わが国の道路は、終戦直後における劣悪な道路交通環境の改善、急速なモータリゼーシ ョンへの対応、都市部における渋滞解消や安全の確保、高速道路ネットワークの形成等の ため、累次の5カ年計画等に基づき、計画的かつ着実に整備され、国民生活の向上や経済 の成長に貢献してきました。
しかしながら、経済社会環境の変化により、道路整備を取り巻く環境は大きく変化して います。
(1) わが国の現況 1)経済状況・財政状況
平成24(2012)年12月に発足した第2次安倍内閣で安倍首相が打ち出した経済政策(ア ベノミクス)効果によりデフレ脱却に向け、わが国の経済はゆるやかな回復が続いていま す。
しかしながら、財政は厳しい状況に直面しており、財務省発表によると国債と借入金、
政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高は平成28(2016)年12月末時点で1,066兆
4,234億円となり、平成29(2017)年1月1日時点の人口推計(1億2,686万人)を基に
単純計算すると、国民1人当たり約840万円の借金を抱えていることなります。
(i)歳出・歳入構造
平成29(2017)年度の日本の歳入総額97兆円のうち35%は、公債金すなわち借金によ
って維持されています。これは将来世代への負担の先送りにすぎません。将来への不安を 取り除くため、早急な財政再建が必要となっています。財政健全化の目標として、政府は、
平成25(2013)年の中期財政計画において、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバ
ランス:PB)について、平成27(2015)年度までに平成22(2010)年度に比べ赤字の対 GDP比の半減、平成 32(2020)年度には黒字化を掲げています。その実現には、2013~
2022年度平均で、GDP名目3%程度、実質2%程度の経済成長と、税収の増加、歳出の重 点化・効率化が不可欠となっています。
しかしながら、平成29(2017)年7月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する 試算」によれば、名目3%、実質2%以上の成長が実現した場合でも、2020年度までに国・
地方の基礎的財政収支を黒字化する目標を達成できない姿となっています。
歳出では、国債費と社会保障関係費と地方交付税交付金等で歳出全体の7割以上を占め ています。経年推移を見ると、社会保障関係費や国債費が増加しています。平成2(1990)
年度と平成28(2016)年度で比較すると、それぞれ2.8倍、1.7倍となっており、特に社
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会保障関係費は平成12(1990)年度から平成28(2016)年度の16年間の平均で毎年約1 兆円の大幅な増加となっています。その一方、公共事業、教育、防衛等といった政策的な 経費の割合は縮小しています。
(注1) 計数については、それぞれ四捨五入によっているので、端数において合計とは合致しないものがある。
(注2) 一般歳出における社会保障関係費の割合は55.6%。
図 7-1 平成 29 年度一般会計歳出・歳入の構成
出典:財務省 平成29年度予算のポイント
図 7-2 一般会計歳出の主要経費の推移
出典:財務省主計局「我が国の財政事情」(平成27年12月)
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(ii)税収の推移
わが国の政府一般会計税収は、平成2(1990)年までは順調に増加していましたが、
バブル崩壊後減少またはほぼ同額の基調が長く続きました。リーマンショック後の平成 21(2009)年に大幅に税収が落ち込んだ後、再び増加基調となってはいるものの、平成 29(2017)年度の税収見込みは、過去のピークには届いていません。
図 7-3 一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移
出典:財務省主計局 我が国の財政事情(平成28年12月)
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2)少子高齢化の進展
人口は平成22(2010)年にピークを迎え、既に減少期に転じており、生産年齢人口(15
~64歳)の急減と65歳以上の高齢者人口割合の増加が見込まれています。
平成29年(2017)年4月1日時点の総人口は、1億2,676万人ですが、生産年齢人口を 含む64歳以下人口は9,186万人となっており、厚生労働省による将来推計では13年後の
平成42(2030)年には64歳以下人口が7,977万人まで1,209万人減少することが見込ま
れています。
これは、概ね年90万人ずつ減少することを意味し、ある意味、毎年政令指定都市規模の 人口が消失するような状況下にあります。
人口減少による税収の減少や、生産年齢人口の減少による経済成長の鈍化等が懸念され ます。
図 7-4 日本の人口推移と予測
出典:厚生労働省 社会保障制度を取り巻く環境と現在の制度 人口の推移
<http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/suii2014.pdf>
2030年
(平成42年)
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3)公共事業関係費の推移
経済の低迷による税収の落ち込みや、少子高齢化による社会保障費の増大のため、財政 赤字が膨らみ、公共投資の削減が続いています。
日本の公共事業関係費は、当初予算ベースでは平成9(1997)年度がピークで9.8兆円で あり、平成29(2017)年度は6兆円と約4割減少しています。
補正後の予算では、平成 10(1998)年度の 14.9 兆円をピークに減少傾向にあり、平成
28(2016)年度には7.6兆円とピーク時の半分程度に減少しています。
一方で、内閣府の社会資本ストック推計によれば、社会資本ストックは平成10(1998)
年度時点の約611兆円から年々増加し、平成21(2009)年度には786兆円となっています。
社会資本ストックは増加しているにも関わらず、公共事業関係費は減少していることにな ります。社会資本の整備水準の向上や今後の急速な人口減少を踏まえれば、今後の社会資 本整備に際しては、一層の重点化を図るとともに、計画的かつ効率的に進める必要があり ます。
年金・医療費等の社会保障支出は年々大幅に増加する等、厳しい財政状況の中、公共事 業の役割を軽視し過度な緊縮財政を続ければ、財政は健全化しても社会資本ストックが不 足し、国民生活の質・経済の供給力を低下させることにもなります。公共事業は財政面だ けで議論せず、規模の適正・質の向上に着目することが重要です。
※本表は、予算ベースである。平成28年度補正及び平成29年度当初は政府案。
図 7-5 公共事業関係費の推移
出典:財務省 平成 29 年度国土交通省・公共事業関係予算のポイント
バブル景気
阪神・淡路 大震災 H7 年 1 月
大手銀行に公 的資金投入 H10 年
リーマンショック H20 年 9 月
東日本大震災 H23 年 3 月
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(2) わが国の道路インフラの状況 1)道路整備の状況
わが国の道路の総延長は、平成27(2015)年4月1日現在127万6,857.4㎞です。
対象とした道路の種類は、「道路法」第三条(道路の種類)に定められた高速自動車国道、
一般国道、都道府県道、市町村道で、他の法律で所管する林道、農道などは含まれていま せん。
道路橋は全国に約70万橋、道路トンネルは約1万本あります。
表 7-1 日本の道路の総延長・実延長(平成 27 年 4 月時点)
道路種別 総延長※1 実延長※2
高速自動車国道 9,265.8 km 8,652.2 km 一般国道 66,031.0 km 55,645.4 km 都道府県道 142,561.4 km 129,446.0 km 市町村道 1,058,999.2 km 1,026,979.9 km 合計 1,276,857.4 km 1,220,723.5 km
1 総延長:道路法の規定に基づき指定又は認定された路線の全延長
2 実延長:「総延長」から「重用延長※3」「未供用延長※4」「渡船延長※5」を除いた延長 3 重用延長:上級の路線に重複している区間の延長
4 未供用延長:路線の認定の告示がなされているが、まだ供用開始の告示がなされていない区間の延長 5 渡船延長:海上、河川、湖沼部分で渡船施設があり、道路法の規定に基づき供用開始されている区間の延長
出典:国土交通省 道路統計年報2016
図 7-6 道路種別別の道路延長と橋梁数・トンネル数(平成 25 年 4 月時点)
出典:国土交通省 道路の老朽化対策の本格実施について
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2)道路の財源
わが国では、戦後激増する交通需要に対応し、乏しい財政事情の中で道路整備を促進す るため、道路特定財源制度と有料道路制度による道路整備(維持管理・更新を含む。以下 同じ。)が進められてきました。すなわち、高速道路等の有料道路は高速走行が可能な走り やすい空間の提供の対価としての通行料金収入を財源とし、その他の道路はガソリン消費 が道路利用と密接に関連すること等に着目して揮発油税等自動車関係諸税の多くを特定財 源化することにより、いずれも利用者の負担による道路整備が行われてきました。厳密に は、道路整備には一般財源も投入されていましたが、基本的には受益者負担により道路整 備が促進されてきました。
(i)道路特定財源の一般財源化
道路特定財源制度は、道路整備に必要な財源を安定的に確保するため、受益者である自 動車利用者が税を負担する制度です。有料道路制度と並んで、戦後日本の立ち遅れた道路 整備を、自動車利用者の負担により、緊急かつ計画的に行うための財源としての使命を担 ってきました。昭和29(1954)年に、ガソリンにかかる揮発油税が道路整備の特定財源と されたことがその始まりですが、その後、自動車が急速に普及し、道路が社会を支える重 要なインフラとして組み込まれるにつれ、道路整備の重要性はさらに高まりました。
道路特定財源制度の理念は「受益者負担」及び「損傷者負担」にありました。特定財源 の各税目は、道路を自動車で走行することから得る各種便益または道路に与える損傷の代 価と位置づけられていました。具体的には、揮発油税、地方道路税、石油ガス税及び軽油 取引税の燃料税は従量税であり、道路の走行による受益に応じた税負担とされていました。
また、自動車重量税は、損傷者負担の考え方に基づき、重量すなわち道路に損傷を与える 度合いに応じた課税とされていました。
このような背景のもと、道路整備のための財源として、道路特定財源諸税は創設され、
拡充されてきました。また、税率についても累次の道路整備5ヶ年計画等のための財源を 賄うため、5ヶ年計画のたびに見直されてきました。
しかしながら、その後、道路の整備水準が向上したことや、公共投資全体の抑制傾向か ら道路歳出も抑制されたことにより、平成19(2007)年度には、特定財源税収が歳出を大 幅に上回ることが見込まれるに至りました。その規模は平成19(2007)年時点で国税 3.4 兆円、地方税2.2兆円でした。
道路特定財源制度は、公平性、安定性、合理性等の長所を備えていました。けれども、
資源配分の非効率や財政の硬直化を招く原因ともなりえたことから、構造改革の一環とし て、制度の見直しの検討が進められました。平成17(2005)年12 月に政府・与党による
「道路特定財源の見直しに関する基本方針」が取りまとめられ、最終的に平成21(2009)
年度からすべて一般財源化されています。