――財政面における進歩
基礎教育への援助額: 2000 年から 2004 年にかけ 上昇、しかし 2005 年は下降
ドナー:中等教育以降を過剰に優先
教育への支出:もっとも教育が必要とされる地域 で増加
学費:最も貧しい家庭にとっては、まだ 高すぎる
E
FAの到達に関して最終的に責任を負っ ているのは政府だが、多くの国々、特に 最貧国にとっては、EFAに向けての進 展はドナーの支援に依存している。それ に関して一種の協定がダカール行動枠組 みの中に記載されている:もし途上国政府がEFAの目 標に重きを置き、広く相談し、より多くの予算を充て、堅実な計画を立てれば、ドナーはそれらの計画の実行 を助けるため追加の資金を提供する、というものだ。
164カ国によってダカール行動枠組みが承認されてか ら7年経ったが、現状の数字は何を示しているだろうか。
この章では、国がどれだけ財政的に責任を負っている かや、基礎教育における援助の傾向、また、より効果 的な援助イニシアチブについて再検討する。
政府は基礎教育に十分な資金を充てているか
ほとんどの国の政府、特に後発途上国や、最もわか りやすいところではサハラ以南アフリカの政府は、基 礎教育を含め、教育に充てる資金をなんとか増やして きた。それでもなお、多くの国ではGNPに対する教育 支出の比率と、政府の総支出に対する教育支出の比率 はかなり低い。
る。これまでの科学技術も、学校教育、ノンフォーマ ル教育、双方へのアクセスを拡大させるために、引き 続き重要な役割を担っている。ラジオやテレビは、ブ ラジル、インド、メキシコなどにおいて、中等教育へ のアクセス拡大に貢献した。
ICTには、より双方向で参加型の新しい学習方法を通 して、教育の質の改善を促していく可能性がある。ま た、ICTによって学校間をつなぎ、経験を共有すること ができる。学校間のネットワークは近年急速に拡大し ている。「スクールネット・アフリカ」にはアフリカの 20カ国が参加する一方、アフリカ開発のための新しい ネットワーク「アフリカ開発のための新パートナーシ ップ(New Partnership for Africa’s Development)」は 2020年までに、550,000校をインターネットでつなぐキ ャンペーンを開始した。
ICTへの強い期待が寄せられているにもかかわらず、
特に途上国においては、ICTの学習効果を正確に測定し た研究はほとんどなく、結果もまちまちである。ICTを 教室での活動に効果的に組み込んでいくには、カリキ ュラム、教員研修、インフラなどを含む総合的なアプ ローチが必要であることを、さまざまな国での研究は 示唆している。
困難な状況下での教育の再構築
世界の武力紛争は減少傾向にあるが、その多くは途 上国で起きており、そこでは犠牲者の多くが一般市民 だ。特に深刻な人権侵害は、子どもが武装グループへ 動員されることで、推定25万人の子どもが児童兵とし て働かされ続けている。このような児童兵は、スーダ ン南部で実施されたもののような特別に立案されたプ ログラムを通して、地域社会に復帰させることが不可 欠だ(Box 3.4)。
紛争後の状況下で教育に投資することにより、政府 や国際社会は、未来に向け強力なメッセージを打ち出 している。例えば、ウガンダでは、1990年代の紛争後 初となる選挙キャンペーンのとき、与党は小学校の授 業料を廃止すると発表し、それが、これからはもっと 平和になるという信頼を得る助けとなった。技術者が 不足しがちな紛争後の期間、学校のインフラを整備す ることは優先すべき事項の一つだ。アフガニスタンで のように、オルタナティブな形態の教育も有効である。
2001年のタリバン政権崩壊後、戦争色の残る地域に希 望をもたらすため、NGOは地域と家庭ベースの学校を 設立するのに貢献している。学校までの距離が近く、
安全な環境で勉強できること、そして教員が地元の女 性だと、女子たちは学校に通いやすくなる。
紛争後の状況において、教育を広める活動をすると きには注意が必要だ。なぜなら特定の人種専用の学校 や、校内での母語の否定、教科書にあるネガティブな イメージなど、むしろ教育が暴力を先導しかねないか らだ。平和教育や多文化教育は、グループ間にある不 信感や嫌悪感を克服するのに役立ち、また、青年が自 分たちの態度を徹底的に分析し、衝突を避けながらコ ミュニケーションをとる方法を教えてくれる。
GNPに対する公教育支出の比率は、北アメリカや西 ヨーロッパで最も高く、次いでラテンアメリカ・カリ ブ海地域、サハラ以南アフリカとなっている(表4.1)。 しかし、地域内で国と国を比べると、その差は大きい。
2005年、北アメリカと西ヨーロッパ以外の105カ国中、
26カ国で公教育支出は対GNP比6%以上だったが、24
カ国では3%以下だった。
1999年から2005年の間に、84カ国中50カ国でGNP に対する教育支出総額は増加している。ラテンアメリ カ・カリブ海地域、東アジア・太平洋諸国、南・西ア ジア、アラブ諸国で、GNP比の教育支出が増えた国の 数は、それが減った国とほぼ同数だ(増えた国が23カ 国、減った国が19カ国)。しかし、サハラ以南アフリカ では24カ国中18カ国で、増加している。
初等教育への公的支出は、政府が貧困を削減するため の政策を推進するうえで、強力な政策手段となり得る。
GNPに対する公教育支出の比率は、政府が歳入を確 保する能力を含む、いくつかの要因からなる結果であ る。比較的シェアが低い場合でも、それは必ずしも政 府が教育を重視していないというわけではない。それ は単に政府部門が小さいというだけのことなのかもし れない。
Box 3.4 :スーダン南部におけ る児童兵のための教育
戦時中のスーダン南部で CARE が発展させた Miith Akolda カリキュラムは、武装グループとかかわりのあ る子どもたちを武装解除し、社会復帰させることを目 的としたものだ。一時的に子どもたちを収容するキャ ンプが戦闘地の前線から離れた場所に設けられ、授業 の他に、問題解決(problem-solving)、健康や衛生、
歌やダンス、子どもの人権、お話し会(story-telling)、 スポーツや体育といった活動がこのプログラムに組み 込まれた。しかし、子どもは初めのうち長時間にわた って学ぶことができないため、柔軟に対応できるよう プログラムは工夫もされていた。子どもがキャンプで の生活に慣れ、体を洗ったり、食事の支度をしたり、
薪拾い、水汲み、洗濯をしたりといった日常の仕事を 覚えるにつれ、学校で過ごす時間は徐々に増えていっ た。その結果、子どもたちはキャンプで自分の責任を 果たすようになり、日常的な仕事のお陰で生活が安定 し、そうしたことが子どもの社会復帰をゆっくり推し 進めることになった。
ほとんどの国 の政府、特に 後発開発途上 国の政府は、
基礎教育を含 め、教育に充 てる資金を増 やすことに成 功してきた。
紛争後の状況 下で教育に投 資することに より、政府や 国際社会は、
未来に向け強 力なメッセー ジを打ち出し ている。
5.0 4.5 3.2 4.7 3.6 5.0 5.7 4.9
17.5 25.7 18.0 15.0 14.6 13.4 12.7 12.8
サハラ以南
アフリカ アラブ諸国 中央アジア 東アジア・
太平洋諸国
南アジアと 西アジア
ラテンアメリカ・
カリブ海地域
北アメリカ・
西ヨーロッパ
中央・
東ヨーロッパ 表 4.1 GNP に対する公教育支出の比率と、総政府支出に対する公教育支出の比率
GNP に対する公教育支出の比率(%)
政府の総支出に対する公教育支出の比率(%)
出典:『EFA グローバルモニタリングレポート』第 4 章を参照
基礎教育:債務救済イニシアチブによる 恩恵
個別のプロジェクトサポートからセクター全体のサポー トへのシフト:より良いコーディネーション
第 4 章 「すべての人に教育を」
――財政面における進歩
基礎教育への援助額: 2000 年から 2004 年にかけ 上昇、しかし 2005 年は下降
ドナー:中等教育以降を過剰に優先
教育への支出:もっとも教育が必要とされる地域 で増加
学費:最も貧しい家庭にとっては、まだ 高すぎる
E
FAの到達に関して最終的に責任を負っ ているのは政府だが、多くの国々、特に 最貧国にとっては、EFAに向けての進 展はドナーの支援に依存している。それ に関して一種の協定がダカール行動枠組 みの中に記載されている:もし途上国政府がEFAの目 標に重きを置き、広く相談し、より多くの予算を充て、堅実な計画を立てれば、ドナーはそれらの計画の実行 を助けるため追加の資金を提供する、というものだ。
164カ国によってダカール行動枠組みが承認されてか ら7年経ったが、現状の数字は何を示しているだろうか。
この章では、国がどれだけ財政的に責任を負っている かや、基礎教育における援助の傾向、また、より効果 的な援助イニシアチブについて再検討する。
政府は基礎教育に十分な資金を充てているか
ほとんどの国の政府、特に後発途上国や、最もわか りやすいところではサハラ以南アフリカの政府は、基 礎教育を含め、教育に充てる資金をなんとか増やして きた。それでもなお、多くの国ではGNPに対する教育 支出の比率と、政府の総支出に対する教育支出の比率 はかなり低い。
る。これまでの科学技術も、学校教育、ノンフォーマ ル教育、双方へのアクセスを拡大させるために、引き 続き重要な役割を担っている。ラジオやテレビは、ブ ラジル、インド、メキシコなどにおいて、中等教育へ のアクセス拡大に貢献した。
ICTには、より双方向で参加型の新しい学習方法を通 して、教育の質の改善を促していく可能性がある。ま た、ICTによって学校間をつなぎ、経験を共有すること ができる。学校間のネットワークは近年急速に拡大し ている。「スクールネット・アフリカ」にはアフリカの 20カ国が参加する一方、アフリカ開発のための新しい ネットワーク「アフリカ開発のための新パートナーシ ップ(New Partnership for Africa’s Development)」は 2020年までに、550,000校をインターネットでつなぐキ ャンペーンを開始した。
ICTへの強い期待が寄せられているにもかかわらず、
特に途上国においては、ICTの学習効果を正確に測定し た研究はほとんどなく、結果もまちまちである。ICTを 教室での活動に効果的に組み込んでいくには、カリキ ュラム、教員研修、インフラなどを含む総合的なアプ ローチが必要であることを、さまざまな国での研究は 示唆している。
困難な状況下での教育の再構築
世界の武力紛争は減少傾向にあるが、その多くは途 上国で起きており、そこでは犠牲者の多くが一般市民 だ。特に深刻な人権侵害は、子どもが武装グループへ 動員されることで、推定25万人の子どもが児童兵とし て働かされ続けている。このような児童兵は、スーダ ン南部で実施されたもののような特別に立案されたプ ログラムを通して、地域社会に復帰させることが不可 欠だ(Box 3.4)。
紛争後の状況下で教育に投資することにより、政府 や国際社会は、未来に向け強力なメッセージを打ち出 している。例えば、ウガンダでは、1990年代の紛争後 初となる選挙キャンペーンのとき、与党は小学校の授 業料を廃止すると発表し、それが、これからはもっと 平和になるという信頼を得る助けとなった。技術者が 不足しがちな紛争後の期間、学校のインフラを整備す ることは優先すべき事項の一つだ。アフガニスタンで のように、オルタナティブな形態の教育も有効である。
2001年のタリバン政権崩壊後、戦争色の残る地域に希 望をもたらすため、NGOは地域と家庭ベースの学校を 設立するのに貢献している。学校までの距離が近く、
安全な環境で勉強できること、そして教員が地元の女 性だと、女子たちは学校に通いやすくなる。
紛争後の状況において、教育を広める活動をすると きには注意が必要だ。なぜなら特定の人種専用の学校 や、校内での母語の否定、教科書にあるネガティブな イメージなど、むしろ教育が暴力を先導しかねないか らだ。平和教育や多文化教育は、グループ間にある不 信感や嫌悪感を克服するのに役立ち、また、青年が自 分たちの態度を徹底的に分析し、衝突を避けながらコ ミュニケーションをとる方法を教えてくれる。
GNPに対する公教育支出の比率は、北アメリカや西 ヨーロッパで最も高く、次いでラテンアメリカ・カリ ブ海地域、サハラ以南アフリカとなっている(表4.1)。 しかし、地域内で国と国を比べると、その差は大きい。
2005年、北アメリカと西ヨーロッパ以外の105カ国中、
26カ国で公教育支出は対GNP比6%以上だったが、24
カ国では3%以下だった。
1999年から2005年の間に、84カ国中50カ国でGNP に対する教育支出総額は増加している。ラテンアメリ カ・カリブ海地域、東アジア・太平洋諸国、南・西ア ジア、アラブ諸国で、GNP比の教育支出が増えた国の 数は、それが減った国とほぼ同数だ(増えた国が23カ 国、減った国が19カ国)。しかし、サハラ以南アフリカ では24カ国中18カ国で、増加している。
初等教育への公的支出は、政府が貧困を削減するため の政策を推進するうえで、強力な政策手段となり得る。
GNPに対する公教育支出の比率は、政府が歳入を確 保する能力を含む、いくつかの要因からなる結果であ る。比較的シェアが低い場合でも、それは必ずしも政 府が教育を重視していないというわけではない。それ は単に政府部門が小さいというだけのことなのかもし れない。
Box 3.4 :スーダン南部におけ る児童兵のための教育
戦時中のスーダン南部で CARE が発展させた Miith Akolda カリキュラムは、武装グループとかかわりのあ る子どもたちを武装解除し、社会復帰させることを目 的としたものだ。一時的に子どもたちを収容するキャ ンプが戦闘地の前線から離れた場所に設けられ、授業 の他に、問題解決(problem-solving)、健康や衛生、
歌やダンス、子どもの人権、お話し会(story-telling)、 スポーツや体育といった活動がこのプログラムに組み 込まれた。しかし、子どもは初めのうち長時間にわた って学ぶことができないため、柔軟に対応できるよう プログラムは工夫もされていた。子どもがキャンプで の生活に慣れ、体を洗ったり、食事の支度をしたり、
薪拾い、水汲み、洗濯をしたりといった日常の仕事を 覚えるにつれ、学校で過ごす時間は徐々に増えていっ た。その結果、子どもたちはキャンプで自分の責任を 果たすようになり、日常的な仕事のお陰で生活が安定 し、そうしたことが子どもの社会復帰をゆっくり推し 進めることになった。
ほとんどの国 の政府、特に 後発開発途上 国の政府は、
基礎教育を含 め、教育に充 てる資金を増 やすことに成 功してきた。
紛争後の状況 下で教育に投 資することに より、政府や 国際社会は、
未来に向け強 力なメッセー ジを打ち出し ている。
5.0 4.5 3.2 4.7 3.6 5.0 5.7 4.9
17.5 25.7 18.0 15.0 14.6 13.4 12.7 12.8
サハラ以南
アフリカ アラブ諸国 中央アジア 東アジア・
太平洋諸国
南アジアと 西アジア
ラテンアメリカ・
カリブ海地域
北アメリカ・
西ヨーロッパ
中央・
東ヨーロッパ 表 4.1 GNP に対する公教育支出の比率と、総政府支出に対する公教育支出の比率
GNP に対する公教育支出の比率(%)
政府の総支出に対する公教育支出の比率(%)
出典:『EFA グローバルモニタリングレポート』第 4 章を参照
基礎教育:債務救済イニシアチブによる 恩恵
個別のプロジェクトサポートからセクター全体のサポー トへのシフト:より良いコーディネーション