当初は、この内容に興味をもつ学生が多くて参加者を絞り込むのが大変だと考えていた。しかし、
いざ募集を始めると、参加者希望者が少なかった。しかしながら、講演を聴いた後には、学生は「『ア ントレプレナーに抱いていた予想と異なり』、興味を持った」という感想が多い。このことから、「ア ントレプレナー」=「起業」と思っている学生が多いことがわかる。そのような学生は、アントレプ レナーシップを敬遠する傾向が強いことがわかった。
本事業は、宇宙システム活用人材の育成であり、参加している小型宇宙機システム研究センターの 学生は、超小型衛星を開発したいという思いがあり、少なくともなんらかの形で宇宙に興味があるこ とが大前提になっている。ただし、起業したいという思いが強いかどうかは問わないし、日頃の活動 を見る限り、起業に興味がある学生はあまりいないと感じていた。しかし、学生は、新しいものを開 発したい、現在取り組んでいるテーマを実現したいという思いが強いことは伝わってくる。
開発する目標をよりよく実現するために必要なことが、システム思考であり、アントレプレナーシ ップであるというのが、われわれ担当者の思いである。したがって、小型宇宙機システム研究センタ ーの学生はシステム思考の考え方を受け入れるのと同じように、アントレプレナーシップを受け入 れるものと考えていた。しかしながら、アントレプレナーシップに対しては、システム思考ほど興味 がないことがわかった。
したがって、起業に対する興味が薄い学生に対しては、「アントレプレナーシップ」=「起業」と いうイメージを払拭させ、「新しいものを開発するために必要な考え方や心構え」であることを定着 させるところから始める必要があるという課題が明らかになった。
次年度は、アントレプレナーシップの考え方を定着させることも意識して、事業を進める必要があ る。
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8 章 平成30年度のまとめと波及効果
本報告書では、「超小型衛星開発とアントレプレナーシップ教育を通じた宇宙システム活用人材 の育成」における平成30年度の事業に対して、6つの施策ごとの成果を報告した。本章では、全体 を俯瞰しての達成度および波及効果、そして今後の課題について述べる。
まず、本事業は、宇宙開発の重点がサービスへ移行していこうとする今後の状況に対応するため に、宇宙サービスを念頭に置いた人材育成が行えるよう、大阪府立大学「小型宇宙機システム研究 センター」のあり方を変え、教育・研究拠点として発展させることを目的としている。そして、学 内の他組織と連携することで相乗効果を生むことをめざしている。その概要を図8.1に示す。事業後 のありたい姿に近づくよう、本事業では6つの施策を実施した。
本章では、計画書(様式2)に記した期間全体における各施策の具体的な指標および目標に対し て、本年度の達成度および波及効果を以下に述べる。
8.1【施策1】モデルベースシステムズエンジニアリングの体系的な学習を支援する教材の開発
施策1の年度ごとの目標および達成条件を表8.1に示す。本施策においては、図2.1に示した教材
「Thinking in Systems システムとして考える -システム思考&システムモデル入門-」および図 2.3に示したカードゲーム教材「ぺジテの自転車」を制作し、公開することができたため、計画通り に達成することができた。この教材は、「PERSEUSワークショップ (2019年3月1日実施)」で用いた ため、その参加者の25名がモニタリング指標となる。本年度は、1回のワークショップで計画してい たため、指標数としては計画通りである。
図8.1 本事業でめざすもの
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次年度以降、本事業における施策2や施策3で、これらの教材を用いて、学習者を増やしていく 予定である。なお、次年度の指標としては、モデリングに関する体系的教材と仮説検証に関する体 系的教材と分けて考えることになる。
なお、これらの教材は、本学のリーディング大学院講義や、高度人材育成センターが主催する
「テックソン」(施策3で協力)やその他の「ビジネスアイデアコンテスト」などでも利用する予定 である。これにより、小型宇宙機システム研究センターだけでなく、本学における宇宙工学以外の 一般のアントレプレナーシップ教育への波及効果を目指す。
8.2【施策2】小規模プロジェクトを通したモデリングスキルのための実践的な演習
施策2の年度ごとの目標および達成条件を表8.2に示す。3章に示したように、これまで小型宇宙機 システム研究センターにおいて、一年生教育として学生主体で実施していたCanSat実習において、
システム思考に沿った改良を加えて実施した。本年度の実施において得られた成果と問題点をもと にカリキュラムを作成することができた。また、学生だけでは困難な決定事項には教員の役割を決 めることができた。このため、初年度学生への実習カリキュラム構築に対する目標は達成すること ができた。
一方、この実習において、初年度学生だけでなく、指導する上級生が行う「指導」もシステム思 考を理解する上では重要であり、指導をも演習として発展させ、次年度に試行する。こちらは目標 としては明確になっていなかったが、次年度が試行となるため、カリキュラム構築までには至って いない。
波及効果としては、小型宇宙機システム研究センターが高大連携事業として実施している茨木工 科高校へもこのような実習の考え方を指導方法として取り入れてもらうことを予定している。高校 生向けへのアレンジは茨木工科高校の教員と相談していく予定である。
さらに、CanSatは題材としては、宇宙分野だけでなく工学系を中心に、設計、製作、実験検証と いう一つの流れを組むシステム思考実習の題材としては手頃であり、本学の高度人材育成センター が主催する行事に参加する学生が興味を持ちやすい対象である。そこで、小型宇宙機システム研究 センターの枠を超えて、高度人材育成センター主催の実習として発展させることを目指す。
表 8.2 施策2の目標、達成条件、モニタリング指標
目標 達成条件 モニタリング指標
H.30 次年度以降の実施内容が明確に
なっている.
カリキュラムが作成され,担 当者が割り当てられること.
R. 1 レベル1-2の学生を対象に本演
習が実施されている. 学習者が受講していること. ・本演習を受講した 学習者の数
R. 2
表 8.1 施策1の目標、達成条件、モニタリング指標
目標 達成条件 モニタリング指標
H.30 モデリングに関する体系的教材
が公開されている.
学習者がスライドを閲覧可能 な状態となっていること.
・本教材を閲覧した学 習者の数
R. 1 仮説検証に関する体系的教材が
公開されている.
R. 2 事例集が公開されている. ・事例の数
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また、国内では「能代宇宙イベント」など、CanSatに対するコンテストが広く行われている。小 型宇宙機システム研究センターからスピンアウトする形で、このようなイベントに参加する学生団 体の設立へと発展させることも考えられる。
8.3【施策3】仮説検証を学ぶための小規模プロジェクトによる実践的なワークショップ
施策3の年度ごとの目標および達成条件を表8.3に示す。本年度は、本学高度人材育成センターが 主催したテックソン(4.1節参照)へ協力するとともに、仮説検証を学ぶためのワークショップとし て「PERSEUSワークショップ(2019年3月1日)」(4.2節参照)を実施することができたので、目標は達 成できている。一方で、図2.3に示したカードゲーム教材「ぺジテの自転車」を使った教育は十分な 時間が取れていなかったので、次年度以降は時間配分を工夫するなどの改善を行い、ワークショッ プを実施する。
仮説検証は、アントレプレナーシップ教育の主要な部分を構成するものであり、宇宙に特化した ものではない。そこで、高度人材育成センターが主催する「テックソン」において仮説検証の考え 方を導入することで、本事業の成果をテックソンに積極的に展開することで波及効果を目指す。さ らに、本学高度人材育成センターの教員とも連携して、さらに広く展開することを目指す。
表 8.3 施策3の目標、達成条件、モニタリング指標
目標 達成条件 モニタリング指標
H.30 ワークショップの実施内容が
決定している.
学習者に対して,ワークショ ップを告知している.
R. 1
ワークショップを実施し,ま た改善計画が作成されてい る.
ワークショップが実施されて 改善計画が作成されているこ と.
・本ワークショップ に参加した学習者の 数
R. 2
改善されたワークショップが 実施されている.
ワークショップが実施されて 報告書が作成されているこ と.
・本ワークショップ に参加した学習者の 数
表 8.4 施策4の目標、達成条件、モニタリング指標
(a)「様式2(計画書)」に示した指標
目標 達成条件 モニタリング指標
H.30 双方にメリットのある仕組み
を構築している.
対象企業と合意が取れている こと.
・対象企業の数
R. 1 学生を選出し,ツアーを実施
できている.
対象企業へ学生が訪問しでき ていること.
・ツアー参加学生の R. 2 数
(b) 追加とする指標
目標 達成条件 モニタリング指標
R. 1
超小型宇宙機ビジネスに関す る講義のカリキュラムが構築 されている.
講演会として一部が試行でき ていること.
・講演会の参加者数
R. 2
超小型宇宙機ビジネスに関す る講義の改善計画が作成され ている。
講演会として一部が試行でき ていること.
・講演会の参加者数