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まとめ

ドキュメント内 概要書 (ページ 58-63)

本論文では、保険契約のうち、契約期間の長さ(超長期)や契約の対象物(人命)など において、もっとも顕著に保険契約以外との取引と異なる特徴を有すると思われる生命保 険契約を主たる対象として検討した(第1章第1節参照)。

保険契約は大数の法則を前提として成立しているため、同質のリスクにさらされた多数 の保険契約を一体としてみなすべきであり、保険契約の会計処理においては、個別の契約 を、それ自体単体でみるだけではなく、多数の保険契約の集合を一体として保有する、保 険事業における会計処理の一部として把握する観点が必要であることをみた(第1章第 3 節、第2章、第4章第2節第2項、第4章第4節参照)。

また、保険契約は、他の継続的なサービスと同様に、一定の期間にわたってサービスを 提供するものであることを確認した(第1章第1節、第4章第1節参照)。

期末時点のサービスの提供の進捗を測るためには、工事契約に関する会計処理も参考と すれば、多数の保険契約を一体として捉えることにより、保険契約からのアウトプットを 進捗の指標とすることが許容されると考えられた(第4章第4節参照)。

そして、進捗度が決まることにより、当期に対応する収益・費用が確定する。期間損益 の計算にあたっては、経過勘定に相当する要素を計上することで、繰延・見越の調整を図 ることができた(第4章第1節参照)。

この際、保険事業においては、保険契約の市場での決済を通じた保険契約の価値変動に よる利益獲得を目的としていない。そもそも、生命保険の既契約は市場性がないため、市 場価格がなく、流通市場での売買自体が困難である。そのため、保険契約にかかる期間損 益の計算においては、保険契約そのものの市場価格の評価差額を損益として計上するべき ではなく、また、算定ができない。仮に別の観点から貸借対照表上の保険負債を時価で評 価したとしても、その評価差額については、そのまま損益に計上すべきではないと考えら れる(第4章第3節参照)。

したがって、保険契約では、従来の収益費用アプローチにおいて据えられていたような 損益計上の考え方をいかすべきであるといえる174。会計の計算構造として、資産負債アプ

174 2013年IFRS公開草案では、保険契約の公正価値評価によって発生する初日利益(Day1 gain)を繰り延べるために負債(契約上のサービスマージン)を計上するが、これは未稼得の 将来利益として定義されており、負債ではなくOCIとして計上することにより、B/SとP/L を連結させる方法も考えられる(生命保険協会(2013)para.51-56参照)。

ローチを前提とするならば、収益・費用の対応を重視した狭義の資産負債アプローチをと ることになる(第3章第1節第 2項、第4章第 3節参照)175

ただし、保険契約の長期性という特徴から、予想と実際の乖離が大きくなる可能性があ り、また、見積りの変更のインパクトも大きくなるため、当期の保険サービスから生じた と考えられる保険収益と保険費用とを対応づけた損益計上において、見積りの影響が極め て重要である点に留意する必要があるといえる(第4章第1節参照)176

175 なお、本論文では損益計上に焦点をあてて保険契約やその他の取引をみてきた(序章)。し かし、財務報告においては、損益計算書だけでなく、貸借対照表の項目についても目的にそっ た認識および測定が求められる。特に保険会社においては負債の大部分を占める保険負債をど のように評価することが「保険契約から生じる権利と義務から発生するキャッシュ・フローの 金額、時期及び不確実性に関して、財務諸表の利用者にレリバントな情報を提供する」のか

(ASBJ(2007)第6項)が問われることもある。

176 このため、損益計上に関しては、従来の収益・費用の対応の維持を考慮して算定しつつ、

別途、不確定な見積りの影響を取り込んだ情報を、貸借対照表やその他の何らかの指標に反映 して開示することは、財務報告全体としての有用性を高めることに資するものになると思われ る。その際には、純損益が、保険事業における投資について実現した成果をあらわす一方で、

貸借対照表ないし他の指標については、いわば金融投資を評価するような観点が中心に据えら れることになるかもしれない。

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