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(1)銀行との戦略的業務・資本提携

 2004 年 3 月 23 日にはアコムと三菱東京フィナンシャルグループ(現,三菱 UFJ フィナンシャルグループ),2004 年 6 月 21 日にはプロミスと三井住友フィ ナンシャルグループの戦略的業務・資本提携に関する発表が行われた(前者が

「イベント A」,後者が「イベント B」)。

 消費者金融会社にとっての提携の直接的効果は,新たな顧客基盤を開拓する 機会が得られることにあった。銀行内の店舗への消費者ローンの自動契約機の 設置,銀行が提供する消費者ローンの審査基準を満たさない顧客の紹介や,銀 行チャネルを通して従来よりも低い金利で利便性の高いローン商品を提供する ことなどによって,新たな顧客を取り込むことが期待された。一方,これら提 携の間接的効果としては,銀行の信用力をバックにしたブランド・イメージの 向上と銀行グループに入ることで資金調達を安定化できることにあった。

 また,当時厳しい経営環境にあった銀行としても消費者金融業の収益性の高 さは魅力的であった。この時点では,2001 年度以降の収益悪化の原因となっ ていた消費者金融業の貸し倒れが下げ止まり傾向を示していたこと,グレー ゾーン金利の過払い金返還訴訟の増加は先行きの懸念材料ではあったものの,

経営に深刻な影響を及ぼすとの見通しは必ずしもなかったことが,このような 戦略的業務・資本提携が進められた要因であったといえる9)

9) 過払い金返還訴訟が経営に悪影響を及ぼすにつれて,銀行による信用補完という面がさ らに重要となった。2007 年 9 月には三洋信販とプロミスが経営統合し,三洋信販も三井 住友フィナンシャルグループに加わることになったが,これは三洋信販とプロミスの営 業地域の補完関係という経済メリットとともに,三井住友フィナンシャルグループによ る三洋信販の救済という面が強かった。2009 年 9 月には独立系のアイフル,2010 年 9 月には独立系最大手の武富士が経営破綻し,銀行との経営統合戦略が企業存続に大きな 影響を及ぼした。

(2)「グレーゾーン金利」と最高裁判決,アイフル業務停止

 グレーゾーン金利とは,利息制限法の上限金利10)と出資法の上限金利との間 の金利帯のことである(グレーゾーン金利は 2010 年 6 月 18 日に撤廃された)。

「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業法と略)は,「登録を受けた」貸金業 者が行った貸付けで利息制限法の上限を超えていても,「任意性・書面性」11)を 満たす場合には有効な利息の債務の弁済とみなすと定めていた。これを「みな し弁済」という。

 みなし弁済については,最高裁平成 18(2006)年 1 月 13 日判決により「債 務者が,事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をし た場合には,制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものというこ とはできず,法 43 条 1 項の規定の適用要件を欠く」として認められなくなっ た(「イベント C」)。これにより,それまで解釈が曖昧であったグレーゾーン 金利部分の弁済が明確に否定されたことで,利用者による過払い金返還訴訟が 急増し,消費者金融会社の収益圧迫要因となった。

 また,消費者金融大手会社の違法な取り立て行為にも厳しい行政処分が下さ れるようになった。金融庁は 2006 年 4 月 14 日,強引な取り立てなどの違法行 為が 3 店舗,2 部署という広範囲で発覚し,内部管理や法令順守が徹底されて いないとして,アイフルに対して 5 月 8 日から 3 ~ 25 日間,全店舗(約 1900 店)を対象にした業務停止命令を出したと発表した(「イベント D」)。消費者 金融大手への業務停止命令は 2003 年と 2004 年に,武富士を対象に 1 店舗ずつ 行った例があるが,全店舗を対象とした異例の厳しい処分であった。上場して いる消費者金融会社が全店舗を対象とした業務停止命令を受けるのは初めて

10) 利息制限法では,元本が 10 万円未満の場合には年 20%,元本が 10 万円以上 100 万円未 満の場合には年 18%,元本が 100 万円以上の場合には年 15%と定めている。

11) 以下の条件を備える場合に認められる。①債務者が,利息として金銭を任意に支払った こと,②貸主が,借主に対し,貸付けの契約締結後,遅滞なく,同法 17 条所定の事項 を明記した書面(いわゆる 17 条書面)を交付したこと,③貸主が,借主に対し,弁済 の都度,直ちに,同法 18 条所定の事項を記載した受取証書(いわゆる 18 条書面)を交 付したこと,④出資法に違反しないこと(同法 43 条 2 項 3 号)。

で,貸金業の規制見直し議論にも影響しそうだと,当時の新聞は伝えた。

(3)改正貸金業法の制定

 2006 年 12 月 13 日に改正貸金業法が国会で成立,同時に公布された(「イベ ント E」)。改正貸金業法の内容は,1)貸金業の適正化,2)過剰貸付の抑制,

3)金利体系の適正化,4)ヤミ金融対策の強化からなる。

 2007 年 1 月には,ヤミ金融対策の強化として罰則最高刑が懲役 5 年から 10 年に強化された。その後 2007 年 12 月の本体施行,2009 年 6 月の三条施行,

2010 年 6 月に四条施行と四段階に分けて実施されたのが同法の大きな特徴で ある。2010 年 6 月の改正貸金業法の完全施行については,サブプライムロー ン危機に端を発した経済状況の悪化等もあって実体経済に大きな影響を与えか ねないとの懸念から,その見直しが政府内でも検討されたが,最終的には実施 された。

①  2007 年 12 月 19 日の本体施行時(「イベント F」)に,貸金業の適正化と して,業者の登録要件の強化,行為規制の強化12),監督庁の監督強化(業務 改善命令の導入など)が図られた。また,新貸金業協会が設立され,広告の 頻度や過剰貸付防止等について自主規制ルールを制定し,これを当局が認可 する枠組みが導入された。

②  2009 年 6 月 18 日の三条施行(「イベント G」)には,参入条件の強化とし て,業者の財産的基礎要件(純資産額)が個人 300 万円・法人 500 万円から 2,000 万円に引き上げられた(さらに,四条施行時に 5,000 万円以上に引き 上げられた)。また,法令遵守のための助言・指導を行う貸金業務取扱主任 者の資格試験が導入された(四条施行時には,合格者を営業所ごとに配置す

12) 貸金業者の行為として,夜間に加え日中の執拗な取立て行為の規制など規制が強化され た。そのほかに,借り手の自殺による生命保険金による弁済禁止,特定公正証書(強制 執行認諾付公正証書)作成のための委任状取得の禁止,利息制限法を越える契約につい ての特定公正証書作成の嘱託の禁止,催告・検索の抗弁権がないことの連帯保証人に対 する説明義務などがあげられる。さらに,貸付け時にトータルの元利負担額などを説明 した書面の事前交付が四条施行時に義務づけられた。

ることが義務化された)。

③  2010 年 6 月 18 日の四条施行時(「イベント H」)に「総量規制」が導入さ れた。個人貸付けについては,1)自社からの借入残高が 50 万円超となる貸 付け,又は,2)総借入残高が 100 万円超となる貸付けの場合,貸金業者に 年収等を証する資料の取得が義務づけられ,総借入残高が年収の三分の一を 超える貸付けなど返済能力を超えた貸付けが禁止となった13)。また,四条施 行には「みなし弁済」制度が廃止され,出資法の上限金利が 29.2%から 20%に引下げられた。

(4)アイフル,武富士等の経営破綻

 2006 年 1 月にみなし弁済を否定した最高裁判決,同年 12 月には貸金業に対 する規制強化を目的とした改正貸金業法の成立によって,消費者金融会社を取 り巻く経営環境が急速に悪化するなかで,消費者金融会社の倒産が続出した。

 まず,2007 年 9 月 14 日にクレディアが民事再生法適用を申請した(「イベ ント I」)。クレディアは静岡市に本拠をおく消費者金融大手であった。2009 年 2 月 23 日には商工ローン大手の SFCG が民事再生法適用を申請した(「イベン ト J」)。SFCG は消費者金融ではなく事業者金融(商工ローン)を扱う貸金業 者で,過払い金返還訴訟や取立を巡る損害賠償請求が相次ぎ,サブプライム ローン危機以降は資金繰りかが悪化し倒産に至った(負債総額 3,380 億円)。

これらのイベントは貸金業界の先行きの不安定さを表しており,消費者金融大 手四社にも影響を及ぼしたといわれる。

13) 総量規制については,以下のような除外がある。「不動産購入または不動産に改良すす るための貸付け(そのためのつなぎ融資を含む)」「自動車購入時の自動車担保貸付け」

「高額療養費の貸付け」「有価証券担保貸付け」「不動産担保貸付け」「売却予定不動産の 売却代金により返済できる貸付け手形(融通手形を除く)の割引」「金融商品取引業者 が行う 500 万円超の貸付け」「貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介」

   また,以下のような例外もある。「顧客に一方的有利となる借換え」「緊急の医療費の 貸付け」「社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付け」「配偶 者と併せた年収の3分の1以下の貸付け」「個人事業者に対する貸付け」「預金取扱金融 機関からの貸付けを受けるまでのつなぎ資金に係る貸付け」

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