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(6)取引関係:取引関係については、二次下請け、三次下請け企業では直接雇用の外国人 労働者が少ないが、親企業や一次下請け企業では一層少ない。また、二次下請け、一次下請 けでは外国人労働者が間接雇用されているものの、親企業や三次下請けでは雇用されていな い。さらに、取引関係がいずれであっても技能実習生は受け入れられている。
(7)業況:業況とは関係なく直接雇用の外国人労働者、技能実習生はいるが、業況が悪い 場合には間接雇用の外国人労働者はいない。
第5表 外国人雇用を決めるもの
属性 直接雇用
外国人労働者
間接雇用
外国人労働者 技能実習生
東北 ○41 ○
北関東・甲信 △ ○ ○
南関東 △ ○ ○
東海 △ ○ ○
地域
四国 ○
素材型 △ × △
金属製品 △ △ ○
加工型 △ × ○
組立型 △ ○ ○
農業・水産業 △ × ○
業種
(製品)
縫製業・建設業 × × ○
大 △ △ △
中 △ ○ ○
企業規模
小 △ × ○
充足 × ○ ○
日本人労働者の
充足状況 未充足 △ ○ ○
長期 △ × △
中期 × × △
仕事内容と求められ る技術・熟練の性質
(期間で換算) 短期 △ ○ ○
親企業 × × △
一次下請け × △ △
二次下請け △ ○ ○
取引関係
三次下請け等 △ × ○
良い △ ○ ○
横ばい・回復 △ ○ ○
業況
悪い △ × ○
注)記号は、○:外国人を多く雇用している、△:外国人を雇用しているが数は少ない、×:外国人 を雇用していないことを意味する。
41 業務請負会社からの聞き取り結果から記入。
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以上の点のいくつかは、従来の調査・研究でも指摘されていることと整合的である。丹野 等において指摘されているように、間接雇用の外国人労働者は、日本人労働者を正規従業員 として雇用するよりもコスト面では安いかもしれないが、パートタイマーやアルバイトより は高い。したがって、支払能力があり、ある程度まとまった人数が必要な企業で雇用されて いると考えられる。
日本人労働者との関係を考えると、外国人労働者は日本人正規従業員とは補完的関係にあ り、パート・アルバイトとは代替的な関係にあると考えられる。これは、樋口、大竹・大日 の指摘と概ね一致している。しかし、日本人労働者との関係については、外国人労働者の属 性によって異なっているように思われる。たとえば、業種を見ると、すべての業種において 技能実習生は受け入れられているが、間接雇用の外国人労働者の有無、日本人労働者の充足 状況との関係をあわせて見ると、間接雇用の外国人労働者がいない、日本人労働者も未充足 の企業で技能実習生が活用されているように思われる。こうした企業における技能実習生は 日本人労働者、間接雇用の外国人労働者の両方と代替的な関係にある。
さらに、間接雇用の外国人労働者と技能実習生を同時に受け入れている事例があった(Ⅰ
-B-4社、Ⅱ-18社)42。
こうした外国人労働者の雇用の背景には以下の諸要因が関係していると思われる43。
2 ものづくり現場がおかれた環境
聞き取り調査において各企業の業況に影響を与える要因をたずねたときに、「長期にわた る景気の低迷、そこからの回復」、「国際競争の激化」、「きびしい価格競争」、「取引先からの コスト切り下げ圧力」「若年者の採用難と定着の悪さ」という点を指摘する企業が多かった。
製造業を始め多くの場面でいわゆる「非典型労働者」の増加が指摘されている。第2章で も見たように、これまで様々な要因が指摘されてきた。今回の聞き取り調査では、コスト削 減圧力、雇用の柔軟性の確保、製品のモジュラー化との関連を指摘する企業が多かった。
国際競争及び価格競争の激化によってコスト削減圧力が大きくなる。それに対応する方策 の1つとして、企業は雇用の柔軟性を確保するために、製品をモジュラー化してアウトソー シングを進める必要があった。製品がモジュラー化されることによって、高い技術・技能を
持たない未熟練労働者や外国人労働者であっても生産現場で雇用できる。事例では仕事にな
れるまでの期間が数日というものもあった。業務請負会社の日系人労働者が技術・技能を有 していなくても製造現場で働くことができるのはこのためである。これに対して、製品をモジュラー化することができない、高い技術と熟練を必要とする仕 事ではアウトソーシングすることができず、コスト削減圧力に直面することになる。中には
42 この2社の事例については、第3表、第4表の間接雇用で外国人労働者がいる事例・技能実習生を受け入れて いる事例、両方に掲載するべきであるが、聞きとりのウエイトをどちらにおいたかで1カ所に掲載した。
43 以下の議論はあくまで聞き取り調査に基づくものであり、情報に偏りが含まれているので一般化するには慎重 でなければならない。
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海外進出をすることで対応する企業もあったが、高い技術と熟練を必要とする仕事であれば 生き残りも可能と考えられる。この点については後で取り上げる。
労働市場の状況をみると、若年労働力の確保が困難になっていることが共通していた。若 年労働力の確保が困難になっているという場合、いくつかに分けて考えるべきである。
まず、少子高齢化によって若年労働力が減少することによる構造的な側面である。若年労 働力の減少によって相対的に労働需要が大きくなり、そのため労働力の確保ができなくなる 企業が増加するというものである。
これと同時に、これまで中小規模の企業で雇用されていた若年労働力が、景気回復によっ てより大きな企業にシフトしていく循環的な側面がある。景気後退期には大企業の採用が縮 小するので、若年労働力が中小規模の企業へとシフトし、その結果、中小規模の企業では景 気後退期において若年労働力の採用が可能になることが指摘されていた。しかし、景気が回
復し、それまで採用数を控えていた大企業が採用拡大に転じると若年労働力は中小企業から
大企業へとシフトすることになる。日系人集住地域では、大手の自動車メーカーおよびその 関連企業が採用の拡大に踏み切ったことにより、これまでより若年労働力の採用が困難にな っている。このほか、若年者の定着が悪いことが多くの企業から指摘された。若年労働者の定着の問 題についてはいくつかの解釈がなされており、最近では、景気の低迷によって本来希望して いなかったような「不本意な」就職をしたため、それが定着につながらないといった指摘も なされている。しかし、景気が回復し、より良好な就業機会が増えるならば、若年者の転職 は一層増える可能性がある。
若年労働者の雇用と外国人労働者の雇用がどのような関係にあるかは必ずしも明確ではな い。しかし、今回の事例では若年労働者を採用できているので外国人労働者を雇用していな いという企業もあった。いいかえると、これまで若年労働者と外国人労働者が代替的な関係 にあったことになる。もし、若年労働者の雇用が難しくなっているとすると、外国人労働者 の雇用が増える可能性もある。この点については継続的に観察していく必要があろう。
3 外国人労働者に求められる日本語能力
今回の調査対象企業には、「日本語で仕事をすることが出来る外国人に限って雇用する」
というケースがいくつかあった。つまり、企業が外国人労働者を雇用するかどうか意思決定 する際に考慮に入れる要素として、外国人労働者がどの程度の日本語能力なのかという点が 関係していることになる。
外国人労働者の日本語能力のレベルは、直接雇用するかどうかの意思決定に影響すると考 えられる。企業が外国人労働者を直接雇用した場合、仕事の指導や指揮・命令は日本語で行 われる。したがって、外国人労働者の日本語能力が低ければ企業から期待されるだけの役割 をこなすことが出来なくなる。
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外国人労働者を直接雇用している事例には、正規従業員として直接雇用している企業と非
正規従業員として直接雇用している企業があった。正規従業員として外国人労働者を直接雇
用している場合、比較的日本語能力が高く、仕事も日本人と変わりないことが多い。一方、非正規従業員として外国人労働者を雇用している場合、日本語能力は簡単な日常会話レベルで、
仕事内容も比較的簡単な作業、補助的な作業が多い。したがって、高度な内容の仕事を任せ るためには一定レベル以上の日本語能力が求められると考えられる。
では、間接雇用の場合はどうか。外国人労働者を間接雇用する場合、業務請負と派遣とで は求められる日本語レベルが異なると考えられる。業務請負として比較的多くの人数の外国 人労働者を受け入れている場合、業務請負会社は通訳を派遣するか、派遣する外国人労働者 の中に日本語能力の高い外国人労働者を何人か含めることが多い。請負社員として働く日系 人労働者の中には日本語をまったく話せないか片言しか話せない者が少なくない。しかし、
業務請負会社が上記のようなシステムをとっているので、日本語能力が低くても問題は生じ ない。送り出す外国人労働者の人数が少ない場合、業務請負会社では巡回によって対応して いるということであるが、場合によっては送り出し先の企業から仕事上の指示が出されるこ ともある。そのような場合、日本語を理解できないと仕事に支障が生じる。聞きとりの事例 の中に日本人中心の業務請負会社と日系人中心の業務請負会社の競争が激しくなっているこ とが指摘されたが、こうした点も関係していると思われる。
派遣の場合、指揮・命令が派遣先の企業から出されるので、仕事上必要なレベルの日本語 能力が求められる44。
4 企業が求める技術・技能とその修得
今回調査した南関東の産業集積地の企業事例のなかには、高い技術力でものづくりを行っ ていたケースがあった。そうした企業のなかには、人手不足で日本人を採用できない企業が いくつかあった。なぜ、こうした企業では雇用対象を日本人労働者だけではなく、外国人労 働者に広げないのであろうか。
これは、仕事をする上で求められる技術・技能の内容が外国人労働者の就業行動、日本語 能力とあわないからだと考えられる。仕事の内容が比較的単純な作業で、仕事になれるまで の期間が短い場合、その仕事を業務請負会社にアウトソーシングすることが出来る。しかし、
仕事の内容が高い技術を必要とし、その習得までに長期間かかる場合、アウトソーシングで は対応できない。正規従業員として企業に定着し、
O J T
によって技能を高めることが求め られる。事例の中には、仕事で求められる技術が比較的高いにもかかわらず、間接雇用を活 用しているケースがあったが、これは高い技能を要する仕事に当たることが出来る社外工で
44 業務請負の場合と同様に、派遣される人数が多いときには、日本語を理解できる外国人労働者がいれば仕事 上の支障はあまり生じない。しかし、派遣される人数が少なければ、一定以上の日本語能力が求められる。