第 3 章 手書き環境の要素技術
3.8 アイデア記述エリアの提供
図3.10:上に凸であるブランチ(左)と下に凸であるブランチ(右) 複雑なマップにおける自動レイアウト
実際の放射状マップにおいては多数のアイデアが配置され,隣り合うブランチを自動レイ アウトすると他のブランチが重なってしまうという問題が生じる可能性もある.そのような 問題を解決するため,各ブランチについて再帰的に自動レイアウトを実施する.
図3.11に,ブランチ配置を一般化したものを示す.新しく描画されたブランチをNとする と,ブランチN の上側にはq本の既存ブランチU1, . . . , Uqがあり,下側にはr本の既存ブラ
ンチD1, . . . , Drがある.既存ブランチはそれぞれ0本以上の子ブランチを持ち,たとえばブ
ランチU1はp本の子ブランチC1, . . . , Cpを持つ.ここで,p, q, rはそれぞれ0以上の整数で ある.
まず,ブランチN とブランチU1に着目する.この2本について,前述の簡略化した自動 レイアウトを実施する.この際,ブランチU1の子ブランチはU1の移動に合わせて平行移動 する.
次に,ブランチU1とブランチU2について自動レイアウトが必要かどうか調査し,必要で あれば同様にレイアウトを行う.これを繰り返し,Uqまでのブランチとそれらの子ブランチ の自動レイアウトを実施する.
さらに,ブランチD1からDrまでについても同様に自動レイアウトを行う.以上の処理を 行うことで,マップ全体の自動レイアウトが実現できる.
P N U
1U
1C
1C
1C
pC
p…
…
…
U
qU
qD
1D
1D
rD
r図3.11:ブランチ配置の一般化
システムにとって,アイデアのストロークは一定の形状や規則を持っておらず,他の要素 と正しく区別することが困難である.アイデア記述エリアを提供することにより,システム はエリア内のストロークをアイデアと認識することが容易になる.この認識率の向上により,
利用者はシステムの認識を訂正する必要性が減少し,結果的にアイデアの発想を阻害しなく なると考えられる.
3.8.2 要素技術の開発
利用者がブランチ線を描画すると,システムによって線上に矩形が表示される.この矩形 がアイデア記述エリアとなる.利用者は矩形の内部にアイデアを書き込む.書き込んだアイ デアはシステムによって自動的に縮小され,図に転載される(図3.12).
図3.12:アイデア記述エリア(左)と自動縮小結果(右)
アイデア記述エリアの内部に記述されたストロークの点集合を行列Aで表現すると,s倍 に縮小後のストロークRは次のような演算を行うことで生成することができる.
R=A
s 0 (s−1)cx
0 s (s−1)sy
0 0 1
これは,中心座標が(cx, cy)であるアイデアストロークを表す行列Aをs倍に縮小し,元 のストロークと中心が同じ位置になるように平行移動する操作である(図3.13).倍率sは予 備実験2の結果をもとに,本研究では以下のように算出した.
s = average(紙上での文字サイズ)/average(タブレットPC上での文字サイズ)
= 2.30/3.59
= 0.64
図3.13: ストロークの縮小と平行移動