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第5章 日本赤十字九州国際看護大学 学生の海外研修

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第5章

日本赤十字九州国際看護大学 学生の海外研修

「国際」を前提に開設した看護大学の事例

喜多 悦子(日本赤十字九州国際看護大学)

1. はじめに

本稿では、「国際」を前提に開学申請された看護大学の9年にわたる「国際」活動の経過を概観 するが、最初に、あえて「国際」と「 」付けした理由を述べる。

著者が、長年関与してきた保健医療分野に限っても、「国際」保健は、かつての international

healthからglobal health〔1〕に変容した。国際保健あるいは国際保健医療または国際看護とし

て、開発途上国に対して行われている関与そのものは劇的に変わったわけではないが、これらの 言葉が意味する内容、受け止め方は時代、状況と共に変化していることは否めない。「国際」とい う言葉が何を意味するのかは、それを発声する、聞く、また実践する、そしてその受け手によっ て異なっているであろう。この言葉は魅力的であると同時に曖昧であり、十分な合意の下に行為 が企画され、実践され、そしてその成果が評価されているとは言い難い。ここでぇあ、日本赤十 字九州国際看護大学が行ってきた海外体験研修の実際をのべるが、それが本来目指すべきもので あるかどうかについては言及しない。

さらにここで述べる概略は、本学開設前、すなわち申請への関与はなかったが、開学後の「国 際」のほぼすべてに関与してきた「国際保健・看護」担当教員の個人見解であり、同時に経過後 半は学長としてわが国唯一(恐らく、世界的にも)「国際」を関する看護大学の運営にあってきた ものの管理的見解でもあるが、それらは明確に分離出来ないこともお断りして置きたい。

2. 目的と理念

日本赤十字九州国際看護大学は、学校法人日本赤十字学園〔2〕の第4番目の看護大学として、2001(平

成 13)年に、福岡県宗像市に開設された。本学のヘッドクォーター(HQ)学園は、1890(明治 23)

年来、わが国で最も長い看護師養成の歴史をもつ日本赤十字社〔3〕が、医学・医療の高度化にこたえ 得る、より質の高い看護師の養成のために、1954(昭和29)年に設立され、現在、本学の他、東京(1890 養成所、1954短大、1986大学)、北海道(1999開設)、広島(2000開設)、豊田(愛知、1989短大、

2004 大学)、秋田(1996短大、2009 大学)と6看護大学を擁している。その中で唯一「国際」を関 する本学の設置認可申請書には、看護をめぐる環境変化への対応に加えて、特に「国際」が大きく取 り上げられているが、単に赤十字が長年担ってきた国際救援活動のためだけではなく、「国際性」を備 えた人材養成を第一の特性として謳っている〔4〕。

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1 日本赤十字九州国際看護大学の教育理念

赤十字の根本原則である人道に基づき –個人の尊厳を尊重する豊かな人間性を培い –広い知識と深い専門の学芸を授け

–国内外の幅広い領域で

–看護を主体的かつ創造的に実践し 人々の健康および福祉の向上に貢献する

基礎的能力を育むこと 本学の教育理念は表1に示したが、あ

えて申せば、多くの看護大学のように、

看護専門性を大きく謳ってはいない。す なわち、本学は看護の専門性と同様、国 際性の修得をも目指すユニークな大学と しての歩みを運命づけられている。大学 の理念や教育目標には、当初から「国際」

が言及されているほか、開学 2年目以降 の大学案内には、「ひとりを看る目、その 目を世界に」のスローガンが加えられて いる。

本プログラムの運営にあたっては、国

際開発研究科の研究科長、副研究科長(2名)、専攻長(3名)、教務学生委員長から構成される研 究科補佐会議が責任主体となっている。ただし、実際の運営では、副研究科長が実施責任者を務 めるとともに、本プログラムの専任スタッフとして特任助教を 1名雇用し、プログラムの日常業 務を行っている。

3. 教育目標とカリキュラム〔5〕

本学の学生は、全員、看護師になると いう明白な動機をもっている。教育目標 は、赤十字の理念である人道に基づき、

優れた看護専門職を育成することにあ るが、同時に、国や文化の枠を超えて、

何処でも、何時でも、如何なる状況、ど のような人々に対しても貢献出来る能 力、すなわち国際性の涵養を目指してい る。

表2に、2008(平成20)年来の新カ リキュラムにおける国際関連科目を示 した。選択課目も多いが、それぞれ相当数の学生が履修している。開学当初のカリキュラムでも 国際関連科目は比較的多かったが、一般的に、看護大学教育カリキュラムでは、「国際」教育を区 別する傾向があり、やや、混乱していたことは否めない。

また、実践の海外体験研修が3年次におかれていたこと、開学時にその内容が確定されていな かったこともあって、初期、特に最初の3年間の国際活動は教員に偏在しており、学生が主体で はなかったといえる。

1 カリキュラムの構成概念

グローバル社会で 活躍できる看護職 の育成

表1 日本赤十字九州国際看護大学の教育理念

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さらに、20年度のカリキュラム改正 において、表2に示した主要国際関連 科目に加え、いわゆる学士力向上にも 関係するライティングリテラシー、プ レゼンテーションスキルなどをベラル アーツ系を強化した。

新カリキュラムによる教育はまだ2 年を終えたところであり、これがどの ような成果をもたらすかは明確ではな いが、2010度の海外研修に期待してい いところである。

ここで、再度、特記しておきたいこ とは、「看護」という専門性と「国際」の関係である。

本学においても、当初、それぞれを独立した別個の科目とみなし、大多数の看護系教員の中に、

少数の一般教養と「国際」担当者が散在し、看護系教員は「国際」に与り知らず、一般教養と「国 際」関係者は、国際看護担当者を除き、看護に関与しなくてもよいかのような考えもあった。つ まり、「国際」は、ある特定者の担当する狭い専門とみなされていた。現在は、字義的にも実践的 にも混然一体であるべきものとして、大学の行う活動のすべてに何らかの国際性を求め、また、

「国際」やリベラルアーツ系担当者も看護に無関係ではなく、大学として、常に両者が連帯する ことを求めている。

新たな教員公募の際にも、国際経験や国際活動への関心を問い、また、新採用者には、積極的 に国際経験の場を与えるなど、学生の国際化とともに、教職員の国際化も進めている。

以下に述べるすべての国際活動には、常に看護系教員の関与があり、また、大学の看護学教育 には、「国際」系リベラルアーツ系の積極的関与が奨励されている。すなわち、本学における国際 教育は、看護学士養成の一環との位置付けが、徐々にではあるが根付いてきていると云える。

4. 海外体験研修:国際看護学II〔7〕

次に、本学の主要な海外体験学習である国際看護IIの実際について述べる。

本科目の授業目的は、「海外研修を通じて、グローバリゼーションに伴い、多様化複雑化する世界の 健康問題を学習し、保健医療分野、特に看護の役割・課題を考察し、報告できる」である。

既に述べたように、海外体験を主眼とする国際看護IIは、選択ながら、本学の、いわば目玉科目と 位置付けられるべきものであった。

国際保健・看護Ⅰ:3年前期、必修、1単位

国際看護II:3年前期(夏季休暇期間)、選択、2単位

国際開発論:3年前期、必修、1単位

PCM初級編:3年前期、選択、1単位

ジェンダー論:3年前期、選択、1単位

医療文化人類学:2年後期、選択、1単位

ボランティア論:2年前期、選択、1単位

赤十字活動:1年前期、選択、1単位

赤十字概論:1年前期、必修、2単位

語学 英語必修ほか、英・仏・スペイン・中国・韓国語選択

表表2 主要国際関連科目2 主要国際関連科目

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48 しかしながら、一期生が

3年生になる2003年まで、

具体的な検討はなされず、

たまたま発生した SARS

( Severe Acute

Respiratory syndrome, 重症急性呼吸器症候群)と もあいまって、当初予定さ れた 2003 年夏季の正規選 択科目としての第1回は中 止の止む無きに至った。し かし、学生の強い希望から、

7 カ月後の2004年3月、

自主研修として最初の海 外体験を実施し、さらに同

年夏期休暇には、第2回を実施、以後、例年の概要は表3、4の通りである。

原則、10日前後、3年次の選択科目ながら、評価対象とならない4年次学生の自主参加や研究目的 の教員の同行を促している。これは、初回、3、2、1 年生の混成チームであったが、その評価時、目 的を共有するが異なる集団に属する人々の参加が、研修効果を高めるとの結論を得た〔6〕からである。

この考えを拡散させ、その 後、本学卒業生(赤十字病院 勤務)、大学院開設後には院生 の参加、また赤十字施設勤務 看護職にも道を開らいている。

2009年には、姉妹大学であ る日本赤十字北海道看護大と 同豊田看護大学の学生と教員

(北海道)および HQ 事務局 長の参加を得るなど、なお試 行ながら、規模拡大を図って いる。 これまでに本海外研 修に参加した本学学生の総数 は136名である。

以下に、運営の実際、財務を含む支援体制を述べる。

訪問先 基本形 備考

赤十字関係 訪問国赤十字社(赤新月社)または国内支部、国際赤十 字・赤新月社連盟支部、赤十字ボランティア施設。

イ ス ラ ム 圏 で は 赤新月社。

ODA機関 日本大使館(領事館)。JICA事務所と/またはプロジェクト 現場。

国際機関 WHOUNICEFが原則。その他UNFPAWFP、 IOM、

UNFDACADB

NGO/NPO 日本、訪問国または外国NGO/NPO 看護教育施設 看護大学、看護学校。

医療施設 可能な限り、一次、二次、三次医療施設

その他 訪問国政府機関、マーケット、地域村落と小学校など。

4 国際看護II海外体験研修 概要2    基本訪問先

年度 訪問国

参加者数 学生/

日数

備考(引率は原則2教員1職員)。その他研究活動、

業務、自主参加。また卒業生、赤十字看護師、他赤 十字大学などの参加。

2003 ベトナム 16/19 12日 SARS発生で2004.03実施。自主参加とし3、2、1年生 が参加。

2004 ミャンマー 19/22 11日 4年生2名。

2005 ラオス・タイ 26/32 11日 4年生5名。研究参加教員 3名。

2006 フィリピン 22/26 10日 研究参加教員 3名。

2007 イ ン ド ネ シ

13/22 10日 院生 1、赤十字病院看護師 3、業務参加教員 2名。

2008 カンボジア 35/45 11日 院生 2、卒業生(赤十字病院勤務) 2、研究参加教 員 3名。

2009 インド 17/25 11日 他赤十字大学生 5、教員 1名。学園 1、卒業生 1、

自主2名。

3 国際看護 II 海外体験研修

概要 1     訪問国と参加者

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◆ オリエンテーションと参加者決定まで(4 月)

新学期開始時、他選択科目同様、国際看護II科目担当教員が、表5に示すような目標を下に、オリ エンテーションを行い、受講生を募る。2、3の訪問国案、事前学習のための学生のグループ形成の指 示などを行う。2週後の第2回オリエンテーシ ョンで、ほぼ訪問国を定めるが、その間、担当 教職員は、当該国の妥当性、治安、感染症発症 の状態を調査し、例年の旅程作成を依頼してい る旅行エイジェントと経費その他の概算を作 成し、さらに、関係機関への連絡チャネルの有 無、可能性を一覧する。

最終参者は、海外研修参加の動機と目的をA41 枚にまとめ提出することによって決定する。初 期には、英文を求めたが、現在は日本語のみで ある。参加希望文書の提出段階で参加を拒否さ れた学生はいない。

この時期、当該年の責任引率者を決定すると同時に、他の引率教員職員も任命される他、学内の研究 的または自主的参加者も募る。

◆ 学生の事前学習(4~8 月)

例年、学生は数名からなるグループを複数形成し、訪問国概要、わが国との関係と特に開発協力の 実態、国際機関、看護教育を含む保健医療情勢などを学習し、発表し情報を共有する。年度によって 差はあるが、通常10~12回程度集合している。

学習の内容がやや主題をそれることもあるが、わが国で入手する情報と訪問先での現実にギャップ があることの理解も必要であり、また、あくまで学生の自主性にまかせるとして強い指導は行わない。

ただし、インターネット情報などから、民族や宗教などに関する著しい偏見や出典が明確でない独特 の主張を取り入れ過ぎていると思われる場合にはコメントすることもある。

学生にとって重要なことは、現地各受け入れ先での挨拶準備がある。訪問先が日本の機関、組織で あっても、原則は英語で、団体としての自己紹介、受け入れへの謝辞、訪問目的を説明する。時に、

現地語挨拶となることもあり、また、地域では英語が通じないこともあるが、過去全ての訪問先で実 践してきた。

なお、この期間は、毎年、多少の増減があり、また、卒業生を含む赤十字病院勤務者ら外部からの 問い合わせがある時期である。学生の増減は、出来る限り、柔軟に対応するが、実施期間が、追試験 時期と重なる危険性を考慮した指導は行っている。

最終的に決定した参加者は、本研修に参加するための規約を了承したことを示す本人の署名と海外滞 在中の連絡先でもある家族からの了承を示す所定の書類の提出を求めている。

この間、パスポートや必要な場合のビザの準備、予防接種なども行う。実施 1 カ月前には事前準備 確認し、1週前には必要事項が全て整っているかの最終確認を行う。これらは、旅行エイジェントにゆ だねるが、大学はチェックリストを作成して遺漏なきを期する。

過去留意してきたことは、フィールドノートの作成、自発的で節度のある行動、論理的分析的な思考 表海外研修の目標

1. 保健医療分野に関連する開発機関の役割と国際 協力の意義を理解する

2. 開発途上国における保健医療分野の現状とその 課題を理解する

3. 開発途上国における母子保健の現状と課題を理 解する

4. 開発途上国における感染症対策を理解する 5. 開発途上国における看護の役割と機能について

考察できる

表5 海外研修の目標

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であり、海外=語学というレベルの注意はあえてしていない。

◆ 教職員による準備(4 月~実施前)

この間、教職員は具体的な計画作成に当たる。

本学が属する赤十字関係組織は、大学HQである日本赤十字学園本部経由、日本赤十字社 本社国際部を経て訪問国の赤十字社または赤新月社との連絡ルートを確保する。

日本国際協力機構(JICA)は、同機構九州センターまたは本部当該部署を経由し、同機構の 手順に従い申請書を作成し、現地との連絡に当たる。

国際機関は、現在まで、学長喜多の個人的ルートが入り口になっている。今後、制度化は 必至ではあるが、国際機関そのものも、かなり個人的チャネル優位であり、例えば、わが国 の行政機関や企業のような確立した受け入れ窓口がないことも多く、柔軟に対応するしかな いと考えている。

国際保健では、いわゆる一次保健サービスであるプライマリーヘルスケア(PHC)を担う 現地施設から第二次、第三次保健医療機関、さらに看護教育施設を網羅して見学することが 必要であるが、これらおよび現地NGOは、JICAまたは国際機関の窓口カウンターパートか ら紹介を受けることも多い。時には、独自にインターネットなどから適切な訪問先を発掘し 折衝する場合もある。

本研修に関わる経費は、表6 のようで ある。原則、交通費、食事を含む宿泊費 は学生個人負担である。表に記載されて いないものに、村落部の人々、特に小学 校などを訪問する際、特に子どもたちと の交流時のおもちゃなどの土産がある。

これに関しては、実際、現地に入るまで 可能性が判らないこともあるので、原則、

1学生500円まで、特殊なもの、華美な ものを避けるよう留意している。

健康、治安に関する準備は、引率者は 常に看護職であること、さらにこれ3までは、途上国経験の豊富な医師(学長)が同行して いることもあって、ほとんど困難を覚えていない。

また、当初から携行医薬品資材の準備は、国際機関などの短期ミッションの例を参考に、

訪問国の衛生状態を加味して準備した。初期には、やや、過剰準備したきらいもあったが、

最近では、毎年の使用量を参考に、補給量を勘案している。また、研修後の余剰品の有効期 限切れは、学内使用にまわし、無駄のないように配慮している。

幸運なことに、後に述べるその他の海外研修を含め、保険の適応になった事例はない。

◆ 海外研修の実施(8 月)

これまでの実施は、一般の夏季行楽シーズンのピークが終わる8月後半である。

研修の全行程からすれば、現地出発は、全過程の70%程度に位置し、基本的には、異常事態 表海外研修にかかわる経費

• 学生負担: 渡航・宿泊費など 約20万円/経費は全食事を含むが、飲み物代を含まないため、

$1/1食事、過剰でない私的経費持参は自由。

• 大学負担: 年間約110130万円

外部者を除く全員の空港税・保険・ビザ・燃油サーチャージ 引率教職員経費(交通費・宿泊費)

NGOなどの見学にかかる経費 講義謝礼、お土産、携行医薬品など 報告書印刷

その他

(7)

51 がない限り、計画通りに行動すればよいことになる。

例年、日本を離れる福岡空港で結団式を行い、その場で、再度、引率責任者の指示に従う ことを確認する。また、学生の宿泊は二人部屋を原則とするので、部屋割りを適宜行う。か つて、研修途中での組み換えを行った年があったが、現在では固定している。組み合わせな どでの不満は生じていないが、宿泊施設の設備の不備による苦情は、毎年、複数あり、その 際は、責任者の判断で部屋替えを折衝する。

健康問題にかんしては、常用薬がある場合は事前に注意を行うが、重要な治療薬を常用中 の参加者は経験していない。1、2日の原因が明確な発熱、消化不良による下痢、重篤でない 上気道感染などは散発するが、全て行程中に解消し、滞在を延長したり変更した事例はない。

個人的に半日程度の休養を要したものもいるが、見学や訪問の全面的中止や変更も生じてい ない。

短期間に、相当数の訪問先を詰めていることに関しては、第1、2 回の両方に参加した学 生ら、および初期数回の参加者との検討の結果、例えば、一か所、1施設に数日滞在するよ りは、詰込み型が良いとの結論を得ている。

◆ 海外研修の評価(9 月)

海外研修は、帰国直後のPCM(Project Cyclic Management)研修(FASID)をもって終 わるが、ここではこれに触れない。

また、最終的な評価は、次に述べる 報告書作成を待たねばならないが、

3 年次前期科目としての評価は、

PCM後、引率教員(複数)が、事 前学習時から、現地研修中の質問、

意見やコメントなどの発声、見学時 その他の際の態度を含め、表7のよ うな項目に従って国際的かつ看護 学的視点から評価している。

これまでの参加学生で、欠点をと ったものはいない。

◆ 報告書作成(9~翌年 1 月)〔8〕

帰国後、学生が報告書を作成する。

学生によっては、現地での見学より、報告書作成の経過で成長がみられるものも少なくない。

数カ月にわたる経験の文書化の間に、見たもの=知識ではないことを理解し、インターネット情報 と実際の違いを振り返るという、ある種の省察の過程といえる。問題は、3 年次後半からは病院実習 が始まり、研修参加学生は複数実習施設に配置されるため、合議の時間が制限されることである。当 初、12月までの発行を目指したが、物理的時間的制約から、翌年2月頃の発行となっている。ここま での経過で、一連の海外研修が終わる。

評 価

1. 現地訪問先の見学、解説・講義、また現地の施設やJICA・国 連などの開発協力プロジェクト現場の見学、地域との交流から 所定の目標を達成しているか

2. 現地の日常生活を見学し人々と交流することを通じ、事前 の情報と異なる実態があることを認識し、さらに自分で調べ る、見る、聞く、考えることの重要さに気づくか

3. 報告書作成(への姿勢)や学内発表による追体験から、実 体験の意義、省察の意味が判るか

4. 被支援国の実態、現地の生活環境を体験し、開発協力と国 際連帯、国境を越えた協働の必要性を理解できるか 5. 個々の人間を看る「看護学」学習と赤十字の「人道」の意義

が考察できるか

表7 評 価

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52 5. その他の海外体験研修

◆ 教員外部研究費または事業費による海外体験〔9〕

これまでに、教員が獲得した研究費や事業費による学生の海外体験の機会が 件ある。

文部科学省によるものとしては、災害看護教育に関するものとして韓国、タイ、インドネシア、

ユネスコアジア文化センター(AACC)事業資金では、スリランカ、タイであるが、これらには、

海外訪問と海外学生招請の双方向交流もあった。このような海外研修体験者は39名である。

◆ 福岡県青年の翼(グローバル・ウイング)〔10〕参加による海外体験

福岡県は、1998年来、県内企業や大学、NPO団体等で社会貢献活動を実践又は研究している 18~35歳の青年、約40名を1週間程度、海外派遣し、企業やNPO団体等の先進的社会貢献活動 を学ぶことにより、国際的視野を備え企業・団体等の中核となって地域社会に貢献する青年 リーダーを育成するための「福岡県青年の翼(グローバル・ウイング)」事業を実施している。

毎年、訪問先は異なるが、本学からは、過去数年にわたり、8名が参加している。

◆ オーストラリアモナ―シュ大学による研修〔11〕

開学3年目、学生の要望もあり、オーストラリア大使館の紹介を得たメルボルン郊外のモナ―シュ 大学の短期留学プログラムを活用した。以後4年間に78名が参加したが、2007年以降の参加者はい ない。

6. 国内の国際体験活動

◆ 国際シンポジウム

開学年に始まり、既に9回を終えた本学国際シンポジウムは「国際を標榜する看護大学として、何 が特徴なのか?」との一期生の素朴な質問から始まった。当初、国際保健担当教員(現学長)の研究 範囲内活動として始まった小規模シンポジウムであった。しかし、第6回(2006)から、企画運営を 学生が担当し、教員研究費や少額の大学経費を活用して、海外から看護教育関係者、看護学生、国連 関係者を招いて開催される。

例えば、2009年度は、リベラルアーツ担当教員の協力により、福岡県内に在住する留学生9カ 国(台湾を含む)11名と、文部科学省国際イニシアティブ事業のカウンターパートベトナムナム ディン看護大学学長、教員1および同大学学生2名が参加した。簡単なランチパーティなどを催 し、外国人との交流の機会を促進している。

◆ ランチョンミーティング

これも、当初、人種国籍を問わず、国際保健担当教員(現学長)を訪問する国際関係者に、昼食時 間を利用して短時間の発表を依頼したことに端を発する。参加者は昼食を取りながら、30~40分の発 表、10~15分の質疑が基本である。不定期ながら年間十数回、教員もしくは学生が自発的に企画して いる。教員の留学経験、学会などで訪問した外国や施設の紹介、次に述べる JICA 研修生による母国 紹介などもある。

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◆ JICA 研修受け入れと学生

本学は、前職国立国際医療センターでの長 JICA 関与をもつ国際担当教員(現学長)を通じて、開 学年から、JICA事業への参画を求められてきた。当初、教員の派遣のみであったが、研修生受け入れ を積極的に進めた結果、現在、年間平均3受け入れ研修事業を担当している。

通常、研修開始時のウエルカムパーティへの学生の参加、研修者によるランチョンミーティング、そ の他、オープンキャンパスや大学祭、卒業式などの行事時に滞在する研修生との交流など、多様な国 際経験の場となっている。

◆ 赤十字人道研修 H.E.L.P.〔12〕

本学は、世界的人道機関赤十字組織につながっており、開学時から、その世界的人道研修 H.E.L.P.

(Health Emergency in Large Population)をアジアで初めて継続実施することを意図してきた。毎 年、世界各地で 10~12 コースが開催されるが、看護大学として主宰しているところはない。本学は 2003年来、世界の人道援助研究および実践の第一人者をインストラクターとして、隔年実施している。

本研修は、実際に人道援助を経験した中級者を対象とする、3週間の英語による高度な研修であり、学 部学生が理解することは困難ではあるが、本学学生の聴講はゆるされており、学年によっては、延べ 数十人が可能な講義を聴講したこともある。

◆ 赤十字事業

人道救援活動を旨とする日本赤十字社の要請によって、赤十字活動に参画した教員は複数存在する が、学生を巻き込む事業はない。

ただし、2004年12月に発生したインドネシアバンダアチェ津波災害では、本学が日赤の復興支援 の一環として計画したアチェ市 4 看護学校への災害看護教育導入支援を担当し、この事業を利用した 海外研修(2007)および同事業関係者の本学訪問時の学生交流を行った。

7. 海外体験研修のための大学の体制

以上、海外体験研修の他、多様な学内国際体験の例を述べたが、ここでは大学の支援体制を述 べる。

◆ 人的体制

本学は、看護学部看護学科単科の小規模大学である。2010年1月1日現在の教員は、常勤38名、

特任教員11名、職員は常勤17名(内図書館司書2名)、非常勤職員5名である。既に述べたように、

本学の国際活動は、すべての教職員の関与を求めているが、国際担当教員をあえて数えれば、教授 2

(内学長<医師>1を含む)、准教授1(看護師)、助教1(看護師)、事務職員では係長2であり、決し て十分な陣容とはいえない。また、常勤教員は、本学就職後、できるだけ早く途上国訪問の経験を与 えてはいるが、同時に、赤十字概論、国際保健・看護などとともに、リベラルアーツ系基礎学科目の受 講、日本赤十字社の人材訓練への参加を奨励している。

すべて日本赤十字社福岡県支部からの数年毎のローテーションで配置される職員の内、毎年 1 名は 海外研修のロジ担当としての参加他、教員同様、赤十字の人材育成や国際活動への積極的参加を奨励 している。

(10)

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以上、本学は特に国際のための員数が与えられている訳ではなく、したがって、各国際活動時に は、各担当部署から必要な人員を集めたワーキンググループを形成して対応しているが、国際活 動の拡大は、教職員のさらなる過重労働の原因となりかねない。

財務体制

赤十字学園に属する 6 看護大学は、いずれの独立採算制であり、国際活動を行うための財源が与え られているわけではない。本学の予算規模は 9 億円前後、その 90% 近くは学納金である。外部資金 として研究費や事業費獲得を奨励しても、それを国際活動など、他の目的に転用することは不可能で あり、3 に述べた国際看護II海外研修が、きわめて少額予算しか計上されない理由は、選択科目であ り、裨益するところは特定少数学生に限られるとみなされるからである。

なお、本学同窓会(本学開学に伴い、2004<平成14>年閉校の福岡赤十字看護専門学校同窓生と本学 同窓生からなる)から30万円の支援を受けている。

◆ その他の国際支援体制

小規模単科大学である本学が、比較的、活発な国際活動を繰り広げられてきた理由には、母体 が赤十字であること、福岡県、福岡市、北九州市、また地元宗像市など、アジアとの交流が活発 であること、大学名の「国際」や教員の活動経歴を知って入学する学生が多いこと、さらに開学 時から、積極的に「国際」を売り出していることなどがある。

8. 大学としての評価

それぞれの国際活動は、その都度、終了時に一定の評価はなされているが、ここでは、大学全体と しての評価についてのべる。

開学後 3 年目の中間評価においても、また、完成年次第三者評価においても、本学の国際活動は優 れているとの評価をうけている〔14、15〕。

しかし、大学が国際活動を進める真の目的は、21世紀の世界にあって、わが国の文化や歴史、伝統 を見失うことなく、しかし、積極的に国際社会に貢献出来る看護人材を育成することに尽きる。開学 以来の9年の間に、本学から海外を体験した学生数は266名(国際看護II 143、各種交流事業 40 名、青年の翼 8名、モナーシュ大学 75名)に上り、その他把握している自己体験数名がいる。同時 に、本学に受け入れた外国人学生は韓国、タイ、インドネシア、ベトナムその他数十名を数える。ま た、赤十字活動、JICA研修などで、ほぼ、毎月、キャンパスに外国人を迎えている。

9年目の後半に把握している青年海外協力隊参加者1、予定者1、留学のための渡航者1、予定者3、

赤十字救援派遣の準備状態にあるもの 2 である。これが多いか少ないかではなく、これらの人材が、

どのような国際活動を行うかは、まだ、見えていない時期である。

9. 課題

指導者の資質

「国際」担当教員は、本来、教員として持つべき資質に加えて、国際実践の経験とその学問性が必 要である。これまで、わが国の「国際」、特に保健医療分野では、途上国経験者即国際指導者とみなさ れたり、最近では、現場経験の有無にかかわらず、欧米大学のマスター、PhD修得が重要とみなされ

(11)

55 たり、大きくふれている。

「国際」は優れて実践的であり、現場の経験は必須であるが、同時に、学問性を備えた指導層の養 成、獲得が必要と考えている。

経費

本学では、海外体験のための経費の学生負担は、ほぼ、定着している。しかし、今後、国際 志向が強く、かつ成績優秀な学生への特待生制度としての参加枠を作りたいと考える。

また、4年間に、休学して「国際」を経験できる体制も整備したい。いずれも、何らかの予算措置が 必要である。

長期展望

開学10年目を向かえ、徐々に国際活動に足場を持つ卒業生が出始めている。数年後、これら卒業生 が、大学院生として高度な研修に戻り、更に発展できる体制を整備したい。

10. さいごに

日本赤十字九州国際看護大学の開学の際、国際保健担当教授として採用され、後に学長として大学 運営に当たっているものからみた本学開学以来9年にわたる国際活動を概観した。

主要な海外体験研修は、3年次選択科目の国際看護IIであることは事実である。しかし、これだ けが、また、これだけで本学の海外体験研修が成り立っている訳ではない。本稿で述べた多様な 国際関連活動とすべてとの連携において、いわば本学の目玉科目が継続されていることをご理解 頂きたいと願う。

◇ 参考資料

① Brown, Theodore M., Marcos Cueto. And Elizabeth Fee The World Health Organization and the Transition From "International" to "Global" Public Health. Am J Public Health 96: 62-72, 2006

② 日本赤十字学園HP http://www.jrc.ac.jp/ 2010.02.26 最終アクセス

③ 日本赤十字社 HP http://www.jrc.or.jp/ 2010.02.26 最終アクセス

④ 日本赤十字九州国際看護大学設置認可申請書 平成11年9月30日

⑤ 日本赤十字九州国際看護大学2010年大学案内

⑥ 酒井、江藤、喜多

⑦ 日本赤十字九州国際看護大学 2009年学部シラバス

⑧ 各年度海外研修報告書

・2003 「私たちのベトナム 日本赤十字九州国際看護大学2004春学生自主海外研修報告書」

・2004 「みんがらーば こんにちは!!ミヤンマー 2004 国際看護学海外研修報告書 日本赤十字九 州国際看護大学」

・2005 「Mekong from ラオスッタイ 2005 国際看護II 海外研修報告書 日本赤十字九州国際看護 大学」

・2006 「Sabay Tayo 2006 フィリッピン 国際看護II海外研修報告書 日本赤十字九州国際看護大

(12)

56 学」

・2007 「Loen Galag Banda Ache 大好き! バンダアチェ 2007 国際看護II海外研修報告書 日本 赤十字九州国際看護大学」

・2008 「オークンチュラン カンボジア 2008国際看護II海外研修報告書 日本赤十字九州国際看護 大学」

・2009 インド準備中

⑨ 2005 「University Student Exchange Programme: A Study Tour of the Red Cross

Rehabilitation Activities for Tsunami Disaster Victims and Student Exchange Programme in Sri Lanka」ユネスコアジア文化センター ユネスコ青年交流信託基金事業 大学生交流プログラム 2006 「University Student Exchange Programme: Exchange Programme for Sri Lankan and Japanese Nursing Students to Observe Disaster Preparedness and Nursing Education in Japan」University Student Exchange Programme:

2007 「University Student Exchange Programme: タイ王国HIV予防教育に学ぶ、若者による若 者のための性教育活動(ピアエデュケーション)の意義と役割」 ユネスコアジア文化センター ユ ネスコ青年交流信託基金事業 大学生交流プログラム

2007 「平成18年度文部科学省私立大学教育研究高度化推進特別補助金事業:災害援助・国際協力活 動に貢献できる看護人材育成・国際交流プログラム 韓国スタディツアー報告書」

2008 「International Exchange Programme for Nursing Students on Humanitarian Emergency and Health Crisis Management: Exchange Programme for Indonesian Japanese Nursing

Students to learn Disaster Preparedness and Nursing Education in Japan」

2008 「「平成19年度文部科学省私立大学教育研究高度化推進特別補助金事業:災害援助・国際協力活 動に貢献できる看護人材育成・国際交流プログラム タイスタディツアー報告書」」

⑩ 福岡県HP http://www.pref.fukuoka.lg.jp/

⑪ モナ―シュ大学HP http://www.monash.edu.au/

⑫ H.E.L.P. http://www.icrc.org/web/eng/siteeng0.nsf/htmlall/helpcourse?opendocument

⑬ 中間評価内部資料

⑭ 第三者評価内部資料

参照

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