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障害者差別解消法と障害学生支援

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(1)

障害者差別解消法と障害学生支援

学校法人弘前学院 弘前学院大学社会福祉学部

(2)

建学の精神

畏 神 愛 人

「神を畏れ人を愛すること」を基に、人間性豊かな人格の完成を目指 し、文学・福祉・看護に関する高度な専門性を意欲的に追求し、地域や 国際社会に貢献できる人材を育成する。

社会福祉学部 教育目標

社会福祉学部では人間としての権利とは何か、人間としての尊厳とは 何かについて等、人間存在の根源的テーマの1つひとつを各人に心底から 問い続けることのできる人材、かつ、豊かな社会の中で、又、激しい競 争社会の中で、ややもすると、孤立しがちな人々の思いにしっかりと心 を寄り添えることのできる人材の養成を目指す。

少子高齢化、人間関係の希薄化、格差社会等が叫ばれる中、生活して いくうえで課題を抱えた人は増加の一途をたどっている。また、その生 活課題は複雑化している。国民の福祉に対する期待が高まる中、このよ うな社会情勢の要請を受ける形で本学部は、教育面での到達目標を以下 3点掲げている。

第1は、実践力のある社会福祉の専門職者を養成する。

第2は、社会福祉学を学んだ教員を養成し、社会福祉教育の進展に寄 与する人材の輩出を目指す。

第3は、社会福祉の諸問題に真摯に向き合い、“いのち”や“くらし”

を保障していく立場を守り続ける生活者として生きる。

これらの人間形成に向けての教育に全学を挙げた取り組みを展開して いる。

(3)

障害学生支援ガイドブックの発刊にあたって

平成25年6月に制定された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」

(平成 25 年法律第 65 号 以下,「障害者差別解消法」とする)が,平成28年 4月1日に施行されました。

この法律は,障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化し,全ての国民が,

障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合い ながら共生する社会の実現に向けて,障害者差別の解消を推進することを目的 に制定されたものです。

同法の施行により,弘前学院大学においても,障害者への差別的取扱いの禁止 が法的義務(第8条第1項)となり,合理的配慮の不提供の禁止は努力義務(第 8条第2項)となりました。具体的な取組については,文部科学省の示した対応 指針に基づいて障害学生支援を進めていくことになります。

近年,大学などに在籍する障害学生数が増加しています。日本学生支援機構が 実施している「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」では,発達障害,

病弱・虚弱,精神障害の学生が急増していると報告しています。そうしたことは,

本学においても同様で,障害のある学生の数は少ないものの,学修や友人とのか かわりに困難さを抱える学生の入学が増えているように思います。

以上のような状況を踏まえて,この度,本学における障害学生支援の体制整備 の一つとして,障害特性の理解と障害種別ごとの修学支援や,学内の環境整備の 情報等を掲載した「障害学生支援ガイドブック」を作成することにいたしまし た。

本ガイドブックの活用により,障害のある学生ばかりでなく,本学に学ぶすべ ての学生にとって豊かなキャンパスライフ・学修が充実したものになることを 願います。

(4)

目 次

障害学生支援ガイドブックの発刊にあたって

1 障害学生支援の必要性 1

2 障害者差別解消法を理解する 2

(1)障害者差別解消法のポイント 2

(2)不当な差別的取扱いの禁止 6

(3)合理的配慮の提供 7

3 障害学生支援 ―講義・演習場面での支援を中心に― 11

(1)支援のための基本的な考え方 11

(2)障害種別の配慮事項 14

① 視覚に障害のある学生の理解と支援 14

② 聴覚に障害のある学生の理解と支援 19

③ 肢体不自由のある学生の理解と支援 23

④ 内部障害のある学生の理解と支援 26

⑤ 発達障害のある学生の理解と支援 27

(3)学生による支援 32

4 学内の障害学生修学支援環境(学生のみなさんに向けて) 34

(1)弘前学院大学の情報アクセスビリティ① LL教室 34

② 図書館 34

③ 学生ラウンジ 35

(2)学生生活を楽しむ ~サークルの楽しみ方~ 35

(3)学生ボランティアの活用 ~ノート作りに困ったら~ 36

(4)社会福祉学部の障害学生支援体制 36

(5)障害のある学生の権利侵害への対応 ~いじめを例に~ 37

(6)障害のある学生の就職支援 37

(7)研究助成金の活用 38

障害学生支援ガイドブックの発刊にあたって

平成25年6月に制定された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」

(平成 25 年法律第 65 号 以下,「障害者差別解消法」とする)が,平成28年 4月1日に施行されました。

この法律は,障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化し,全ての国民が,

障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合い ながら共生する社会の実現に向けて,障害者差別の解消を推進することを目的 に制定されたものです。

同法の施行により,弘前学院大学においても,障害者への差別的取扱いの禁止 が法的義務(第8条第1項)となり,合理的配慮の不提供の禁止は努力義務(第 8条第2項)となりました。具体的な取組については,文部科学省の示した対応 指針に基づいて障害学生支援を進めていくことになります。

近年,大学などに在籍する障害学生数が増加しています。日本学生支援機構が 実施している「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」では,発達障害,

病弱・虚弱,精神障害の学生が急増していると報告しています。そうしたことは,

本学においても同様で,障害のある学生の数は少ないものの,学修や友人とのか かわりに困難さを抱える学生の入学が増えているように思います。

以上のような状況を踏まえて,この度,本学における障害学生支援の体制整備 の一つとして,障害特性の理解と障害種別ごとの修学支援や,学内の環境整備の 情報等を掲載した「障害学生支援ガイドブック」を作成することにいたしまし た。

本ガイドブックの活用により,障害のある学生ばかりでなく,本学に学ぶすべ ての学生にとって豊かなキャンパスライフ・学修が充実したものになることを 願います。

(5)

【 参考資料1】 障害学生支援に関する法令 39

〇 障害者の権利に関する条約<抜粋> 39

〇 障害者基本法<抜粋> 40

〇 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律<抜粋> 41

○「障害者基本計画(第3次)」<抜粋> 42

文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進 に関する対応指針<抜粋> 43

【 別添 】 別紙2 分野別の留意点 43

【参考資料2】 関連する法令や支援機関等へのアクセス先 45

(1)法令等 45

(2)支援機関 46

あとがき 47

引用・参考文献 48

コラム1「社会における様々な障壁」 5

コラム2「社会モデル」 5

コラム3「授業のユニバーサルデザイン」 12

コラム4「障害者に関するマーク その1」 18 コラム5「不当な差別的取扱いと合理的配慮」 22 コラム6「困っている人を見かけたら・・・」 25 コラム7「障害者に関するマーク その2」 25 コラム8「ノートテイク」 33

本ハンドブックでは,「障害」の表記を文部科学省における表記に倣い,「障害」に 統一しました。ただし,固有名詞として「障がい」・「しょうがいしゃ」等を使用して いる場合や,文献引用においてはそのままの表記としました。

本ハンドブックにおける「障害」及び「障害学生」の表記について

(6)

1 障害学生支援の必要性

国連総会において,障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し,障害者の固 有の尊厳の尊重を促進することを目的とした「障害者の権利に関する条約」(以 下,障害者権利条約という)が,2006(平成18)年12月13日に採択され,2008

(平成20)年5月3日に発効しました。

わが国は,2007(平成19)年に本条約に署名し,その後,「障害者基本法」の 改正(2011(平成 23)年8月)をはじめ,同条約の締結に向けた国内法の整備を 進めてきました。そうして,2013(平成 25)年6月の「障害を理由とする差別の 解消の推進に関する法律」(以下,障害者差別解消法という)の成立により法的 整備が整ったとして,2014(平成26)年1月20日に批准書を国連に寄託し,同 年2月19日に我が国について効力が発生しています。

同条約では,一般的義務として,「障害を理由とするいかなる差別もなしに,

すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し,

及び促進することを約束する」(第4条第1項)とともに,「平等を促進し,及び 差別を撤廃することを目的として,合理的配慮が提供されることを確保するた めのすべての適当な措置をとる」(第5条第3項),「障害者の事実上の平等を促 進し,又は達成するために必要な特別の措置は,この条約に規定する差別と解し てはならない」(第5条第4項)と定められています。

また,教育については,「教育についての障害者の権利を認める」(第24条第 1 項)とし,「障害者が,差別なしに,かつ,他の者と平等に高等教育一般,職 業訓練,成人教育及び生涯学習の機会を与えられることを確保する.このため,

締約国は,合理的配慮が障害者に提供されることを確保する」(第24条第5項) と示されています。

近年,障害のある学生の大学,短期大学及び高等専門学校への進学が増加して います。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)による「平成28 年度(2016 年 度)大学,短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関す る実態調査」では,「平成28年5月1日現在における障害学生数は前年より5,536

【 参考資料1】 障害学生支援に関する法令 39

〇 障害者の権利に関する条約<抜粋> 39

〇 障害者基本法<抜粋> 40

〇 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律<抜粋> 41

○「障害者基本計画(第3次)」<抜粋> 42

文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進 に関する対応指針<抜粋> 43

【 別添 】 別紙2 分野別の留意点 43

【参考資料2】 関連する法令や支援機関等へのアクセス先 45

(1)法令等 45

(2)支援機関 46

あとがき 47

引用・参考文献 48

コラム1「社会における様々な障壁」 5

コラム2「社会モデル」 5

コラム3「授業のユニバーサルデザイン」 12

コラム4「障害者に関するマーク その1」 18 コラム5「不当な差別的取扱いと合理的配慮」 22 コラム6「困っている人を見かけたら・・・」 25 コラム7「障害者に関するマーク その2」 25 コラム8「ノートテイク」 33

本ハンドブックでは,「障害」の表記を文部科学省における表記に倣い,「障害」に 統一しました。ただし,固有名詞として「障がい」・「しょうがいしゃ」等を使用して いる場合や,文献引用においてはそのままの表記としました。

本ハンドブックにおける「障害」及び「障害学生」の表記について

—  —

(7)

1

人増加し,27,257人(全学生数の0.86%),障害学生在籍学校数は898 校(全学 校数1,171校の76.7%)と報告されています。学校種別で見ると,「大学」に在 籍している障害学生が24,686人(前年度19,591人より5,095人増)で,最も多く 増加しています。

本学においても,これまで及び現在,視覚や聴覚の障害や下肢障害,内部疾患 等の障害を有する学生が学んでいます。

そのような中,2016(平成28)年 4月に,「障害者差別解消法」が施行されま した。国公立の大学等では障害者への差別的取扱いの禁止と合理的配慮の不提 供の禁止が法的義務となり,私立大学等においても,障害者への差別的取扱いの 禁止は法的義務,合理的配慮の不提供の禁止は努力義務となるなど,適切な対応 が求められています。

本学では,学部を超えた全学組織である「障がい学生修学支援委員会」が中心 となって,聴覚障害学生へのノートテイク支援や段差解消,障害者用トイレの設 置等,障害のある学生の大学生活と学修に関するサポートを行うとともに,教員 向けの障害理解と障害学生支援に関する研修会等を開催するなど,多様な学生 のニーズに合わせた支援に努めてきました。

今後,社会の障害及び障害者への理解が進むとともに,積極的に社会参加を求 めて,大学等で学ぶ障害のある学生が増加することが予想されることから,そう した障害のある学生に対する修学支援を一層充実していく必要があります。

2 障害者差別解消法を理解する

(1)障害者差別解消法のポイント

先に述べたように,障害者差別解消法が平成28年4月1日に施行されました。

この法律は,国連の「障害者の権利条約」の批准に必要な国内法整備の一つとし て制定されたもので,障害者基本法の基本原則を踏まえて,障害を理由とする差 別禁止に関する規定を具体化し,それらを守るための措置を定めたものです。

—  —

(8)

2

具 体 化

障害者差別解消法の概要

内閣府 「障害者差別解消法<平成25年法律第65号>の概要」 をもとに作成 障害者基本法 第三条 基本原則(地域社会における共生等)

第一条に規定する社会の実現は,全ての障害者が,障害者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人と してその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ,次に掲 げる事項を旨として図られなければならない。

一 全て障害者は,社会を構成す る一員として社会,経済,文化その 他あらゆる分野の活動に参加する 機会が確保されること。

二 全て障害者は,可能な限り,

どこで誰と生活するかについての 選択の機会が確保され,地域社会 において他の人々と共生すること を妨げられないこと。

三 全て障害者は,可能な限り,

言語(手話を含む。)その他の意思 疎通のための手段についての選 択の機会が確保されるとともに,

情報の取得又は利用のための手 段についての選択の機会の拡大 が図られること。

障害者基本法 第四条 基本原則(差別の禁止)

1項:障害を理由とする 差別等の権利侵害行為 の禁止

第2項:社会的障壁の除去を怠ること による権利侵害の防止と合理的配 慮の提供

第3項:国による啓発・知識 の普及を図るための取組

Ⅰ 差別を解消するための措置

不当な差別的取扱いの

禁止 合理的配慮の提供 国・地方公共団体等

法的義務 法的義務

努力義務

(1)政府の方針として,差別の解消の推進に関する基本方針策定(閣議決定平成27年2月24日)

(2)国・地方公共団体等 職員対応要領を策定(ただし,地方公共団体は努力義務)

事 業 者主務大臣が事業分野別の対応指針(ガイドライン)策定

Ⅱ 差別を解消するための支援措置

主務大臣による事業者に対する報告徴収,助言,指導,勧告 実 効 性 の 確 保

相談・紛争解決の体制整備

障害者差別解消支援地域協議会における関係機関等の連携

普及・啓発活動の実施

差別及び差別の解消に向けた取組に関する情報の収集,整理と提供

相 談 ・ 紛 争 解 決 地 域 に お け る 連 携

何人も,障害者に対して,

障害を理由として,差別す ることその他の権利利益を 侵害する行為をしてはなら ない。

社会的障壁の除去は,それを必要とし ている障害者が現に存し,かつ,その 実施に伴う負担が過重でないときは,

それを怠ることによって前項の規定に 違反することとならないよう,その実施 について必要かつ合理的な配慮がされ なければならない。

国は,第一項の規定に違反 する行為の防止に関する啓 発及び知識の普及を図るた め,当該行為の防止を図る ために必要となる情報の収 集,整理及び提供を行うも のとする。

全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合い ながら共生する社会の実現

1

人増加し,27,257人(全学生数の0.86%),障害学生在籍学校数は898 校(全学 校数1,171校の76.7%)と報告されています。学校種別で見ると,「大学」に在 籍している障害学生が24,686人(前年度19,591人より5,095人増)で,最も多く 増加しています。

本学においても,これまで及び現在,視覚や聴覚の障害や下肢障害,内部疾患 等の障害を有する学生が学んでいます。

そのような中,2016(平成28)年 4月に,「障害者差別解消法」が施行されま した。国公立の大学等では障害者への差別的取扱いの禁止と合理的配慮の不提 供の禁止が法的義務となり,私立大学等においても,障害者への差別的取扱いの 禁止は法的義務,合理的配慮の不提供の禁止は努力義務となるなど,適切な対応 が求められています。

本学では,学部を超えた全学組織である「障がい学生修学支援委員会」が中心 となって,聴覚障害学生へのノートテイク支援や段差解消,障害者用トイレの設 置等,障害のある学生の大学生活と学修に関するサポートを行うとともに,教員 向けの障害理解と障害学生支援に関する研修会等を開催するなど,多様な学生 のニーズに合わせた支援に努めてきました。

今後,社会の障害及び障害者への理解が進むとともに,積極的に社会参加を求 めて,大学等で学ぶ障害のある学生が増加することが予想されることから,そう した障害のある学生に対する修学支援を一層充実していく必要があります。

2 障害者差別解消法を理解する

(1)障害者差別解消法のポイント

先に述べたように,障害者差別解消法が平成28年4月1日に施行されました。

この法律は,国連の「障害者の権利条約」の批准に必要な国内法整備の一つとし て制定されたもので,障害者基本法の基本原則を踏まえて,障害を理由とする差 別禁止に関する規定を具体化し,それらを守るための措置を定めたものです。

—  —

(9)

3

障害を理由とする差別は,障害及び障害者に対する理解不足や偏見が原因で 生じることが多いことから,今回の障害者差別解消法の施行を機に,障害及び障 害者について,また,障害者がどのような支援を必要としているのか等について 理解を深めていきたいものです。そうすることで,障害の有無に関わりなく,共 に社会を形成する一員として互いに尊重し合い,助け合って生きる共生社会の 実現に近づいていくと思われます。

この法律で対象とする障害者は,「障害がある者であって,障害及び社会的障 壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」

と定義されています(第二条)。これは,障害者基本法を踏まえたもので,障害 者が受ける日常生活又は社会生活上の制限は,心身の機能障害のみに起因する ものではなく,社会における様々な障壁(事物,制度,慣行,観念その他一切の もの)と相対することによって生ずるとするいわゆる「社会モデル」の考え方に 基づくものです。

したがって,障害者差別解消法の対象は,身体障害者手帳などの障害者手帳を 持つ人に限られません。また,「障害」の範囲についても,発達障害や難病等に 起因する障害を含む,身体障害,知的障害,精神障害その他の心身の機能の障害 と定義し,今後の「障害」の対象範囲の拡大を考慮するものとなっています。

障害を理由とした不当な差別的取扱いや,過重な負担を伴わない合理的 配慮を提供しないことは,差別に当たります。

障害者差別解消法の対象は,身体障害者手帳などの障害者手帳を持つ人 に限られません。

—  —

(10)

4

出典:内閣府リーフレット「障害者差別解消法が制定されました」p.2より 一部改変 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/sabekai_leaflet_p.pdf

コラム1 「社会における様々な障壁」

社会的障壁とは?

障害のある方にとって,日常生活や社会生活を送る上で障壁となるような ものを指します。

(例)街なかの段差 3cm程度の段差で 車椅子は進めなくなり ます。

(例)書類 難しい漢字ばかりで は,理解しづらい人もい ます。

(例)ホームページ すべて画像だと読み 上げソフトが機能しま せん。

コラム2 「社会モデル」

社会モデルとは?

障害のある人々が,社会生活を送る上で直面する様々な困難は,「その人自 身の身体的欠損によるもの」であり,困難克服の責任はその人(と家族)にある とする考え方を「個人モデル」と言います。それに対して,社会生活上の仕組み のほとんどが健常な人々を基準につくられたものであり,そうした社会の在り方 が「社会的障壁」となり,障害のある人に社会生活を送る上での不利をもたらし ているという考え方を「社会モデル」といいます。

①社会における事物

(通行,利用しにくい施設,設備など)

②制度

(利用しにくい制度など)

③慣行

(障害のある方の存在を意識していない慣習,文化など)

3

障害を理由とする差別は,障害及び障害者に対する理解不足や偏見が原因で 生じることが多いことから,今回の障害者差別解消法の施行を機に,障害及び障 害者について,また,障害者がどのような支援を必要としているのか等について 理解を深めていきたいものです。そうすることで,障害の有無に関わりなく,共 に社会を形成する一員として互いに尊重し合い,助け合って生きる共生社会の 実現に近づいていくと思われます。

この法律で対象とする障害者は,「障害がある者であって,障害及び社会的障 壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」

と定義されています(第二条)。これは,障害者基本法を踏まえたもので,障害 者が受ける日常生活又は社会生活上の制限は,心身の機能障害のみに起因する ものではなく,社会における様々な障壁(事物,制度,慣行,観念その他一切の もの)と相対することによって生ずるとするいわゆる「社会モデル」の考え方に 基づくものです。

したがって,障害者差別解消法の対象は,身体障害者手帳などの障害者手帳を 持つ人に限られません。また,「障害」の範囲についても,発達障害や難病等に 起因する障害を含む,身体障害,知的障害,精神障害その他の心身の機能の障害 と定義し,今後の「障害」の対象範囲の拡大を考慮するものとなっています。

障害を理由とした不当な差別的取扱いや,過重な負担を伴わない合理的 配慮を提供しないことは,差別に当たります。

障害者差別解消法の対象は,身体障害者手帳などの障害者手帳を持つ人 に限られません。

—  —

(11)

5

(2)不当な差別的取扱いの禁止

国や地方公共団体などの役所や,会社,商店などの民間事業者が,障害のある 人に対して,正当な理由なく,障害を理由として差別することは,障害者の権利 利益を侵害する「不当な差別的取扱い」として禁止されています。もちろんのこ と,私立大学である本学についても,「不当な差別的取扱い」の禁止が義務付け られていることは言うまでもありません。

不当な差別的取扱いとして禁止されるものとして,「文部部科学省所管事業分 野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(2015 年)

では,次のようなものを挙げています。

「文部部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進 に関する対応指針」(2015年)で,不当な差別的取扱いとして禁止されるも の

障害があることを理由として,

○学校,社会教育施設,スポーツ施設,文化施設等において,窓口対応を拒否 すること。

○事務窓口等で,対応の順序を後回しにすること。

○資料の送付,パンフレットの提供を拒むこと。

○式典参加や行事,説明会,シンポジウムへの出席等を拒むこと。

○社会教育施設,スポーツ施設,文化施設等やそれらのサービスの利用をさ せないこと。

○入学試験の出願の受理,受験を拒むこと。

○入学を断ること。

○授業等の受講や研究指導を拒むこと。

○実習,研修,フィールドワーク等校外教育活動への参加を拒むこと。

○学生寮への入寮を拒むこと。

○手話通訳,ノートテイクなどの情報保障手段を用意できないからとい理由 で,障害のある学生を授業や研修,講習会,実習等へ参加させないこと。

○試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に,当該試験等の結 果を学習評価 の対象から除外したり,評価において差を付けたりするこ と。

—  —

(12)

6

不当な差別的取扱いに相当するか否かは, 個別の事案ごとに判断されること になります。また,上記の具体例は,正当な理由が存在しないことを前提として いること,さらに,あくまでも例示であり,記載されている具体例だけに限られ るものではないことに留意する必要があります。

なお,「積極的に改善の措置を講じた結果,障害者を障害者でないものと比べ て優遇した。」「合理的配慮を提供するために,プライバシーに配慮しつつ必要 な範囲の障害状況の確認を行った。」など,障害者の事実上の平等を促進・達成 するために取られる特別な措置は,不当な差別的取扱いには当たりません。

(3)合理的配慮の提供

負担が過重でないのに,「合理的配慮」をしないのは差別に当たります。合理 的配慮については,障害者権利条約第二条で次のように定義しています,

「障害」には様々な種類があり,同じ障害名でも症状や程度によって対応の仕 方は異なります。また,障害によっては,外見だけでは障害の有無がわからなか ったり,一日の中でも症状が大きく変動したりする場合もあります。

合理的な配慮の提供については,それぞれの障害の特性や個々の置かれてい る状況によって異なることから,障害者の意思の表明があった場合に,社会的障 壁の除去のための手段及び方法について,代替措置の選択も含めて,双方が建設 的対話を進め,相互理解を図る中で,具体的場面や状況に応じて判断し提供する ことに留意する必要があります。

合理的配慮の例として,「文部部科学省所管事業分野における障害を理由とす る差別の解消の推進に関する対応指針」(2015年)や,独立行政法人日本学生支

障害者権利条約第二条

障 害 者 が 他 の 者 と の 平 等 を 基 礎 と し て 全 て の 人 権 及 び 基 本 的 自 由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び 調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を 失した又は過度の負担を課さないものをいう。

5

(2)不当な差別的取扱いの禁止

国や地方公共団体などの役所や,会社,商店などの民間事業者が,障害のある 人に対して,正当な理由なく,障害を理由として差別することは,障害者の権利 利益を侵害する「不当な差別的取扱い」として禁止されています。もちろんのこ と,私立大学である本学についても,「不当な差別的取扱い」の禁止が義務付け られていることは言うまでもありません。

不当な差別的取扱いとして禁止されるものとして,「文部部科学省所管事業分 野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(2015 年)

では,次のようなものを挙げています。

「文部部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進 に関する対応指針」(2015年)で,不当な差別的取扱いとして禁止されるも の

障害があることを理由として,

○学校,社会教育施設,スポーツ施設,文化施設等において,窓口対応を拒否 すること。

○事務窓口等で,対応の順序を後回しにすること。

○資料の送付,パンフレットの提供を拒むこと。

○式典参加や行事,説明会,シンポジウムへの出席等を拒むこと。

○社会教育施設,スポーツ施設,文化施設等やそれらのサービスの利用をさ せないこと。

○入学試験の出願の受理,受験を拒むこと。

○入学を断ること。

○授業等の受講や研究指導を拒むこと。

○実習,研修,フィールドワーク等校外教育活動への参加を拒むこと。

○学生寮への入寮を拒むこと。

○手話通訳,ノートテイクなどの情報保障手段を用意できないからとい理由 で,障害のある学生を授業や研修,講習会,実習等へ参加させないこと。

○試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に,当該試験等の結 果を学習評価 の対象から除外したり,評価において差を付けたりするこ と。

—  —

(13)

7

援機構が作成する「大学等における障害のある学生への支援・配慮事例」,「教 職員のための障害学生修学支援ガイド」等では,以下のようなことが例として挙 げられています。

○物理的環境への配慮や人的支援の配慮の具体例

・災害時の警報音,緊急連絡等が聞こえにくい障害者に対し,施設の職員が直接 災害を知らせること。

・緊急情報・館内放送を視覚的に受容することができる警報設備・電光表示機器 等を用意すること。

・車椅子利用者のためにキャスター上げ等の補助をし,又は段差に携帯スロープ を渡すこと。

・配架棚の高い所に置かれた図書やパンフレット等を取って渡したり,図書やパ ンフレット等の位置を分かりやすく伝えたりすること。

・障害特性により,授業中に頻繁に離席の必要がある障害者等について,出入り 口付近に座席位置を設けること。

・図書館やコンピュータ室等の施設設備を,他の学生同様に利用できるように改 善すること。

・移動に困難のある学生等のために,通学のための駐車場を確保すること。

・移動に困難のある学生が参加する授業で,使用する教室をアクセスしやすい場 所に変更すること。

・疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際,休憩室の確保に 努めること。

・休憩室の確保が困難である場合,教室内に長椅子を置いて臨時の休憩スペース を設けること。

・目的の場所までの案内の際に,障害者の歩行速度に合わせて歩いたり,左右・

前後・距離等の位置取りについて,障害者の希望を聞いたりすること。

・介助等を行う学生(以下「支援学生」という.),保護者,支援員等の教室へ の入室,授業や試験でのパソコン入力支援,移動支援,待合室での待機を許 可すること。

—  —

(14)

7

援機構が作成する「大学等における障害のある学生への支援・配慮事例」,「教 職員のための障害学生修学支援ガイド」等では,以下のようなことが例として挙 げられています。

○物理的環境への配慮や人的支援の配慮の具体例

・災害時の警報音,緊急連絡等が聞こえにくい障害者に対し,施設の職員が直接 災害を知らせること。

・緊急情報・館内放送を視覚的に受容することができる警報設備・電光表示機器 等を用意すること。

・車椅子利用者のためにキャスター上げ等の補助をし,又は段差に携帯スロープ を渡すこと。

・配架棚の高い所に置かれた図書やパンフレット等を取って渡したり,図書やパ ンフレット等の位置を分かりやすく伝えたりすること。

・障害特性により,授業中に頻繁に離席の必要がある障害者等について,出入り 口付近に座席位置を設けること。

・図書館やコンピュータ室等の施設設備を,他の学生同様に利用できるように改 善すること。

・移動に困難のある学生等のために,通学のための駐車場を確保すること。

・移動に困難のある学生が参加する授業で,使用する教室をアクセスしやすい場 所に変更すること。

・疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際,休憩室の確保に 努めること。

・休憩室の確保が困難である場合,教室内に長椅子を置いて臨時の休憩スペース を設けること。

・目的の場所までの案内の際に,障害者の歩行速度に合わせて歩いたり,左右・

前後・距離等の位置取りについて,障害者の希望を聞いたりすること。

・介助等を行う学生(以下「支援学生」という.),保護者,支援員等の教室へ の入室,授業や試験でのパソコン入力支援,移動支援,待合室での待機を許 可すること。

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エ 教育方法等:情報保障,コミュニケーション上の配慮,公平な試験,成績評 価などにおける配慮を行うこと。

オ 支援体制:大学等全体として専門性のある支援体制の確保に努めること。

カ 施設・設備:安全かつ円滑に学生生活を送れるよう,バリアフリー化に配慮 すること。

3 障害学生支援 ―講義・演習場面での支援を中心に―

本学に在籍する障害のある学生が,障害のない学生と可能な限り等しい条件 のもとで,学生生活が送れるように,授業保障,情報保障を中心に修学支援が 行われなければなりません。

そのためには,必要な規程の整備や予算措置を講ずることなど,効果的な支 援を大学として遂行することは言うまでもないことですが,ここでは,障害の ある学生を指導する教員や,共に学ぶ仲間である障害のない学生が,講義や演 習等の授業場面で,障害のある学生を支援する(合理的配慮の提供)ための基 本的な考えとかかわり方を中心に紹介します。

(1)支援のための基本的な考え方

障害のある学生の修学支援を進めるとき,診断の有る無しが話題に上ること があります。診断名が付くことで,身体状況や行動特徴の理解に参考となるたく さんの情報が得られることは言うまでもありません。しかし,そのことによって,

○○障害の学生という先入観を持って学生に接したり,期待する結果が得られ ないと,その原因を障害名に求めたり,あきらめの感情を抱いたりすることにつ ながっていくことも,結構多くの場面で見られています。教育的支援のためには 診断名にとらわれることなく,個々の学生の学修上の障壁(バリア)を理解し,

その障壁を取り除くことこそが重要なのです。

障害学生の支援は専門家でなければできないということではありません。ど のような場においても,学生に寄り添い,理解しようとする姿勢が大切なのです。

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(17)

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視覚障害のある学生への主体的な声かけや誘導,聴覚障害のある学生への声が け,体調不良者や移動に困難を抱える学生への積極的な係わりや介助など,手助 けや心配りを誰もが自然に行い,協力する雰囲気があることが大事なのです。そ うした誰もが自然な係わりをもとうとする雰囲気の醸成を,障壁を取り除く(バ リアフリー化の)スタートとしたいと思います。

また,障害学生の中には,自己肯定感が低くなることで,学習意欲が低下し,

無力感を感じ易くなり,大学から足が遠のいたり,引きこもったりといった状態 に陥ることがあります。自己肯定感の低下を防ぐために,「すぐに諦める傾向が 強いということは,決断が速いということ」など,学生の「-」な行動を「+」

の行動に置き換える肯定的フィードバック(リフレームの言葉がけ)が有効です。

教職員一人一人が積極的にそうした係わりを行っていくことが,一般学生へ の障害学生支援のモデルともなっていきます。

次に,実際に障害学生を支援する際に留意していただきたい項目を次ページ に挙げておきます。

コラム3 「授業のユニバーサルデザイン」

より理解しやすい授業の工夫を

「ユニバーサルデザイン」とは、障害者権利条約で,「調整又は特別な 設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用すること のできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。」(第2条)と定 義しているように,障害の有無や,性別,年齢,

にかかわりなく,すべての人を対象に,あらか じめ利用のしやすさを考慮して設計されたもの のことです。近年,小・中・高校で,その考え を授業に当てはめ,「障害のある児童生徒には

“なければならない”ものであり,どの児童生 徒にも“あると便利”な授業の工夫」を授業の

ユニバーサルデザインと呼んでいます。障害のある学生の学修保障を充実 させる上で,小・中・高校の実践も積極的に学びたいものです。

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障害学生支援に当たっての留意事項

○修学支援は,本学における「障がい学生支援委員会」が行ってきたこれま での取組みをもとに行い,支援内容の判断が難しいと思われる場合には,

障害者基本法に定める「合理的配慮」並びに「文部科学省所管事業分野に おける障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」「障がいの ある学生の修学支援に関する検討会 報告(第二次まとめ)」に示す基準,

取扱いを参考としてください。

○障害のある学生に対する修学支援は,原則として本人(及び保護者)から の支援要請に基づいて行います。

○具体的な修学支援内容は,原則として受験時,入学時,進級時等に,本人

(及び保護者)が求める支援内容について,本人と大学(学部,障がい学生 支援委員会等)が,十分な合意形成・共通理解を図ったうえで決定します。

ただし,支援内容の決定時期については,本人の障害の程度,合意形成・

共通理解が得られた時期等を勘案し,柔軟に対応するものとします。

○成績評価については,障害があることを理由に基準を引き下げるなどの

「ダブル・スタンダード」にならないように十分に注意してください。

○なお,修学支援を行うには,本人の名前や,障害の内容について,教員・

事務職員・他の学生に知らせる必要が起こってくる場合があります。

しかし,中には,障害について知られたくないと思う学生もいます。そ こで,必ず事前に,「修学支援関係者に名前や障害について公表される」

ことについて,本人の意向を確認し,公表を望まない場合は,そのことを 踏まえて支援の仕方を工夫してください。

また,修学支援を行う場合,高等学校でとられていた授業での特別措置 が参考になります。必要に応じて,事前に出身高校に問い合わる必要が出 てきたときには,上記と同じように,事前に本人(及び保護者)の了解を 得てから行ってください。

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視覚障害のある学生への主体的な声かけや誘導,聴覚障害のある学生への声が け,体調不良者や移動に困難を抱える学生への積極的な係わりや介助など,手助 けや心配りを誰もが自然に行い,協力する雰囲気があることが大事なのです。そ うした誰もが自然な係わりをもとうとする雰囲気の醸成を,障壁を取り除く(バ リアフリー化の)スタートとしたいと思います。

また,障害学生の中には,自己肯定感が低くなることで,学習意欲が低下し,

無力感を感じ易くなり,大学から足が遠のいたり,引きこもったりといった状態 に陥ることがあります。自己肯定感の低下を防ぐために,「すぐに諦める傾向が 強いということは,決断が速いということ」など,学生の「-」な行動を「+」

の行動に置き換える肯定的フィードバック(リフレームの言葉がけ)が有効です。

教職員一人一人が積極的にそうした係わりを行っていくことが,一般学生へ の障害学生支援のモデルともなっていきます。

次に,実際に障害学生を支援する際に留意していただきたい項目を次ページ に挙げておきます。

コラム3 「授業のユニバーサルデザイン」

より理解しやすい授業の工夫を

「ユニバーサルデザイン」とは、障害者権利条約で,「調整又は特別な 設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用すること のできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。」(第2条)と定 義しているように,障害の有無や,性別,年齢,

にかかわりなく,すべての人を対象に,あらか じめ利用のしやすさを考慮して設計されたもの のことです。近年,小・中・高校で,その考え を授業に当てはめ,「障害のある児童生徒には

“なければならない”ものであり,どの児童生 徒にも“あると便利”な授業の工夫」を授業の

ユニバーサルデザインと呼んでいます。障害のある学生の学修保障を充実 させる上で,小・中・高校の実践も積極的に学びたいものです。

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(2)障害種別の配慮事項

視覚障害,聴覚障害,肢体不自由,内部障害,発達障害のある学生に対する具 体的な修学支援を以降に簡単にまとめました。日々の授業実践の参考にしてく ださい。

① 視覚に障害のある学生の理解と支援

小さな文字を読むことが難しい,近くにある物や近くにいる人,障害物に気が つかない,色の識別が困難など,視力や視野,色覚に制約がある学生がいます。

板書や配布資料の読みやすさ,読み書きに要する時間,見えてなくても理解でき るような,説明の仕方などに配慮が必要です。

一般的な配慮事項

○目の見えない人と弱視の人とでは,必要としていることが違うことを理解 する。

○点訳したプリントを用意する。

○プリントの拡大版を用意する。

○見えやすさ,分かりやすさを考え,濃いペンを使用する。

○誘導するときは,最初に一声かけ,腕を貸し,相手の半歩前を歩く。

○代名詞や指差し表現を避け,「あなたの右」,「あなたから見て2時の方 向」などと,具体的に説明する。

○部屋の明るさに配慮する。

○まぶしすぎないようにカーテンを用意する。

○誰が話しかけているのか分からないので,名前を告げてから話しかける。

○出席カードや書類への代筆を行う。書類の代筆後は読み上げて確認する。

○文字が見えてなくても理解できるような説明の仕方を工夫する。

○色の識別が出来なくても,内容が判別できるような表現を工夫する。

○作業時間や試験の回答時間など時間配分に配慮する。

○文字の大きさやコントラストなど,読みやすさに配慮する。

○段差や障害物,サイン等の視認性に配慮する。

○教室変更や休講などの情報は,事前に電話やEメールなどで伝える。

授業前の配慮

■弱視の学生には,拡大したレジュメ等の講義資料を準備する。必要に応じ

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(20)

14

て,資料をデータの形でEメールに添付する等して,事前に配布すること で、授業参加が容易になる。

■目の見えない学生には,点訳資料を用意する。

授業中の配慮

環境へ の配慮

●大きな教室では,マイクを使用するなど,聞きとりやすさに配 慮する。

●教室の明るさに配慮する。(暗くないか?明る過ぎないか?)

座 席

●障害の状態に応じて,次のような座席を確保する。

・適当な明るさを確保しやすい席 ・音声の聞きとりやすい場所

・板書やスクリーンが見やすい席 ・出入りがしやすい席

・拡大読書器,電気スタンド,個別ディスプレイ等機器を利用し やすい席

指示語

●「ここ」「そこ」等の指示代名詞を避け,具体的に何を指して いるかを理解できるように伝える。

●ポインターを使用される時も充分注意する。

板 書

●板書を見ることのできない学生は音声を頼りにノートを取って いるので,講義はあまり早口にならないように留意する。

●視力や視野に障害のある学生は,筆記に時間を要するので,十 分な時間を配慮する。板書の速度にも注意する。

●声に出しながら板書し,内容を読み上げ,確認する。

●できるだけ大きく太く鮮明に書く(視野が狭い場合は大きすぎ ず,鮮明に,を心掛ける)。

●白または黄色のチョークなど視認性の良いものを使う。

●ホワイトボードを使用する際は,ペン先が太く新しいものを使 う。

●色の判別が出来なくても理解できる表現を使う。

●板書の量が多い場合は,ノートテイク支援を検討する。

●図表はできるだけ詳細にゆっくりと説明する。

●専門用語については,日本語ならどのような漢字を使うか,

外国語ならスペリングを説明する。

●教科書や配布プリントは,学生と相談してフォントサイズに留意 し,例えばA4→B4,B4→A3 など,拡大コピーを用意する。

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(2)障害種別の配慮事項

視覚障害,聴覚障害,肢体不自由,内部障害,発達障害のある学生に対する具 体的な修学支援を以降に簡単にまとめました。日々の授業実践の参考にしてく ださい。

① 視覚に障害のある学生の理解と支援

小さな文字を読むことが難しい,近くにある物や近くにいる人,障害物に気が つかない,色の識別が困難など,視力や視野,色覚に制約がある学生がいます。

板書や配布資料の読みやすさ,読み書きに要する時間,見えてなくても理解でき るような,説明の仕方などに配慮が必要です。

一般的な配慮事項

○目の見えない人と弱視の人とでは,必要としていることが違うことを理解 する。

○点訳したプリントを用意する。

○プリントの拡大版を用意する。

○見えやすさ,分かりやすさを考え,濃いペンを使用する。

○誘導するときは,最初に一声かけ,腕を貸し,相手の半歩前を歩く。

○代名詞や指差し表現を避け,「あなたの右」,「あなたから見て2時の方 向」などと,具体的に説明する。

○部屋の明るさに配慮する。

○まぶしすぎないようにカーテンを用意する。

○誰が話しかけているのか分からないので,名前を告げてから話しかける。

○出席カードや書類への代筆を行う。書類の代筆後は読み上げて確認する。

○文字が見えてなくても理解できるような説明の仕方を工夫する。

○色の識別が出来なくても,内容が判別できるような表現を工夫する。

○作業時間や試験の回答時間など時間配分に配慮する。

○文字の大きさやコントラストなど,読みやすさに配慮する。

○段差や障害物,サイン等の視認性に配慮する。

○教室変更や休講などの情報は,事前に電話やEメールなどで伝える。

授業前の配慮

■弱視の学生には,拡大したレジュメ等の講義資料を準備する。必要に応じ

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(21)

15 配 布

資 料 教科書

●ビデオ,OHP,液晶プロジェクターなどの画面が認識しにくいこ とも考えられる。モニターの明るさを調整したり,パワーポイ ントの画面を印刷したり,映像内容の要約や,重要事項をまと めたものをプリントにして配布する。

●教科書や配布資料の点訳,電子データ化(パソコンで読み上げ を可能にする),または対面音読を行う。

●図表を含むものは,立体コピーまたは,代替文章を用意する。

●スライド番号をつけ,説明の際にスライド番号を読み,説明箇 所が分かるように口頭で説明する。

●授業の理解に不可欠なものは事前に点訳を行う。

●授業の進度を早めに伝え,予習時間の確保に配慮する。

支 援 機 器 の利用

●以下のような補助器具を学生と相談して,授業中に使用するこ とを認める。

・単眼鏡,ルーペ:黒板やプリントの読み書きに利用する。

・拡大読書器:CCDカメラで映したものをモニターに拡大して表示 する。

・電気スタンド:明るさを確保する。

・書見台:明るさの確保や,下を向いて眼圧が上がることを防ぐ 目的で利用する。

・ノートパソコン:画面読み上げや画面拡大ソフトウェアをイン ストールして利用する。講義資料を読む,講義ノートやメモを

取るなどに利用する。

・レコーダー:ノート代わりに講義音声を録音する。

・デジタルビデオカメラ:講義や実験の記録に利用する。

・大型ディスプレイ:コンピュータを使用する授業で,利用する。

・個別ディスプレイ:画面のまぶしさやちらつきがあり,作業が 困難である場合,負担の少ないディスプレイを用意する。また,

スクリーンに映し出された映像を目で確認することが難しい場 合に利用する。さらには,目を近づけて見ることができるよう に,手元にディスプレイを用意する。

・点字電子手帳:点字入力,点字表示が出来る電子手帳。ノート やメモを取る目的で利用する。

●ノートテイカーを必要とする場合もある。

—  —

(22)

16 支 援

機 器 の利用

●パワーポイントを使用する場合は,配付資料と同様,その電子 データを提供する。写真や個人情報などが含まれていてデータ の提供が難しい場合は,スライドの内容を印刷したものを渡す ようにする。

●ビデオは,音声だけで理解できるものは問題ないが,中には字 幕の読み上げや画面の説明が必要な場合もある。周りの学生に 余裕があればその役割を担ってもらうことも可能であるが,余 裕がない場合は,学習補助者が同席してサポートする方法を考 える。また,映像のナレーションを用意する,授業後に動画教 材を貸し出すことも方法の一つである。

●LL教室の機器は,事前に操作の説明をしたり,スイッチに点字 シールを貼ったりなどの工夫を行う。

授業中 のレポー

ト提出

●授業中の提出物,授業時間内に意見や感想,出席カード等を提 出させる際の方法としては,

①パソコンで書き,授業の後に,Eメール等で提出させる。

②簡単なものであれば他の受講生にその場で代筆してもらう。

などがある。

試験の 特別措 置につ

いて

<基本的考え方> できるだけ一般の学生と同じ試験を課すこと を原則に,以下を参照の上,具体的な対応について検討する。

<時間延長・別室受験> 入試や資格試験などの公的な試験では,

1.3倍の時間延長と別室受験が認められている。問題文の分量 が多く,解答形式が複雑な場合は,時間延長・別室受験の配慮 が必要となる。ただし,問題量がさほど多くない場合は時間延 長せず,一般の学生と同じ教室での受験が可能である。

<その他の実施方法> 問題の内容や分量,本人の希望等によっ ては,以下のような方法もある。

●短い問題文のときは,試験時間の冒頭に監督者が読み上げ,本 人がそれを点字にする。その後解答を始める。

●点字の解答を,試験終了後に本人に読み上げさせる。

●パソコン(画面音声化ソフト等がインストールされたもの)を 用いて解答させ,その電子ファイルを試験終了時に受け取る。

●口頭試問やレポートに振り替える。ただし,多くの科目でレポ ートへの振り替を行うと,障害学生にだけ試験期間の後に多く

15 配 布

資 料 教科書

●ビデオ,OHP,液晶プロジェクターなどの画面が認識しにくいこ とも考えられる。モニターの明るさを調整したり,パワーポイ ントの画面を印刷したり,映像内容の要約や,重要事項をまと めたものをプリントにして配布する。

●教科書や配布資料の点訳,電子データ化(パソコンで読み上げ を可能にする),または対面音読を行う。

●図表を含むものは,立体コピーまたは,代替文章を用意する。

●スライド番号をつけ,説明の際にスライド番号を読み,説明箇 所が分かるように口頭で説明する。

●授業の理解に不可欠なものは事前に点訳を行う。

●授業の進度を早めに伝え,予習時間の確保に配慮する。

支 援 機 器 の利用

●以下のような補助器具を学生と相談して,授業中に使用するこ とを認める。

・単眼鏡,ルーペ:黒板やプリントの読み書きに利用する。

・拡大読書器:CCDカメラで映したものをモニターに拡大して表示 する。

・電気スタンド:明るさを確保する。

・書見台:明るさの確保や,下を向いて眼圧が上がることを防ぐ 目的で利用する。

・ノートパソコン:画面読み上げや画面拡大ソフトウェアをイン ストールして利用する。講義資料を読む,講義ノートやメモを

取るなどに利用する。

・レコーダー:ノート代わりに講義音声を録音する。

・デジタルビデオカメラ:講義や実験の記録に利用する。

・大型ディスプレイ:コンピュータを使用する授業で,利用する。

・個別ディスプレイ:画面のまぶしさやちらつきがあり,作業が 困難である場合,負担の少ないディスプレイを用意する。また,

スクリーンに映し出された映像を目で確認することが難しい場 合に利用する。さらには,目を近づけて見ることができるよう に,手元にディスプレイを用意する。

・点字電子手帳:点字入力,点字表示が出来る電子手帳。ノート やメモを取る目的で利用する。

●ノートテイカーを必要とする場合もある。

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(23)

17

の課題が残ることになる。可能な限り,一般の学生に準じた試 験を実施することが望ましい。

出典:内閣府 「障害者に関するマークについて」より 一部改変 http://www8.cao.go.jp/shougai/mark/mark.html

コラム4 「障害者に関するマーク その1」

障害者のための 国際シンボルマーク

障害のある方が利 用しやすい建築物や 公共輸送機関である ことを示す,世界共通 のマークで,車い すを利用する方だけでなく,障害の ある全ての方のためのマークです。

身体障害者標識(身体障害者マーク)

肢体不自由であるこ とを理由に運転免許に 条件を付された方が車 に表示するマークで,

やむを得ない場合を除 き,このマークをつけ た車への幅寄せや割割り込みは道路 交通法違反となります。

盲人のための国際シンボルマーク 1984年に世界盲人

連合が制定しれた世界 共通のマークです。

視覚障害者の安全や バリアフリーに考慮し た建物,設備,機器などに付けられ ています。

聴覚障害者標識

(聴覚障害者マーク)

聴覚障害であること を理由に免許に条件を 付されている方が運転 する車に表示するマー クで,マークの表示に ついては,義務となっています。

耳マーク

聴覚に障害がある ことを示し,コミュ ニケーション方法に 配慮を求める場合な どに使用されている マークです。

ほじょ犬マーク

身体障害者補助犬 (盲導犬,介助犬,聴

覚 聴 導 犬)の 啓 発 の ためのマークです。

「身体障害者補助犬 法」では公共の施設や交通機関はも ちろんデパートなどの民間施設でも,身体障害のある人が身体障害者補助 犬を同伴するのを受け入れる義務があります。補助犬を同伴することのみ をもってサービスの提供を拒むことは障害者差別に当たります。

—  —

(24)

18

② 聴覚に障害のある学生の理解と支援

小さな音や高い音が聞き取れない,音としては聞こえていても何を言ってい るのか聞き分けられないなど,「聞こえ」に制約がある学生がいます。音声情報 を補う視覚情報の提供や,聞き取りやすい環境などの配慮が必要です。「聞こえ」

の程度によっては,ノートテイク(ノートの代筆や筆記通訳),手話通訳が必要 になる場合もあります。

一般的な配慮事項

○ほとんど聞こえない人と難聴の人とでは必要としていることが違うことを 理解する。

○「ゆっくり話してください」「筆談でお願いします」「手話通訳者と一緒 に来ました」など,聴覚障害者が希望を申し出た場合には,希望に添った 方法で対応する。

〇聞き取りやすい話し方を心がけ,聞こえ良さに配慮する。

〇重要な事項は文字に書いて伝える。

○レジュメを配る,字幕を用意する,筆記通訳を行う等,聞こえを補う視覚 情報を用意する。

○口の動きや表情,ジェスチャーといった視覚情報を頼りに話の内容を理解 する学生がいる。逆光に気を付け,口元や表情がよく見えるように立ち位 置に配慮する。

○左右の耳で聞こえが著しく異なる学生がいる。座席位置や話しかける方向 に注意する。

〇障害学生にとって手話や口話はこれまでの生活環境の中で得た言語であ る。習得している言語を尊重してのコミュニケーションを心掛ける。

〇筆談の時には,できるだけ短い文で表現したり,図式化したりして示すと 分かりやすい。

〇手話は分からなくても,他の手段を用いて積極的に語りかける。

授業前の配慮

■講義レジュメやパワーポイント等の視覚教材を印刷したものを,事前に障 害学生とノートテイカーに配付することで,事前に授業のアウトラインが 分かるように配慮する。

17

の課題が残ることになる。可能な限り,一般の学生に準じた試 験を実施することが望ましい。

出典:内閣府 「障害者に関するマークについて」より 一部改変 http://www8.cao.go.jp/shougai/mark/mark.html

コラム4 「障害者に関するマーク その1」

障害者のための 国際シンボルマーク

障害のある方が利 用しやすい建築物や 公共輸送機関である ことを示す,世界共通 のマークで,車い すを利用する方だけでなく,障害の ある全ての方のためのマークです。

身体障害者標識(身体障害者マーク)

肢体不自由であるこ とを理由に運転免許に 条件を付された方が車 に表示するマークで,

やむを得ない場合を除 き,このマークをつけ た車への幅寄せや割割り込みは道路 交通法違反となります。

盲人のための国際シンボルマーク 1984年に世界盲人

連合が制定しれた世界 共通のマークです。

視覚障害者の安全や バリアフリーに考慮し た建物,設備,機器などに付けられ ています。

聴覚障害者標識

(聴覚障害者マーク)

聴覚障害であること を理由に免許に条件を 付されている方が運転 する車に表示するマー クで,マークの表示に ついては,義務となっています。

耳マーク

聴覚に障害がある ことを示し,コミュ ニケーション方法に 配慮を求める場合な どに使用されている マークです。

ほじょ犬マーク

身体障害者補助犬 (盲導犬,介助犬,聴

覚 聴 導 犬)の 啓 発 の ためのマークです。

「身体障害者補助犬 法」では公共の施設や交通機関はも ちろんデパートなどの民間施設でも,身体障害のある人が身体障害者補助 犬を同伴するのを受け入れる義務があります。補助犬を同伴することのみ をもってサービスの提供を拒むことは障害者差別に当たります。

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参照

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