T LD,LUT RU,LU
4.3 研究の過程と本論文の位置付けについて
L-turnおよびR-turnルーティングは,筆者と鯉渕の共同研究の成果であり,鯉渕の博
士論文[鯉渕02]の一部においても述べられている.以下,L-turnおよびR-turnルーティ ングに関する研究の過程と筆者が担当した作業内容について述べ,本論文の位置付けにつ いてまとめる.
まず,L-turnおよびR-turnルーティングの発端は,Up*/Down*ルーティングにおけ る2つの方向を4つに増加させた上で禁止ターン選択を行なうことにより,イレギュラー ネットワークにおいて,より効率的なルーティングを実現できるのではないか,という鯉
第4章 L-turn/R-turn ルーティング
2-D 1-D dimension of
directed graph (n > 2)
routing algorithm
BFS/DFS Up*/Down* L-turn/R-turn
Turn model channel dependency graph deadlock-free
strategy
Eulerian trail
Smart Adaptive-trail
n-D
routing algorithms for irregular networks
virtual channels
required ? no yes
spanning-tree
required ? yes no yes no
virtual channel
transitions ? yes no yes no
DL Minimal Multiple Spanning-tree Structured Buffer Pool LASH
図 4.28: イレギュラーネットワーク向けルーティングアルゴリズムの分類
渕の提案によるものである.そこでまず,筆者と鯉渕により,前順走査を利用した 2次元 有向グラフであるH/V グラフの構築手順が確立された.当初は,H/Vグラフにおける Turnモデルの適用手順が確立されておらず,まず,第4.2.1節で述べた 2次元メッシュに おける Turnモデルと同様の直観的な選択により, LU 方向へ向かうターン集合だけを禁 止ターンとして選択したルーティングアルゴリズム5が鯉渕により提案され,確率モデル シミュレーションによる予備評価が行なわれた.予備評価およびこれ以降の評価では,筆 者が実装したフリットレベルの相互結合網シミュレータが用いられた.
予備評価の結果,選択した禁止ターン集合だけではデッドロックが発生することが確認 されたため6,その後,筆者と鯉渕により,シミュレーションの結果を基にして,形成可能 な循環構造の識別とデッドロックフリー実現のために必要な 2つの禁止ターンの追加が行 なわれた.これにより,L-turn/α とほぼ同等の禁止ターンを課す(冗長禁止ターンの除去 は行なわれていない)1つのデッドロックフリールーティングアルゴリズムが導出された.
しかし,改めて予備評価を行なった結果,イレギュラーネットワークにおけるスループッ
5これがL-turnルーティングの原形となった
6図4.24で示されている通り,L-turnルーティングでは,LU方向へ向かうターン以外に更に2つのター ンを禁止する必要がある
第4章 L-turn/R-turn ルーティング
ト向上は予想よりも低い値となった.分析の結果,この原因は,冗長禁止ターンが存在す るためであることが確認された.そこで,更なる性能向上実現のために,筆者により冗長 禁止ターン除去のための循環構造検出アルゴリズムが提案された.これにより,L-turn/α に相当する 1つのデッドロックフリールーティングアルゴリズムが確立し,評価の結果,
高い性能向上が確認された[MAAH01].
しかし,この時点ではまだ本論文で述べた H/V グラフにおける Turnモデルの適用手 順が確立されておらず,L-turn/β, R-turn/α およびR-turn/β ルーティングの定義がなさ れていなかった.そこで,その後筆者により,H/Vグラフにおけるシステマティックな 2 次元Turnモデルの適用手順が提案され,これにより本論文で提案した 4 つのデッドロッ クフリールーティングアルゴリズムの定義がなされた[AMAH02, 上樂03].
以上より,主に筆者が担当した作業内容をまとめると次の通りとなる.
• H/Vグラフ構築手順の確立
• 循環構造検出アルゴリズムの確立
• H/Vグラフにおける2次元 Turnモデル適用手順の確立 (4つのルーティングアルゴリズムの導出)
• 評価用フリットレベル相互結合網シミュレータの実装
鯉渕の博士論文[鯉渕02]では,文献[AMAH02]時点の研究成果に関する内容をベース
として L-turnおよび R-turn ルーティングについての記述がなされているが,この中で
筆者が担当した作業内容は上記の通りである.本論文は,文献[AMAH02,上樂03]の内容 をベースとして,主に次の点を改善および補足した内容となっている.
• L-turn および R-turnルーティングの構築手順における 2次元Turnモデル適用手 順の具体化(第4.2節)
• より多くの評価指標を用いた性能評価(第5章)
– 禁止ターン分散の度合いを示す静的な評価指標の分析 – 経路分散の度合いを示す静的な評価指標の分析
• L-turnおよび R-turnルーティングの性能に影響する要素の評価 – ルートスイッチ選択ポリシー(第5.2.4節)
– H/Vグラフ構築時の前順走査における訪問スイッチ選択ポリシー(第4.2.5節,
第5.2.5節)
• L-turnおよび R-turnルーティング をソースルーティング方式(固定型ルーティン
グ)として実装した場合の評価(第5.3 節)
第4章 L-turn/R-turn ルーティング
4.4 まとめ
本章では,Up*/Down*ルーティングにおいて問題となるトラフィックの偏りを改善す るために,より均等なトラフィックの分散の実現を目的とする適応型ルーティングアルゴ リズムである L-turnルーティングおよびR-turnルーティングの提案を行なった.L-turn
および R-turnルーティングは,Up*/Down* ルーティングで利用されているスパニング
ツリーベースの 1次元有向グラフを拡張した H/Vグラフと呼ばれる 2次元有向グラフを 利用する.H/V グラフの導入により,形成可能なターンの数は従来の 6 倍である 12パ ターンに増加し,これによりトラフィックの分散を考慮したより柔軟な禁止ターンの選択 を行なってデッドロックフリーを実現することが可能となる.そして,H/Vグラフに対し て,禁止ターンの分散を考慮した 2次元 Turnモデルをシステマティックな手法で適用す ることにより,L-turnおよびR-turnルーティングが導出される.この際,循環構造検出 アルゴリズムを導入することにより,冗長な禁止ターンを削除し,更なる性能向上の実現 を図っている.L-turnおよびR-turnルーティングは,スパニングツリーの構築と 2次元 Turn モデルの適用をベースとすることにより,Up*/Down* ルーティングと同等の高い 汎用性を実現しており,任意の SANおよびトポロジに適用可能となっている.