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第5章 まとめ
まとめ
本研究では2種類のモデルを構築した.前者ではベイジアンネットワークを用い,速度や実交 通量といった具体的な要因の組み合わせによる予測に強みを持つモデルを構築できた.また,後 者ではディープラーニングを用い,時間経過毎の精緻な予測に強みをもつモデルを構築できた.
この2種のモデルを用いることで,実際に事故や渋滞の発生が予測された際,その予測された要 因に合わせ交通流を制御することにより,事故の発生確率を低減できる可能性がある.
例えば本研究において,時空間的な速度差が生じさせる事故の発生確率の高まりが明らかとな ったが,これにより速度差を要因として事故発生確率が高まっている際に,その速度差の平滑化を 図ることが有効になる可能性が挙げられる.これには既往研究にて速度分散を小さくする効果の可 能性が報告されているVSLや走光型視線誘導システムといったハード面での施策や,スマートフ ォン上の地図アプリを含めたカーナビシステム,自動運転の普及等による安全運転支援といったソ フト面での施策が考えられる.特に事故の発生は交通の流れを大きく妨げることに繋がることが容 易に想像できる.事故渋滞の性質は交通集中渋滞のそれと異なり車線や路肩を封鎖することによ る深刻な渋滞となる.そのため,それを未然に防ぐという意味では,事故が発生しそうな場面でわざ と事故が起こらないよう渋滞を作るということも考えていかなければならない.そういった意味で,事 故が生じる渋滞とそうでない渋滞の違いがあるという点は今後に生かす必要があると考えている.
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このモデルの応用面はこれ以外にも考えることができそうではあるが,その一方でこのモデルが 抱える課題についても整理する.
まずはデータセットについて.今回の研究において,事故の発生として抽出したデータは車両感 知器の上流側の区間のみに限定している.そのため,実際に大和TN内からTC0とした車両感 知器までの区間内で起きた,図4-17で扱ったような事故発生のケースが考えられていない.
次にベイジアンネットワーク推計モデルについて.今回の研究において,時空間的な速度差の 影響が大きい結果となったが,この時空間的な速度差を変数として与えられておらず,それを速度 とはまた別の変数として与えることでほかの変数が生きる等,より詳細な予測につなげられる可能 性が考えられる.また,感度分析を大和TNに最も近い地点の交通量が影響を与えているとされ た10分以内の親について実行したが,15分~30分以内においての感度分析結果を十分に吟 味することができていない.それに加え,10分以内の親2と子の関係を感度分析したものの,詳し く見ることができていない.この親2と子の関係を見ることで,10分以上前の時間から要因の遷移 のパターンを追うことで予測精度を良化することができる可能性があるため,この点に関しては今後 の課題であると考えている.
最後にディープラーニングを用いたモデルについて.今回は時系列な予測に適用可能かどうか をみるという意味で1層の非常にシンプルなモデル構造であった.モデルに入れる変数を変化さ せることを最終的にはせずに進めたが,一部のモデルでは変数が16個の場合に再現率が50%
に上る様子も見られ,予測に適した変数の個数と,その場合にどのようなデータが多いのかを見て いくことで,より事故の起こりやすいタイミングを明確に捉えることができる可能性がある.また,モデ ル構造としても,1層を中心にみていたこともあり,ほかの層数を吟味し,比較検証を進めるに至ら なかった.また,出力を今回は3つに設定したが,ベイジアンネットワークと同様4つに設定するこ とや他のより良い分け方を検討していく必要がある.一つの可能性として,同じ追突事故でも事故 発生確率や渋滞発生確率の推移の仕方や流入交通量で分類し,重大な事故を的確に捉えるモ デルをさらに構築していくことを考えた.これは図4-10から4-17を眺めていた際に,その推移の 仕方に事故毎の特徴がありそうに思えたからである.とはいえ,これは根拠のない空想に過ぎず,
無視されたい.
78 参考文献
1)増本裕幸,宇野伸宏,山﨑浩気,亀岡弘之,山本浩司,山本隆:ETC2.0プローブ情報を用い
た都市間高速道路における速度低下に関する分析,第36回交通工学研究会論文集,NO.7,
PP41-48,2016
2)BRILON,W.,GEISTEFELDT,J. AND REGER,M.:RELIABILITY OF FREEWAY TRAFFIC FLOW: ASTOCHASTIC CONSEPT OF CAPACITY,PROCEEDINGS OF THE 16THINTERNATIONAL
SYMPOSIUM ON TRANSPORTATION AND TRAFFIC THEORY,COLLEGE PARK,MAYLAND,2005 3)MINDERHOUD,M,M.BOTMA,H AND BOVY,P.H.:ROADWAY CAPACITY USING THE
PRODUCT-LIMIT APPROACH, PROCEEDINGS OF THE 77TH ANNUAL MEETING OF THE
TRB,1998.
4)JIAN XING,・宇佐美順二・福島賢一・佐藤久長:潜在的ボトルネック交通容量の推定及び交通
容量の確率分布を用いた年間の渋滞予測検討,土木計画学研究・論文集,VOL.27,NO.5,
PP973-981,2010.9.
5)萩田賢司,森健二:太陽の眩しさが交通事故に与えた影響の分析,土木学会論文集,VOL67,
NO.5,PPI_1055-I_1062,2011
6)石田貴志,野中康弘,大口敬:高速道路における交通容量,土木計画学研究・論文集,
VOL53,2016
7)JIAN XING,鶴元史,石田貴志,村松栄嗣:渋滞を引き起こす交通流の車群特性分析,土木計 画学研究・論文集,NO.42, 2010
8)兵頭知,吉井稔雄,高山雄貴:車両検知器の5分間データを利用した交通流状態別事故発生
リスク分析,土木学会論文集D3,VOL.70,NO.5,2014
9)稲野晃,中村英樹,内海泰輔:複数ボトルネックを含む高速道路区間における渋滞現象の確率 的解析,高速道路と自動車,第52巻,第1号,PP.19-29,2009.
10)舟橋尚平,小根山裕之,柳原正実,山本隆,山本浩司:東名大和サグ部を対象とした渋滞・事 故発生確率の複合的分析,第58回土木計画学研究発表会秋大会
11)NEXCO中日本,高速道路データ集,2014
12)国土交通省,高速道路の交通状況ランキング,2016 13)アナリティスクデザインラボ.”ベイジアンネットワーク”.
HTTP://WWW.ANALYTICSDLAB.CO.JP/COLUMN/BAYESIANNETWORK.HTML ,(参照 2019-07-09).
14)山下隆義(2018)『イラストで学ぶディープラーニング』講談社.
79 謝辞
本論文は,様々な方面の方々からのご指導・ご協力を頂きました.この場を借りてお礼を述べさ せていただきます.
本論文の指導教官である小根山裕之教授には常日頃から多くのご指導を頂きました.私が漠然 と交通に触れたいと思い研究室に入り,右も左もわからない状態にも関わらず,提示されたテーマ 以外で何か交通の基礎的なことをやりたいと,今振り返ると生意気なことを言っていたようにも思い ますが,懇切丁寧に付き合ってくださりありがとうございました.私が一番印象に残っているのは4 年生のときの第3回中間発表後にpptの心得を教えていただいたことです.それ以来安定して伝 える技術を磨くことができたと自負しています.ここには記載しきれないほど大変お世話になりまし た.ありがとうございます.柳原先生にも,常日頃から多くの指導を頂きました.私がプログラミング アレルギーのような状態だった頃,付きっきりで教えてくださいました.すぐには理解できず上達し ませんでしたが,なんとか真似て自分のものにできた部分があったように思います.AIに関しての 講座も,雲の上の存在に思っていたディープラーニングが近くに来たようで楽しかったです.大変 お世話になりました.ご結婚おめでとうございます.石倉先生には中間発表から鋭い質問をいただ きました.不明瞭な点に関してのご指摘はとても参考になりました.また副査も担当していただき,
大変お世話になりました.河村先生には副査を担当していただき,専門分野ではない私の研究に ついて深くご理解をいただき,その上で私が前提条件として考えてしまっている部分へ鋭い質問を 頂きました.大変お世話になりました.その他数多くの先生のご指導ご指摘により,この論文を仕上 げることができました.本当にありがとうございました.研究室の秘書としてお世話になった甲川さ ん,ドクターのRizkyさんには,目に見えないところで研究室を支えて頂きました.
同期である佐々木君,平井君には,研究室として活動の際の協力や発表練習はもちろんのこ と,日常生活の面で多く関わりました.とても感謝しています.また,M2の高くんにM1の津田君,
相澤さん,万さんには研究室内のイベントや飲み会の企画をしてくださり,有意義に研究室生活を 過ごすことが出来ました. B4のみなさんとは,学年の垣根を越えて濃密な時間を過ごすことがで きました.特にガラル地方の時を駆け抜ける際にはとてもお世話になりました.
また,研究室以外でも,学食やトムなど,多方面から支えられてきたことを実感しています.改め て感謝いたします.
最後に,大学院まで私を支え続けてきてくれた両親,家族に感謝の意を表します.
令和2年2月 舟橋 尚平