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まとめ~分析結果から言えること

4-1 政策提言

第3章の実証分析結果の考察を踏まえて、以下の点について提案を行う。

①ハザードマップにより公表された浸水リスクに基づき、危険回避的な立地 選択行動が 行われていないことが実証的に示された。現時点では、ハザードマップによる浸水リ スク情報が「情報の非対称性」や「リスク認識バイアス」の解消に効果的とはいえな い。

②人々の立地選択行動は、ハザードマップの浸水リスク情報よりも過去の浸水履歴に反 応することが実証的に示された。よって、現時点では、浸水履歴情報を効果的に周知 することが、平時からの浸水対策として有効であると 考えられる。東京都以外で浸水 履歴情報(浸水個所、被害状況など)を詳細に情公開している自治体は、ごく尐数に 限られるため、積極的な情報公開が効果的と考えられる。ただし、現在の技術水準に 基づき今後の浸水確率を予測しているハザードマップと過去の浸水履歴とでは情報の 意味が異なるため、両者の違いを明示したうえで 効果的に情報提供することには意味 があると考えられる。

③他に人々の浸水リスク認識を高める方策としては、 実際の不動産売買の際に、宅地建 物取引主任者が行う重要事項説明に浸水リスク情報を盛り込むことが考えられる。宅 地建物取引業法第35条は、「必要な法令上の制限」がある場合には説明しなければな らないと規定している が、水防法に基づく浸水想定区域の指定にあたって 建築制限や 立地規制が行われるわけではないので説明義務がない47

ただし、同法第47条において、「宅地若しくは建物の所在 、規模、形質、現在若し くは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、(中略)に関する事項であつて、宅地建 物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの 」について、故意 に事実を告げないことを禁止事項として規定しており(表4-1)、同規定の遵守が望 まれる48

47 特定都市河川浸水被害対策法により指定された特定都市河川地域・浸水地域において雤水浸透阻害 行 為を行う場合は都道府県知事の許可を受ける必要があるため、重要事項として説明義務がある。

48 不動産適正取引推進機構

(2000) pp.47、内藤(2009a)pp.77

過去に浸水した事実を説明しないまま、売 買契約を締結したため、紛争が生じ、媒介業者が解決金を支払うことで和解した事例が紹介されている。

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表4-1 宅地建物取引業法抜粋

(重要事項の説明等)

第 35 条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を 依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地 建物取引業者の相手方等」という。)に対して 、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は 建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、尐なくとも 次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、

図面)を交付して説明をさせなければならない。

1.(省略)

2.都市計 画法 、建築 基準 法その 他の 法令に 基づ く制限 で契約 内容の 別( 当該契 約の 目的物 が宅地 で あ る か 又 は 建 物で あ る か の 別 及 び 当 該 契 約 が 売 買 若 し く は 交 換 の 契 約で あ る か 又 は 貸 借 の 契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事 項の概要(以下省略)

(業務に関する禁止事項)

第 47 条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げ る行為をしてはならない。

1 .宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契 約の締結について勧誘をするに際し、又はその契 約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨 げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行

イ 第 35 条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項 ロ 第 35 条の2各号に掲げる事項

ハ 第 37 条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項

ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の 利用の制限、環境、交通等の利便、代金 、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件 又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅 地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの(以下省略)

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