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ドキュメント内 < F914E6F2E F18D5A816A5F939D8D8794C52E706466> (ページ 63-133)

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シートン  |  歴史コンテンツとツーリズム  | 

歴史コンテンツとツーリズム

坂本龍馬と高知市の事例

シートン・フィリップ

北海道大学国際本部留学生センター教授

はじめにʊʊ本発表の背景と構成

  国際本部留学生センターのシートンと申します。このコンテンツ・ツーリズムの研究プ ロジェクトには発足当初から参加していますが,私の場合はマンガ,アニメなどのポップ カルチャーへの関心から研究を行っているわけではありません。長らく日本研究に携わっ てきた研究者として,物語性,テーマ性というコンテンツ・ツーリズムのキーワードは,

広く日本人について考える上でも示唆的であると考え,私はこの概念に興味を持つように なりました。もっとも,私は観光学の専門家ではなく,戦争と記憶,あるいは歴史認識の 研究を続けてきました。しかし,たとえば,戦争と記憶の研究の中で若者を対象にしたア ンケート調査を行うと,教科書ではなくテレビドラマや映画,資料館・博物館の展示が歴 史認識に影響を与えているという結果が出ます。歴史認識を検討する上で,ポップカルチ ャーは無視できないということです。私が初めて出版した本の中でも,修学旅行の調査を 行いましたので,観光も年前から私の研究対象に入っていました。コンテンツ・ツーリ ズム研究を行うことも私にとっては非常に自然なことと考えています。最近は,大河ドラ マ,テレビドラマと幕末期の関係について研究を行っています。本日は,坂本龍馬と高知 市を事例にして,「歴史コンテンツとツーリズム」という題で発表させていただきます。

飛行機で高知に行くと,「高知龍馬空港」に降り立つことになります。年に,高知県 のイメージの向上と観光客数の増加を狙って,日本初の歴史的人物の名を冠した空港とな りました。このことから龍馬の観光資源としての重要性は明らかです。龍馬の重要性につ いては,高知市内を歩くだけでも充分に実感できるでしょう。高知市内の至る所に龍馬は います。バス停の看板は龍馬の形です。もちろん龍馬に関するお土産も豊富で,龍馬コー ヒーさえ飲むことができます。龍馬は,観光のキャンペーンにも利用されています。「リョ ーマの休日」というキャンペーンがあり,5・<・2・0・$それぞれの頭文字が高知の魅力 を示します。5はロマン,<は安らぎ,2はおいしい,0は学び,$はアクティブです。

スライドでご覧いただいているのは高知市観光振興計画です(高知市 )。龍馬は表紙 の中心を飾っています。この計画書の中に「高知市観光振興の基本理念」が紹介されてい ますが,それは「龍馬とよさこいとおもてなしあふれる観光交流都市をめざす」というも のです。要するに,基本理念の最初の言葉は「龍馬」なのです。以上,龍馬が高知市の戦 略においてどれほど重要な役割を果たしているか紹介しましたが,本日の発表でその背景 を探りたいと思います。

日本では,歴史的人物が重要な観光資源となる事例が数多く見られます。函館では土方

『コンテンツ・ツーリズム研究の射程〜国際研究の可能性と課題』 

CATS 叢書第 8 号,北海道大学観光学高等研究センター(2016) 

 

歳三,鹿児島では西郷隆盛,仙台では伊達政宗を挙げることができます。こうした事例に は共通点が つあります。第 に,彼らは戦国と幕末という人気の時代の英雄です。第 に,歴史的人物のイメージが数多くのポップカルチャー作品において描かれています。結 果として,歴史的人物が誘導する観光行動はヘリテージ・ツーリズムとコンテンツ・ツー リズムのハイブリッドとなります。

本日は,「龍馬ツーリズム」の歴史を紹介したいと思います。はじめにヘリテージ・ツー リズムとコンテンツ・ツーリズムのつながりについて論じます。その後,高知における「龍 馬ツーリズム」の歴史を探ります。これはつの段階に区分することができます。第段 階は「龍馬の顕彰」で,亡くなった年から終戦の年までの話です。第段階は,

「龍馬離れ」です。戦争中顕彰された龍馬は,戦後に入ると避けられるようになりました。

第段階は「龍馬の復帰」です。年代において,司馬遼太郎の『竜馬がゆく』シリー ズが龍馬のイメージを回復させ,さらに大河ドラマが人気を高めました。第 段階は「龍 馬を旅すること」です。 年代以降は多くの観光施設が建設されて,本格的な「龍馬ツ ーリズム」が始まりました。最後にまとめとして,地域ブランドを構築する際に歴史的人 物を活用するという戦略のメリットとデメリットを考えたいと思います。

ヘリテージ・ツーリズムとコンテンツ・ツーリズムのつながり

まず,「龍馬ツーリズム」の歴史を紹介する前に,ヘリテージ・ツーリズムとコンテンツ・

ツーリズムのつながりについて少し論じたいと思います。英語の文献においては,ヘリテ ージ・ツーリズムをめぐってつの主な立場が見られます。第に,ヘリテージ・ツーリ ズムを,歴史的場所またヘリテージとして定義されている場所への旅と定義する立場です。

第に,ヘリテージ・ツーリズムは,歴史について語る場所への旅と定義する立場です(3RULD HWDO)。前者は,より狭い定義だと言えます。対象となる場所は,本物の歴史的建 物や遺跡,遺産ではなければなりません。後者は,より緩い定義です。復元された物やレ プリカやパネル展示などが許されます。つまり,両者の違いはオーセンティシティーの程 度です。

オーセンティシティーについては,場所と物を区別することが重要です。場所は移動で きません。例として,城や戦場が挙げられます。この場合は,オーセンティシティーは地

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究と密接なつながりがあります。 年に出版した樺太に関する本の中で,私は「記憶の 場」について論じました。そこでは記憶の場を地理的なスペースとして考えて,つの分類 を紹介しました。第に,RIILFLDOVLWHV「公式的場所」で,ある共同体の政治的または文化的 中心部にある場所です。第に,DFWXDOVLWHV「実際の場所」で,歴史的出来事が実際に起き た場所です。第に,KRPHWRZQ VLWHV「ふるさとの場所」で,歴史的人物が生まれ育った場 所です。第に,SUR[\ VLWHV「代理の場所」で,最も適切な場所が使えない場合の場所です

(6HDWRQD)。この場所は,互いに排他的ではありません。オーバーラップする場合も あります。龍馬の観光地でもこのような分類を当てはめることができます。公式的場所と して,龍馬の手紙数通を保管している京都国立博物館があります。実際の場所として,京 都霊山護国神社にある龍馬の墓があります。ふるさとの場所として,高知市にある各観光 地があります。最後に代理の場所として,函館にある北海道坂本龍馬記念館があります。

函館は龍馬の人生とは別に関係がありませんでしたが,龍馬の親戚が北海道に移住して,

幕末史で有名な函館は,道内で資料館を開設するのにもっとも適切な場所として考えられ ました。

ここで,「龍馬ツーリズム」をコンテンツ・ツーリズムの側面から見たいと思います。数 多くの観光客が龍馬関連のポップカルチャーを消費した後で旅をする,というパターンが あります。ヘリテージ・ツーリズムでもありながら,コンテンツ・ツーリズムでもあると 言えます。年の1+.大河ドラマ『龍馬伝』ブームが典型的な例です。コンテンツ・ツ ーリズムの場合,人物(キャラクター)と物語,そしてロケ(場所)を旅します。龍馬が ポップカルチャーの作品に出るたびに,ポップカルチャーによって誘導される観光行動が 可能となります(6HDWRQE)。

コンテンツ・ツーリズムにおいてもオーセンティシティーは重要なテーマです。つの側 面を見れば,オーセンティシティーは物語の問題です。たとえば,『龍馬伝』はどこまで史 実上正しいかという話です。しかし,こうした問題提起はあまり重要とは考えられません。

映画やドラマは当然ある程度のでっち上げがあります。そして,史実とかなり違う場合で あっても,観光への影響が大きいという場合もあります。例えば,『戦国%$6$5$』という ゲームとアニメにおいて,伊達政宗のキャラクターは本人とかなり違う人物ですが,本物 の伊達政宗を発見するため仙台に足を運んだという人が少なくありません。

より重要な問題提起は,ポップカルチャー作品の中に,ヘリテージ観光地に観光客を誘 導するキャラクターや物語,ロケがあるのかというものです。この場合,歴史に興味を持 っているか,作品に興味を持っているか,どちらが観光行動を本当に誘発したか,区別で きない場合が多くあります。このため,「ヘリテージDQGRUコンテンツ・ツーリズム」とい う言い方が適切だと考えています。特に戦国時代と幕末期に関連する観光地への旅に関し ては,この表現が役に立つでしょう。

ヘリテージ・ツーリズムとコンテンツ・ツーリズムを融合させると,オーセンティシテ ィーの話はさらに複雑になります。先述した,公式的,事実上の,ふるさとの,代理の場

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