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世 界 の研 究 活 動 の動 的 変 化

① データベースに収録された世界の論文量は一貫して増加傾向であり、最近では年間約

100

万件 である。特に、2003年から増加率が上昇している。

② 複数国の研究機関による論文(国際共著論文)の数の増加は顕著だが、国際共著率は国により かなり異なる。英国

52.4%、ドイツ 51.2%、フランス 52.4%と高く、日本 26.4%、米国 33.4%、中

23.7%である。これらは、国際共同研究などが増加していることを意味し、国のボーダーを越え

る知識生産や知識の共有が活発化してきていることが示唆される。

③ 国際共著論文の増加に伴い、整数カウント法(複数国の共著による論文

1

本の場合、それぞれの 国に

1

とカウントすること。)と分数カウント法(複数国の共著による論文の場合(例えば

A

国と

B

国 の共著)、それぞれの国に

1/2

とカウントすること。)により、各国のシェアやランキングに差異が生 じるようになってきている。

④ 中国の論文数および

Top10%補正論文数の伸びに注目しがちだが、ブラジル、トルコ、イランな

どが全分野および複数の分野で存在感を大きくしてきている。

(2)

国 際 共 著 論 文 から明 らかになる国 際 研 究 協 力 の構 造 変 化

<国際共著論文の特徴>

① 国際共著論文の特徴として、いずれの主要国においても、単国の研究機関による論文(国内論 文)に比べ、国際共著論文の方が一論文当たりの被引用数が高い。

② また、国際共著論文の中でも、2国間共著論文に比べ、多国間共著論文の方が、一論文当たり の被引用数が高いことが示された。

③ 国際共著率は研究活動のスタイルも反映するため、分野ごとに異なる。物理学や環境・地球科学 で比率が非常に高く、臨床医学、化学、材料科学、工学では比較的低い。全ての分野で国際共 著率は増加傾向にある。これらの傾向は米国や日本、英国、ドイツ、フランスに共通している。

④ 中国は、化学以外の

7

分野で国際共著率を低下させている。また、韓国は臨床医学で国際共著 率が低下している。

<国際共著相手の時系列変化>

⑤ 日本の国際共著相手国の時系列変化を見ると、1999-2001年では第

1

位の相手国は全論文およ びいずれの分野においても米国であったが、2009-2011年では化学と材料科学において第

1

位 が中国となっている。

⑥ 米・英・独の国際共著相手国の時系列変化を見ると、日本は、いずれの国の国際共著論文中に おいても順位を下げている。また各分野においても順位やシェアを低下させており、日本の存在 感が低下している。

⑦ 米国の共著相手国として、1999-2001年ではドイツ、英国、カナダが拮抗して

1~3

位を占めてい たが、現在は中国が第

1

位である。化学など

8

分野中

5

分野では中国が第

1

位となっており、米 中の関係性が確実に強まっている。また、英・独・仏においても、中国は、日本に比べ顕著に国 際共著相手としての存在感を形成している。

91 (3)

個 別 指 標 に見 る主 要 国 の研 究 活 動 の状 況

① 日本の論文数の傾向を整数カウント法によってみると、1990年代は高い増加率で論文数を伸ば したが、2000年代になり増加率は低下している。特に、2000年代の増加率は世界平均を大きく 下回っている。この間、米・英・独・仏は増加率が上昇し続けており、状況は日本と大きく異なる。

中国は大幅に増加している。日本の順位は、最新値である

2009-2011

年では米・中・英・独に続 く第

5

位である。

② 日本の論文数の傾向を分数カウント法によってみると、傾向は整数カウント法と同様である。英国 が日本と同様に

2000

年代になり、増加率が低くなっている。日本の順位は、英・独より上位となり、

3

位である。

③ インパクトの高い論文(Top10%補正論文数、整数カウント法)における日本の順位は、最新値で

ある

2009-2011

年では米・英・独・中・仏・加に続く第

7

位である。化学、材料科学や工学、臨床医

学の日本の

Top10%補正論文数の伸び率が主要国と比較して低い。加えて、中国やその他新興

国の台頭により、日本の

Top10%補正論文数シェアは 2000

年代に入ると低下傾向である。

④ 特定のジャーナルにおける日本の論文数シェアと

Top10%補正論文数シェアは、Science

では上 昇傾向、Natureでは低下傾向である。両誌における論文数シェアと

Top10%補正論文数シェア

で日本は米・英・独には大差をつけられているが、フランスとは

Top10%補正論文数シェアにおい

て互角のポジションにある。また中国はいずれのシェアも伸ばしているが、日本には及ばない。し かし、臨床医学分野の主要ジャーナルである

New England Journal of Medicine

Lancet

では、

論文数シェアおよび

Top10%補正論文数シェアで、日本は中国に追い越されている。なお、臨床

医学の全論文を対象とした場合、日本が中国を論文数シェアでは

1

ポイント(日本

6.2%、中国

5.2%)、Top10%補正論文数シェアでは 0.9

ポイント(日本

4.8%、中国 3.9%)上回っており、臨床

医学分野の中でも日本と中国それぞれの活動範囲に濃淡があると考えられる。

(4)

複 合 指 標 に見 る主 要 国 の研 究 活 動 の状 況

① 日本の論文に占める

Top10%補正論文数の度合をみると、低下傾向である。最新値である 2011

年では、英・独はそれぞれ

15.5

14.7

であり、日本は

8.6

と水を空けられている。

② 論文数と被引用数のバランスを相対被引用度で比較すると、日本は

2011

年では全分野で

1.00

と世界平均を上回っている。しかし、全分野で米国が

1.51、英国 1.48、ドイツ 1.39

であり、まだ差 が大きい。分野ごとにみると、化学、材料科学、物理学では

1

を上回っている。環境・地球科学、

基礎生命科学では現在ゆるやかな上昇基調であり、1に近づきつつある。

(5)

主 要 国 の研 究 活 動 の分 野 バランスの変 化

① 日本の研究ポートフォリオは、1990年代後半では化学、材料科学、物理学のシェアが高く、計算 機・数学や環境・地球科学のシェアが低いいびつな形であった。2000年代後半になると日本の 論文数の増加率の低さと世界各国の増加率の高さによって全体的にシェアが下がったこと、この 傾向が化学、材料科学、工学で顕著であったことから、分野ウェートの偏在度は低くなり、円形に 近い小さなポートフォリオへと変化した。

92

② 論文数シェアと

Top10%補正論文数シェアの研究ポートフォリオを比較すると、米国、ドイツ、フラ

ンス、英国では

Top10%補正論文数シェアの方が論文数シェアに比べて高く、日本や中国や韓

国は

Top10%補正論文数シェアの方が論文数シェアに比べて低い。

③ 英・独・仏は

1990

年代後半、比較的分野ウェートの偏在度が低いポートフォリオであったが、英国 は、物理学、環境・地球科学、臨床医学、基礎生命科学のウェートが拡大した。ドイツとフランスは、

物理学や環境・地球科学のウェートが大きくなってきており、欧州各国の研究ポートフォリオが変 化してきている。

④ 米国は、生命科学系と環境・地球科学のウェートが大きく、化学、材料科学、物理学のウェートが 小さい研究ポートフォリオであったが、加えて近年工学のウェートが小さくなっている。

⑤ 中国は、化学、材料科学、物理学、計算機・数学、工学のウェートが高く、非常に偏った研究ポー トフォリオである。工学や計算機科学においては、Top10%補正論文数シェアが論文数シェアを 上回っている。

(6)

日 本 内 部 の組 織 区 分 別 の論 文 産 出 構 造 の変 化 (分 数 カウント法 )

① 日本の論文産出において、1番大きなシェアを占めている組織区分は一貫して国立大学である。

2

番目の組織区分が私立大学である。3番目の組織区分は

1990

年代後半には企業が担ってい た。しかし、企業が大幅に論文数を低下させ、その一方で独立行政法人が論文数を増加させた ため、現在では独立行政法人が

3

番目の組織区分に浮上した。1990年代後半から日本の組織 区分別の論文産出構造がダイナミックに変化したことは明らかである。

② 日本の論文に占める各組織区分の割合を分野ごとに比較すると、(1)国立大学のシェアは変化せ ず、独立行政法人のシェアが高くなった化学、材料科学、物理学、環境・地球科学、基礎生命科 学、(2)国立大学のシェアが高くなった計算機科学、工学、(3)国立大学のシェアは低下し、私立 大学のシェアが高くなった臨床医学に分類される。

③ 国立大学の論文数は伸び悩んでいる。分野別にみると、化学、材料科学、物理学、工学、基礎 生命科学では伸び率がマイナスに転じており、注意を要する。一方、私立大学の論文数の伸び 率はいずれの分野においても上昇している。

Top10%補正論文数に関しては、国立大学は 2000

年代に入り横ばい傾向を示していたが、最新

値(2009-2011年)では上昇が確認された。ただし、化学と材料科学では減少しており、分野によ り状況は異なる。

<参考資料>

参考資料1:

主要国論文数および Top10%補正論文数

基礎データ

(裏空白)

93

参 考 資 料 1:主 要 国 論 文 数 および TOP10 %補 正 論 文 数 基 礎 データ

① 主要国の論文数の推移(単年、整数カウント法)

論文数(単年)

整数カウント法 データ

ベース年 化学 材料 物理学 計算機・

数学 工学 環境・

地球科学 臨床医学 基礎

生命科学 全分野 1981年 64,326 13,751 48,880 18,158 33,748 21,764 119,549 133,388 471,203 1982年 66,169 14,454 47,691 21,612 36,531 22,803 125,605 138,590 494,793 1983年 67,308 15,211 49,359 23,989 43,110 24,270 127,672 140,969 519,422 1984年 67,487 14,771 49,301 24,270 44,373 24,677 128,813 140,797 520,833 1985年 71,164 15,384 53,353 25,494 44,265 25,934 135,746 148,723 544,825 1986年 72,931 16,398 55,025 26,185 38,902 25,332 141,137 153,482 548,178 1987年 70,282 14,963 55,241 25,476 39,007 26,331 141,625 151,368 540,494 1988年 73,245 16,664 62,318 25,687 40,653 24,973 144,457 156,641 561,411 1989年 74,668 17,240 64,044 26,654 41,288 27,094 152,405 162,643 581,650 1990年 75,652 18,508 66,528 27,332 43,731 28,306 155,352 166,603 600,170 1991年 78,436 20,894 66,882 28,552 44,828 28,658 158,322 169,285 612,358 1992年 81,013 21,930 71,296 27,091 49,807 30,383 164,820 174,836 639,183 1993年 79,299 22,127 69,480 29,520 49,373 30,386 161,955 173,596 632,844 1994年 83,010 22,671 74,844 28,317 57,847 32,653 172,047 176,866 672,380 1995年 89,957 25,457 77,823 30,498 62,687 34,585 178,715 183,954 706,797 1996年 92,067 27,831 77,033 30,347 62,982 35,904 183,103 188,378 725,173 1997年 89,829 28,003 79,937 29,826 62,659 36,383 188,906 188,434 728,356 1998年 93,233 30,418 81,034 31,795 66,301 37,471 195,198 195,288 759,873 1999年 95,797 31,480 84,702 30,978 64,544 40,575 199,155 197,174 772,854 2000年 95,346 31,016 83,170 32,680 63,697 40,903 196,372 196,281 769,243 2001年 97,304 32,820 85,702 32,622 67,736 42,851 200,415 198,220 787,548 2002年 97,688 34,432 86,931 33,353 64,218 42,923 196,335 198,904 785,327 2003年 104,995 36,206 93,727 36,866 72,738 48,820 212,748 212,467 866,016 2004年 105,417 37,498 89,085 34,488 68,341 47,218 201,694 204,637 839,539 2005年 121,055 43,289 105,393 41,129 77,125 53,996 234,595 231,537 961,792 2006年 118,672 42,852 102,436 43,541 81,090 53,710 232,078 228,618 959,814 2007年 117,832 47,872 104,480 45,918 84,597 56,923 238,626 235,767 957,902 2008年 132,786 53,020 122,457 56,363 99,736 66,729 287,572 274,087 1,124,594 2009年 135,855 58,084 120,021 59,894 107,701 68,098 285,287 274,516 1,143,020 2010年 133,953 52,922 110,232 57,209 101,489 66,484 291,496 270,991 1,116,177 2011年 146,154 58,745 115,673 61,252 109,832 71,569 310,401 284,937 1,194,332

論文数(単年)

整数カウント法 データ

ベース年 化学 材料 物理学 計算機・

数学 工学 環境・

地球科学 臨床医学 基礎

生命科学 全分野 1981年 7,096 917 4,201 790 2,457 440 4,060 8,926 29,774 1982年 7,270 848 3,800 877 2,768 514 3,516 9,454 29,812 1983年 7,068 930 4,017 1,030 2,693 561 3,844 9,836 30,887 1984年 7,269 959 3,804 1,213 2,972 576 3,918 10,365 31,908 1985年 7,923 1,422 4,330 1,159 3,369 783 4,610 11,229 35,803 1986年 8,124 1,688 4,682 1,179 3,345 711 5,068 11,651 37,328 1987年 7,861 1,636 5,009 1,096 2,864 778 5,558 11,981 37,563 1988年 8,031 2,312 5,763 1,236 3,485 761 6,219 12,834 42,083 1989年 8,611 2,104 6,072 1,123 3,318 878 7,044 13,445 43,371 1990年 9,025 2,320 6,490 1,189 3,587 860 7,456 13,884 46,095 1991年 8,848 2,493 6,333 1,301 4,003 981 8,393 14,581 47,962 1992年 9,542 2,751 7,511 1,402 4,352 996 9,412 15,880 53,512 1993年 9,156 2,926 6,897 1,616 4,366 1,043 10,167 15,834 53,653 1994年 9,328 3,027 7,609 1,620 4,556 1,145 11,477 16,429 57,558 1995年 9,837 2,987 8,272 1,972 5,649 1,253 11,881 17,122 61,147 1996年 10,607 3,766 8,445 1,935 5,447 1,288 13,321 17,395 64,798 1997年 10,057 3,843 9,162 1,685 5,396 1,373 14,091 17,553 65,383 1998年 11,373 3,882 9,068 1,925 6,345 1,634 15,732 18,831 71,722 1999年 11,437 4,213 9,849 1,951 5,848 1,672 16,415 19,089 73,443 2000年 11,561 3,843 9,782 2,043 5,503 1,806 16,207 19,079 72,908 2001年 11,067 4,490 10,247 2,095 6,071 2,082 16,544 19,571 75,182 2002年 11,040 4,729 10,217 1,982 5,638 2,048 16,604 19,210 74,105 2003年 11,310 4,747 11,954 2,331 6,814 2,587 17,108 20,058 81,322 2004年 10,684 4,662 10,129 2,058 5,784 2,576 15,349 18,838 74,232 2005年 11,692 4,745 12,132 2,317 6,309 2,897 17,498 20,533 81,222 2006年 10,490 4,934 11,373 2,360 6,238 2,933 16,267 19,471 77,061 2007年 10,645 4,546 11,757 2,344 6,210 2,908 16,015 19,227 74,372 2008年 10,852 4,834 12,141 2,815 5,981 3,318 18,580 20,963 80,216 2009年 11,034 4,909 11,392 2,803 6,701 3,359 18,266 19,944 79,280 2010年 9,899 4,002 10,321 2,686 5,618 3,119 17,735 18,679 72,881 2011年 10,414 4,133 10,867 2,802 5,833 3,288 19,096 18,973 76,285

日本 全世界

(注1)Article, Article&Proceedings (article扱い), Letter, Note, Reviewを分析対象とし、整数カウントにより分析

(注2)データベース収録の状況により単年の数値は揺れが大きいため、報告書本体では3年移動平均値を用いている。本表を用いる際には、留意願いたい。

トムソン・ロイター社 Web of Scienceを基に、科学技術政策研究所が集計

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