1 コマ目の授業では,絵地図を見て視覚障害者がバリ アを感じる場所を探す活動を行った。子どもたちは点字 ブロック上の自転車やトラックなどの存在に気づき,そ の理由を正しく記述していた。また,横断歩道前や自動 ドアの前に点字ブロックが設置されていない場所や,警 告ブロックを設置すべき箇所に誘導ブロックが設置され ている場所があることにも気づいた。さらに,歩道に突 き出している看板や木の枝,工事現場を囲む柵や工事穴 についても危険であると指摘した。
子どもたちは,2 種類の点字ブロック(警告ブロック と誘導ブロック)それぞれの役割や設置場所,白杖では 胸から上の障害物を検知できないことなどを,西館ら
(2012)の実践や本実践で事前に学んでいた。そのため,
さまざまなバリアを自分たちの力で発見することがで き,楽しんで活動を行っている様子が観察された。これ までの教育とのつながりを考慮しながら,継続的に学習 を進めてきた成果が,積極的に活動に参加する子どもの 姿に表れていると評価できる。
2 コマ目の授業では,自分のそばに常に親が付いてい たらどう思うかを話し合うことを通して,視覚障害者に 常に援助者がつくことの是非を考える時間をもった。援 助者が常につくことは,一見すると親切な対応であるよ うに感じられる。そのため,授業前の調査では,7 割を 超える子どもがよい考えであると答えた。授業後には 4 割の子どもが,視覚障害者が一人で歩けることや,一人 で歩きたい時があることを理由に,よい考えではないと 意見を変えた。
このように,認識を適切な方向へ変容させた子どもが いた一方で,35%の子どもは授業後も,援助者が常につ くことはよいことであると答えた。この話題について話
表 9.手伝いを申し出た際に「大丈夫です」と断られた理由についての子どもの考え(選択式)
授 業 後 援助必要だが
遠慮がある
援助必要だが自力 ですべきと考えて
いる
その時は援助 の必要なし
そもそも援助 の必要なし
その他
授 業 前
援助必要だが遠慮がある
24%(
19名)
17%(
13名)
19%(
15名)
1%(
1名)
4%(
3名)
援助必要だが自力ですべきと 考えている
1
%(
1名)
12%(
9名)
10%(
8名)
4%(
3名)
0その時は援助の必要なし
0 0 4%(
3名)
00
そもそも援助の必要なし
0 0 0 1%(
1名)
0その他
0 0 0 00
- 82 - し合う時間が短かったことなどにより,視覚障害者への 援助のあり方について,子どもたちの中で考えがまとま らなかった可能性がある。「視覚障害者は一人で外出せ ず,常に援助者がそばについていた方がよい」という意 見については,視覚障害者の思いだけでなく,それを実 行した場合に起こりうる弊害などについても事例を示 し,子どもたちが納得するまで話し合いを進められるよ うに,時間や内容を考慮すべきであった。
また,2 コマ目の授業では,子どもたちの意識がバリ アフリー設備の設置にだけ向くことのないように,物理 的な環境の整備には限界があること,設備をつけられな い場所においては周囲の人の援助が必要であることを伝 えた。加えて,視覚障害者をどのように援助すればよい かについてビデオ映像を視聴した。授業後の調査では,
授業前に比べて,周囲の人による援助等の必要性に目を 向ける子どもが増えた。
授業の最後には,視覚障害者は常に援助を必要として いるわけではないため,援助の申し出をしても,断わら れることがあることを伝えていた。しかし,授業後の調 査において援助の申し出を断られた場面を示し,その理 由について子どもの考えを尋ねたところ,「その時は援 助の必要がなかった」と適切に回答した子どもは約 3 割 であり,5 割強の子どもは授業後も,視覚障害者は援助 を必要としているにも関わらず断ったと答えた。授業後 には,視覚障害者が「遠慮」という消極的な理由ではな く,自立に向けた積極的な理由で断っていると考える子 どもが増えたものの,彼らは,視覚障害者が援助を必要 としているという考えを持ち続けている。つまり,彼ら は,視覚障害者が援助を必要としないことがあるという ことを十分に理解していない可能性がある。視覚障害者 がどこで援助を必要とし,どこで必要としないのかにつ いては,今後の教育において引き続き,扱っていく必要 があると言える。
Ⅶ.まとめ
本実践の目的は,視覚障害者の外出環境を考える取り 組みを通して,外出時に視覚障害者が感じる困難と,そ れを解消するための工夫についての理解の促進を図るこ とであった。視覚障害者が感じているバリアや危険につ いては,実践を通して子どもたちの理解を進めることが できたと判断される。また,困難を解消するための工夫
として,授業後に市民による援助の必要性に目を向ける 子どもが増えたことは,授業の成果として評価できる。
一方で,授業後も視覚障害者には常に援助者がつくと よいと考える子どもがいるなど,子どもたちが授業で得 た情報を整理しきれていない様子がうかがえた。障害者 がバリアを感じずに済むにはどうすればよいか,障害者 への援助はどうあるべきかについては,今後の教育にお いても継続して扱っていく必要があると言えよう。
文献
水野智美・徳田克己(2005)『障害理解-心のバリアフリー の理論と実践-』,誠信書房.
水野智美・徳田克己(2014)身体障害,発達障害の理解 教育の段階モデルの提案,障害理解研究,15,1-8.
西館有沙・阿久津理・萩中泰弘(2014)総合的な学習の 時間における視覚障害理解教育モデルの作成 2 -視覚 障害者の生活の様子を伝える授業は子どもの認識にど のような変化をもたらしたか-,障害理解研究,15,
9-20.
西館有沙・永田晴菜・石田雅人・松井昌美(2012)総合 的な学習の時間における視覚障害理解教育のモデルの 作成 1 -触察体験を用いた授業の開発と実践-,障害 理解研究,14,21-34.
西館有沙・徳田克己(2004)障害者介助の失敗体験から 考える障害理解教育の必要性,アジア障害社会学研究,
4,1-8.
西館有沙・徳田克己・水野智美(2005)小学校及び中学 校において実践されている交通バリアフリー教育,障 害理解研究,7,27-34.
西館有沙・薮波真理子(2010)視覚障害理解を目的とし た授業の実践-効果的な障害理解教育モデルの構築の ために-,富山大学人間発達科学部研究実践総合セン ター紀要,26,107-115.
小野聡子・徳田克己(2006)視覚障害歩行シミュレーショ ン体験が体験者の不安,恐怖心に与える影響-障害理 解教育の視点から-,障害理解研究,8,37-46.
(2014年9月1日受付)
(2014年10月8日受理)
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CAN-DO リストに基づいた英語授業実践に関する高校生の意識調査
1.はじめに
文部科学省は 2012 年度,「外国語能力の向上に関する 検討会」1)の提言「国際共通語としての英語力向上のた めの 5 つの提言と具体的施策」(文部科学省, 2011)を 受けて,英語の使用機会の大幅な拡充や英語学習に対す るモチベーションの一層の向上を図る等の優れた取組を 支援する事業「英語力を強化する指導改善の取組」を決 定し,各県教育委員会に事業に取り組む拠点校の設置を 依頼した。文部科学省は拠点校の取組には次の 3 点の内 容を含むことを求めた。
1.学習到達目標を「CAN-DO リスト」2) の形で設定・
公表し,その達成状況を把握し,指導に生かすこと。
2.授業における指導と学習評価の改善等の推進にあ たり,外部有識者からの指導も受けながら授業公開 や研究協議会を計画的に実施すること。
3.授業内外において生徒が英語を使う機会を増やす ことに資するよう ALT やインターネット等の ICT 等の効果的な活用を図ること。
本事業は 2013 年度,事業名を「英語によるコミュニ ケーション能力・論理的思考力を 強化する指導改善の 取組」に変更し,継続・推進された。事業の趣旨と拠点 校が取り組むべき内容は 1 年目とほぼ同じである。また
本事業は「当該校における成果を同都道府県の全域で共 有し,地域全体で戦略的に英語教育の改善を図るための 取組を行う」となっている。事業の成果を今後活用して いくためには,学習者である生徒にとってどのような面 で役に立っているのかを明らかにしておくことが必要で ある。本稿では,V 県拠点校 4 校における 2 年間の取 組の成果や課題を生徒の意識調査を通して検討する。
2. 研究の理論的背景
2.1 CEFR の理念
投野編(2013)は,CEFR (Common European Frame-work of Reference for Languages: Learning, Teach-ing, Assessment, ヨーロッパ言語共通参照枠 ) の理念 について以下のように述べている。
CEFR は言語観,言語学学習,教授観を行動指 向アプローチ(action-oriented approach)で考え る。これは言語使用者を,社会行為を行う者ととら え,言語行為はある目的で行動することによって生 じると考えている(p.11)。<省略>言語によるコ ミュニケーション能力を持つということは,言語に 関する知識だけにとどまらず,その知識を活用して,
CAN-DOリストに基づいた英語授業実践に関する高校生の意識調査
―拠点校2年目の指導改善の取組―
岡崎 浩幸
High School Students’ Perceptions of English Teaching Practices Based on Can-Do Statements
- Hub Schools’ SecondYear Efforts to Improve Instruction
-Hiroyuki OKAZAKI
摘要
V 県拠点校(4 高校)では,CAN-DO リストの形での学習到達目標を設定し,それに基づく授業改善を 2 年間実 践してきた。本研究の目的は生徒の意識調査(1 学年, 2 学年)を通して,2 年間の取組の成果や課題を報告検討する ことである。アンケートの結果から,「授業への満足度」「英語による授業への慣れや理解度」「英語使用への有能感」「英 語学習への意欲向上」においては 4 校とも概ね良好な成果を示している。ただし,「CDS による意欲向上」は低い結 果を示していることから,授業は改善しつつあるが CDS の目標が徹底されていない可能性もある。また,CDS を用 いて自律的学習者を育成することについては 4 校とも十分な成果が得られなかった。これは,生徒が CDS を参考に して自分の目標を設定し自己の学習状況を振り返るという自律に欠かせない行動が十分に促されていないからであろ う。CDS による授業実践による自律的学習者の育成について,今後更なる研究が必要となるであろう。
キーワード:拠点校,CAN-DOリスト(CDS)
,英語授業,高校生の意識Keywords:Hub High Schools, Can-Do Statements, English Classes, High School Students’ Perceptions 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 教育実践研究 №9:83-96