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現場マネージャー物語 53

locofrank担当

櫻井朗典さん

カバーレコーディングに対する 考え方の違い

アーティストが他のアーティストのオリ ジナル楽曲をレコーディングすることを

「カバーレコーディング」といいますが、筆 者の経験では、カバーレコーディングに ついて、職業作家はこれに積極的、肯定 的にとらえているのに対し、シンガーソン グライターには消極的、否定的にとらえて いる人が多いようです。

職業作家は、アーティストの新譜用に 依頼を受けて楽曲を創作するのが一般 的ですが(先に楽曲ができていて、あと でそれを歌うアーティストが決まるという ケースももちろんある)、その場合、意識

してそのアーティストの特性を活かした作 品に仕上げるとは思いますが、決してその アーティスト以外には歌ってほしくないと は考えていないと思います。

その楽曲がヒットしてそのアーティスト の持ち歌として認知されたあとは、他の 多くのアーティストにカバーされ、スタン ダードナンバーとして歌い継がれていくこ とを望んでいるのではないでしょうか。

また、不幸にしてヒットしなかった楽曲 の場合は、それこそ他のアーティストに取 り上げてもらって捲土重来を期したいと ころでしょう。

一方、シンガーソングライターがカバー レコーディングに消極的、否定的なのは、

「 アーティストの権利 」 実用ガイド

シンガーソングライターは職業作家(作詞家・作曲家)にくらべ「著作者名」が持 つ意味の重要性を認識していない人が多いのではないかという話を前回しまし たが、「カバーレコーディング」についても、シンガーソングライターは職業作家と 異なった認識を持っているのではないかと思われます。

今回はこの点を取り上げます。カバーレコーディングは編曲の問題と深く関係し ます。また、著作権法の「同一性保持権」にもかかわってきます。今回は話がや や専門的になってしまいますが、ご容赦ください。

text:秀間修一(リアルライツ)

著作者の権利その3

(カバーレコーディングと編曲の問題)

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彼らは、楽曲を自分で歌うために創るの で、それだけ「この楽曲は自分だけのも の」という意識が強くなり、「他人にはレ コーディングしてほしくない」あるいは「自 分が認めた者だけにレコーディングを許 可したい」と考えるからだと思います。

確かに、著作物の利用とは本来そうい うものであり、著作権法でも著作者に排 他的な利用権を認めているのですが、そ のシンガーソングライターがビジネスとし ての音楽業界の仕組みに入っている以 上、なかなかそのようにはいきません。

[カバーレコーディング時に働く著作権]

カバーレコーディングを行うときに働く 著作権法上の権利は、「複製権」と「編曲 権」です。この他に、歌詞を翻訳するよう な場合は「翻訳権」も働きますが、日本語 の曲を翻訳してカバーすることは稀だと 思うので、本稿では説明を省きます。

複製権のうち音楽を録音物(映像をと もなわないもの)として複製する権利を、

音楽著作権業界では「録音権」と呼んで います。録音権は複製権を細分化したな かのひとつです(複製権のなかには、他 にも「映画録音権(音楽を映像にシンク ロさせて録音する権利)」「出版権(音楽 を出版物に複製する権利)」などがある)。

録音権はすべてのカバーレコーディン グに対して働く権利ですが、編曲権はそ うではありません。編曲権が働かない場

合もありえます。

編曲権とは、元の楽曲を編曲すること によって二次的著作物を創作する権利 なので、編曲に二次的著作物としての創 作性が求められます。このため、創作性 のない編曲は著作権法上の編曲にはあ たらず、そのような編曲でカバーすること については編曲権が働きません。著作権 法における編曲の意味については、あと で改めて説明します。

[録音権と編曲権の所在とその行使]

録音権も編曲権も最初は著作者が持 ちますが、音楽ビジネスを展開する過程 で著作者の手元から離れてしまいます。

それでは、最終的には誰が録音権と編曲 権を持ち、その権利者はどのようにこれ を行使しているのでしょうか。

日本で流通している音楽で著作権が 生きているもののほとんどは、その著作 権を音楽出版社が管理しています。これ は、それらの楽曲の著作者が音楽出版 社と著作権譲渡契約を結び、その著作 権を音楽出版社に契約期間中譲渡して いるからです。譲渡している著作権には 録音権も編曲権も含まれます。

こうして著作権の譲渡を受けた音楽出 版社は、このうち録音権については、ほ とんどの場合JASRACなどの著作権等 管理事業者に管理委託しています。

また、編曲権については、著作権等管

プロダクションが知っておくべき

アーティストの権利」実用ガイド

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働く原著作物の著作権は著作権等管理 事業者が管理している)。

結局、著作者が音楽出版社と著作権 譲渡契約を結んでいる楽曲のほとんど は、録音権については著作権等管理事 業者が、編曲権については音楽出版社 が管理していることになります(歌詞の翻 訳権も音楽出版社が管理している)。

そして、著作権等管理事業者は著作権 等管理事業法により応諾義務を負って いるので、カバーレコーディングを希望す る者に対しては、よほど問題のある利用 者でないかぎり録音の許諾を出します。

一方、音楽出版社のほうも、管理楽曲 をどんどん利用してもらって著作権使用 料をたくさん発生させるのが仕事であり、

カバーレコーディングはその重要な手段 なので、カバーレコーディングのための編 曲については、原則として許諾を出しま す。

音楽出版社によっては、作曲者にカバ ーのデモテープを聴いてもらって許諾の 可否を判断してもらうところもあるようで すが、多くの場合は音楽出版社自身でカ バー企画を検討し、原曲のイメージが大 きく変わってしまいそうなカバー企画につ いてだけ、作曲者に判断してもらいます。

なお、原曲のイメージが大きく変わるよ

があるからですが、カバーレコーディング と同一性保持権の関係については後述 します。

このように、録音権を管理している著 作権等管理事業者も編曲権を管理して いる音楽出版社も、その業務上の要請 から、カバーレコーディングに対して積極 的に許諾しているのです。

したがって、著作者としては、カバーレ コーディングは原則認める方向でないと 音楽出版社と著作権譲渡契約を結べな いことになりますし、換言すれば、著作権 譲渡契約を結んだということは、カバー レコーディングは原則OKであると認めた ことになります。

どうしても自分の曲のカバー化を自分 で完全にコントロールしたいのであれば、

編曲権と録音権を他人に譲渡しないで 自分で管理するしかありません。しかし、

そうなると、ビジネスとしての音楽業界の 仕組みから大きくはみ出すことになるの で、デメリットのほうが多くなるでしょう。

また、著作者が音楽出版社と契約しな いで直接著作権等管理事業者に管理委 託すれば、編曲権は自分で持つことにな るので、編曲権の働くカバーレコーディン グについては自分でコントロールすること が可能ですが、編曲権を盾にほとんどの

プロダクションが知っておくべき

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[「編曲」の著作権法上の意味]

カバー企画をことわることになれば、これ またビジネスとしての音楽業界の仕組み からはずれることになるでしょう。

結局のところ、シンガーソングライター も音楽ビジネスの業界で活動する以上 は、職業作家と同様、カバーレコーディン グに対しては積極的に応じる必要がある のです。このことは、音楽の流通の促進 という観点からもいえることであり、著作 権法でも、69条でカバーレコーディング に関する強制許諾制度を設けています。

第69条(商業用レコードへの録音等)

商業用レコードが最初に国内におい て販売され、かつ、その最初の発売 の日から3年を経過した場合におい て、当該商業用レコードに著作権者 の許諾を得て録音されている音楽の 著作物を録音して他の商業用レコー ドを製作しようとする者は、その著作 権者に対し録音又は譲渡による公衆 への提供の許諾につき協議を求めた が、その協議が成立せず、又はその協 議をすることができないときは、文化 庁長官の裁定を受け、かつ、通常の 使用料の額に相当するものとして文 化庁長官が定める額の補償金を著 作権者に支払って、当該録音又は譲 渡による公衆への提供をすることが できる。

ここで編曲の意味について改めて考 えてみます。

著作権法に編曲の定義はありません が、著作権法の解説書では編曲につい て、「楽曲をアレンジすることにより原曲 に付加価値を生み出すこと」、「原曲に新 たな創作性を加えること」、「原曲を改作 すること」などと説明されています。これ らは、編曲が原曲を土台とした二次的著 作物(編曲著作物)であるための要件を 述べたものと思われます。

JASRACの編曲審査委員会における 編曲の審査基準では、「編曲著作物とは、

二次的著作物としての創作性を有するも のをいう。」と規定し、「原曲の調を単に 他の調に移調したもの」や「原作の声部 を単に異なる楽器に書き分けたもの」な どは編曲著作物として取り扱わないと定 めています。

また、裁判所の見解としては、「『編曲』

とは、既存の著作物である楽曲(以下

『原曲』という。)に依拠し、かつ、その表 現上の本質的な特徴の同一性を維持し つつ、具体的表現に修正、増減、変更

第2条(定義)1項11号

二次的著作物 著作物を翻訳し、編 曲し、若しくは変形し、又は脚色し、

映画化し、その他翻案することにより 創作した著作物をいう。

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