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いが、市場関係者に無用な誤解を招くことになりかねない。
これまでの議論で、JWG が提案する全面時価評価にも、それに対する反対論にも共に合 理性があることが分かった。しかし、反対論に対する反論には議論のすり替えとも取れる 内容や説明が不足した部分があり、JWG が提案した基準案に対する反対論の方がそれ以上 の論拠を持っていたという心証を得た。そのため、金融資産の全面時価評価はともかく、
金融負債を全面時価評価した上で当期の損益に算入することについては賛成できないとい う結論となった。
しかし、金融資産、金融負債の時価評価の流れというのは、市場関係者からの要望がな い状態では促進されないものであるとも考えられる。もし時価評価という時代の流れに逆 らうことができないのであれば、(1)金融資産の評価方法については現行の混合属性会計の まま、金融負債の評価方法については取得原価のままで、注記で時価情報を現行より詳細 に明示する場合に注記法か、(2)金融資産、金融負債の評価方法については公正価値評価を 適用するが、金融資産の評価差額を当期の損益とするのに対し、金融負債の評価額につい ては時価で行い、その評価差額については当期の損益に算入するのではなくその他有価証 券評価差額金と同じく純資産直入法を行い評価差額については定期的に洗い替え、条件が 揃った場合に当期の損益とする方法を推奨したい。
上記で挙げた注記法、純資産直入法どちらにおいても利点と欠点がある。そこで、どち らの方法が財務諸表上でより有用に情報を伝達することが出来るのかについて、また、こ の二種類の方法以外に有価証券をよりよく表示する手法があるのかどうかについては、今 回の論文で残された検討課題となった。これらの検討課題は、今後の時価評価適用に対す る時流で混合属性会計と全面時価会計のどちらが推奨されるようになっていくのかにより 内容も変化する。
このような金融商品評価に関連するものとして、2009 年 11 月 12 日には IASB が IFRS 第 9 号「金融商品」のフェーズ 1 の最終基準を公表した。フェーズ 1 では、金融資産の分類 及び測定が取り扱われている。これは現行の IAS 第 39 号が適用される全ての金融資産につ いて適用されているが、公開草案からの変更点として、金融負債がフェーズ 1 の対象外と された。IASB は、今後金融負債の取扱についても再度検討する予定であるとしているが、
その間は金融負債については IAS 第 39 号が適用されることになる。
金融商品が作り出され、より複雑さを増していくたびに、金融商品に対する会計基準は改 訂を重ねてきた。今日までの間、長く各国で金融商品の評価について論じられてきている
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にもかかわらず、今回の IASB の公表した IFRS 第 9 号「金融商品」のフェーズ 1 の公開草 案から最終基準を公表するまでの経緯を一例としても、未だに金融商品の評価方法を考え る上で金融資産と金融負債を一緒に考えてはならないことを示しているのではないだろう か。
また、JWG 基準案が公表された当時では公正価値測定についてはまだ正確な測定が出来 ないとされていたが、現在では金融商品に関する公正価値の測定方法を具体的に指示した SFAS157 号が米国で公表されるなど、JWG 基準案が公表された当時と比較すると、公正価値 評価を行うための環境が整備されており、たとえ JWG 基準案自体の論拠が弱くても、それ は全面時価会計の否定に直結しないのではないか、という議論もみられる。だが、SFAS157 号の公表をはじめとする、公正価値測定に関するガイドラインの整備・充実が全面時価会 計適用の十分な論拠となりうるかどうかについては、なお慎重な検討が必要と考えられる。
2009 年 9 月のピッツバーグ・サミットにおいて、単一で高品質な国際会計基準の必要性 が叫ばれたが、今後金融商品評価に関する時流を注意深く見ていきながら、金融資産、金 融負債の評価方法をどのようにしていくのかについてより深く考えていきたい。
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