とは、地域 全体で子育て環境の向上を図るために地域における関係機関や子育て支援活動等と連携し つつ、地域で当事者活動や個別家庭への支援を実施することであった2。具体的には、「公民 館や公園等地域に職員が出向いて親子交流や子育てサークルへの援助等」の実施や、「より 重点的な支援が必要であると判断される家庭への対応」が定められていた3。すなわち、セ ンター型には地域において拠点事業を利用しない子ども・子育て家庭に個別的に支援を行 っていく必要性が求められていたと同時に、地域支援活動はサービスの届きにくい子ど も・子育て家庭につながる可能性を保持していたといえよう。2013 年 4 月の再編により、

センター型の地域支援活動は消失しているが、新しい事業において地域機能強化型が創設 されることが明示されており4、拠点事業において地域支援をさらに充実させていくことが 求められている。

では、拠点事業のセンター型において、どのような地域支援活動が実施されていたのだ ろうか。地域支援活動を対象にした研究は少ない。そのなかでもセンター型の業務を定量 的に把握分析した中谷ら5は、「拠点、併設園以外の場所に出かけて親子を対象としたフリー スペースやプログラムを提供」する業務が見受けられているが、その割合はセンター型業 務全体の約 3%にすぎず、地域住民への訪問や関わりといった地域支援活動にあたる活動は 全く見られなかったことを報告している。さらに、橋本6は、センター型の子育て支援実践 を検証した上で、地域支援活動に積極的に取り組む事業者がいる一方で、その必要性を意 識しつつも実際の業務には反映できていない事業者の存在も指摘している。この背景には、

地域支援活動に表される地域のネットワーク化を促進するそのような業務のあり方が、保 育所保育にこれまで求められてきた知識・技術とは異なる側面を持つものであり7、多くの センター型で業務を担っている保育士が持つ知識、技術と齟齬が生じていることや、それ を可能にする体制の不備といった阻害要因が多様にあることが予想されている8。しかし、

前述したように地域支援活動を対象とした先行研究がまだ少なく、その阻害要因について

具体的に明らかにされていないという問題がある。

そこで、本章ではセンター型においてどのような地域支援活動が実施されていたのかを 振り返り、地域支援活動促進への阻害要因について検討し、地域機能強化型における地域 支援の実施に際して、今後の展開への示唆を得たい。これは児童家庭福祉システムがすべ ての子育て家庭を対象として再編されつつあるなか、地域住民活動等「地域」との関係が さらに重視されてきた拠点事業に関する今後の支援実践に寄与するものと考えられる。

2.地域支援活動に関するインタビュー調査 2-1.調査対象と方法

本調査対象者は、A県内におけるセンター型において、調査当時業務に携わっていた職員 10 名であった。調査方法は、調査対象者への半構造化面接(インタビュー)であり、所要 時間はいずれも約 1 時間であった。調査は 2012 年 8 月から 9 月に行った。

A県内は広く 3 つの地域(県北・県央・県南)に分かれている。その 3 地域に偏りのな いように配慮しながら 10 のセンター(県北地域 3 箇所、県央 4 箇所、県南 3 箇所)を選択 した。またインタビュー対象者においては、インタビューに十分な回答ができるように、

センター業務に長く携わっており、業務に精通している担当者を選択するよう配慮を行っ た。

インタビューでは、職員が地域支援活動として調査時に行っていた業務、及び業務遂行 に必要な知識や技術や業務における困難点等について自由に語ってもらった。調査担当者 はインタビューガイドを準備し、業務内容をできるだけ幅広く聞き取れるように、適宜挿 入質問を行った。インタビュー項目を表3-1に示す。インタビュー項目については、話の展 開や流れを重視し対応したため、必ずしもこの順序ではなかったが全ての項目について実 施した。インタビューの内容は、調査対象者の承諾を得てICレコーダーに録音し、その後 逐語録を作成した。対象拠点事業及び、対象者の属性を表3-2、3-3に示す。

2-2.倫理的配慮

調査対象者には、インタビューを行う前に研究の趣旨を説明し、目的や方法等について 同意を得た。また、インタビュー内容の個人情報は保護されること、研究のみに使用され ること、研究成果についての公表は個人を特定できる情報は公表されないことを説明した。

2-3.分析方法

本研究では、分析方法として木下が提唱する修正版グラウンデッド・セオリー・アプロー チ(Modified Grounded Theory Approach:M-GTA)9を採用した。M-GTA は面接型調査を前提 に考えられており、データを切片化せずまとまりによって理解するため、文脈から深い意 味を洞察することができる方法である10。また、この研究方法の適合性についてプロセス的 な特性を持ったヒューマンサービス領域が適していることが示されている11

本研究は、地域子育て支援というヒューマンサービス領域において、地域支援活動とい うサービスを提供する担当者とサービスを受ける子どもと子育て家庭の相互的関係を対象

表 3-1.インタビューガイド

インタビュー項目

1.地域子育て支援拠点事業として実施している活動はどのようなものがあるか。

2.地域支援活動について

1)具体的にどのような活動を実施しているか。

2)実施回数 3)活動開始の経緯

2.地域支援活動実施に必要な知識・力量について 1)どのような知識が必要と感じているか。

2)どのような力量が必要と考えているのか。

3.地域支援活動の評価について

1)よかったと思う事例はあるか、どのような事例だったのか。

2)困難だった事例はあるか、どのような事例だったのか。

3)困難があるならば、改善するためにはどのような取組が必要と思っているのか。

4.関係機関や地域との連携はどのように実施しているのか。

5.今後の地域支援活動についてどのように考えているか。

表 3-2調査対象拠点事業(センター型)の属性(N=10) 表 3-3.調査対象者属性(N=10)

* 保:保育士資格 幼:幼稚園免許状 試験:保育士試験 とするものである。そして、そのサービスのなかで相互的関係がどのように展開されてい るのか、あるいは展開されていないのかといったプロセス的性格を保持していることから、

本研究の方法として適切であると考える。

運営主体 設置状況 設立 総数

A 民営 保育所併設 1994 年 2 名 B 民営 保育所併設 1993 年 3 名 C 公立 保育所併設 2000 年 2 名 D 公立 保育所併設 2004 年 2 名 E 民営 保育所併設 1998 年 2 名 F 民営 専用施設 1996 年 3 名 G 民営 保育所併設 2004 年 2 名 H 民営 専用施設 1999 年 2 名 I 民営 保育所併設 2007 年 2 名 J 公立 専用施設 2002 年 5 名

年齢 保育年数 勤務年数 勤務形態 資格 取得歴 a 50 代 32 年 18 年 常勤 試験 b 50 代 29 年 19 年 常勤 試験 c 50 代 30 年 3 年 常勤 保・幼 短大 d 50 代 30 年 3 年 常勤 保・幼 短大 e 40 代 27 年 13 年 常勤 保・幼 短大 f 40 代 19 年 14 年 非常勤 保・幼 短大

g 20 代 8 年 3 年 常勤 保・幼 専修学校

h 50 代 12 年 6 年 非常勤 保・幼 短大

i 20 代 6 年 4 年 常勤 保・幼 短大

30 代 13 年 5 年 常勤 保・幼 専修学校

インタビュー後、逐語録を作成し分析を実施した。分析を行う際には、地域支援活動に 対する意識と実施していくにあたっての阻害要因や困難性についての言及に着目した。分 析の結果、収集したインタビューデータを概念化した。本研究では、基本的にデータ分析 者は筆者のみであったが、研究結果についてはスーパーバイザーとして社会福祉研究者 1 名が確認を行った。

3.調査結果

3-1.地域支援活動の内容

得られたインタビューデータから実施していた地域支援活動を取り上げた。健康診査(以 下、健診と記)参加とは、各自治体の保健福祉センターが主体となって実施されている 3 ヶ月、8 ヶ月等に実施されている健診への参加を指すが、これは 10 あるセンターのうち、8 つのセンターが実施していた12。また、出前保育とは公園や公民館、保健福祉センター等、

センター外の場所へ出向いて遊びを提供するものを指す。本調査においては、出向く場所 は様々であったがすべてのセンターが実施していた。在宅訪問を実施していたのは、4 つの センターのみであり、中でも公立保育園に併設していた 2 つのセンターでは全戸訪問が行 われていた。関係機関や他のセンターとの会議には 8 センターが参加していたが、実際に 連携した活動を行っていたのは、6 センターとなっていた。結果を表 3-4 に示す。

表 3-4. 地域支援活動の内容

健診参加 出前保育 在宅訪問 会議へ参加 地域資源との活動

A ○ ○ ○ ○ ×

B × ○ ○ ○ ○

C ○ ○ ○ ○ ○

D ○ ○ ○ ○ ○

E ○ ○ × ○ ×

F ○ ○ × ○ ○

G ○ ○ × ○ ×

H ○ ○ × × ○

I × ○ × × ×

J ○ ○ × ○ ○

*○・・・活動実施 ×・・・活動未実施

3­2.インタビューデータの概念化とサブ・カテゴリ

インタビューデータを分析した結果、15 の概念と 7 個のサブ・カテゴリが生成された。

概念はセンター担当職員が地域支援活動を実施していく際の困難性が伝わるように配慮し た。この概念生成の過程は、得られた概念をより上位のカテゴリにまとめるための前段階