アメリカの外国人労働者受入れの手続きについては、第 5 節で説明したように入国の 段階での「選択」の機能としての雇用証明プログラムのほかに、入国後にアメリカ国内 での労働者としての地位に関する制度、外国人が流入することによってアメリカ人労働 者に対して起こりうる問題への対処、すなわち「社会統合」としての機能も備えている。
(1)雇用主処罰制度(
Employer Sanctions)、
(2)就労資格書類確認制度(EmploymentEligibility Verification)、
(3)移民関連不当雇用行為制度(Immigration-RelatedUnfair Employment Practices)がそれに
該当する。いずれも、1986 年の移民法改革によって 創設された制度である。(1) 雇用主処罰制度
雇用主処罰制度は、不法就労者の取り締まり強化を強化するために、就労資格のない外国 人を雇用した事業主を処罰する制度である。罰則は原則として金銭罰=行政制裁であり、不 法就労者を雇用することは犯罪として扱われているわけではない。ただし、重大な違反者に 対しては刑事罰がある(1986 年法
( 47))。
この制度に基づいて次の節で説明する「就労資格書類確認制度」の書式「I‐9」の作 成が義務付けられ、怠った場合に行政制裁が課される可能性が出てくる。雇用主処罰制 度がどのように実施され、どのようなかたちで実効性を確保しているのかについては、
紺屋(2001)、紺屋(2003)などに詳しく分析されている。
(2) 就労資格書類確認制度( 48)
雇用主処罰制度の創設に伴い、事業主が労働者を雇用する際の労働者の本人確認を行 うために創設されたのが就労資格書類確認制度である。
47 ページの資料 2 に示した申請書類のセクション 1 は労働者が必要事項を記入し署名 す る 必 要 が あ る欄で あ る 。 社 会保 障番 号(
Social Security Number: SSN) は
後 述の「E-Verifyシステム」によって登録済みの場合は任意記入となる。
セクション 2 は事業主が必要事項を記入する欄である。雇用しようとする労働者が就 労資格を有していることを証明するために、次のような書類を指し示す必要がある。
リスト
A:
「合衆国パスポート」「永住資格証」「外国人登録受理証」「外国のパスポー ト(一時滞在資格が取得済みのもの)」「雇用認証書(写真貼付のもの)」など。46 この節は早川(2008)紺屋(2003)、国土 安全保障省ホームページを参 考にまとめた。
47 http://www.ers.usda.gov/publications/ah719/ah719f.pdf
48 国土安全保障省のホームページ:
http://www.uscis.gov/portal/site/uscis/menuitem.5af9bb95919f35e66f614176543f6d1a/?vgnextoid=3 1b3ab0a43b5d010VgnVCM10000048f3d6a1RCRD&vgnextchannel=db029c7755cb9010VgnVCM1000 0045f3d6a1RCRD
<資料2:就労資格書類確認のための申請書類>
セクション1
セクション2
図 7:国土安全保障省、就労資格書類の電子申請システムに関するホームページ
リスト
B:州政府によって発行された「
運転免許証」または「ID
カード」、連邦政府によって発行された「ID カード」「就学
ID
カード(写真貼付のもの)」「選挙登録証」「合 衆国軍ID
カード」「運転免許証(カナダ政府発行)」など。リスト
C:
「社会保障番号カード」「合衆国国務省発行の海外出生証」「合衆国国務省発 行の出生記録証」「州政府や郡役所等が発行した出生証明書」「合衆国民証」「合衆国市民ID
カード」など。リスト
A
ならば 1 点で必要要件を満たし、リストB
の場合はリストC
からも証明書を 加えて提出する必要がある。なお、雇用開始から 3 日以内に提出する必要がある。就労 資 格 書類の 提 出 は 、 2002 年 か ら電子登 録シ ス テ ムが運用 さ れ て い る 。 こ れ は
E-Verify
システム( 49)と呼ばれ、図 7 のような説明が市民権・移民サービス局のホーム ページ上で掲載されており、画面から申請を行うことができるようになっている。(3) 移民関連不当雇用行為制度( 50)
不法就労者を雇い入れることが処罰の対象となる影響として、合法滞在の外国人や外
49 国土安全保障省のホームページ:
http://www.uscis.gov/portal/site/uscis/menuitem.eb1d4c2a3e5b9ac89243c6a7543f6d1a/?vgnextoid=7 5bce2e261405110VgnVCM1000004718190aRCRD&vgnextchannel=75bce2e261405110VgnVCM1000 004718190aRCRD
50 the Office of Special Counsel for Immigration-Related Unfair Employment Practices:
(http://www.usdoj.gov/crt/osc/htm/WebOverview2005.htm)
http://www.law.cornell.edu/uscode/html/uscode08/usc_sec_08_00001324---b000-.html
http://ecfr.gpoaccess.gov/cgi/t/text/text-idx?c=ecfr&tpl=/ecfrbrowse/Title28/28cfr44_main_02.tpl
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国人らしき容姿や言葉遣いのアメリカ人を差別する事業主が出てくる可能性がある。こ れに対応するために創設されたのが、移民関連不当雇用行為制度である。
事業主が、採用、求人活動、解雇等をする際に、未登録外国人を除いて、いかなる個 人を差別してはならないとするものである( 51)。適用対象となるのは、従業員数4 人以上 の企業である。