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「mixi 離れ」の背景にあるもの - pweb

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2012 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

「mixi 離れ」の背景にあるもの

~ユーザーが mixi に求めるものは何なのか~

A0942714 石原大

提出年月日 2013 年 1 月 15 日(火)

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目次

1章 はじめに

2章 「mixi」の概要

3章 本論文執筆のきっかけとなる素朴な疑問

4章 mixi ユーザーの現状

5章 仮説の提示

6章 仮説の検証 仮説 1

仮説 2 仮説 3 仮説 4

7章 mixi の本質とは

8章 あとがき

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【1章 はじめに】

かつて、若者の間で交わされる決まり文句のひとつに「mixi(ミクシィ)やってる?」というも のがあった。挨拶代わりに「mixi」のアカウントを保有しているか否かを確認し合い、友人(マ イミクシィ、いわゆる「マイミク」)登録の申請を送ることは、我々の世代にとって決して珍し い光景ではなかった。しかし、今日ではそのような会話が交わされることは少なくなってきてい る。多くのユーザーが mixi から Facebook や Twitter などに移行し、mixi にログインするユー ザーは減少の一途を辿っているように見える。いわゆる「mixi 離れ」と呼ばれる現象である。

しかし、本当に「mixi 離れ」は起こっているのだろうか?もし、「mixi 離れ」が現実に起こっ ている現象だとすれば、それはなぜなのか?

私自身 4 年近く mixi を利用しているが、たしかに 1、2 年前と比較して「日記」や「mixi ボ イス」などのコンテンツを更新する友人が減少傾向にあることは日々実感しているところである。

一方で、なぜユーザーが mixi から Facebook や Twitter といった他の SNS に移行していったのか、

「mixi 離れ」の根本にはいかなる背景があるのかに関する研究は少ない。mixi の利用者減少に ついて悲観的に取り上げる一部マスメディアの論調は散見されるものの、「mixi 離れ」の背景に は mixi の存在価値をも揺るがしかねない、より根本的な問題があるのではないか。

本論文の目的は、こうした疑問に対し複数の仮説を提示・検証することで、「mixi 離れ」の背 景にある現象を解明することにある。なお、本文中「ミクシィ」は株式会社ミクシィのことを表 すものとし、同社が運営・提供するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)全般を本論文 では「mixi」と表記することとする。また、今日世界には無数の SNS と呼ばれるサービスが存在 しているが、本論文では主たる SNS として「mixi」「Facebook」「Twitter」の 3 種を中心に取り 上げる。Twitter を SNS として扱うことには異論もあろうが、本論文ではあくまでも mixi に何 らかの影響を与えたソーシャルネットワークの一つとして Facebook と同格に取り上げる旨をご 了承いただきたい。

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【2章 「mixi」の概要】

「mixi」は株式会社ミクシィが運営する日本最大規模の SNS である。同社のホームページによれ ば、2012 年 9 月時点での月間ログインユーザー数は 1400 万人以上となっている。mixi で提供さ れる主なサービスには、日記、つぶやき(mixi ボイス)、メッセージ、フォト、コミュニティ、

ゲーム(旧 mixi アプリ)などが挙げられる。中でも「日記」は、同社が mixi を公式オープンさ せた 2004 年 3 月 3 日以来一貫して提供し続けているサービスであり、同社を代表する機能と言 えよう。

mixi の最たる特徴は、10~20 代の若者の利用が圧倒的に多いという点である。株式会社ミク シィの 2012 年度第二四半期決算説明会資料によれば、月間ログインユーザー(Monthly Active Users,以下 MAU)のうち男性は 45.9%、女性は 54.1%であり、女性のほうがやや多数を占めてい る(図 2-1)。また、ユーザーの年齢構成は 20~29 歳が全体の 48.6%と過半数近くを占めており、

これに 15~19 歳のユーザーを合わせると mixi の全ユーザーのうち 65.3%が 10 代ないしは 20 代 ということになる(図 2-2)。

(株式会社ミクシィ 2012 年度第二四半期決算説明会資料を基に筆者作成)

ちなみに、2012 年 6 月時点での Facebook におけるユーザーの年齢構成比は 10 代および 20 代 が 47%なのに対し、30 代~50 代以上のユーザーが 53%と過半数以上を占めている(図 2-3)。以 上の点から、mixi は 10~20 代の若者から絶大な支持を集めている SNS と呼ぶことができる。

(出典:http://blog.members.co.jp/article/3629)

45.9 54.1

図2-1 mixiユーザー属性(性別)

男性 女性

16.7 27.9 20.7 13.5

9.7

5.8 3.1 2.7

図2-2 mixiユーザー属性(年齢層)

15-19 20-24 25-29 30-34 35-39

図 2-3 Facebook ユーザー年齢構成比(2012 年 6 月)

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5

なお、mixi のもう一つの特徴として、「匿名・実名ともに利用可能」である点がしばしば引き 合いに出される。Facebook が実名登録を原則としているのに対して、mixi はニックネームでの 登録や本名、現住所、生年月日などの個人情報を一切非公開とすることが可能である。このこと から、「ミクシィ利用者のほとんどが、ニックネームで利用している(山脇,2011)」と認識され るケースが多い。しかし、株式会社ミクシィは自身の PR 資料内において、「mixi の特徴は匿名 性」であることを明確に否定している。同社公式サイトによると、20 代前半のユーザーは全体 の 70.6%、15~19 歳は全体の 78.2%が実名ないしは友人から見てわかる名前で登録しているとい う。また、Facebook においても匿名での登録は事実上可能であり、公開範囲の設定もユーザー 各自で変更が可能である。ミクシィ自身が指摘しているように、mixi は決して匿名性が強い SNS ではなく、もともと顔も名前もはっきりわかっている間柄の中でつながるというスタンスと言え よう。

mixi が重視しているのは「仲の良い友人との『心地よいつながり』や『コミュニケーション』

を提供する」(株式会社ミクシィ HP「会社概要」事業内容より一部抜粋)という姿勢であり、mixi はあくまでも実社会において面識のある知人や友人とのコミュニケーションツール、という位置 づけである。同社取締役の原田明典氏は日本経済新聞のインタビューに対し「会社の同僚とか、

取引先とか、知り合いではあるが、親密ではない人たちとも全部つながっちゃうのがフェイスブ ック。mixiが目指すのは、本当の友達とつながる居心地のよい空間。そのために実名制が必 須かと言うと、そうではない(日本経済新聞 2011 年 7 月 31 日付「ミクシィ逆襲の夏 『最後に 勝つ』副社長 フェイスブックとグーグルの攻勢に『地場SNS』の意地」より抜粋)」と答えて おり、mixi はリアルな友人とのつながりを重視するという点で Facebook と差別化を図っている ようである。

以上の点が mixi の大きな特徴であるが、mixi について分析するうえでこれ以外にもいくつか の重要なターニングポイントを振り返っておかなければならない。以下に挙げるのは mixi の沿 革のうち本論文のテーマに関係が深いと思われる事項を抜粋したものである。

2004 年 3 月 3 日 公式オープン。機能は SNS としてのリンクと「mixi 日記」のみ。

2008 年 12 月 10 日 年齢制限を 15 歳以上に引き下げ→10 代の利用者増加 2010 年 3 月 1 日 「登録制」を導入

2010 年 5 月 31 日 mixi タッチ(スマートフォン版サイト)開始 2010 年 12 月 24 日 Android アプリを提供開始

2011 年 6 月 13 日 「足あと」に代わって「訪問者」提供開始 2011 年 8 月 31 日 mixi ページを提供開始

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【3章 本論文執筆のきっかけとなる素朴な疑問】

本論文を執筆しようと思い立ったきっかけは、以前、北海道に住んでいた友人から mixi の友 人申請、いわゆる「マイミク」の通知が立て続けに届いたことである。筆者自身、1、2 年前と 比較すると、mixi を更新する友人の数はめっきり減ったと感じていた。それにもかかわらず、

北海道に住む友人は mixi を頻繁に利用しているというのである。一方で、首都圏に住む友人の 多くは mixi にほとんどログインせず、もっぱら Facebook や Twitter に流れていることがわかっ た。

そこで、筆者は 2012 年 6 月、Facebook を利用する友人から意見を募った。その結果、「いつ の間にか、みんな mixi から居なくなっていた」「mixi ボイスが登場したことで日記を書く意義 が失われた」「デザインの変更が度重なり、使いづらくなった」などの回答が寄せられた。

ちなみに、我が国における Facebook の利用者数は年々増加の一途を辿っている。株式会社メ ンバーズの調査では 2012 年 6 月の時点でのユーザー数が 1000 万人を突破しており、とりわけ 20 代女性の増加数が突出している(図 3-1、3-2)。同社はこの現象について、「これまで mixi をメインに利用していたユーザーが、Facebook に移行しつつあるのでは」と指摘している。

図 3-1「Facebook ユーザー数の推移」

図 3-2「2012 年 5 月→6 月の年代・性別毎の Facebook ユーザー増加数&前月比」

(出典:http://blog.members.co.jp/article/3629)

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「mixi 離れ」の背景には、mixi から Facebook に移行する何かしらのきっかけが存在したので はないか。なぜ地域によって mixi に対する温度差が存在するのか。そもそも「mixi 離れ」と呼 ばれる現象は本当に起こっているのか。「mixi 離れ」が実際に起こっている現象であるとすれば、

その背景にはいかなる事情があるのか。本論文の主旨は、これらの疑問を契機に「mixi 離れ」

の背景にはどんな現象が隠れているのか検証を試みたものである。

【4章 mixi ユーザーの現状】

本論文で述べる現象を解明するにあたり、まずは mixi のユーザー属性の現状について述べた い。以下の図は株式会社ミクシィの第二四半期決算説明会資料を基に、筆者が mixi の地域別ユ ーザー増減をグラフ化したものである。なお、ここでの「ユーザー」とは、同社調べによる月1 回以上ログインしたユーザー数(Monthly Active Users,以下 MAU)と定義することとする。

0 10 20 30 40 50 60

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

単位:%

図4-1 首都圏におけるmixi MAUの推移

首都圏

0 5 10 15 20

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

単位:%

図4-2 首都圏を除く各地域におけるmixi MAUの推移

北海道・東北 東海

甲信越・北陸 近畿

中国・四国 九州・沖縄

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東証マザーズに上場した 2006 年から 2012 年までのデータを見てみると、首都圏における mixi の利用者数は年々減少の一途を辿っていることがわかる。2006 年時点では、全体の半数以上に あたる 50.8%が首都圏のユーザーであったが、2012 年では 40.1%まで減少している(図 4-1)。

一方で、首都圏を除く各地域では、一概に右肩上がりとは言えないものの年間を通して増加傾 向にあると言える。同期間においてもっとも利用者が増加したのは甲信越・北陸で 1.9 倍、次い で北海道・東北の 1.8 倍となっている。九州・沖縄は 2010 年をピークにやや減少傾向にあるも のの、それ以外の地域における利用者数はおおむね右肩上がりで増加していることがグラフから うかがえる(図 4-2)。

最後に、mixi 全体の利用者数についても触れておく必要があろう。ミクシィによれば、mixi の MAU は 2011 年 1 月以降、1400~1500 万人の間で推移している(図 4-3)。2012 年 3 月には 1512 万人が mixi にログインしているが、それ以降は減少の一途を辿っている。MAU のうち、スマー トフォン MAU に特化した数値を見ると 2010 年 1 月には 34 万人だったものが 2012 年 9 月では 863 万人にまで増加している。もともと mixi はモバイルに強い SNS として知られているが、昨今の 急速なスマートフォン需要の増大に伴ってユーザーの半数以上がスマートフォンから mixi にロ グインしていることがわかる。

以上の特徴をまとめると、以下の 3 点となる。

・ 首都圏における MAU は年々減少する傾向にある

・ 北陸地方や北海道など、地方における MAU は僅かながら年々増加傾向にある

・ mixi 全体としては比較的横ばいか、やや減少傾向にある 0

500 1000 1500 2000 2500

2009年4月 2009年7月 2009年10月 2010年1月 2010年4月 2010年7月 2010年10月 2011年1月 2011年4月 2011年7月 2011年10月 2012年1月 2012年4月 2012年7月

図4-3 mixi全体のMAU (単位:万人)

MAU

スマートフォンMAU

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【5章 仮説の提示】

前章において、mixi の利用者が首都圏では減少傾向なのに対し、地方では微増傾向にあるこ と、また mixi 全体としては利用者が年々減少していることについて述べた。ここでは、そうし た現象を追究するにあたって以下の4つの仮説を提示したい。

1. 初期少数採用者が首都圏に多いのに対し、地方は採用遅滞者となりがちである

2. スマートフォンの普及により、「ガラケー」主体だった mixi から Facebook など他の SNS に 流れた

3. ユーザーがインターネット上で物事を発信するニーズそのものに変化が生じた 4. mixi の利点であった「訪問者を確認することによる安心感」の喪失が引き金となった

仮説 1 は、mixi を比較的早い時期に利用し始めた人間の多くは首都圏在住であり、地方の人 間は比較的遅い時期になってから mixi を利用し始めるという見解を、E.ロジャーズのイノベー タ理論の見地から検証するものである。つまり、首都圏在住のユーザーは「革新的採用者 (innovators)」や「初期少数採用者(early adopters)」が多いのに対し、地方在住のユーザーは

「後期多数採用者(late majority)」ないしは「採用遅滞者(laggards)」が多数を占めるという 考え方である。この考え方に基づいて「mixi 離れ」の背景を探ってみたい。

仮説 2 は、スマートフォンの急速な普及が「mixi 離れ」を引き起こしたとする考えである。

mixi はもともとパーソナルコンピュータ上での登録・利用が基本だったが、その後はモバイル での利用が主体となった。しかし、スマートフォンへの対応は比較的遅く、2010 年 5 月 31 日に なってようやくスマートフォン版サイト「mixi タッチ」が公開されている。急速に需要を伸ば すスマートフォンの勢いに mixi が対応しきれなかったことが、mixi 離れを引き起こしたのでは ないだろうか。

仮説 3 は、インターネットユーザーがネット上において発信するものの中身が変化したという 考え方である。「mixi 離れ」が示唆しているのは、SNS にとどまらずインターネットで何かを「発 信する」ことの中身が変容してきているという現象なのではないか。長めの文章が主体であった

「ブログ」に端を発し、身近な話題を公開、共有することに楽しみを見出す「日記」、150 字程 度で収まるようなより短い文章での発信が主体となる Twitter や「mixi ボイス」、さらには文章 ではなく写真の共有が主体の Facebook など、インターネット上で「発信したい素材」のコンテ ンツが変容しつつあるとする仮説について検証したい。

仮説 4 は、他の SNS にはみられない mixi のオリジナル機能「足あと」の仕様変更が「mixi 離 れ」の遠因となったとするものである。ユーザーが mixi に求めるのは「安心感」であり、「mixi 離れ」の根幹にあるのは mixi の仕様変更に伴ってユーザーの「安心感」が「不安感」に変わっ てしまった点にあるのではないか。

以上4つの仮説については、次項以降で詳しく検証することとする。

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【6章 仮説の検証】

〈6-1 仮説 1 について〉

この章では、先に挙げた3つの仮説について検証を進めていく。はじめに、仮説 1「初期少数 採用者が首都圏に多いのに対し、地方は採用遅滞者となりがちである」について、E.ロジャーズ の『イノベーションの普及』を参考に検証したい。筆者が「mixi 離れ」を本論文の題材に選ん だそもそものきっかけが、北海道に住む旧友からの相次ぐマイミク申請であったことは第3章に おいて既に述べたとおりである。第4章でも述べたように、mixi の MAU は地域によって微妙な 相違がみられる。すなわち、統計を取り始めた 2006 年以降、首都圏における MAU が年々減少傾 向にあるのに対して、地方における MAU は微増しつつある。「mixi 離れ」が進行の一途を辿って いるのか否かを検討するうえで、ロジャーズのイノベーション普及理論は一つの参考材料になろ う。

まず、ロジャーズの「採用者カテゴリー」について説明しておく。採用者カテゴリーとは、人々 の革新性に基づいて社会システムの成員を分類するものであり、各カテゴリーには同程度の革新 性を有する人々が属することになる(Rogers,2007)。革新性とはある社会システムに属する個人 あるいはその他の採用単位が他の成員よりも相対的に早く新しいアイデアを採用する度合いの ことである(同)。そのうえで、ロジャーズは採用者カテゴリーを採用時期が早い順に「イノベ ータ」「初期採用者」「初期多数派」「後期多数派」「ラガード」の5つに区分している。イノベー タと呼ばれる人々は新しいアイデアや製品への関心が極めて高く、冒険好きで向こう見ずな人間 であるのに対し、ラガードはイノベーションの採用に対し非常に注意深く保守的な人間とされて いる。

以上の前提を踏まえたうえで、mixi の利用者は首都圏と地方それぞれにおいて、どのカテゴ リーに属するといえるだろうか。まず、mixi を比較的早くに採用したユーザーの多くは首都圏 に在住する。2006 年時点においても、シェア全体の 50%以上を首都圏の人間が占めていたことは 第4章ですでに述べたとおりである。彼らの多くが首都圏在住であることは、ロジャーズの指摘 からも裏付けることができよう。ロジャーズは『イノベーションの普及』において、初期の採用 者に見られる特徴をいくつか挙げている。

・ 長期の学校教育を受けている

・ 読み書き能力が高い

・ 社会的地位(収入、生活水準、資産の所有、職業的名声など)が高い

・ 社会参加することが多い

・ 社会システムの中で対人ネットワークを介して高度に連結している

・ マスコミへの接触が多い

mixi は日本で初めて本格的に普及した SNS であり、サービスを開始した 2005 年当時は今日ほ ど SNS に対する知名度も認識度も低かったものと考えられる。そうした状況下で mixi を積極的

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に利用するには、ある程度冒険的で新しいものに積極的でなければならない。初期の採用者の多 くは社会的地位が高く、またマスコミへの接触が多いことなどを鑑みても、mixi を早い段階で 採用する人間は、首都圏在住でなければむしろ不可能であったものと考えられる。

また、ロジャーズは「すでにイノベーションを採用した州が近隣にあると、当該州でも採用が 促進される」ことを指摘している。イノベーションの普及には対人ネットワークの与える影響力 が大きく、首都圏で mixi の普及が進めば必然的に首都圏内での利用が促進される。一方、首都 圏から遠く離れた地域での mixi の普及はどうしても遅れることになる。「伝統的な地域コミュニ ティでは、リーダーもフォロワーも革新的ではないので、地域コミュニティは伝統的な状態に留 まる」(Herzog 等,1968)ため、mixi や SNS そのものを受容する雰囲気の醸成が遅れ、結果的に 地方で mixi を採用する頃にはすでに首都圏では「mixi 離れ」が進行しているという事態になる。

こうした傾向については、しかし、ある意味当然といえば当然のことである。いかなる流行も その多くは首都圏から始まるのが世の常であり、SNS も例外ではない。したがって、仮説1につ いては棄却するのが妥当であろう。

〈6-2 仮説 2 について〉

2 つ目の仮説は、スマートフォン(高機能携帯電話)の普及が mixi 離れを促進させたのでは ないか、というものである。スマートフォンの急速な普及に mixi が乗り遅れたこと、また Facebook や Twitter といった競合する SNS が mixi よりも比較的早い段階でスマートフォンに対 応したことで、もともと従来型携帯電話(いわゆる「ガラケー」)での利用が多かった mixi は利 用者を奪われていったのではないかと考えた。

スマートフォンは今や破竹の勢いで普及が進んでいる。米国 comScore が 2012 年 8 月に発表し た調査結果によれば、我が国のモバイル市場におけるスマートフォンの利用者は約 2400 万人以 上で、2011 年末と比較して 43%増加している。日本のみならず世界的にもスマートフォンの普及 は急速に進んでおり、同社の調査では 2012 年第 4 四半期時点で全世界モバイル機器市場におけ るスマートフォンの販売台数が前年同期比で 42.7%増加したとの結果が出た。株式会社ディーツ ーコミュニケーションズが 2012 年 2 月に実施した調査では、2011 年 1 月と比較して国内スマー トフォンの普及率が 16.0 ポイント上昇したことが判明している(図 6-1、6-2)。2011 年 1 月時 点では全国の 15~69 歳におけるスマートフォンの普及率は 7.6%に過ぎなかったのに対し、約 1 年後には 23.6%に達しているのは特筆に値する。

スマートフォンは今後も大きくシェアを拡大するとの見方が強い。株式会社 MM 総研が 2012 年 3 月 13 日に発表したスマートフォン市場規模の予測によれば、スマートフォンの総出荷台数 は 2016 年度には 4265 万台に達するとみられる。全携帯電話のうち 8 割以上をスマートフォンが 占め、今後もスマートフォンの普及が進む見通しである。

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(株式会社ディーツーコミュニケーションズの調査結果を基に筆者作成。N=3000)

スマートフォンが急速に普及する中で、mixi が窮地に立たされているのは疑いない。スマー トフォンのアプリケーション利用率をみても、mixi は他の SNS の後塵を拝す結果となっている。

MMD 研究所がスマートフォン所有者 670 人を対象に行った調査では、無料通話アプリケーション

「LINE」の利用率が 16.2%と最も高く、以下 Facebook12.6%、Twitter4.6%と続く(図 6-3)。同 調査において mixi が占める割合はわずか 0.8%に過ぎず、Facebook や Twitter と比較するとスマ ートフォン利用者の支持率は圧倒的に低い。

(出典:http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120120313500)

このような調査結果が出た原因の一つには、mixi のスマートフォン対応に対する遅さが影響 していると筆者は考える。株式会社ミクシィが mixi のスマートフォン版サイト「mixi Touch」

を提供したのは 2010 年 5 月、Android アプリケーションを提供開始したのは同年 11 月のことで 7.6

92.4

図6-1 我が国におけるスマート フォン普及率(2011年1月)

スマートフォ ン利用

従来型携帯電 話のみ、また は所持してい ない

23.6 76.4

図6-2 我が国におけるスマート フォン普及率(2012年2月)

スマートフォ ン利用

従来型携帯電 話のみ、また は所持してい ない

図 6-3 「最も利用しているアプリ」(N=670)

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ある。すでに Facebook や Twitter は複数のアプリケーションを公開しており、mixi のスマート フォンへの対応は遅きに失したと言わざるを得ないだろう。

では、スマートフォンへの対応が後手に回ったことが「mixi 離れ」の直接的な引き金となっ たのかと言えば、筆者はそのようには考えていない。なぜなら、スマートフォンで mixi にアク セスするユーザー数自体は年々上昇の一途を辿っているからである。

株式会社ミクシィによれば、2010 年 1 月時点でスマートフォンから mixi にアクセスしていた 月間ログインユーザー(MAU)は 34 万人であったのに対し、2012 年 9 月では 863 万人にまで上 昇している。もちろん、この背景にはスマートフォン自体の需要が急増している現状が影響して いる。スマートフォンがシェアを急激に拡大していることについては先述したとおりであり、そ れに比例して mixi へのアクセスも従来型携帯電話からスマートフォンへと移行しつつある。実 際、従来型携帯電話で mixi にアクセスするユーザーは減少の一途を辿っている。

たしかに、mixi はスマートフォンに素早く対応したとは言い難い。しかし、「mixi 離れ」が進 行しつつある現在もなおスマートフォンでのアクセスは増加している。よって、この章で提案し た「スマホの普及=mixi 離れを促進」という仮説は棄却する。

<6-3 仮説 3 について〉

ここでは、「mixi 離れ」が進行した理由として3つ目に挙げた「インターネット上で物事を発 信するニーズに変化が生じた」という仮説について検証したい。ユーザーが mixi から離れてい った理由として筆者が考えたのは、インターネットユーザーが SNS を通じてインターネット上に 広く発信したいコンテンツの「中身」に変化が生じたという仮説である。つまり、従来は mixi 上で「日記」と呼ばれる長めの文章を執筆・公開していたユーザーが、より内容量の短い「mixi ボイス」主体へ移行し、さらに Facebook や Twitter といった他の SNS に移行した結果、いわゆ る「mixi 離れ」が引き起こされたとするものである。

この仮説を裏付けるには、SNS やブログの執筆なども含めたインターネットユーザーの行動そ のものについて検討する必要があろう。そもそも、人はなぜ mixi などの SNS を利用するのか。

彼らは SNS で、何をしているのか。インターネットを通じて、彼らが発信するコンテンツにはど んな変化があったのか。おそらく、「mixi 離れ」の根幹にあるのは SNS で発信したいコンテンツ のニーズの変化が大きいものと筆者は考えている。以下、いくつかのデータを基にネットユーザ ーの変化の過程を検証したい。

SNS が普及するまで、インターネット上でのコミュニケーションツールとして最も主流だった のは「ブログ」や掲示板、個人ホームページであった。とりわけブログは 2003 年に無料ブログ のサービスが開始されて以降、急速に普及した。総務省情報通信政策研究所が 2008 年 7 月に実 施した調査では、我が国におけるブログ数が 2004 年から 2005 年頃にかけて急増したというデー タが示されている。1 か月に 1 回以上更新のあったブログを示す、いわゆる「アクティブブログ」

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の数についても、2004 年から 2006 年にかけて急増している(総務省「ICT インフラの進展が国 民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」、2011 年)。2004 年 はライブドア(現在は NHN Japan の 100%子会社)や楽天といった IT 企業がプロ野球球団や大 手マスコミ企業の買収を相次いで表明した年でもあり、これらの企業がテレビコマーシャルなど を通じて積極的にブログのプロモーションを行ったことがブログブームに大きく影響している と考えられる。個人が気軽にブログを立ち上げることのできる環境が整備されたことに加えて、

一部の IT 企業がブログの大規模な宣伝を実施した結果、我が国におけるブログの数は急激に増 加した。

しかし、今日ではブログブームはほとんど沈静化し、2008 年を境にアクティブブログの数は 300 万程度とほぼ横ばいで推移している。新規開設されるブログは月に 40~50 万程度で推移し ているものの、更新されなくなったブログも増加しているのが現状である。2008 年 1 月時点で インターネット上に公開されている国内のブログの総数は約 1690 万であるのに対し、アクティ ブブログの数は約 300 万と全体の 2 割弱に過ぎない。この背景には、2004 から 2006 年にかけて ブームに乗じて一度はブログを開設してはみたものの、その後は更新がなされないまま放置され ているブログが多数存在するものと思われる。また、ブログが衰退する要因として mixi に代表 される SNS の存在を無視することはできない。mixi は 2004 年にサービスを開始して以降じわじ わと利用者数を伸ばし続け、2008 年 12 月には年齢制限を 15 歳以上まで引き下げたことで 10 代 の利用者の取り込みに成功、利用者の増加に拍車をかけた。mixi は我が国における SNS の先駆 的企業であり、ほぼ同時期に SNS サービスを開始した GREE やその他の SNS と比較しても先行者 利益を享受している mixi は優位な立場で SNS 市場をリードしてきている。ブログの利用者数は 決して右肩下がりとまでは言えないものの、SNS の攻勢に押されすでに安定期に突入していると 言えよう。ちなみに、株式会社インプレス R&D のシンクタンク・インターネットメディア総合研 究所が 2012 年 6 月、ネットユーザー5639 人を対象に実施した「インターネット利用動向調査」

では、我が国におけるソーシャルメディアの利用者を 5060 万人と推計しており 2008 年の 1920 万人から約 2.5 倍近く増加している(図 6-4)。今日では、すでにネットユーザーの半数以上が なんらかの SNS を利用しており、SNS の急成長ぶりを窺わせる。

図 6-4 我が国におけるソーシャルメディア利用者の推移

(出典:http://www.impressrd.jp/news/121120/kwp2013)

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15

上記のように我が国のネットユーザーがブログから mixi に流れたのには、いかなる要因が考 えられるか。先に述べたとおり、mixi の最も根幹をなす機能が「日記」であることは疑いない。

「日記」は 2004 年に mixi サービスが開始されるのとほぼ同時期に提供されたコンテンツであり、

ユーザーの多くは「日記」を執筆、公開することで mixi の利用を楽しんでいる。株式会社メデ ィアインタラクティブ(アイリサーチ)が 2010 年 5 月 25~27 日の 3 日間、インターネットユー ザー1000 人を対象に行った調査によれば、mixi で最も利用されている機能は「日記(投稿・閲 覧)」がトップであり、以下「コミュニティ」「ニュース」「アプリ」と続く(図 6-5)。

株式会社マクロミルが 2010 年 12 月 11 日~19 日に実施した「mixi・Facebook メイン利用者の SNS 利用実態・意識に関する調査」でも、同様の結果が出ている。同調査の「mixi で行っている こと」によれば、「マイミクの近況を閲覧する(日記)」が 74.8%と最も多く、次いで「自分の 近況を報告する(日記)」が 59.6%であった。「マイミクの近況を閲覧する(mixi ボイス)」も 59.4%を占めたものの、やはり mixi ユーザーにとって日記の占める割合は大きいことが調査結 果からうかがえる。

図 6-5 mixi で利用する機能(複数回答可)

(出典:http://japan.internet.com/research/20100602/1.html N=1000)

ブログと SNS は一見似ているものの、実質は全く異なるという意見についても触れておかなけ ればなるまい。原田和英氏はブログと SNS の違いについて「そもそも自分で所有できるか別の者 が所有するかの圧倒的な違いが存在する」との見解を示している。SNS における「日記」などの コンテンツは、ユーザーが更新しても SNS の運営者に囲い込まれるため外部からの閲覧が困難と

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いう特徴がある。仮にユーザーが SNS 上において一般大衆に向けて「日記」を公開しても、Yahoo!

や Google といった検索エンジンにヒットすることは皆無と言っていい。一方で、ブログは公開 後ただちに全世界のネットユーザーにあまねく自分の執筆した記事を閲覧してもらうことがで きる。ただし、今日公開されている個人ブログの多くは Ameba や fc2 など何らかのレンタルサー バーのもとで一定の管理下に置かれており、ブログの中には mixi の「日記」と同様公開範囲を 限定する機能も備えているため、ブログと SNS の所有権をめぐる問題については一層の検討が必 要であろう。

筆者は当初、「日記」主体の mixi の利用に大きな変化をもたらしたのは、2009 年にサービス 提供を開始した「mixi ボイス」と考えていた。「mixi ボイス」とは、最大 150 文字(全角)のコ メントを投稿することのできる機能で、2008 年 8 月に「エコー」という名称で試験的に開始、

2009 年 9 月から本格的に運用されている。「mixi ボイス」の投稿には「イイネ!」や返信が可能 であるが、「日記」と最も異なる点は 150 文字以下という字数制限が設けられていることである。

それまで日記を投稿していたユーザーが、より気軽かつ短い文章でのコミュニケーションが可能 な「mixi ボイス」に流れていったのではと考えたのである。

しかし、実際には「mixi ボイス」が「日記」を脅かすほどのコンテンツには成り得ていない。

株式会社ライフメディアが 2010 年 8 月に実施した調査によると、「ボイス」ができたことにより、

ユーザーの 42%が「日記」を書く機会が減少したと答える一方、残りの 58%については日記を 書く機会が減ったとは言えないと回答している。同調査では、「mixi ボイスができて、より mixi を利用する機会は増えたか」という質問に対しても 55%のユーザーが「いいえ」と回答してお り、mixi ボイスは有用なコンテンツではあるが、mixi のコアコンテンツとも言える「日記」を 脅かす存在とは必ずしも言えないことを裏づけるものと言える(図 6-6)。

図 6-6 株式会社ライフメディアによる「mixi に関する調査」(2010 年 8 月)

(出典:http://research.lifemedia.jp/2010/09/mixi41mixi_1.html N=1299)

以上の調査結果からもわかるように「ボイス」が誕生したことで「日記」の利用者が減少した とは言えず、「ボイス」が「mixi 離れ」を引き起こす遠因となったとは言えない。よって、仮説 3「ユーザーがインターネット上で物事を発信するニーズに変化が生じた」についても、1・2 と同様に棄却すべきであろう。

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<6-4 仮説 4 について〉

ここでは、最後の仮説である「mixi の利点であった「訪問者を確認することによる安心感」

の喪失が原因」という 4 つ目の仮説について検討する。仮説4を検証するにあたり、なぜ mixi 離れが加速したのか、mixi のもう一つの主力機能である「足あと」機能を出発点に追究したい。

「足あと」とは、自分のページを閲覧したユーザーや、逆に自分が閲覧したユーザーをリアルタ イムで把握できる機能である。「足あと」は他の SNS には見られない mixi の特徴的な機能であり、

ユーザーは足あとを随時チェックすることで、誰が自分のページを閲覧したか確認できる。「足 あと」がユーザーにもたらすメリットとは、「自分が更新したコンテンツを他人が見てくれた」

という、一種の安心感のようなものであろう。「足あと」にはユーザーが訪問した日付や時間が 表示されるため、日記やプロフィールなどのコンテンツを更新した際に、たとえコメントを書い たりしなくとも「○○さんは見てくれている」という漠然とした安心感をユーザーに与えてくれ る効果がある。

「足あと」は他の SNS にはみられない mixi 独自の機能だったにもかかわらず、mixi は 2011 年 6 月 13 日「足あと」機能を廃止した。mixi では前年から「足あと」に代わる機能として「イ イネ!」ボタンを導入しており、新たに「訪問者」という表示システムを設けることで従来の「足 あと」の代替手段としたのである。「イイネ!」ボタンは Facebook でも導入されている機能で、

閲覧者が良いと感じたコンテンツの横にある「イイネ!」を押すことにより、当該コンテンツを 公開しているユーザーに対しアピールが可能となる。「イイネ!」は、いわば友人に対し自分の 存在を示すためのツールと表現できる。

コンテンツを閲覧したユーザーは任意で「イイネ!」を押すことにより、当該コンテンツを閲 覧したことを通知する。また、ページを閲覧したユーザーは友人(マイミクシィ)と友人以外で 区別され、「先週の訪問者」という形で一週間分の訪問者一覧として表示される。「先週の訪問者」

には、どこから自分のページに飛んできたのかが明記されており、友人の友人を介して訪問した のか、あるいは加入している「コミュニティ」経由で訪問したのかといった履歴を明らかにする ことでページ閲覧者の把握が可能となる。

一見すると従来の「足あと」機能を代替したに過ぎないようにも思えるが、「訪問者」機能の 導入は mixi ユーザーの多大な反発を招く結果となった。「訪問者」機能では一週間分のアクセス ユーザーがまとめて表示されるため、「いつ、何月何日何時何分に、自分のページを訪問したの か」把握することが困難だからである。

「mixi 離れ」と呼ばれる現象を検討するうえで、私は「足あと」機能の廃止が重要なファク ターになると考えている。「足あと」の廃止は単なる mixi のシステム改良にとどまらず、mixi の存在価値そのものを揺るがす重要な出来事と位置づけるべきであろう。いつ、誰が閲覧したの かが分からないままでは、日記や写真などのコンテンツを頻繁に更新するユーザーにとって不安 をもたらすことにつながるからである。

「足あと」の廃止によって、ユーザーは誰が自分のページを閲覧したのか把握することが困難 になり、「誰が訪問したのかわからない」という一種の不安感に襲われることとなる。ユーザー

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が友人向けに「日記」などのコンテンツを更新したとしても、誰が閲覧したかが不明である以上

「更新したコンテンツを友人は本当に見ているのか?」という疑念が拭えないままとなってしま う。

「誰が見ているか分からない」という不安感は、コンテンツを更新するインセンティブの喪失 につながる。更新しても閲覧するユーザーが曖昧である以上、友人向けに「日記」や写真を掲載 する理由が見当たらないからである。結果的に、mixi のコアコンテンツであり、最大の強みで もある「日記」を更新するユーザーが減少し「mixi 離れ」を誘引したものと考える。

【7章 「mixi 離れ」に見る、mixi の本質とは】

本章ではより視点を広げて、そもそも、ユーザーはなぜ mixi において「日記」を書く必要が あるのか、mixi の本質に迫ってみたい。mixi の利用目的として最も多いのは「近況報告」や「知 人とコミュニケーションを図る」といった、気心知れた友人とのコミュニケーションが主である。

日記の本質は「書くこと」ではなく「書いた内容を他人に見てもらうこと」にあると筆者は考え ている。mixi 上でつながるうえで最も重要なコンテンツが「日記」であり、自分が公開した日 記を他人に見てもらう証明が「コメント」や「足あと」なのではないか。

mixi の最大の特徴は、つながっている友人との心理的距離が他の SNS と比べて近い点であろ う。この点は第2章で引用したインタビューにおいて原田取締役も明言しており、Facebook の ように誰でも彼でもつながる関係ではなく、顔や名前がある程度一致する、あるいは日ごろから 親しくしている(いた)友人とのつながりこそが mixi の存在意義と言えよう。友人とのつなが りが親密である分、時間をかけて「日記」を更新したにもかかわらず閲覧すらされない、あるい は閲覧してくれたのかどうか分からないままでは、ユーザーにとっては何のために mixi を更新 しているのかという疑問を生みかねない。「mixi 離れ」の根幹にあるのは、「足あと」の廃止を 契機にユーザーに漠然とした不安感を植えつけたこと、それに伴って mixi 上におけるユーザー 同士のコミュニケーションが成立しなくなった結果、Facebook や Twitter などのより広範な関 係を築ける SNS に流れていったことが影響していると結論づけたい。

もっとも、仮に「足あと」を復活させれば従来のユーザーが再び mixi を利用するようになる かと問われれば、そこまで単純な話ではなかろう。また、第4章で明らかにしたように地方にお ける mixi のアクティブユーザーは僅かながら増加しており、今後は首都圏以外の地域を対象に したサービスの拡充なども考えられる。一口に「mixi 離れ」といえども、正式にアカウントを 削除し mixi を退会したユーザーから、アカウントは保有しているもののコンテンツを一切更新 せず「放置」したままのユーザーに至るまで実態は様々である。アカウントを放置したまま他の SNS に移行したユーザーをいかにして取り戻すかが、mixi 復活のうえで重要なポイントとなろう。

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【8章 おわりに】

かつて、我が国において SNS といえば、mixi がその代表格であった。我が国に SNS という概 念を根付かせ、SNS を通じて親しい友人や学生時代の同級生と再びコミュニケーションを取るこ とが可能になったのには、mixi の果たすところが大きい。しかし、今日 mixi は非常に厳しい状 態にさらされていると言わざるを得ない。第4章で取り上げたように、mixi の利用者は全体的 に減少傾向にある。かつて mixi を利用していたユーザーが Facebook や Twitter など他の SNS に移行していく、いわゆる「mixi 離れ」と呼ばれる現象が起こっているのが現状である。筆者 は「mixi 離れ」がなぜ起こっているのか、その背景にはどんな事情があるのか、本論文におい て4つの仮説を提示して検証を試みた。その結果、「足あと」の廃止を契機にユーザーに漠然と した不安感を植えつけてしまい、mixi 上でのコミュニケーションが成立しなくなり一連の「mixi 離れ」につながったという仮説が最も妥当であろうという結論に至った。「mixi 離れ」は単に mixi のブームが去ったという意味ではなく、mixi に対する価値の見直しを迫る現象と捉えるべきで あろう。

今日では様々なメディアを通じて、mixi が批判的に取り上げられることが多い。その中には

「mixi 離れ」について取り上げたものも多く、mixi の周囲を取り巻く悲観論は後を絶たないの が現状である。2012 年 6 月 7 日付の日本経済新聞は「同じ SNS の『フェイスブック』の勢いが 加速するなか、国産のmixiはライバルを意識するあまり、自らのメリットを放棄している」、 同年 12 月 26 日付の SankeiBiz は「同じSNSでスタートしたグリーやディー・エヌ・エー(D eNA)がゲーム事業で大きく成長したのに対し、ミクシィは株価が低空飛行を続け、市場では

『身売り』もささやかれる」など、mixi に対して悲観的な見方を示している。

これはあくまで筆者の感覚に過ぎないが、筆者自身1年前と比較して mixi を更新する友人が 減少したことを実感している。しかし、我が国に SNS という概念を根付かせた先駆者として mixi の功績を無視することはできない。メディアの論調の中には、パソコンからのアクセス数を比較 して mixi の凋落ぶりを強調する意見も散見されるが、それが適切でないことは自明である。

「mixi 離れ」を検証するにあたっては、ユーザーが mixi に求めるものの本質が何なのかを再検 討することが必須であろう。

株式会社ミクシィの側も「mixi 離れ」に対し、全く手をこまねいているわけではない点を付 記しておきたい。ミクシィは 2012 年 10 月 9 日、「訪問者(足あと)」サービスにおける「リアル タイム表示」機能を 2013 年 1 月までに試験的に提供する方針であることを笠原健治社長名義で 発表した。ユーザーからの強い改善要望を受け、かつての「足あと」機能の最大の特徴であった 訪問者の日時の明確化を再開させる方針を明らかにしたのである。他の SNS にはみられない mixi の特徴的な機能であった「足あと」を復活させることで、「mixi 離れ」に歯止めをかける、ある いは Facebook や Twitter に流れてしまったユーザーを取り戻す意向があるものと考えられる。

ミクシィは他にも、2012 年 11 月に「ユーザーファーストウィーク」と称するユーザーと会社幹 部との交流会を開催するなど、様々な試みによってユーザーのリアルな反応を掴もうとしている。

なお、本論文を執筆している 2013 年 1 月時点で未だ mixi から「リアルタイム表示」機能に関す

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20 る具体的なアナウンスはない。

このほか、ミクシィでは笠原社長以下、幹部をはじめとする多くの社員がユーザーと直接対話 して意見を聴く試みを始めている。我が国に SNS を根付かせたリーディングカンパニーとして、

mixi は巻き返しの機会を窺っているようである。ユーザー同士の「心地よいつながり」を標榜 する mixi が、今後いかなる戦略をもって我が国の SNS 市場で勝ち抜いていくのか、引き続き注 目していきたい。

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【参考文献】

Everett M.Rogers,三藤利雄『イノベーションの普及』翔泳社,2007 年 原田和英『巨大人脈 SNS のチカラ』朝日新聞社,2007

山脇伸介『Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム』ソフトバンクリエイティ ブ,2011

『日経パソコン』日経 BP,2011 年 10 月 24 日号「特集 3 SNS の上手な歩き方」

【参考 URL、ニュースサイト】

株式会社ミクシィ http://mixi.co.jp/

株式会社メンバーズ「Facebook ユーザー数の推移と属性データ」

http://blog.members.co.jp/article/3629

株式会社ディーツーコミュニケーションズ「スマートフォン普及動向調査」(2012 年 2 月)

http://www.d2c.co.jp/news/2012/20120418-1340.html

株式会社 MM 総研「スマートフォン市場規模の推移・予測」(2012 年 3 月)

http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120120313500

「最も利用しているスマホアプリ、トップ 3 は『LINE』『Facebook』『Twitter』」 RBBTODAY, 2012/12/27 12:57

http://www.rbbtoday.com/article/2012/12/27/100302.html

総務省 情報通信白書

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/

総務省 情報通信政策研究所調査研究部 ブログの実態に関する調査研究の結果

http://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/data/research/survey/telecom/2008/2008-1-02- 2.pdf

株式会社インプレス R&D インターネットメディア総合研究所「スマートフォン/ケータイ利用動 向調査 2013」

http://www.impressrd.jp/news/121120/kwp2013

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株式会社ライフメディア「mixi に関する調査」(2010 年 9 月 10 日)

http://research.lifemedia.jp/2010/09/mixi41mixi_1.html

株式会社マクロミル ブランドデータバンク自主調査「mixi な人、Facebook な人 詳細版」(2011 年 8 月)

http://www.branddatabank.com/report/resources/bdbReport_mixi_facebook.pdf

「ミクシィ逆襲の夏『最後に勝つ』副社長 フェイスブックとグーグルの攻勢に「地場 SNS」の 意地」 日本経済新聞,2011/7/31 4:00

http://www.nikkei.com/article/DGXBZO33185500Q1A730C1000000/

「迷走ミクシィ、SNS再編の火種 業績低迷、ユーザー停滞…消えない噂」SankeiBiz, 2012/12/26 7:30 http://www.sankeibiz.jp/business/news/121226/bsj1212260731001-n1.htm

「揺れるミクシィ、SNS の『老舗』はなぜ間違えたのか」日本経済新聞,2012/6/7 7:00 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0503G_V00C12A6000000/

図 2-3  Facebook ユーザー年齢構成比(2012 年 6 月)
図 3-2「2012 年 5 月→6 月の年代・性別毎の Facebook ユーザー増加数&前月比」
図 3-1「Facebook ユーザー数の推移」
図 6-3  「最も利用しているアプリ」 (N=670)
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参照

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