PhO News Letter
J Japan Physics Olympiad
特定非営利活動法人物理オリンピック日本委員会会報
No. 7
2013年9月特定非営利活動法人 物理オリンピック日本委員会
〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学1号館13階 Tel: 03-5228-7406 E-mail: [email protected] HP: www.jpho.jp/
NPO The Committee of Japan Physics Olympiad (JPhO)
J PhO
CONTENTS
02 国際物理オリンピック2013デンマーク大会報告 03 IPhO2013デンマーク大会での理論問題
04 IPhO2013デンマーク大会での実験問題 05 物理チャレンジ2013 第2チャレンジ開催報告 06 物理チャレンジ2013 第2チャレンジでの出題問題 07 物理チャレンジ2013参加者たちの感想
08 OP近況報告
News Letter
Japan Physics Olympiad
物理チャレンジ2013実験コンテスト 国際物理オリンピック2013
パキスタン選手団と一緒に
-2- JPhO News Letter No. 7 (September 2013)
北欧デンマーク
7月8日から15日にかけて,北欧 デンマークで第44回国際物理オリン
ピック2013デンマーク大会(IPhO2013 Denmark)が 開催されました。日本からは,代表選手5名と引率役員 6名が参加しました。
デ ン マ ー ク は , 北 緯 55.7度に位置し,スカン ジナビア半島の先端部に 近いところにあります。
夏季の気候は,最高気温 が約20℃とたいへん過ご しやすいところでした。
夏季の日没は遅く午後9時を過ぎてもまだ明るく1日が 長く感じます。歴史ある建物と北欧の斬新なデザイン の 建 造 物 が 見 事 に 調 和 し た , 独 特 の 雰 囲 気 で し た 。 IPhOの主会場は,首都コペンハーゲンの北約5kmに
位置するリンビュー(Lyngby)市にあるデ ン マ ー ク 工 科 大 学 (Danmarks Tekniske Universitet)で,開・閉会式,役員のミー ティング,パーティなど,試験以外のほとん ど が こ こ で 行 わ れ ま し た 。 エ ク ス カ ー シ ョ ン で は , Niels H.D. Bohrが開いたニールス・ボーア研究所を 訪 問 し , 錚 々 た る 物 理 学 者 が 集 っ た Copenhagen
Schoolの同じ部屋で,現代の研究者の講義を聴くこと
ができ,感慨深いものがありました。
日本選手団の成績
今回の大会は,理論問題では,ボーア研究所で研究さ れている最新の研究テーマに関するものなどが出題さ れ,デンマークに落下した隕石に関する問題,ナノ粒子 に関する問題,グリーンランドの氷床に関する問題の 3問。実験問題では,レーザー距離計を用いた光速測定 問題と,太陽電池の性能評価に関する問題が出題されま した(詳しくは次ページ以降の解説参照)。日本代表選 手の成績は,銀メダルが2名,銅メダルが3名という結 果でした。
国際物理オリンピック2013 日本代表選手の成績 上田 研二 洛南高等学校(京都府)3年生 銅メダル 榎 優一 灘高等学校(兵庫県) 3年生 銀メダル 江馬 英信 灘高等学校(兵庫県) 3年生 銅メダル 大森 亮 灘高等学校(兵庫県) 3年生 銀メダル
澤岡 洋光
大阪星光学院高等学校(大阪 府)
3年生
銅メダル
表彰式 メダリストの晴れ姿 代表選手たちのコメント
上田研二:今回ベストを尽くしましたが悔いの残る結果 でした。でも、海外の地で世界中の人と交流したり難し い問題に取り組めたりしたのは、僕にとっては貴重な体 験でした。今まで僕たちのために尽力してくださった委 員の先生方やOPの方々、本当にありがとうございまし た。
榎 優一:メダルは取れたものの試験の出来は満足のい かないものでした。一方,他国の参加者との交流は思っ ていた以上にできてよかったと思います。今後はもっと 本格的に物理に向き合うことになると思うので,この貴 重な経験をもとに努力を続けたいと思います。今まで本 当にありがとうございました。
江馬英信:銅メダルをいただくことができ、大変嬉しく 思います。試験以外では、デンマーク・コペンハーゲン の美しい文化・歴史に触れ、また他国の生徒から大いに 刺激を受けました。今回の経験を今後の人生に生かして いけたらと思います。
大森 亮:試験は理論問題の出来が悪く、結果は奮わな かったが、他国チームとは交流を積極的に楽しみ、話を することが出来たのは満足です。今回の大会で会ったメ ンバーとまたどこかで再会することがあると思うと楽し みです。
澤岡洋光:当初の目標の金メダルを逃してしまい、世界 のレベルの高さを実感し、今後の勉強に意欲が出ました 多くの国の参加者との交流を通じ、かつてないほどの刺 激を得られたことが非常によかったです。
国際物理オリンピック 2013 デンマーク大会報告
国際物理オリンピック参加派遣部会長 岡山一宮高校
中屋敷 勉
現在のニールスボーア研究所と在りし日の研究者たち
- 3 -
JPhO News Letter No. 7 (September 2013)
隕 石 は 空 気 と の 摩 擦 熱 で 融 解 す る か
理 論 試 験 は 大 き く 分 け て 3 つ の 問 題 か ら な り 、 選 手 た ち は 5 時 間 か け て 30 点 満 点 の コ ン テ ス ト に 取 り 組 ん だ 。 ど の 問 題 も 実 際 に 起 こ っ た 現 象 の 解 明 、 現 在 開 発 さ れ て い る 技 術 の 発 展 に ど の よ う に 物 理 が か か わ っ て い る の か を 体 験 さ せ る よ う に な っ て お り 、 非 常 に 刺 激 的 だ っ た の で は な い だ ろ う か 。 そ の 一 方 で 、 多 く の 問 題 を 解 く 中 で 注 意 深 い 計 算 、 本 質 を と ら え る 大 胆 な 近 似 、 物 理 法 則 の 正 確 な 知 識 を 問 わ れ 、 選 手 た ち は 大 変 苦 労 し た よ う だ っ た 。
パ ー ト A は 、 2009年 に デ ン マ ー ク の 南 に 位 置 す る 町 マ リ ボ ー に 落 下 し た 隕 石 に 関 す る 問 題 で あ る 。 隕 石 の 軌 道 を も と に そ の 速 さ を 決 定 し 、 大 気 か ら 受 け る 摩 擦 力 を 考 慮 す る こ と で 力 学 的 エ ネ ル ギ ー が 熱 エ ネ ル ギ ー に 変 換 す る 様 子 を 調 べ た 。 一 見 す る と そ の 巨 大 な 熱 エ ネ ル ギ ー に よ っ て 隕 石 が 溶 け て し ま い そ う だ が 、 熱 伝 導 の よ う す を 調 べ る こ と で 隕 石 が 確 か に 地 球 に 衝 突 す る こ と が 見 て 取 れ る 。
次 に 、 隕 石 の 年 代 測 定 の 問 題 が 待 っ て い る 。 放 射 性 同 位 体 の 化 学 的 性 質 が 異 な る
た め に 、 隕 石 の 鉱 物 に よ っ て 放 射 性 同 位 体 の 含 有 量 は 異 な る 。 こ の 問 題 で は 、 放 射 性 同 位 体 87Rb が 87Sr に 崩 壊 す る 過 程 を 通 じ て 、 87Sr と 86Sr の 同 位 体 比 か ら 隕 石 内 の 鉱 物 が 結 晶 化 し た 年 代 を 算 出 し て い る 。 隕 石 が エ ン ケ 彗 星 か ら の も の で あ る と 推 定 し た 後 、 一 般 に 巨 大 な 隕 石 が 地 球 に 衝 突 す る と ど の よ う な 影 響 が 出 る か を 考 え さ せ る 問 題 だ っ た 。
ナ ノ 粒 子 の プ ラ ズ モ ン で 蒸 気 を 発 生
パ ー ト B は 、 プ ラ ズ モ ン 共 鳴 を 応 用 し た 蒸 気 発 生 装 置 に 関 す る 問 題 で あ る 。 金 属 で 薄 く 表 面 を 覆 っ た ナ ノ 粒 子 を 水 に 溶 か し 、 そ こ に 特 定 の 光 を
当 て る こ と で 金 属 表 面 に 電 子 の 集 団 運 動 を 励 起 さ せ る 。 こ れ を プ ラ ズ モ ン 共 鳴 と 呼 び 、 そ の エ ネ ル ギ ー を 用 い て 蒸 気 を 効 率 よ く 発 生 さ せ ら れ る 装 置 で あ る 。 こ の よ う な 複 雑 な 現 象 を 解 析 す る た め に 、 ナ ノ 粒 子 の 電 場 に 対 す る 応 答 を 馴 染 み 深 い 電 気 回 路 で モ デ ル 化 す る こ と が こ の 問 題 の ポ イ ン ト だ 。 ナ ノ 粒 子 が 定 常 電 場 の も と で エ ネ ル ギ ー を 蓄 え る よ う す は コ ン デ ン サ ー 、 振 動 電
国際物理オリンピック 2013 デンマーク大会で出題された理論 問題
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程 1年
物理チャレンジ2005, 国際物理オリンピック 2006参加
谷崎 佑弥
場 に よ り 電 流 が 生 じ る よ う す は コ イ ル 、 そ し て 蓄 え た エ ネ ル ギ ー が 電 子 と 金 属 原 子 の 衝 突 で 失 わ れ る 様 は 抵 抗 に 他 な ら な い 。 終 盤 は そ の モ デ ル 化 に よ る 計 算 を 応 用 し て 、 い よ い よ こ の 蒸 気 発 生 装 置 の 効 率 を 求 め る 。
グ リ ー ン ラ ン ド の 氷 床 か ら 氷 河 期 と 間 氷 期 を 調 べ る
パ ー ト C で は 、 グ リ ー ン ラ ン ド を 覆 う 氷 床 に 関 す る 問 題 が 出 題 さ れ た 。 前 半 の 問 題 で は 、 流 体 力 学 を 応 用 し て 氷 床 の 高 さ の 分 布 を 調 べ 、 さ ら に 氷 床 の 中 を 氷 の 粒 子 が ど の よ う に 移 動 す る か を 計 算 す る 。 こ の 結 果 を 利 用 し て 、 氷 河 期 と 間 氷 期 で 氷 の 堆 積 率 が 変 化 す る よ う す を 調 べ る こ と が こ の 問 い の 主 目 的 の 一 つ だ 。 ド リ ル で 掘 り 出 し た 氷 柱 の ど の 情 報 が 一 体 い つ の 時 代 の も の な の か が 、 氷 の 粒 子 の 移 動 を 逆 算 す る こ と で 分 か る そ し て 、 各 部 分 の 氷 に 含 ま
れ る 2 つ の 安 定 な 酸 素 同 位 体 の 存 在 比 か ら 現 在 の 間 氷 期 が い つ 始 ま り 、 さ ら に ひ と つ 前 の 氷 河 期 が 何 年 間 続 い た の か が 計 算 で き る 。 最 後 に 、 こ の グ リ ー ン ラ ン ド の 氷 床 が す べ て 溶 け た と し た ら 、 海 面 に ど の よ う な 変 化 が あ る の か を 計 算 す る 。
こ の よ う に 、 今 回 の 問 題 は 物 理 の 知 識 を い か に 応 用 す る か に 主 眼 が 置 か れ て い た 。 そ の た め に は 論 理 的 な 考 察 に 加 え 、 考 え て い る 状 況 を 記 述 す る 適 切 な モ デ ル を つ く る 必 要 が あ る 。 こ の モ デ ル 化 に よ っ て 物 理 現 象 を よ り 簡 単 な 例 を 通 じ て と ら え る こ と が で き る よ う に な る 。 考 察 対 象 の 本 質 を と ら え な く て は な ら な い こ の 作 業 は 、 一 筋 縄 で は い か な か っ た よ う に 思 う 。 ま た 、 今 回 の 問 題 は 3問 と も 通 じ て 計 算 量 も 多 く 、 時 間 内 に 多 く の 計 算 を ミ ス な く や り き る こ と も 問 わ れ る 問 題 設 定 だ っ た 。
- 4 -
JPhO News Letter No. 7 (September 2013)
レ ー ザ ー 距 離 計 を 使 っ て 光 の 速 さ を 測 定
実 験 試 験 は
大 問 2 問 を 5時 間 で 解 く 試 験 だ 。 第 1 問 が 8 点 、 第 2 問 が 12 点 で 合 計 20 点 で あ っ た 。 “ 光 の 速 さ ” と 題 さ れ た
第 1問 は 、 レ ー ザ ー 距 離 計 を 用 い て 、 光 フ ァ イ バ ー や 水 と い っ た 媒 質 中 を 伝 わ る 光 速 を 測 定 す る 問 題 だ 。
レ ー ザ ー 距 離 計 と は 、 先 端 か ら 発 せ ら れ た レ ー ザ ー 光 を 物 体 に あ て 、 そ の 散 乱 光 を 受 信 し 変 調 の ズ レ を 比 較 す る こ と で 物 体 ま で の 距 離 を 測 定 す る 装 置 で あ る 。 ま ず は こ の 装 置 を 理 解 し 、 使 い こ な せ る か ど う か が ポ イ ン ト と な っ た 。 光 フ ァ イ バ ー 中 の 光 速 を 求 め る た め に 、 異 な る 長 さ の 光 フ ァ イ バ ー ケ ー ブ ル に 対 し て レ ー ザ ー 距 離 計 で 測 定 を 行 う 。 フ ァ イ バ ー 中 の 光 速 が 真 空 中 の 値 と 異 な る た め に 、 レ ー ザ ー 距 離 計 は 実 際 の フ ァ イ バ ー の 長 さ と は 異 な る 測 定 値 を 示 す 。 こ れ を グ ラ フ に プ ロ ッ ト す る こ と で フ ァ イ バ ー 中 の 光 速 が 求 ま る 。 水 中 で の 光 速 を 求 め る た め に は 、 水 槽
の 中 に レ ー ザ ー 光 を 入 射 さ せ 底 面 で 反 射 し た レ ー ザ ー 光 を 受 信 す る 。 水 中 に 入 射 す る 際 に 屈 折 が 生 じ る 事 な ど を 考 慮 し て 、 レ ー ザ ー 光 の た ど る 光 路 を 正 確 に 把 握 で き る か が ポ イ ン ト と な っ た 。 全 体 と し て レ ー ザ ー 距 離 計 の 取 り 扱 い さ え 慣 れ て し ま え ば 、 そ の 後 行 う 測 定 ・ デ ー タ 解 析 は シ ン プ ル な も の が 多 く 、 難 し く は な い 。 た だ 、 第 2問 の 配 点 が 12 点 と 大 き い 事 を 考 え る と こ こ で 時 間 を 多 く 割 く わ け に は い か ず 、 ス ピ ー デ ィ ー に 実 験 を 行 う こ と が 要 求 さ れ た 。
太 陽 電 池 を 使 い こ な す
“ 太 陽 電 池 ” と 題 さ れ た 第 2 問 は 、 LED を 光 源 に 用 い て 太 陽 電 池 の 特 性 を 調 べ 、
さ ら に 太 陽 電 池 を 光 度 計 と し て 用 い て 水 の 屈 折 率 を 求 め る 問 題 だ 。 太 陽 電 池 は 、 光 が 照 射 さ れ る と 内 部 の 電 荷 が 分 離 し て 電 位 差 を 生 じ る こ と で 、 電 流 を 発 生 さ せ る 装 置 で あ る 。 問 題 で は 、 は じ め に 太 陽 電 池 の 発 生 電 流 に 対 す る 光 源 の 距 離 依 存 性 を 調 べ る 。 こ こ で 得 た デ ー タ
国際物理オリンピック 2013 デンマーク大会で出題された実験 問題
東京大学大学理学部物理学科4年 物理チャレンジ2008/2009,
国際物理オリンピック2009参加
蘆田 佑人
が 後 半 で 水 の 屈 折 率 を 求 め る 際 に 必 要 だ 。 次 に LED を 光 源 と し た 時 の 太 陽 電 池 の 電 圧 - 電 流 特
性 を 求 め る 。 ス タ ン ダ ー ド な 測 定 で は あ る が 、 回 路 の 配
線 や マ ル チ メ ー タ ー を 正 し く 取 り 扱 い 、 太 陽 電 池 が 特 徴 的 な 電 圧 - 電 流 特 性 を 示 す 範 囲 の デ ー タ を き ち ん と 測 定 す る の は 、 見 た 目 ほ ど 容 易 で は な い 。 太 陽 電 池 を 2 つ 用 い る こ と で さ ら に 大 き い 電 力 を 得 る こ と が で き る 。 2 つ の 太 陽 電 池 を ど の よ う に 配 線 す れ ば 最 大 の 出 力 を 得 る こ と が で き る か を 決 定 す る た め に 、 自 分 で 様 々 な 接 続 方 法 を 考 え 、 測 定 を 行 う 事 が 要 求 さ れ た 。 難 問 だ 。 太 陽 電 池 と 光 源 の 間 に 水 槽 を は さ み 、 そ の 水 位 を 変 化 さ せ る と 太 陽 電 池 電 流 は 興 味 深 い 変 化 を す る 。 つ ま り 、 水 位 が 光 源 と 同 じ 高 さ に さ し か か る と 、 発 生 電 流 は 初 め 減 少 し た 後 に 増 加 し 、 そ の 後 十 分 水 位 が 高 く な る と 一 定 値 に 落 ち 着 く 。 こ の 一 定 値 は 、 水 槽 が 空 の 時 の
発 生 電 流 よ り も 大 き な 値 で あ る 。 問 題 で は 、 こ の 特 徴 的 な 振 る 舞 い を ま
ず 測 定 に よ り 自 ら 発 見 し 、 さ ら に な ぜ こ の よ う な 振 る 舞 い が 生 じ る の か を 図 と 記 号 の み を 用 い て 説 明 す る こ と が 問 わ れ た 。 光 源 か ら 発 せ ら れ た 光 が 、 水 面 に よ り ど の 様 な 反 射 を 受 け る の か 、 水 中 で 光 路 が ど う 変 化 す る の か を 正 確 に 把 握 す る こ と が 必 要 で 、 深 い 洞 察 力 が 要 求 さ れ る 難 問 で あ っ た 。 問 題 の 最 後 で は 、 水 槽 を 満 た す こ と に よ る 光 度 の 変 化 か ら 、 水 の 屈 折 率 を 求 め る 。 水 の 屈 折 率 と い う 同 じ 物 理 量 を 、 第 1 問 ・ 第 2 問 を 通 し て 全 く 異 な る 2つ の 方 法 で 測 定 で き る 点 が 興 味 深 い 。
両 問 題 と も 、 安 価 に 手 に 入 る も の を 中 心 に し た コ ン パ ク ト な 実 験 装 置 を 用 い て お り 、 非 常 に よ く 工 夫 さ れ た 実 験 問 題 で あ っ た よ う に 思 う 。 し か し 、 い ず れ の 問 題 も こ な さ な け れ ば な ら な い 測 定 や 解 析 の 分 量 が と て も 多 く 、 5 時 間 と い う 試 験 時 間 を 考 え る と 全 て を 解 き き る に は 相 当 の 力 が 必 要 で あ る 。 配 点 の 大 き い 第 2 問 に 難 問 が 多 か っ た こ と か ら 、 時 間 配 分 を 間 違 え る と 高 得 点 を と る の が 難 し い 試 験 で も あ っ た 。
- 5 -
イ ベ ン ト 盛 り だ く さ ん の 物 理 チ ャ レ ン ジ
第9回全国物理コンテスト「物理チャレンジ」は、今年 の8 月5 日、つくばに100名のチャレンジャーを集めて幕 を開け、理論・実験コンテストを含む様々な行事を無事終 え、8日に幕を閉じました。
筑波大学会館ホールで行われた開会式では、国際物理オ リンピック2013 デンマーク大会の報告の後、電波天文学 の権威である筑波大学の中井直正先生が「太陽系外の惑星 の探査」と題して講演され、会場から寄せられた沢山の質 問に丁寧に答えておられました。まとめに話された「やっ てみなければわからない」と言うフレーズは参加した若い 高校生や中学生諸君の胸に残ることでしょう。続いて歓迎 のアトラクションとして茨城県立土浦第二高等学校箏曲部 による現代箏曲が演奏され、参加者と同年代による演奏で もあり、強く印象付けられたようです。次に行われた茨城 県立筑波高等学校の生徒さんによる「ガマの油売り」口上 では見事な太刀さばきと相俟って、選手たちをリラックス させたようです。
その後、大学会館のレストランに移動し、夕食を兼ねた 交流会が行われました。歓談の合間にスタッフの紹介が行 われ、翌日からの日程についての説明の後、宿泊所である 筑波研修センターにバスで移動しました。センターでは個 室が用意されていたので、翌日に備えてゆっくり休めたと 思われます。2 日目の理論コンテスト、3 日目の実験コン テストについては次ページの各部会長からの報告をご覧下 さい。
2 日目の理論コンテストの後、筑波大学における最先端 研究の現場であるサイバニクス、計算科学、プラズマの各 研 究セン タ ー を 見 学 し、3 日目の 実 験 試 験 の 後 に は、 JAXA (宇宙航空研究開発機構)とNIMS(物質・材料研 究機構)を見学しました。これらの見学では最新の技術や 物質材料開発の現場に触れ、大いに刺激を受けたと思われ ます。2 日目の見学後は筑波大学の研究者と、3日目の見 学後はNIMSの若手研究者との交流パーティーとなりまし たが、参加者の皆さんは活発に質問をしていたようです。
特にNIMSは外国人研究者と英語で積極的話し合っていて、
今後の若人らの世界への飛躍を予感させられました。
参加者の皆さんは7 ~8 名ごとのグループに分けられ、
大 学生や大 学院 生のグループリーダー の下 に、グループ ミー ティングが毎日 行 われたため、参 加 者 同士の間のコ ミュニケーションはかなり高密度であり、物理チャレンジ 活動の大きな目的の一つである、物理が好きな者同士の間 の連携を作るという目的は充分達成されたと思われます。
最終日は表彰式が行われましたが、賞よりもチャレン ジにおける経験を糧としての今後の成長を期待していま す。
最後になりましたが、様々な形でこの大会をご支援い ただいた多くの方々にこの場をお借りして心より御礼申 し上げま す 。 以 下、本 大 会 で賞を受賞し た チ ャ レ ン ジャーの名前を記して、その栄誉を称えます。
成 績 優 秀 者
・茨城県知事賞(理論・実験コンテスト総合成績でトップ)
大森 亮 灘高等学校 3 年生(兵庫県)
・つくば市長賞(高校2 年生以下で総合成績トップ)
杉浦 康仁 開成高等学校 2 年生(東京都)
・筑波大学江崎玲於奈長賞(もっとも発想豊な解答)
奥田 堯子 愛知淑 徳高等学校 2 年生(愛知 県)
・つくば科学万博記念財団 理事長賞(実験問題コンテス ト成績トップ)
谷口 大輔 栄光学園高等学校 3 年生(神奈川 県)
JPhO News Letter No. 7 (September 2013)
・金賞
大森 亮 灘高等学校 3年生(兵庫県)
小野瀬 雅穂 筑波大学附属駒場高等学校 3 年生
(東京都)
澤岡 洋光 大阪星光学院高等学校 3 年生
(大阪府)
白井 秀和 大阪星光学院高等学校 3 年生
物理チャレンジ 2013 第2チャレンジ開催報告
物理チャレンジ2013実行委 員長
石巻専修大学(元東北大学)
近藤
泰洋
(大阪府)
杉 浦 康 仁 開 成 高等学校 2 年生( 東 京 都)
谷口 大輔 栄光学園高等学校 3 年生(神 奈川県)
・銀賞
上田 研二 洛南高等学校 3 年生(京都府)
大野 巧 作 早 稲田高等学校 3 年生( 東 京 都)
奥田 堯子 愛知淑徳高等学校 2 年生(愛知 県)
小塚 友太 洛南高等学校 2 年生(京都府)
重 田 太郎 浅 野高等学校 3 年生( 神奈 川 県)
鈴木 啓太 東京都立日比谷高等学校 3 年生
(東京都)
寺山 智春 東京都市大学付属高等学校 3 年 生(東京都)
林 達也 岐阜県立岐阜北高等学校 2 年 生(岐阜県)
平田 祐登 聖光学院高等学校 3 年生(神奈 川県)
福島 孝洋 聖光学院高等学校 3 年生(神奈 川県)
丸山 義輝 宮崎県立宮崎西高等学校 2 年生
(宮崎県)
山田 巌 筑波大学附属駒場高等学校 1 年生(東京都)
・銅賞
大熊 拓海 北海 道札 幌北 高等学校 2 年生
(北海道)
太田 力文 東海高等学校 2 年生(愛知県)
尾田 直人 大阪 星光 学院高等学校 2 年生
(大阪府)
親 川 晃一 大阪 星光 学院高等学校 2 年生
(大阪府)
加集 秀春 灘高等学校 1年生(兵庫県)
合 谷木 諒 秋田 県立 秋田高等学校 3 年生
(秋田県)
児玉 知己 宮崎県立宮崎西高等学校 3 年生
(宮崎県)
徐 子健 大阪星光学院高等学校 2 年生
(大阪府)
堤 俊輔 大阪星光学院高等学校 2 年生
(大阪府)
永井 瞭 横浜市立横浜サイエンスフロン ティア
高等学校 3 年生(神奈川県)
濱田 一樹 灘高等学校 1 年生(兵庫県)
渡邉 葵 大阪星光学院高等学校 3 年生
(大阪府)
・優良賞
石金 周将 富山県立富山中部高等学校 3 年 生(富山県)
今池 大 高川学園高等学校 2 年生(山 口県)
今村 秀明 石川県立 小松高等学校 3 年生
(石川県)
内野 克 哉 大阪 星光 学院高等学校 3 年生
(大阪府)
小川 夏実 横浜雙葉高等学校 2 年生(神奈 川県)
北村 侃 灘高等学校 2年生(兵庫県)
北山 圭亮 開成高等学校 2年生(東京都)
佐藤 件一郎 埼玉県立川越高等学校 3 年生(埼 玉県)
佐藤 健史 本郷高等学校 3年生(東京都)
皿海 孝典 白陵高等学校 2年生(兵庫県)
曽 我部 翔大 愛媛県立今治西高等学校 3 年生
(愛媛県)
棚橋 健人 神奈 川県立高津 養 護学校 生 田東分 教室 3 年生( 神奈 川県)
中村 太一 栄光学園高等学校 3 年生(神奈 川県)
松原 卓也 鳥取県立倉吉東高等学校 3 年生
(鳥取県)
森 泉 東京都立小石川中等教育学校 3 年生(東京都)
吉田 博 信 大阪 星光 学院高等学校 2 年生
(大阪府)
渡邉 伊吹 本郷高等学校 2年生(東京都)
- 6 - JPhO News Letter No. 7 (September 2013)
理 論 コ ン テ ス ト : 基 礎 か ら 応 用 ま で 、 物 理 の 醍 醐 味 を 味 わ う
理論コン テス トは 今年も5 時間をか けて ,大 問題3 つ,300点満点で行わ れま した 。今年の配点 は第1 問A,B, 第2 問A,Bが各55 点,第3 問が80 点で した 。
第1 問A の テ ー マ は 慣性力で ,自動車が ブ レーキ をか けた とき ,また はカーブ を曲が ると きに 受ける 力を,慣性力を 使って 考える問 題です 。慣性力を遠心力に 使うよ りも 直線等加速 度運動に使う 場合の方が 難しか った よう です
(平均27/55)。第1 問Bのテ ーマは 表面張力で,最 後に表面張力と は異な るゴ ムの 張力と比較し ま す。基本的な 問題とシ ャボ ン玉へ の応用ま では よく 解けて いま した が,毛管現象へ の応用以降,
ゴム 風船まで は難し かっ たよ うです (平均 22/55)。第2問Aは電磁誘導が テーマ です 。基本 的なと ころ はよ く解け てい ました が,ソ レ ノイ ドの つく る磁場は 難しか ったよ うで す
(平均14/55)。第2問Bのテ ーマは ボーア の原子 模型で,と くに 電子が原子核か ら遠く 離れた 大 きな 軌道を描く 原子の問題で した 。桁数の大き な数を 適切に計算す るこ とや ,運動量保存則を使 うこ とに 慣れて いな い傾向が みられ まし た
(平均23/55)。第3 問は虹が テーマ です 。虹散乱 の角度を ,反射と屈折で 光の方向が 決まる 幾何光 学で求め ,光の広が りを ,回折で光の 方向が広 がる 波動光学で求め ,最後にそ れを 組み合わ せ て白い 虹を理解す る問題で した 。幾何光学まで はよ く解け てい まし たが ,グラフ を描く 問 題 以 降 は や や難し か っ たよ うで す (平均
35/80)。
得点分布は次の 図のよ うに なり まし た。全 体の平均点は 121点でし た。昨年の 166点より か なり 低かっ たの は,問題の テーマ 数が例年よ り多か った から でし ょう 。そのな かで ,頑 張って よく 考え、挑戦し ても らえ たと思い ま す。最高点は 265点でし た。高校2 年生以下だけ で 見 る と 平均点は113点, 最 高点は221点で , ま だ 習って いな いこ とも ある 中でよく 健闘して いま す。女子の 参加は7%と 少なく 、今後増え て欲し いと 願って いま す。
実 験 コ ン テ ス ト : 身 近 に 体 感 し て い る 熱 を 題 材
例年のよ うに ,実験コン テス トは 実施時間5 時間,200点満点で実施さ れま した 。今年のテ ー マは 熱です 。熱はチ ャレ ンジ 9 回目にし て始 めて の登場で すが ,今まで 扱われ なかっ た のは ,どう して も周囲に 熱が逃げ てしま う ため ,定量的な実験が 難しか った から です。今 回あえ てそ の難し い熱に 挑戦して みまし た。
課題1(配点133点)では ,金属の電気伝導度と 熱 伝導渡の間に どの よう な関係が ある かを調べ ます 。課題1-1 は電気伝導度の 測定です 。金属の抵 抗値はと ても 低く,ま た接触抵抗が 無視でき な いた め,デ ジタ ルマ ルチ メーターの 抵抗測定 レン ジで は測れ ませ ん。そ こで,課題1-1-2 の よう な4端子法を使い ます 。この 方法で多く の 人が電気抵抗値ま で求め られ まし た。し かし この 値を使っ て電気伝導度を 求める 計算で桁数 や単位の ミス が目立ち まし た。4端子法で 可能 にな った 理由を問う 課題1-1-3 では ,接触抵抗と 電圧計の内部抵抗と の関係を 考える 必要があ り
物理チャレンジ 2013 第 2 チャレンジで出題された問題
物理チャレンジ2013 理論問題部会 部 会長東京大学名誉教授
荒船 次郎
物理チャレンジ2013 実験問題部会 部会長 拓殖大学
岸澤 眞一
ます 。
課題1-2 は,熱伝導度の 測定です 。課題1-2-1(1)は 熱流が定常状態に なる まで 電圧つま みを 調整す る必要が あり ます が,多く の人が 電力や温度の データ 取得まで でき まし た。し かし,(2) の熱 伝導度を求め る計算で は,電気伝導度の 場合と同様, 計算ミス が目立ち まし た。課題1-3 で電気伝導度 と熱伝導渡の 関係をグ ラフ にし てみ ると,ほ ぼ直線に のる こと がわ かり ます。約4 分の1 の人が ここ まで 到達でき まし た。
課題2(配点67 点)は,熱放射の 問題です 。熱放 射にお いて エネ ルギ ー運搬を担っ ている の は電磁波で あり ,その エネ ルギ ーは物体の絶対 温度の4 乗に比例し てい ます 。この こと を確か める のが 課題2 の目標で す。課題2-2 では 多く の人が 電力と温度デ ータの 取得まで でき まし た。課題2-3 は,放射エ ネル ギーが 絶対温度の4 乗
に比例す るこ とを 検証する 方法を聞い てい ます が,『「発熱体に 投入され た電力」と ,
「発熱体の温度の 4 乗と容器内壁の 温度の4 乗の 差」とが 比例関係にあ るか どう かを 調べれ ばよ い』と 正しく 答えら れた 人は3人しか いま せん でし た。
得点分布を以下に 示しま す。平均点は 111.1点,
最高点は187点でし た。ま た学年に よる 差は ほと んど あり ませ んで した。
得点 0
5 10 15 20 25 30
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
人数
得点
2013実験問題得点分布(200点満点)
- 7 - JPhO News Letter No. 7 (September 2013)
今回も参加者に 対して アン ケート を実施し 、 参加者100名の内87 名から 回答を得ま した 。こ のア ンケ ートに 見る参加者の 実態や今回の チャ レン ジへ の感想に つい て報告しま す。
複 数 回 の チ ャ レ ン ジ 応 募 : リ ピ ー タ ー 率 が 約 4割
アン ケート では 物理チャ レン ジへの 応募、 第2 チャ レン ジの 問題・課題、第2 チャ レン ジで 行 われ たイ ベン ト、 お よび物 理 チ ャ レン ジに 参加した 感想を聞き まし た。グラ フは 主な設問へ の回答を まと めた もので す
(一部複数回答あり )。
物理チャ レン ジを 知った きっ かけで は、
ホーム ページ をあ げた 人が15% ほど 、最多 数は学校の 先生でし た。そ れに 次ぐポ スター や友人も 学校を場と して いま すか ら、物理 チャ レン ジ参加者を 増やす ため には高等学校 への 直接的な働き かけ がや はり 最も有効と思 われ ます 。物理チャ レン ジへ の参加回数で は35 人が「複数回参加し てい る」と 答えて い ます 。前年のア ンケ ート結果も 考慮する とレ ピータ ーの割合は 3 ~4 割で推移し てい ます 。 第2 チャ レン ジ参加に 当たっ て事前の 準備を した もの は約半数で 、過去問題や「世界水準の 物理入門」で勉強し たと 答えて いま す。ま た 先生など から の指導を 受けた 人は20 名で、実 験に関す るア ドバ イス や説明を 先生から受 けた とい う人が 5 名いま した 。高等学校で はな かな か実験を 行うこ とが 難しいと 聞き ます が、そ れを 反映した 数でし ょうか 。第2 チャ レン ジへ の参加旅費に つい ては約3分の1 の人は 何らか の補助を 学校など から 得てい ます が、残り は自費参加で す。ア ンケ ートの
要望欄にも 交通費の補助を 希望する 書き込み が複 数あり まし た。
試 験 は 難 し か っ た け れ ど 物 理 を 楽 し め た
コン テス トの 問題につ いて の感想では 、 理 論 問 題 で は 「難し か っ た 」、「や や 難し かっ た」と いう 声が大多数で すが 、なかに は表面張力に つい て「初め て知っ た」、「興味 がわ いた 」など の感想が 、また 問題3 では
「あま りで きな かっ たが 読むだけ でも お もし ろか った 」とい う感想も あり、物理を 楽しむ 態度がう かが えま す。実験課題で は
「 値がふ らつ い た 」、「温 度 の安定 が 難し かっ た」、「時間が 足りな い」な どの 感想が 目立ちま す。問題文に は必ず しも 書かれ てい ない 工夫や手際よ さが 実験には 求めら れま す。
物理チャレンジ201 3 参加者たちの感想
物理チャレンジ2013 現地実行部会 部会長 筑波大学
大塚 洋一
大 好 評 の イ ベ ン ト 、 で も 過 密 ス ケ ジ ュ ー ル だ っ た
合宿形式で行わ れる 第2 チャ レン ジは 、参加 者どう しが 寝食を共に して 親交を深め るとと もに 、大学や研究機関の 現場を見て 最先端の研究 を知り 、研究者や大学院生と の交流を 行い、物理 を学ぶ 意欲を高め る場で もあ りま す。近藤実行 委員長の報告に ある よう に今回も 盛りだ くさ んな 見学や体験の 場を企画し まし た。ア ンケー ト結果で はこ れら のイ ベン トにつ いて 「有 意義であ った 」、「楽しか った 」とい う意見が 圧倒的な多数を しめ てい ます 。感想欄にも 多く の書き 込みが あり 、参加者はこ れら の企画を十 分に楽し み、よ い刺激を 受けた こと が見てと れ ま す 。 な か に は 外 国 人 研 究 者 と の デ ィ ス カッ ショ ンか らか 「物理関連の仕事を 選んで も英語が 必要なの がわ かっ たの で英語をが ん ばり たい 」とい う感想も 見られ ました 。そ
の一方、「ス ケジ ュール が過密」、「ゆ っく り回り たか った 」など の感想も 多く、次回の 企画では 工夫が求め られ ます 。参加者にと っ て参加者間の 交流はお そら く最も 心に残る 収 穫でし ょう 。「友人がで きた 」、「大いに 刺 激を受け てモ チベ ーショ ンが 高まった 」、
「仲間のネ ット ワーク を広げ たい 」など多 くの 感想が見ら れま した 。
今回の物理チ ャレ ンジ への 参加体験の感想を 聞いた とこ ろ、「将来の 目標が少し ずつ 見え てき た気が する 」、「将来の夢へ の原動力と して 活かし たい 」、「物理に対す る興味と 向 学心が深 ま った 。 この モチ ベー シ ョンを 保って 、物理の勉強を 続けて いき たい 」など の決意が 述べら れて いま した 。参加者の今後 の活躍を 大いに 期待しま す。
- 8 - JPhO News Letter No. 7 (September 2013)
人 間 が 生 き て い る だ け で 奇 蹟 で あ る
特定非営利活動法人 KF アーカイブ
物 理 チ ャ レ ン ジ2006参 加
中 西 泰 裕
物理チャ レン ジは 、御研究に励ま れる 先生方、
御関心を同じ くす る皆様方と 、密に接せ る貴重な 経験とな りま した 。あり がと うござ いま し た。予選や 合宿の数日間は 、恰も大家族の よう で す。寝食を 共にし ます から 、自然に打ち 解けて いき ます 。こう した 人間の繋が りが、何に も先 だっ てあ り、事が 為され るの を実感しま した 。
人間がち ゃん と存在し てい る、こ れほど の驚 異はご ざい ませ ん。そ こに 感動があれ ば、あ らゆ る事に 感動しま す。百丈禅師は 、奇特な事は 何かと 問われ 「独坐大雄峰」(『百丈広録』)と即答 しま した 。人間が存在し てこ そ、情趣や 思慮が生 まれ ます 。物理学が解明す る「宇宙」は 、最新の実 験装置を用い ても 、最後は人間の 五感が体験し て、
理論を組み 立て実証し てき た蓄積で す。学芸も 命 のよ うに 師匠から 弟子へと 代を数え て、古代か ら今日ま で脈々と 受け継が れて きま した。人間 が知見を 獲得する 仕組は、時代と 場所に拠ら ず不変 です 。先人の感激を 生々しく 留める 古典を繙い て、
創造の瞬間に 立ち会っ てこ そ、創造の 瞬間を迎え られ ます 。
人間への 洞察を以て 、清々しく 暮らし ます 。全 ての 事物には 、背景があ りま す。先人が 存在して こそ 、我々が存在し えま す。事実から 出た話に は 凄まじ い力が あり ます 。それ を頭では なく 、 肚に話す だけ です 。単純で現実的で ある と、心 の働き がす っき りし ます 。複雑で思弁的であ る と、妄想に 絡まっ て仕舞い ます 。自分と対峙せ ず、
他人と勝負し ても 仕方あり ませ ん。一秒後は 未知
の領域で あり 、短く儚い 命を使っ て生き ていま す。予期で きな いか らこ そ、日々は 素晴らしい です 。今その もの です 。趙州和尚が「十二時に 使 われ るの では なく 、十二時を使い こなし てお るぞ 」(『趙州録』)と即答し まし たよ う、心に 使われ るの では なく 、心を使い こなす だけ で 優越感と劣等感の よう な、不要な 代物を見事に 粉砕 しま す。
人間の意志は 強靭で す 。「至道無難 、唯 嫌 揀 択」
(『信心銘』)が如く 、他と比較し ない だけ です 。 体の芯か ら新鮮な 感動がき ます 。全てに 通じる道 はど こに もあ りま す。人に 聞き本で読ん だ知識 では なく 、自ら見て 直に触れ た知恵を 以て、現実 を直視し て的確に 決断しま す。「香厳撃竹」(『潙山 録』)の麗し い故事が 如く、心に 向き合い 続けて 生きる と、不安が 入る隙が あり ませ ん。心の本体 その まま です 。雲門大師の「体露金風」(『雲門広 録』)が如く 、真っ新な 身一つに 秋風が吹き 抜け ます 。斯くの 如く、長年の 風雪に耐え てき た古典 は本源へ の道標と なり 、激動の社会を 生き抜く 指 針とな りま す。
KF アーカ イブ www.kf-a.org で、人類共有の 知的 財産を無償公開し て、全て の先人と 斉しく 万人に仕 え、文化を 継承する 人を育て ます 。一つの 作戦も 要りま せん 。あり のま まに ありま す。顔真卿、
葛飾北斎、大バッ ハの よう 、謙虚に剛直に しぶ と く、ど こま でも 通すだ けで す。人類が支え 合っ て生き るべ く、頑張り 過ぎず 、頑張らな さ過ぎ ず、真直ぐ 精進しま す。地球の どこ へで も歩い てい き、微笑み を湛え なが ら、人と 直に語らう と、人は 安らぎ 和みま す。こ うし て人類の歴史 が重み を増し てい きま す。
ア イ ン シ ュ タ イ ン に 感 謝
物理チャレンジOPたちは今
東京大学大学院理学系研究科修士課程1年 国際物理オリンピック2006-2008,
物理チャレンジ2005-2008参加
村下 湧
音
はじ めて 物理チャ レン ジが 開催された のは , 今から 8 年前のこ とで ある 。当時,自分は中学3 年 生とし て物理チ ャレ ンジ 2005 に参加し てい た。
その 後,翌年の国際物理オ リン ピッ クに 出場させ て頂い たの だか ら,2005 年に物理チ ャレ ンジ が初開催さ れた こと は自分に とっ てはな んと も運の いい こと だっ た。
2005 年は,ア イン シュ タイ ンに よって 一連 の大発見が なさ れた 1905 年から ちょ うど 100 年にあ たる 年であ り,そ の業績を 記念して世界物 理年と呼ば れた 。物理チャ レン ジの 第1回大会は その 世界物理年にあ わせ て開催さ れた のであ る。
1905 年のア イン シュ タイ ンの 業績とは,特殊相 対性理論,光量子仮説,ブラ ウン 運動の理論の 3 つ の理論で ある 。いず れも 現代物理学の礎と なる偉 大な理論だ 。自分は現在,こ のう ちの ブラ ウン運 動の理論に 関連した 研究をし てい る。
ブラ ウン 運動とは ,水溶液中の微粒子の 小刻み な運動の こと であ る。微粒子に 水分子が確率的に 衝突する ため にこ のよ うな 現象が起こる 。通常 扱うよ うな マク ロな スケ ールでは この よう な揺ら ぎは 無視でき るた め,熱力学や 熱平衡から の微小な ずれ を扱う 線形応答理論が十分に 機能す る。し かし ,ブラ ウン 粒子のよ うなμm スケ ー ルの 系では 揺らぎ が本質的に 重要にな り,非平衡 現象を正面か ら扱わ なけ れば なら ない。揺ら ぎ の大き な非平衡現象を 直接扱う,揺ら ぎの 定理と呼 ばれ る一群の 定理は,1990 年代後半にな り発見さ れ,2000 年代に整備さ れた 新しい 理論であ る。
この 新しい 理論は既存の 線形応答理論を内包す る もの であ り,今ま で線形応答理論が 応用され てき た様々な 場面にお いて 非線形な効果を 説明でき る もの と考え られ てい る。ま た,非平衡性が強い ため に,既存の 線形応答理論で説明で きな かっ た 現象を,こ の理論を 用いる こと で説明で きると 期待され てい る。
例えば ,生体分子はμm スケ ールで あり ,ブラ ウン 粒子と同様に 揺らぎ の影響を 大きく 受ける。
した がっ て,生体分子の ダイ ナミ クスは 本質的 に非平衡現象で あり ,その 現象を理解す るた めに は揺ら ぎの 定理が不可欠だ と考え られ る。生体内 の燃料で ある ATPを分解す るこ とで 回転する
F1ATP アーゼ と呼ば れる 分子モータ ーは,ほ ぼ
100%の効率で 動くこ とが 実験的に知ら れて いる。
一方で,線形応答理論の 枠内では ,分子モータ ーを 機能的に動か した 時の効率は 高々50 %であ る こと が知ら れて いる 。分子モータ ーは線形応答 では 説明でき ない 非平衡の効果を 利用して 効率 を高め てい るの であ る。生命は 我々の未だ知 らな い機構を 利用して 有効的にエ ネル ギーを利 用して いる 。自分は,こ の仕組み を解明す るこ とで ,有効的にエ ネル ギーを 利用する 術を手に 入られ るの では ない かと 考えてい る。
研究生活に入り ,数年来の付き 合いが ある 先輩・
友人がい るこ とを とて も心強く 感じてい る。特 に,近い 分野にす ぐに 議論でき る仲間が いるこ とは 何物にも 代え難い 。物理チャ レン ジを通し て人と のつ なが りを 与えら れた幸運に 感謝し たい 。