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1.調査研究の目的

特許庁では、1990年に専用端末を用いたオンライン出願と、書類データを格納したフレ

キシブルディスク(FD)を特許庁に提出するFD出願の二種類の電子出願システムを導入し、

当該電子出願システムの導入に伴い、「工業所有権に関する手続等の特例に関する法律」(特 例法)を制定して法整備も実施した。

そして、電子出願システムの導入後も、1998 年に ISDN 回線を利用したパソコン電子出 願の導入、2005年にインターネット出願の導入など、ユーザーの利便性の向上に向けた取

組を行っており、出願に占める電子出願の割合は年々向上し、現在では94%(特許・実用 新案・意匠・商標)ととても高い割合となっている。

また、日本国政府は、オンライン手続の推進に向けて「行政手続等における情報通信の 技術の利用に関する法律(平成14年法律第 151号)」を制定し、さらなる行政手続のオン ライン利用の普及拡大のため、2008年度~2010年度の間は「オンライン利用拡大行動計画」

(2008 年 IT 戦略本部決定)、2011 年度~2013 年度の間は「新たなオンライン利用に関す る計画」(2011年IT戦略本部決定)、2014年度以降は、「オンライン手続の利便性向上に向 けた改善方針」(2014年各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)を策定することに より、行政手続のオンライン化推進に向けた取組を進めている。

ここで、特許庁では、上述のように、これまでに様々な取組を行ってきたが、政府の方 針に従い、さらなる電子出願制度の利用促進や利便性向上に向けた取組を講じることが求 められており、当該利用促進や利便性向上に向けた取組においては、制度ユーザーの意見・

要望を把握することは欠かせない。

しかしながら、現状、電子出願制度の利用促進や利用支援のために、パソコン出願ソフ トユーザー連絡会の開催、電子出願ソフトサポートサイトの設置等を行うことにより、個 別の国民・企業等制度ユーザーとの接点は存在するものの、大規模な意見・要望をまとま った形で収集する機会を十分に有しておらず、制度ユーザーの意見・要望を広く取り入れ た電子出願制度の改善検討は難しい。

一方、特許庁では、平成 25 年に改定した「特許庁業務・システム最適化計画」(以下、

「最適化計画」という。)を実施しており、当該最適化計画の第Ⅱ期(平成 30 年度~平成 34年度)においては、出願人等の手続について、ユーザー利便性を向上させるためのシス テム整備の検討を進める予定である。

そこで、このような状況を踏まえ、本調査研究では、電子出願システムについてのユー ザーニーズを調査し、電子出願制度の利用促進や利便性向上の検討に関する基礎資料とす ることを目的とする。

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2.調査研究内容及び実施方法

(1)公開情報調査

書籍、論文、調査研究報告書及びインターネット情報等を利用して、本調査研究の内容 及び政府機関の電子申請システムに関する文献等(海外の文献等を含む)を収集、整理及 び分析し、結果を取りまとめた。

調査は、以下の観点から行った。

<特許庁の電子出願システム>

・日本国特許庁の電子出願システムにおける国内の改善ニーズ・問題意識を調査した(特 に、①電子出願システムの環境における WEB ブラウザの採用、②電子出願システムにおい て電子証明書を利用することに関する意見、など)。

<特許庁の電子出願システム以外の政府機関の電子申請システム>

・特許庁の電子出願システム以外の政府機関の電子申請システムについて、年間申請件数 が多い主な電子申請システム 10 システムにおいて、電子申請の環境(WEB ブラウザ利用、

専用ソフト利用など)、各種電子証明書の利用の有無、電子申請率、システムの仕組み・特 徴、利用方法、等の調査を行った。

<海外知財庁の電子出願システム>

・特許・実用新案・意匠・商標の電子出願システムにおいて、以下に示す調査対象国の知 財庁に対して、調査を行った。

■調査対象国

○IP5

米国、ヨーロッパ(EPO、EUIPO)、中国(SIPO、SAIC)、韓国

○ASEAN

インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア

○その他

アフリカ(ARIPO)、イギリス、インド、オーストラリア、カナダ、台湾、ドイツ、ブラ ジル、フランス、メキシコ、ロシア、WIPO

■主な調査項目

・電子出願システムの環境(WEBブラウザ利用、専用ソフト利用など)

・出願時の電子証明書の利用の有無

・電子出願率

<その他>

電子申請システムの環境として、WEB ブラウザを利用する場合の導入態様、各種電子証

明書の利用をせず電子申請を受け付ける場合の課題(技術的課題、セキュリティ上の課題 など)について、網羅的に調査した。

(2)国内質問票調査

電子出願システムを活用して電子出願を行っている国内企業・弁理士事務所等のユーザ ー1000か所程度を対象にして、電子出願システムに関する質問票調査を実施した。

■主な調査項目

・電子出願システムに関する課題及び改善ニーズ

・WEBブラウザをベースとした電子出願システムの導入ニーズ

・電子出願システムにおける電子証明書の利用に関する意見

(3)国内ヒアリング調査

(ⅰ)国内ユーザーヒアリング調査

本調査研究の内容に関する論点について、国内質問票調査の調査結果を元に、国内企業・

弁理士事務所等のユーザー10か所に対してヒアリングを行った。選定の際には、自社で電

子出願を行っている企業・弁理士事務所の中から選定し、年間出願件数が大規模な箇所か ら小規模な箇所まで、網羅的に選定した。

(ⅱ)国内専門家ヒアリング調査

国内の電子申請に関する専門家、4 名に対して、電子申請において WEB ブラウザをベー スとした電子申請システムの導入態様、各種電子証明書の利用をせず電子申請を受け付け る場合の課題(技術的課題、セキュリティ上の課題など)、について、ヒアリング調査を行 った。

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(4)海外質問票調査

(ⅰ)海外知財庁質問票調査

特許・実用新案・意匠・商標の電子出願システムとして、WEBブラウザ及び専用ソフトの 両者を採用している調査対象国7カ国の知財庁に対して、質問票調査を実施した。

■調査対象国

・中国、ドイツ、ブラジル、ロシア、米国、フィリピン、欧州(EPO、EUIPO)

■主な調査項目

・電子出願システムの環境として WEB ブラウザ及び専用ソフトの両方を採用している理 由及びその利点。

・今後の電子出願システムの環境整備に関する方向性(WEB ブラウザに一本化する等)。

(ⅱ)海外申請人質問票調査

特許・実用新案・意匠・商標の電子出願システムとして、WEBブラウザ及び専用ソフトの 両者を採用している調査対象国 2 ヶ国において、電子出願システムを活用して海外の自国 に電子出願・電子申請を行っている海外企業・弁理士事務所等の申請人各国 3 箇所を対象 にして、質問票調査を実施した。

■対象国

・中国、ドイツ

■主な調査項目

・電子出願システムの環境としてWEBブラウザと専用ソフトのそれぞれの使用感

・電子出願システムの環境として WEB ブラウザを利用することの専用ソフトを利用する ことと比べた利点及び欠点。

Ⅱ.公開情報調査

日本国特許庁の電子出願システム

日本国特許庁の電子出願システムにおける国内の改善ニーズ・問題意識を調査するため、

パブリックコメント、文献等において表明されている意見・提言を収集した。

(1)調査対象文献

特許庁が把握する課題等とユーザー意見の整合性を確認するとともに、多く表明されて いるユーザー属性毎の意見動向などを分析・把握するため、これまでに実施されたパブリ ックコメントの結果、及び特許庁への意見・提言等が掲載されているユーザー団体の機関 誌を対象文献として調査した。

(2)パブリックコメントに寄せられた意見

一般から寄せられた利用者の意見動向についても分析・把握するため、「電子政府の総 合窓口(e-Gov)」2において公開されているパブリックコメントを集計した。

検索対象として、現行のシステム等に対する意見の動向を把握する観点から、直近10年 間

3

に実施されたものを対象とし、それぞれのパブリックコメントより、システムに対する 改善ニーズ・問題意識に関する意見を抽出した(表1)。

1 特許庁システム等に関して実施されたパブリックコメント(過去10年)

記号 パブリックコメント結果のタイトル 公開時期

シ ス テ ム に 対 す る 改 善 ニーズ問題意識に関す るコメント件数

a

特許庁 業務・システム最適化計画(改訂版)に基 づく新事務処理システムの設計・開発に対する意 見募集結果について

平成19115 12

b

「特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関 係省令の整備等に関する省令案」に対する意見募 集の結果について

平成20930 2

c

「特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律 施行規則の一部を改正する省令案」に対する意見 募集の結果について

平成2216 1

2

パブリックコメント案件検索 「電子政府の総合窓口(e-GovHP http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public [最終アクセス日:20171124日]

3 直近10年間 平成1911月から平成297月の間に公開されたパブリックコメント案件検索のうち、キーワード検 索にて「電子出願」の結果が30件、「特許庁」及び「出願」の結果236件の計266件より抽出。「電子政府の総合窓 口」HPhttp://search.e-gov.go.jp/servlet/Public [最終アクセス日:20171124]

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