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減衰硬さと引張特性の関係

第 4 章 減衰硬さと引張特性の関係

4.3 実験結果および考察

4.3.2 減衰硬さと引張特性の関係

ハーバート硬さ試験における揺動角度の自由減衰曲線の例を図 4-3 に示す。それぞれの 材料で減衰の程度が異なることがわかる。アルミニウム合金である A1050、A2024 および

A5052 における 5 周期後の極大値の揺動角度はそれぞれ約 10°、20°および 15°である。

A1050、A2024およびA5052 のσ0.2はそれぞれ 114 MPa、396 MPaおよび181 MPaである。

アルミニウム合金のみ比較したとき、0.2%耐力が低い試験片ほど振子が速く減衰する。

8 種類の金属の DHσ0.2および引張強さ σUに対して図 4-4 および図 4-5 にそれぞれ示 す。加えて、試験結果の標準偏差を同図に示す。図中の実線は、AZ31を除く全ての測定結 果に対して指数関数で回帰したものである。AZ31を除く理由は後述する。σ0.2およびσUの 増加に伴い DHは減少する。これは、一般的な硬さ指標であるビッカース硬さと0.2%耐力 および引張強さの関係と逆の傾向であり、DH が硬さの増加に伴い減少する硬さ指標のた めである。ビッカース硬さ HVは材料の強さ σB (0.2%耐力あるいは引張強さ)との間に以下 の比例関係があることが知られている 4)

B 1

C

HV =

(4-3)

ここで、C1 は金属の種類(加工硬化特性や延性の違い)によって異なる比例定数である 5)。 本研究の結果より、DHσBを用いて表せば次式になる。

C

m

DH =

2

B (4-4)

表 4-2 に図 4-4 および図 4-5 において実線で示される式(4-4)での回帰式における比例定数 C2、指数 mおよび決定係数を示す。DHは硬さの増加に伴い減少する指標なので mは負の 値である。決定係数が高いことから、DHはビッカース硬さと同様に σ0.2および σUに対し て式(4-4)の関係がある。

表4-2 式4-4における比例定数C2、指数 mおよび決定係数 Mechanical characteristic

B) C2 m Determination

coefficient squared

σ0.2 0.324 -0.915 0.79

σU 0.120 -0.698 0.80

押し込み硬さの測定誤差は、結晶粒径の影響を大きく受けることが知られている 6)。押 し込み硬さ試験で形成する圧痕の大きさが結晶粒径の大きさに近づくと測定のばらつきが 大きくなる。減衰硬さでは強制的な圧痕を形成せず試料上の圧子の転がりを評価するため、

測定誤差の要因としては、表面粗さの違いによる圧子と試験片間の摩擦が考えられる。著 者らは、図 3-14 に示したとおり、硬い材料であるブリネル硬さ標準試験片 HBW600 で表 面粗さが減衰硬さにわずかではあるが影響を及ぼすことを明らかにした。本実験に用いた 材料で最も軟らかい A1050はHBW150 の試料より軟らかい。表4-1に示したとおり、Hertz の接触理論により、圧子と材料の接触する最大応力が 0.2%耐力を超えるのは、A1050 のみ である。巨視的に大きな変形が揺動挙動に影響を及ぼすことは、財滿により示されている

7)。弾性範囲であっても変形が生じることにより、圧子と試料の接触幅の変動や弾性ヒステ リシス領域の変動等の要因が、振り子の減衰のばらつきの要因となり得るため、A1050 の 減衰硬さのばらつきが大きくなったと考えられる。

本実験に用いた材料の中で、AZ31 は他の材料と比較して異なる機械的特性を有する。

AZ31 の特徴として、引張と圧縮で全く異なる応力-ひずみ曲線となることおよび荷重負 荷に対して双晶変形を起こすことで減衰能が高いことが挙げられる 8), 9)。AZ31の室温にお ける引張および圧縮試験において、およそ 10%程度までのひずみ領域では、圧縮は引張に 対して著しく低い応力-ひずみ曲線を描く。本実験では、引張試験により機械的特性を評 価している。減衰硬さは、振り子の転がりによる測定となるため、圧縮の機械的特性を評 価している。AZ31の圧縮の機械的特性を考えるならば、圧縮の 0.2%耐力は引張試験での 値のおよそ 6 割程度であり 8)、図 4-4 において実線に近づく結果となると考えられる。本 実験では、試料数は 1である。減衰硬さの測定は5回行うが、引張試験は1回となる。そ のため、系統的および偶然的実験誤差の十分な議論はできないが、AZ31を除く一般的な金 属材料に対しては、機械的特性において本実験により得られたものと製造者が提供するも のに大きな差異がない範囲では、減衰硬さと 0.2%耐力および引張強さとの関係は指数関 数的に良い対応を示す。

(a) A1050

(b) A2024

(c) A5052

図4-3 ハーバート振子の減衰曲線の例

(d) AZ31

(e) Brass

(f) Pure Cu

図 4-3 ハーバート振子の減衰曲線の例(続き)

(g) Pure Ti

(h) SUS440

図 4-3 ハーバート振子の減衰曲線の例(続き)

図4-4 減衰硬さと0.2%耐力の関係

図4-5 減衰硬さと引張強さの関係

DHn値の関係を図4-6に示す。図中の実線は、AZ31を除く全ての測定結果に対して 指数関数で回帰したものである。n値の増加に伴い DHは減少する。式(4-3)におけるC1n値の増加に伴い増加する7)。式(4-4)におけるC2および mも加工硬化特性の1つであるn 値に依存する可能性がある。

図 4-4、図4-5および図4-6において、AZ31の結果は図中の直線や曲線から離れている。

前述のとおり、AZ31は双晶変形による内部摩擦が大きいマグネシウム合金であり、減衰能 の高い材料である。振子の自由減衰定数から評価する減衰硬さは材料の減衰能を評価して いると考えられる。AZ31と同水準の減衰硬さである A1050 は、減衰能の高い材料ではな い。これも前述のとおり、Hertzの接触理論により、圧子と材料の接触する最大応力が 0.2%

耐力を超えるのは A1050 のみであるが、加工硬化がほぼ起らないのが特徴である。図 4-2 に示したとおり、減衰硬さの測定後の試料表面には、圧子の転がりによる傷が視認できる ことから、微視的には塑性加工が生じる。塑性加工が生じても A1050 は加工硬化しないた め、表面強度が高くなることがない。それに加え、材料強度の低さに起因する巨視的に大 きな変形により、圧子と試料の接触幅と弾性ヒステリシス領域の増大に伴い、減衰硬さが 増加したと考えられる。

DHと縦弾性係数E2の関係を図4-7に示す。DHE2の間に明確な関係は確認できない。

A1050、A2024 および A5052は全てアルミニウム合金であり、同程度の縦弾性係数を有し

ているが減衰硬さは明確に異なる。したがって、減衰硬さは剛性ではなく強度を示すと考 えられる。

Hertz の接触理論では、接触する2物体の縦弾性係数により接触幅が決定される。実際の

接触では、圧子と試料の接触後の傷の様子からわかるとおり、一様ではなく離散的に存在 する。振り子試験機では、圧子の試料上の転がりを取扱うことから、真実の接触状態が重 要になる。そのため、真実の接触状態に影響する 0.2%耐力と引張強さが減衰硬さと良い対 応を示すと考えられる。表面の傷は塑性変形であることから、減衰硬さが加工硬化指数と 良い対応を示すと考えられる。

図4-6 減衰硬さと加工硬化指数の関係

図4-7 減衰硬さと縦弾性係数の関係

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