◆ペインクリニックとは痛みの診療科
◆診断困難な痛みには現代医療は無力
◆全身の諸症状を改善する治療法
◆日本のペインクリニックの現状 星状神経節はどこにある?
◆星状神経節は 交感神経の中継所
◆神経ブロックで脳の血流がわずかにふえる 星状神経節ブロックは血管を拡 張する
◆星状神経節ブロックは応用頻度の高い治療法 ただ1つの治療法で多くの病 気が改善
◆副作用が全くない画期的な治療法 生体の異常を正常に回復させる
◆老若男女、誰にでも合った治療法
◆自律神経系、内分泌系、免疫系の3つをカバーする ホルモンが関係する病 気にも有効
◆免疫反応の異常も正す治療法 200を超える適応症
◆星状神経節ブロック療法をさらに効果的にするには
◆一般的に平均30回の加療が必要 星状神経節ブロック療法の課題
第 1 章 星状神経節ブロック療法は体全体の異常を正す
◆交感神経の緊張をゆるめる治療法
カゼをひかない人々
ペルーの大使公邸人質事件、日本海の重油流出事故と、1997 年の日本の冬 はまさに内憂外患の冬でした。
それに加えて、この冬はインフルエンザ A 香港型の大規模な流行がありま した。インフルエンザのウイルス(細菌より小さい病原体)には ABC の 3 つ
A A
の型があります 世界的に大流行し 重症化しやすいのは。 、 型で とりわけ、 香港型は強い増殖力をもつことが知られています。全国で数十万人の患者が出 て、お年寄りを中心に亡くなる例が相次ぎました。
ところが、そんなインフルエンザ騒ぎの最中でも、私の外来診療に通ってく る患者さんたちは、カゼをひかない。ひいても、とても軽く、のどが少し痛く なる程度ですんだのです 「この注射のおかげですね」と、患者さんたちが待。 合室で話し合っていました 「この注射」とは、これからこの小冊子で紹介す。 る「星状神経節ブロック療法」のことです。星状神経節ブロック療法??耳慣 れないややこしい名前の治療法だな、と思う人もおられるでしょう。
詳しくは別の章で説明しますので、ここでは、のどにある「星状神経節」と いう部位の近くに微量の局所麻酔薬を注射して、交感神経の異常な働きをブロ ックする治療法─とだけ頭に入れておいてください。
星状神経節ブロック療法を受けると、免疫力が高まるためカゼをひかなくな るのです。免疫とは、ウイルスなどの病原体に抵抗して、それに打ち克つ体の しくみのことです。
インフルエンザ・ウイルスやカゼ・ウイルスの大半は、低温と低湿度(つま
低温・低湿度の寒冷刺激は、人間の体の免疫力を低下させるようにも作用しま す。
お年寄りや幼児はよくカゼをひきます。体内に侵入したウイルスをおさえる 免疫力が弱いからです。旺盛な体力をもつ青壮年でも寝不足だったり、疲れた りしているとき、あるいは雨に濡れたり、湯冷めをしたり、酔い冷めしたり、
寒い目に遭ったり、強いストレスを受けたときにはカゼをひきやすい。免疫力 がてきめんに低下するからです。
星状神経節ブロック療法を受けていた人たちが、この冬のインフルエンザ禍 を免れることができたのは、ウイルスに感染しても、それをおさえ込んで発病 させない、免疫力の強さがつくられていたからにほかなりません。
むろんいうまでもなく、この人たちは、インフルエンザ予防のために星状神 経節ブロック療法を受けていたのではありません。
どの人も、治りにくい病気を持ち、あちらこちらと病院巡りをしたあげく、私 の診療室に辿りついた人ばかりです。ある人は、激しい耳鳴りを訴え、ある人 は、痛みと不眠の悩みを訴え、ある人は、突然襲ってくる動悸と呼吸困難の発 作におびえている……、そして、どの人もそうした主訴のほかに疲れやすい、
肩がこる、 足腰が冷える……などさまざまな症状を併せもっているのが普通 です。
、 、 ( )
私は 初めての患者さんには 最後のページに示すような問診表 90項目 を診察前に記入してもらっていますが、みなさん例外なく 10 項目以上、なか には30〜40項目にもわたって◎印や○印をつける人も珍しくありません。
星状神経節ブロック療法を続けていると、まずそうした随伴症状から消えて いく人もあれば、主症状とともにさまざまな症状もいっしょに治る人もありま す。
どうして、そのような効果が得られるのか。
いったい、星状神経節ブロック療法とは、どんな治療法なのか。
どんな病気がこの治療法に適しているか。
以下、そうしたことについてお話しいたします。
◆自然治癒力を無視した現代医療
たとえば、頭が痛い・重い、肩がこる、体がだるい、手足が冷える、食欲 がない、下痢と便秘をくり返す、よく眠れない、朝の寝起きが悪い、生理不順 といった症状が延々と続いているけれど、寝込んだり、会社を休んだりす
……
るほどではない。しかし、とにかく具合が悪い、活力がないということで悩ん でいる人は、今とても多いようです。
そういう人たちはたいてい、まず近所の内科医院などを振り出しにあちらの 病院、こちらの病院とドクターショッピング(医者のはしご)を重ねることに なります。
で、そこで何をやるかといえば、実にさまざまな臨床検査です。血液検査、
尿検査、心電図検査、脳波検査、X 線検査、超音波検査まではごく普通のコー
、 、 ( )、
スで もう少し詳しく……となれば CT コンピュー タX線断層撮影検査
(陽電子放出断層撮影装置 、 (磁気共鳴診断装置) など検査、
PET ) MRI ……
検査、検査です。だから日本の MRI の保有台数はアメリカの 2 倍も多いとい われています。
そうした検査で得られた数値データと画像に基づいて診断が下されるわけで す。
しかし、頭が重い、体がだるい、食欲がない、よく眠れない……といった症 状は、数値や画像ではなかなか捉えることはできません。ありとあらゆる検査 をして、これといった異常な所見は得られないということにもなりがちです。
すると、医師はなんと説明するでしょう。たいてい 「あなたの体にはどこ、 も悪いところはありません。あまり気にせず生活するようにしなさい」といっ たところでしょう。
言葉よりも器械のほうを信用してしまうわけです。こんなばかな話はありませ ん。
、 。
現代医学の欠陥は 人間の体の機能よりも形態を重視するところにあります たとえば自律神経失調症というのは、神経の働きが乱れた状態、つまり機能 的な病態(病気の状態)です。目に見える形態的な病態ではありません。検査 血液検査でも、尿検査でも、 線検査で
をしても所見が出ないのは当然です。 X
も、CT をやっても、MRI をやっても、何も所見が出ないのが自律神経失調症 の特徴です 「異常なし」ということになります。。
このように検査には引っかからないが、患者さん本人は具合が悪いという病 気や症状はとてもたくさんあります。
神経性頻尿なども検査では「異常なし」とされることが多いのですが、ご本 人は現にひっきりなしにトイレに通わねばならず、困り切っているわけです。
そういう人を現代医療は、うまく救えません。そこが現代医療の盲点で弱いと ころです。
現代医療の最大の誤りは、人の体に備わる自然治癒力(体に本来備わった、
病気を自然に治そうとする力)を無視したことでしょう。
「病気はおれ(現代医学・医師)が治してやる」という姿勢をとり続けたこ
。 、 (「 」)
とです 病気の原因を見つけて それを除けばよいという考え 特定病因論 が医学界を支配してきました。そのため、検査をして所見が得られないと、治 療のしようがなく、対症療法(そのときどきの症状に応じた治療法)に終始 することになり、治らない病気が山ほどあるのが現状です。
◆梢の枝葉のみ見て根本を見ない
いろいろさまざまな体の症状があって、詳しい検査をしても何の異常も見つ からない場合、そうした訴えを「不定愁訴」といいますが、現代人にはこの不
定愁訴を訴える人がとても増えています。なぜかといえば、現代がストレス社 会だからです。
私たちの心や体にストレス刺激がかかると、その刺激が大脳皮質から大脳辺 縁系という経路を通って、間脳の視床下部に行きます。視床下部は間脳の一部 で、脳下垂体(各種ホルモンの分泌器官)に連なる部分ですが、自律神経系の 最高中枢はここにあります。
ま た 、 脳 下 垂 体 か ら 分 泌 さ れ る さ ま ざ ま な ホ ル モ ン に よ る 体 の 調 節 も 視 床 下 部 で 統 御 さ れ て い ま す 。 強 す ぎ る ( ま た は 長 く 続 き す ぎ る ) ス ト レ ス 刺 激 は 、 視 床 下部を刺激し、自律神経系のバランスを狂わせます。
自律神経というのは、体のあらゆる臓器や器官の働きを、自動的に調節して いる神経です。呼吸、脈拍、 血圧、体温、発汗、睡眠、排尿、排便など、み んな自律神経によってコントロールされています。早い話、 眠っていても息 をし、心臓が止まらないのも、暑いとき汗が出て体温の上昇を防ぐのも、自律 神経の働きです。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、交感神経は身体活動 を亢進させるように作用し、副交感神経はそれを抑制するように作用します。
心身にストレス刺激がかかると、交感神経が緊張して、体はストレス刺激に 対応します。ところが、非常に強いストレス刺激がかかったり、あまり長くス トレス刺激が続いたりすると、交感神経が緊張しすぎて、自律神経のバランス が乱れます。その結果、体のあちこちに具合の悪い症状が起こってきます。そ