I
名5略蛇略鉛
211 27882.2%とかなり広いものとなったため,両年齢群の間に,
数詞のみで数える傾向に明確な差はみられなかった。こ のことから,5歳から6歳ごろにかけて,助数詞を付け た方が望ましいという認識が進むという可能性が示唆さ れたが,さらなる検討が必要であろう。
具体的な修正例をみると,人間に対して「匹」,「頭」
を用いたり,「匹」,「頭」のカテゴリーに属する事例に
「人」を用いるという誤りが全く認められなかった。こ れは,「人」の理解が最も早いということを示唆するも のである。また,「本」,「枚」のカテゴリーに属する事 例 に 対 し て 有 生 助 数 詞 を 用 い た 修 正 が 全 く な か っ た の に 対して,「台」カテゴリーの事例は,4人の幼児(年中1,
年長3)により計6回有生助数詞で数えられた(人1,匹 2,頭3)。これらは「動く」という特性に関連した有生 助数詞の「台」カテゴリーへの般用かもしれない。この ような意味に基づいた般用が起こるということは,幼児 が助数詞の意味システムを理解し始めていることを示す
ものであろう。
4.助数詞の選択課題の分析
修正の際に数詞のみで助数詞を付けずに数えるなどし た 対 象 児 に 対 し て 行 っ た , 3 つ の 助 数 詞 の 中 か ら 適 切 な ものを1つ選択させるという課題に回答したのは,年少 2名(5回),年中10名(42回),年長11名(39回)の計 23名で,回答数は延べ86回であり,1人の対象児が答 えた回数は最小1回,最大13回であった。選択課題に おける各選択肢について,各対象児の選択率を学年ごと に 平 均 し た と こ ろ , 正 答 の 選 択 肢 を 選 ん だ 比 率 の 平 均 は,年少0%,年中46.0%,年長75.4%であった('Elble 6)。年中と年長の平均正答率の95%信頼区間を求めた
ところ,年中が23.6%〜68.3%,年長が52.3%〜
98.4%であり,年長において下側信頼限界がチヤンスレ ベル(1/3)を越えており,年長児は自力で助数詞を用 いて修正できない場合でも,選択肢を提示されればある 程 度 は 適 切 な 助 数 詞 を 選 ぶ こ と が で き る こ と が 示 さ れ た。また年長児が存在論的区別を侵犯する選択肢を選ん だ比率の平均は7.6%とかなり低く,11人中9人は1度
も選ばなかった。選択課題の結果からも,年長児の助数 詞の理解が,数えられる事物の存在論的区別によって影 響を受けていることが示唆された。年少児はすべて「分 からない」と答えたことから,適切な助数詞を選択する
という課題自体が理解できなかった可能性もある。
考 察
助数詞の理解と存在論的カテゴリー
動 物 / 非 動 物 の よ う な 存 在 論 的 区 別 と 助 数 詞 カ テ ゴ リーの関連に幼児は気づいているだろうか。そのような 存在論的区別に関する知識が幼児における助数詞の理解 の助けとなっているだろうか。これらが,本研究が明ら かにしようとする最も中心的な問であった。実験によっ て こ の 点 を 様 々 な 観 点 か ら 多 面 的 に 検 討 し た 結 果 , パ ペットのエラータイプの要因の効果,幼児が修正に用い た助数詞,選択課題の回答,いずれの分析結果からも,
年長児のみが,事物の有生 性によって助数詞カテゴリー が異なるという知識を助数詞の理解の基盤としているこ とが示唆された。この基盤の形成と適切なルールに基づ く助数詞の産出の開始が,ともに年長という年齢段階で 起こっていると思われることから,存在論的カテゴリー と 助 数 詞 カ テ ゴ リ ー の 関 係 に つ い て 気 づ く こ と は ,
「人」,「匹」,「台」といった助数詞の獲得に寄与してい る可能性が示唆される。
中国語と日本語における幼児の助数詞獲得過程を比較 したUchida&Imai(1999)は,中国の幼児の助数詞獲得 が日本と比して大きく遅れることを明らかにしたが,こ の原因について,中国語の助数詞の体系では,日本語に 動 物 / 非 動 物 の 存 在 論 的 区 別 の よ う な , 助 数 詞 カ テ ゴ リーを根本的に分類するような基準が存在しないことに よるのではないかと考察している。本実験の結果は,こ の 考 察 に 対 し て 支 持 を 与 え る も の で あ る よ う に 思 わ れ る。つまり,日本人の幼児は,事物の存在論的カテゴ リーと助数詞カテゴリーの関係に気づき,それを利用す ることで,その後の助数詞付与ルール抽出の際の仮説検 証の範囲を狭め,助数詞獲得を容易にしていると考えら れる。一方,同じ助数詞が動物,非動物の両方に適用さ れ た り す る 中 国 語 で は , 動 物 / 非 動 物 の 存 在 論 的 区 別 の よ う な 知 識 が そ も そ も , 助 数 詞 付 与 ル ー ル を 生 成 す る た めの手がかりとならないため,幼児は,あまり制約され ていない仮説空間の中で意味規準の候補を探さなければ ならず,これは処理資源の乏しい幼児にとっては困難な のではないだろうか。
つまり,日本語で,事物の存在論的区別が助数詞カテ ゴリー決定の基盤となっているということは,その後の 助数詞獲得プロセスにおいて,名詞獲得における概念的 制約(今井,1997)とある面では似たような働きをする のかもしれない。
Table6選択課題における各選択歴の選択率の平均(%)
0 (0.00)
46.0 (0.31) 75.4 (0.34)
正 答 存 在 内 存 在 外 分 か ら な い 人 数 ・ 回 数 0
(0.00) 28.8 (0.23)
19.8 (0.34)
発 達 心 理 学 研 究 第 1 7 巻 第 3 号
卿切紳皿帳
100 (0.00)
0 (0.00)
0.02 (0.05) 0
(0.00) 25.2 (0.27)
7.6 (0.17)
注.人数・回数は,上段が選択課題に1回でも回答した対象児の年齢 群 ご と の 人 数 , 下 段 が そ れ ら の 対 象 児 に よ る 選 択 課 題 の 回 答 数 の年齢群ごとの合計。
幼児における助数詞の理解 279
助数詞の獲得順序と基礎レベルのカテゴリー
幼児は主要な助数詞をいつ,どのような順序で獲得し ていくのか,本実験の結果から示唆された各助数詞カテ ゴリーの獲得の順序,時期は以下の通りである。まず
「人」と「台」の獲得が最も早いだろう。この2助数詞に ついては,年長ではかなりの程度正しく用いられてい た。実験で誤った助数詞を修正する際にも,人間に対し て「匹」,「頭」を使ったり,「匹」,「頭」のカテゴリーに 属する事例に「人」を使ったりすることは全くなかった ことから,「人」が最も早く理解される助数詞と言える だろう。一方,「本」,「枚」を適切に用いることは年長 児にとってもやや難しく,「頭」は全く理解されていな いと言ってよい状態であった。年中以下の幼児が,助数 詞の誤りを正しく修正することが困難であったことか ら,本研究で取り上げた主要な助数詞に関する適切な ルールに基づく産出は,おもに6歳前後から始まるもの と考えられる。助数詞獲得の時期については,用いる課 題の違いなどによって,研究間でもかなり差がみられ る。本研究とほぼ同様の方法を用いているUchida&
Imai(1999)では,本研究よりも正答率が高くなってい る。これは,Uchida&Imai(1999)が前もって練習課題 を行っていることや,地域差に起因するものかもしれな い。しかし,現時点で正確な助数詞の獲得時期を明らか にすることは難しく,さらに検討が必要であろう。
年中児や年長児では適切な助数詞を用いて修正はでき ないまでも,パペットの用いた助数詞が誤りだというこ とには気づいている場合もあり,正しいルールを適用し て助数詞を産出できるようになる前に,幼児はある程度 助数詞の意味システムを理解していると考えられる。助 数詞の理解が産出よりも先行するという結果は,Uchida
&Imai(1999)やYamamoto&Keil(2000)など多くの先 行研究の知見とも一致する。
助数詞の獲得順序は有生助数詞の中では,Matsumoto
(1987)が予測したように意味の基準がより複雑な「頭」
の獲得が最も遅く,またUchida&Imai(1999)が指摘し たように,幼児の既有知識が豊富な「人」の獲得が最も 早いという結果が再現された。しかし,年長において
「台」の正答率が「人」と同程度に高いということは,有 生助数詞と無生助数詞の理解を同時に検討した本研究に よって明らかになった新たな事実である。この背景には どのような要因が存在するだろうか。
著者らは「台」の正答率の高さに影響を与えている要 因のひとつとして,助数詞カテゴリーに相当する先行概 念の存在の有無を挙げることができるのではないかと考 える。「人」,「(乗り物の)台」には,いずれも人間,車 という,助数詞カテゴリーとほぼ等しいメンバーから構 成 さ れ る 基 礎 レ ベ ル の 名 詞 カ テ ゴ リ ー が 存 在 す る が ,
「本」,「枚」,「頭」にはそのような名詞は存在しない。
言語間で助数詞カテゴリーの体系が大きく異なることか らもわかるように,「本」の「細長いもの」といったカテ ゴリーはある言語特有のものであり,助数詞獲得を通し てはじめて明示的に形成されるものだろう。一方,「人」
のような助数詞では,幼児は既に存在する個別の概念に 助数詞カテゴリーを対応付けるだけでよい。「匹」は動 物全体を含むカテゴリーではないが。獲得初期には動物 というカテゴリーに「匹」カテゴリーを対応付けている ため,先行研究や本研究でみられた「頭」カテゴリーに まで及ぶ般用が起きているのかもしれない8)。「動物」
というカテゴリーに基づいて絵を分類する課題に成功し た幼児は,同じ課題に失敗した幼児よりも,トレーニン グによって「匹」ルールを正しく生成できる場合が多い という高田(2002)の知見はこの仮説と整合的である。
幼児における助数詞の理解過程
先行研究の知見,および本実験の結果とそれに基づく 考察によって,幼児が助数詞を理解していくプロセス,
その背後にあるメカニズムをどのようなものとして描け るだろうか。
幼児における助数詞の使用は既に2歳ごろからみられ るが,この時期の助数詞使用が,用いられる助数詞が
「つ」,「回」などに限られていること,1以外の数詞と共 起しないこと(仲,1997)を考えれば,2歳児は助数詞の 意味システムや文法的機能に気づいていない可能性が強 いだろう。この最も初期の助数詞の使用は,耳にした音 声のどこが数詞でどこが助数詞かなどを分析しないま ま,その全体を機械的に記憶しておいて,要求や叙述の 手段として使用するものであり,この時点では,助数詞 としての理解は,まだ始まっていないと言った方がよ い。加えて,この時期に周囲の大人から与えられるイン プットの性質として,使用される助数詞が偏っているた めに(仲,1997),「つ」,「個」が付与された数詞系列が幼 児によく記憶されており,そのことが幼児初期の助数詞 使用を特徴づけ,それ以降の「つ」,「個」の般用へもつ な が っ て い る と 考 え る こ と が で き る だ ろ う 。 丸 山
(2002)も,2歳児は数詞系列を分割できないひとつのま とまりとして理解しているに過ぎず,数詞系列にある 個々の数詞を独立したものとして理解できるようになる のは5歳ごろであると述べている。数詞系列に関する理
8)本実験において,幼児が動物を数える際に起こした「存在内」の 誤りはすべて「匹」と「頭」の誤用であった。「頭」カテゴリーに 属する事物を「匹」で数えたのは全年齢合わせて9回で,「頭」カ テゴリーの事物に対する修正16回の半分以上を占めていること,
「頭」を正しく用いた者がほとんどいなかったこと,「匹」カテゴ リーの事物に「頭」を用いる修正がほとんどないことから,「頭」
カテゴリーが分化する前は「匹」が人間以外の動物全体に般用さ れていると考えられる。Uchida&Imai(1999)やMatsumoto
(1987)でも,同様の般用の存在が報告されている。