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むすび

ドキュメント内 超音波照射を用いて合成した (ページ 79-112)

第 7 章 超微細水酸アパタイト焼結体の性質

7.1 超微細水酸アパタイトの初期焼結過程

7.1.4 むすび

7.2 低温度で高強度な超微細水酸アパタイト焼結体の作製

7.2.1 まえがき

HApを生体材料として使用するためにHApを焼成して焼結体とすることが必 要である.HAp の焼結体に関する研究は多く行われており,焼結は通常の乾式 法10)13)および放電プラズマ焼結14), 15)などで行われている.また,HAp圧粉体 の成形は一軸加圧16),熱間等方圧加圧法(HIP)17), 18),冷間等方圧加圧法(CIP)19),

20)などにより行われている.なお,HAp の焼成温度は一般的に 1000~1300℃で 行われており,それにより相対密度が最大となり,焼結体の強さも最大となる10)

物質の粒径がナノメートルサイズになると,莫大な比表面積や界面をもち,バ ルク物質より融点や焼結温度の低下などのユニークな性質をもつようになる.

そのため,ナノサイズの超微細な HAp を用いれば,低温度でも焼結が進行し,

超微細であることから高密度かつ高強度のHAp焼結体が得られると考えられる.

HAp 焼結体は骨欠損部に埋植すると,周囲の骨と強硬に結合して一体化すると されている21).これに対して,β-リン酸三カルシウム(β-TCP)焼結体はHAp 焼結体とは異なり,生体吸収性を示し,骨に置換するのが特徴である 22).これ らの違いは溶解性にあると考えられる.そのため,超微細HApを用いて低温度 で焼結することにより結晶成長させない焼結体を作製できれば溶解性が高くな り,生体吸収性を示すHAp焼結体を得ることが可能になると考えられる.

そこで,7.2 節では,低温度で高強度を発現する HAp 焼結体の作製を目的と し,HApの合成条件および焼結条件について検討した.さらに生体吸収性HAp 焼結体としての有効性を期待し,焼結体の水中での溶出性などについても検討 を行った.

7.2.2 実験方法

超微細HAp圧粉体は,0.2 gの超微細HApを金属製の金型中に充填し100 MPa の一軸加圧を1分間行い,直径10 mm,厚さ2 mmのHAp圧粉体を作製した.

電気炉を用いてこのHAp圧粉体を昇温速度10℃・min-1で加熱し,1000℃で3時 間保持した.降温速度は8.3℃・min-1とし,300℃まで冷却してから HAp焼結体 を取り出した.HAp焼結体のCa2+溶解量は試料50 mgを100 cm3の水中に60分 間浸漬させ,マイクロ波プラズマ原子発光分光分析(MP-AES)により定量した.

7.2.3 結果および考察

7.2.3.1 直接法および間接法による超微細HApを用いた焼結体の作製

各方法で合成した比表面積の異なる HAp を用いて HAp 圧粉体を作製した.

このときの圧粉体の相対密度を図 7-2-1に示す.直接法で合成した HApを用い てHAp圧粉体を作製し,その相対密度を測定した結果,比表面積の増大に伴い,

相対密度はわずかに上昇した.比表面積257 m2・g-1のHApを用いた圧粉体の相 対密度では45.6%となった.一般的には,微細な粉体を用いると相対密度が上が らないとされているが,今回のナノ粒子では比表面積が高いほうの相対密度が よいことが確かめられた.一方,間接法で合成したHApを用いてHAp圧粉体を 作製した場合,直接法と同じように比表面積が高いほうが相対密度は高くなっ たが,同じ比表面積で 5~6%程度相対密度が低いことが確かめられた.これは 非晶質リン酸カルシウム(ACP)を含むためと推察する.

図7-2-1 各HAp圧粉体相対密度に及ぼす比表面積への影響

成形圧力: 100 MPa, 時間: 1 min 超音波照射, ●: 間接法,■: 直接法

7.2.3.2 HAp焼結体の曲げ強さ

直接法で合成した比表面積257 m2・g-1のHApを加圧成形して作製したHAp圧 粉体を800℃以上で焼成した時のX線回折図形を図7-2-2に示す.なお,このX 線回折図形はHAp圧粉体をそのまま測定した結果である.焼成前は低結晶性の HAp であったが,800℃で焼成すると高結晶性の HAp の回折ピークが観察され た.1000℃まで焼成温度が高くなるとHApの結晶性はさらに向上した.しかし ながら,1100℃ではわずかにHApの回折ピーク強度が低下した.また,ここで は示さないが,HApの比表面積が低くなると,HAp焼結体の回折ピークは低く なる傾向がみられた.すなわち,微細な HAp ほど焼結しやすいと考えられる.

図7-2-2 各温度で焼成したHAp焼結体のXRD図形 超音波照射: 直接法

比表面積: 257 m2・g-1,時間:3 h

(a): 超微細HAp圧粉体, (b)~(e): HAp焼結体 焼成温度 / ℃, (b):800, (c):900, (d):1000, (e):1100 〇:HAp

一方,図7-2-3に間接法で合成した比表面積の異なるHApを加圧してHAp圧 粉体としてこれを1000℃で焼成した時のX線回折図形を示す.比表面積が高く なるとHApの回折ピークは強くなった.しかしながら,β‐TCPに起因する回折 ピークも観察された.β‐TCP の回折ピークの強度は比表面積の低いほうが高く なる傾向がみられた.これはACPからβ-TCPへの転移が起こっていることが考 えられる23).ACPからβ‐TCPあるいはHApに結晶化するかはCa/P原子比に影 響される3)24).すなわち,間接法で合成したHApには ACPが含まれているた め比表面積が小さく,すなわち反応時間が短いほどHAp中に含まれているACP 量が多くなっていると考えられる.

図7-2-3 各比表面積から作製したHAp焼結体のXRD図形

超音波照射: 間接法

焼成温度: 1000 ℃, 時間: 3 h

(a): 超微細HAp圧粉体, (b)~(d): HAp焼結体 比表面積 / m2・g⁻1, (a): 220, (b): 188, (c): 220, (d): 273

〇:HAp,▲:β-TCP

図 7-2-4に直接法で合成した HApを用いて得られた焼結体の曲げ強さおよび 相対密度に及ぼす焼成温度の影響を示す.800℃で焼成した HAp 焼結体の曲げ

強さは16 MPaであり,焼成温度の上昇に伴い曲げ強さは直線的に上昇し,1000℃

では77 MPaとなった.しかし,1100℃では曲げ強さは56 MPaに低下した.こ

の結果は,図 7-2-2で示した HApの回折ピーク強度と一致していた.また,相 対密度をみると曲げ強さと同じような傾向がみられ,1000℃において最大の 90.7%を示した.HAp 焼結体は焼結温度 1150~1250℃付近で最大の圧縮および 曲げ強さとなるが25), 26),ナノ粒子のHApを用いることにより,最適な焼成温度

は 1000℃まで低下した.温度が高くなると強さが低下する理由としてはいくつ

か考えられるが,一つはβ-TCPの生成が考えられる.HApとTCPの混合物を焼 成した場合,TCP量が増えると曲げ強さが低下する報告がある27).X線では明

図7-2-4 直接法で合成したHApを用いて得られた焼結体の曲げ強さ

および相対密度に及ぼす焼成温度の影響 比表面積: 257 m2・g⁻1, 時間: 3 h

■: 曲げ強さ, □:相対密度

確なβ-TCPの回折ピークはみられないが,HApの回折ピークが低下しているこ とよりその生成が示唆される.なお,さらに曲げ強さを増大させるためには,圧 粉体の作製を一軸加圧だけでなく,HIP や CIP を用いることにより等方的な圧 力を加え,圧力の偏りがほぼないHAp焼結体が作製でき,さらに高強度になる と考えられる.

図7-2-5に直接法と間接法で得たHApを用いて作製したHAp焼結体の曲げ強

さおよび相対密度に及ぼす原料HApの比表面積の影響を示す.直接法で得られ たHApを用いた場合では,比表面積が高くなるほど曲げ強さは直線的に大きく なり,最大値は比表面積257 m2・g-1で77 MPaを示した.間接法で合成したHAp を用いた場合でも同じような傾向を示し,HApの比表面積が高いほどHAp焼結 体の曲げ強さは増大する傾向がみられたが,曲げ強さは最大でも39 MPaであっ た.直接法と比較して

図7-2-5 直接法と間接法で得たHApを用いて作製したHAp焼結体の

曲げ強さおよび相対密度に及ぼす原料HAp比表面積の影響 焼成温度: 1000 ℃,時間: 3 h

●,〇: 間接法, ■,□: 直接法 ●,■: 曲げ強さ, 〇,□: 相対密度

曲げ強さ/ MPa 相対密度/ %

比表面積 / m2・g-1

間接法で合成した HAp を用いると,HAp 焼結体の曲げ強さが低かったのは β‐

TCPを含むためと考えられる.また,いずれの超音波照射によって合成したHAp の相対密度も比表面積の低下に伴いわずかながら低下した.直接法と間接法と では,得られた焼結体HApの相対密度の差は13%程度であり,HAp圧粉体との 相対密度と比較して差が大きくなった.

図 7-2-6に直接法で比表面積を変化させることにより得られた HAp 焼結体の

表面のFE-SEM写真を示す.図7-2-5に示したように比表面積161 m2・g-1のHAp から作製されたHAp焼結体の相対密度は87%であり,SEM観察像には大きな空 隙が観察された(a).また,HAp粒子の大きさは100 nm程度であった.HAp原料 粉の比表面積が高くなると順次この空隙は小さく,また少なくなった(b),比表 面積257 m2・g-1のHAp焼結体では空隙がいくつかみられるが,その大きさは100 nm以下となった(c).

図7-2-6 直接照射法により得られたHAp焼結体表面のFE-SEM像

超音波照射:直接照射法

焼成温度:1000 ℃, 焼成時間: 3 h

比表面積 / m2・g⁻1, (a): 161, (b):225, (c):257

図 7-2-7に間接法で比表面積を変化させることにより得られた HAp 焼結体の

表面のFE-SEM写真を示す.図7-2-6の写真と比較して全体的に空隙が多くなっ

ていた.これは焼成時にACPがβ-TCPに転移することにより収縮したことなど が起因していると考えられる.

つぎに,各試料との曲げ強さの比較を図 7-2-8 に示す.超微細 HAp は圧粉体 から焼成温度 1000℃までの焼結体を用いた.また,比表面積 5 m2・g-1の市販の HApおよびβ-TCPは1000℃で焼成した焼結体を用いて比較検討を行った.市販 のHAp焼結体の曲げ強さは10 MPaであり,β-TCP焼結体は15 MPaであった.

一方,超微細 HApの曲げ強さは,焼成温度 800℃以降で徐々に上昇した.市販 のHApの相対密度は46%であり,超微細HApのそれと比べると半分程度の値で

図7-2-7 間接照射法により得られたHAp焼結体表面のFE-SEM像

超音波照射:直接照射法

焼成温度:1000 ℃, 焼成時間: 3 h

比表面積 / m2・g⁻1, (a): 180, (b):220, (c):273

ドキュメント内 超音波照射を用いて合成した (ページ 79-112)

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