第11章 学生生活への配慮
【到達目標】
本学では、キリスト教主義教育に基づく少人数教育という大きな目標を掲げ、学生生活 のあり方もこれに基づいたものとしてとらえられている。つまり、学生ひとりひとりの顔 と名前が一致し、気軽に学生と教員・職員が交流できる大学生活を目指している。例えば、
就職支援など、学生の個性・適性に基づいたきめ細やかな指導や、学生相談など学生のプ ライバシーに踏み込まざるを得ない支援などは、その最たるものであろう。
また、キャンパスがほぼひとつの状態であることから、学生間の心的距離も近く、大学 としての一体感をもとにした友好的学生生活がおくれることを目指している。
(1)学部学生の学生生活への配慮
本学は、3学部4学科を有するが、学生生活への配慮については、大学全体で、教職員 連携のもとおこなっているものが大部分である。そのため、ここでは、大学全体の取り組 みについて述べ、学部ごとの別がある場合には、その中で触れていくこととする。
(a)学生への経済的支援
a)奨学金その他学生への経済的支援を図るための措置の有効性、適切性(A群)
【現状】
本学における奨学金制度には、経済的理由により授業料納入が困難と認められる者に対 して①奨学金を貸与するもの、②授業料を減免するものがある。前者には、学内奨学金、
学外の奨学金(日本学生支援機構、地方公共団体・民間団体の奨学金)がある。後者は学 内奨学金である。この他に、学業成績が優秀であり人物的にも優良であるものに対し授業 料を免除する特待生制度がある。
これらの各種支援については、学生全員に配布する『学生便覧』に「学生生活」の項目 を設け、各種奨学制度について具体的な説明を記載しているほか、入学時オリエンテーシ ョンにおいて説明を行い、周知を図っている。
(学内奨学金)
学内奨学金は、「弘前学院大学学内奨学金」と称し、貸与制の「弘前学院大学学内奨学金 (貸与)」と免除制の「弘前学院大学学内奨学金(免除)」がある。
「弘前学院大学学内奨学金(貸与)」は、希望者に月額 32,000 円を無利子で貸与するもの で、日本学生支援機構奨学生推薦基準に準じて選考を行っている。卒業年から貸与年数の 2 倍の年数で返還する。貸与人数は各学部・各学年 5 名以内である。詳細は、「弘前学院奨学 制度規定」に定められている。
「弘前学院大学学内奨学金(免除)」は、学業・人物ともに優秀で、経済的理由により就 学が困難と認められる本学在学 2 年目以上の学生に対し、各学部の年間授業料の 2 分の1 相当額を免除するものである。詳細は、「弘前学院大学学内奨学金(免除)に関する規則」に
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定められている。昨今の経済状況の悪化から経済的理由で退学するものが増えたため、学 生の学業成就に資することを目的に 2003(平成 15)年度から設けられた制度である。採用 人数は、在学者数に応じて決められており、文学部 7 名、社会福祉学部 8 名、看護学部 5 名である。
弘前学院大学学内奨学金(貸与)採用者数
2006(平成 18)年度 2007(平成 19)年度
文学部 社会福祉学部 看護学部 文学部 社会福祉学部 看護学部 申請 採用 申請 採用 申請 採用 申請 採用 申請 採用 申請 採用 学年
者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 1 年 0 0 1 0 6 2 4 2 2 1 8 3 2 年 1 1 0 0 0 0 1 1 0 0 2 2 3 年 1 1 5 5 0 0 2 1 1 1 0 0 4 年 3 3 0 0 0 0 1 1 3 3 0 0 計 5 5 6 5 6 2 8 5 6 5 10 5
弘前学院大学学内奨学金(免除)採用者数
2006(平成 18)年度 2007(平成 19)年度
文学部 社会福祉学部 看護学部 文学部 社会福祉学部 看護学部 申請 採用 申請 採用 申請 採用 申請 採用 申請 採用 申請 採用 学年
者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 者数 1 年 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 年 1 0 11 1 13 5 2 1 3 0 8 2 3 年 4 1 13 4 0 0 3 3 11 4 15 3 4 年 7 6 7 3 0 0 3 3 7 4 0 0 計 12 7 31 8 13 5 8 7 21 8 23 5 注1:1 年生でも留年等の事情で在学 2 年目以降となれば申請資格がある。
(学外奨学金)
① 日本学生支援機構奨学金
(a)第一種奨学金(無利子)と(b)第二種奨学金(きぼう 21 プラン、有利子)がある。
貸与額は、一ヶ月当り(a)が自宅通学生 54,000 円、自宅外生 64,000 円、(b)は 30,000
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円・50,000 円・80,000 円・100,000 円の中から希望額を選択する。採用人数は毎年日本学 生支援機構から内示される。貸与期間は標準修業年限を限度とする。
また、学費支弁者の失職・就労不能や家業の倒産など経済環境が急速に悪化した学生を 対象とする緊急採用(第一種)、応急採用(第二種)があり、2006(平成 18)年度は 1 名(緊急 4 年生 1 名)、2007(平成 19)年度は、1 名(応急 2 年生 1 名)が利用している。
第一種 第二種 計
年度 学年
申請者数 採用者数 申請者数 採用者数 申請者数 採用者数 1 年 15 13 34 33 49 44 2 年 3 2 0 0 3 2 3 年 2 0 0 0 2 0 4 年 1 1 0 0 1 1 2006
(平成 18)
年度
計 21 16 34 33 55 47 1 年 25 12 45 38 70 50 2 年 1 0 3 3 4 3 3 年 1 1 2 2 3 3 4 年 0 0 0 0 0 0 2007
(平成 19)
年度
計 27 13 50 43 77 56
② 地方公共団体奨学金
弘前、青森、八戸各市と青森県教育厚生会の奨学金(貸与)を紹介している。また、看護 学部学生には、秋田県看護職員就学資金の紹介もしている。
各市奨学金の申請条件は、各市の在住家庭(八戸市は 2 年以上)の子女であることであ る。貸与額は、1ヶ月当り弘前市 25,000 円、青森市 33,000 円、八戸市は 25,000 円または 40,000 円から希望額を選択する。弘前・青森は他の奨学金との併用不可、八戸は併用可で ある。学生の申請に基づき、5・6 月に選考を行っている。2006(平成 18)年度の利用者は 4 名(弘前:1 年生 1 名・2 年生 1 名、計 2 名、青森:計 0 名、八戸:3 年生 1 名・4 年生 1 名、計 2 名)、2007(平成 19)年度の利用者は 3 名(弘前:2 年生 1 名・3 年生 1 名、計 2 名、
青森:計 0 名、八戸:4 年生 1 名、計 1 名)であった。
青森県教育厚生会奨学金は、青森県に 5 年以上在住する人の子女が対象で、第一種(年額 400,000 円)、第二種(年額 300,000 円)の 2 種類がある。他の奨学金との併用可である。2006
(平成 18)年度の利用者は 10 名(1 年生 1 名・2 年生 3 名・4 年生 6 名)、2007(平成 19)
年度の利用者は 10 名(1 年生 5 名・2 年生 1 名・3 年生 4 名)であった。
秋田県看護職員就学資金は、看護学部学生のみが対象である。月額 36,000 円が貸与され るが、秋田県の医療施設等で 5 年間勤務した場合、返済の全額免除を申請できる。2006(平 成 18)年度の利用者は 2 名、2007(平成 19)年度の利用者は 3 名であった。
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③ 民間団体奨学金
交通遺児育英会、あしなが育英会の奨学金の紹介をしている。2006(平成 18)年度及び 2007(平成 19)年度は、申請 0 件であった。
(特待生制度)
成績優秀者に対し、各学部各学科とも各学年 1 名(ただし、社会福祉学科については各学 年 100 名以上の場合は 2 名)を特待生とし、授業料が全額免除される。これは、成績優秀者 を顕彰することにより、学問研究を奨励することを目的としており、経済的支援を目的と した他の奨学金とは異なる。成績優秀者の決定について、1 年生については志望者に対し特 待生選考試験を行い、2 年生以上については前年度の成績に基づいて選考される。特待生制 度に関する詳細は、「弘前学院大学特待生に関する規則」に定められている。
【点検・評価等】
(学内奨学金)
「弘前学院学内奨学金(貸与)」については、貸与額の大きい日本学生支援機構奨学金を 利用する学生が多いため、用意された枠に比して利用者が少ない。貸与額は少ないが、無 利子であるという点は日本学生支援機構第二種奨学金に比べ有利であるので、学生の選択 の幅を広げられるという意義がある。
「弘前学院学内奨学金(免除)」については、休退学の理由に経済的困難をあげる学生が 増加しており、授業料支払いが困難であるが学業成就への意志が強い学生を救済するのに 大いに意義がある。
導入当初は、4 月の成績発表後、学生の成績確認が済んでから選考し、一旦授業料全額を 払い込んだ後、採用者に対しては半額を返還するという手続をとっていたが、煩雑である ため、2006 年度から授業料納付前に採用者を決定し、授業料半額のみを払い込むように改 めた。
(学外奨学金)
日本学生支援機構第一種奨学金は希望者が多いが採用数は多くないため、学生の希望通 りにならないことも多い。また、日本学生支援機構奨学規定第 16 条に基づく適格認定手続 として、学業不振の学生については成績確定後早期に面接を行い、その結果も考慮して廃 止・停止・激励の処分を行い日本学生支援機構に報告しているが、少なからぬ学生が対象 になっている。奨学生は学業に真摯に取り組むことが求められているが、学費・生活費を 自力で工面しなければならず、極端にアルバイトに依存している学生もいる。その結果、
原級留置・成績不振等で奨学金を停止・廃止され、ますますアルバイトをしなければなら なくなる学生も稀に見られる。
(特待生制度)
成績優秀者の中には、特待生を目指して学業に励むものもおり、一定の成果をあげてい ると考えられる。
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文学部では、規約の上では、各学科各学年 1 名となっているが、2001(平成 13)年度以 降は、入学者数の減少から、文学部全体で各学年 1 名を採用しているのが現状である。し かしながら、必修科目等の履修条件が2学科で異なるため、同一の基準で評価できるかと いう点で問題がある。また、社会福祉学部においても、2003(平成 15)年度以降に入学し た学年については、学年の学生数が 100 名を下回り、採用者が1名にとどまっているため、
文学部、社会福祉学部とも、僅差で成績上位者が固まる場合も、首位の学生しか評価され ないのが現状である。
【改善方策等】
景気の低迷や家庭事情の急変など、学生が修学困難になる事情を早期に把握することは 難しい。しかし、授業料の納入状況、家計を支えるためのアルバイトのしすぎによる学業 不振等に一定の兆候を見ることは可能である。そのためには、教員・職員・関係各部署間 の情報交換を密にし、連携を深めて行く必要がある。
学業不振の学生に対する方策としては、経済的な支援が学業の充実につながるよう、奨 学生の義務を自覚させ、成績不振者を減らして行く必要がある。学業とアルバイトのバラ ンスの取れた学生生活の指導を、面接等の際にしていくことが効果的であろう。
b)各種奨学金へのアクセスを容易にするような学生への情報提供の状況とその適切性(C群)
【現状】
掲示や年度当初の新入生および在学生オリエンテーション時に配布する書類で奨学金の 説明会の案内をしている。説明会に来られなかった学生には、学生課窓口で個別に対応し ている。また、奨学金の一覧は学生便覧とホームページにも記載している。
説明会では、学生課職員が、併用の仕方や手続きの間違えやすい点の注意などを懇切に 説明しているが、一般に奨学金の手続き書類は煩雑であるため、よく理解できなかった点 については学生課窓口で遠慮なく質問するように促している。
また、日本学生支援機構奨学金は学業不振時には廃止されるため、奨学生が修得すべき 学年毎の標準単位数を掲示している。
【点検・評価等】
経済的に苦しい学生やその家庭にとって、奨学金は学業継続のための生命線であり、奨 学金を必要とする学生の多くは、掲示を関心をもって見ているようである。しかし、過去 には弘前学院学内奨学金(免除)の申請をしなかった学生が授業料未納のため除籍となった ケースもあるので、一層の周知方法の工夫が必要である。
奨学金の手続きには、複雑なものが多い。例えば、学生支援機構奨学金では、第一種と 第二種を組み合わせた申請方法が7種類ある。このような煩雑な申請手続きの全体を学生 が完璧に理解するのは困難で、申請書類に不審な点があれば、学生課から学生に個別に連 絡をとって確認している状況であるが、事務的な負担は非常に大きい。
奨学金には、適格認定をするものもあり、継続のための手続きも必要となる。掲示で呼 235
び出しを行っているが、採用時に比べると学生の関心が薄く、学生課になかなか現れない 学生もいる。
【改善方策等】
奨学金手続きの複雑さについては、毎年想定外の事態が現れるのが現状である。例えば、
学生支援機構奨学金で、すでに予約採用(高校在学時に採用が決定)されているにも関わら ず、在学採用(入学後に申し込み)の申請を行った事例があった。地道ではあるが、このよ うな特異事例をチェックポイントに加えていくことが着実な改善につながると考える。
学内奨学金の申請書類については、ホームページからのダウンロードも将来の課題とし て考えられる。
(b)生活相談等
a)学生への心身の健康保持・増進および安全・衛生への配慮の適切性(A群)
【現状】
学生への心身の健康保持・増進および安全・衛生について中心となるのは、学生課なら びに学生課職員と各学部の教員から構成される学生委員会である。この両者が、必要に応 じて連携しながら、業務・活動をすすめている。
本学では、定期健康診断を毎年年度当初に実施しており、身長・体重・血圧測定、視力 および尿の検査、胸部X線撮影、内科検診について、毎年、ほぼ全学生が受診している。
2007(平成 19)年度 定期検診受診状況
学部 学年 在籍者数 受診者数 受診率 1年 93 90 96.0%
2年 75 67 89.3%
3年 72 54 75.0%
文学部
4年 75 67 89.3%
1年 67 65 97.0%
2年 71 64 90.0%
3年 99 88 88.8%
社会福祉学部
4年 96 87 90.6%
1年 63 63 100.0%
2年 63 63 100.0%
看護学部
3年 57 57 100.0%
2号館1階に保健室を有している。ここには、ベッド2台やソファーセットのほか、担 架等の器具が配置されている。普段は施錠されており無人だが、事務室に申し出れば、い つでも利用できる。
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気分が悪くなるなどした学生には、保健室のほか、事務室に備えられた医薬品(風邪薬、
痛み止め、胃腸薬など)を提供して応急処置にあたっている(なお、事務室には、万一の 応急処置が必要な場合にそなえ、AED(自動体外式除細動器)も配置されている)。
また、月一回定期的(第2木曜日午後)に健康相談日を設け、学外から医師に来てもら って、健康相談に応じている。
これらとは別に、受動喫煙による被害を防ぐため、健康増進法の施行にともなって、2004
(平成 16)年 11 月から校舎内を禁煙としたが、2005(平成 17)年度より、キャンパス内 を全面禁煙とした。
これらのほか、不定期ながら、学外から講師を招いて、学生対象の講演会を催して、健 康に関する知識の普及をはかっている。
なお、本学でもっとも長い歴史をもつ文学部では、障害をもった学生が入学した場合に は、その都度特別委員会をつくり対応してきた。たとえば、聴覚障害をもつ学生には、講 義のノートをとってその学習を助ける他の学生を、校費によりアルバイトとして雇用する などして、支援してきた。
【点検・評価等】
定期健康診断の実施、保健室の設置、医薬品の常備、学校医による健康相談の実施、キ ャンパス内の全面禁煙の実現、健康講演会等、本学では、学生の健康保持・増進に向けて の基本的な機能をもち、一定の活動を行ってきたといえる。
また、文学部では障害をもった学生に対する支援は、暫定的なものではあるが、一定の 成果をあげてきたといえる。
その一方で、問題点もあげられる。保健室については、暖房設備のみで冷房がなく、し かも、冬季は普段暖房が入っておらず、使用時にのみ暖房をいれているのが現状である。
また、保健室は、文学部と社会福祉学部の学生は利用可能であるが、看護学部の学生の利 用は困難(特に冬季)であるため、6号館では畳敷きの守衛室に布団を常備して、保健室 を兼ねている状況にあったが、2006 年度から 2 階調理準備室に臨時的に、ベッドを配置し て利用している。
また、健康相談日については、回数が少ないこと、必ずしも多くの学生が利用しやすい 日時に設定されていないこともあり、あまり利用されていない現状にある。
キャンパス内全面禁煙については、喫煙のあるなしにかかわらず、大部分の学生がキャ ンパス内禁煙を遵守しており、学生からは一定の理解がえられたものと思われる。ただし、
これを遵守せず、トイレ等で窓をあけてタバコを吸う若干の学生がいるため、冬季、トイ レが極端な低温になっていることがあるなど、学内の健康・衛生面での思わぬ影響が生ま れている。
障害をもった学生への対応は、施設・設備面での対応がほとんどなされていない本学に おいては重要な課題のひとつであるが、文学部以外ではとくに対策がとられたことがない。
【改善方策等】
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健康診断の受診については、今後も全員が受診するよう指導していきたい。
保健室については、使用していなくても、冬季には常時暖房を入れておくべきである。
また、看護学部(6号館)にも、保健室または仕切られた保健室スペースを確保すべきで ある。
健康相談日については、経費的には負担が増すが、回数を増やし、学生の利用しやすい 日時の設定をするなどの工夫が必要となろう。また、学外の診療所・病院などと提携して、
相談しやすい学外の専門医を紹介できるようにするなどの措置も有効と考えられる。
キャンパス内の禁煙については、知識の普及や禁煙を遵守しない学生を個別に指導する などして、全学生の理解と協力を得たい。
一方で、障害をもった学生に対する支援をどのようにしていくかは、学習支援にとどま らず、入学者数の増加にもつながることであるので、全学的にその支援を保障するような 取り組みが必要となろう。現状において、その主体となりうるのは、学生課、学生委員会、
および、その関連組織しかないが、いずれも多くの業務と課題をかかえていることから、
別個の組織を形成していくことも視野に入れながら、まずは既存の組織で、その都度対応 していきたい。
b)キャンパス・ハラスメントの防止(A群)
【現状】
共に学び研究し働く教職員及び学生のために、セクシュアル・ハラスメントを防止して、
男女の真の平等を正しく理解し、お互いの人格を尊重する大学にふさわしい教育環境を整 えることは、現代の大学教育における重要課題のひとつである。学生個人個人にきめ細か な対応ができる少人数制の教育を進める本学においては、教員と学生の距離が近く、教員 による学生相談が常態化しているため、それがセクシュアル・ハラスメント等の誘引とな らないよう防止策を講じておくことが極めて重要となる。
本学では、2005(平成 17)年に学生相談室運営委員会(最終的に教授会で承認)におい て、「学生に対するセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する指針」を策定した。この
「指針」は、「弘前学院大学における学生に対するセクシュアル・ハラスメントの防止及び 排除のための措置並びにセクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合に適切 に対応する」ために必要な事項を具体的に定めたものである。その内容は、「目的」、「セク シュアル・ハラスメントの基準」、「セクシュアル・ハラスメントに関する相談と報告」、「セ クシュアル・ハラスメントに関する対策室等の設置」、「調査結果への対処」、「対策室の事 務所管」、「雑則」の 7 ケ条からなり、セクシュアル・ハラスメントに関する相談窓口を置 くとともに「セクシュアル・ハラスメント対策室」を設置した。
そして 2005(平成 17)年度の「学生便覧」には、学生生活をよりよく過ごすために、「ア カデミック・ハラスメント」の中で、「セクシュアル・ハラスメント」の相談の仕方につい て詳細に説明し、さらに、「学生の修学上もしくは研究上の環境が害されたり、不利益を受
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けたりすること」のないように、資料として「学生に対するセクシュアル・ハラスメント の防止等に関する指針」の全文を掲載して周知徹底をはかってきた。
2006(平成 18)年度には、この規程を前進させ、キャンパス生活における様々なハラス メントを想定したキャンパス・ハラスメント防止に対する検討を行い、「弘前学院大学キャ ンパス・ハラスメント防止等に関する規程」及び「弘前学院大学キャンパス・ハラスメン ト防止等に関するガイドライン」を策定し、2007(平成 19)年 4 月 1 日から施行した。ガ イドラインの概要は、ダイジェスト版として「学生便覧」に掲載し学生への周知を図って いる。
「規程」は、全 20 条からなり、目的、キャンパス・ハラスメントの定義、対象、学内関 係者の責務、学長等の責務、相談室・対策委員会・調査委員会の設置、相談室の構成及び 任務、対策委員会の構成及び任務、調査委員会の構成及び任務、教職員の役割、報告・勧 告等の文書化、守秘義務、申立人・証言者への配慮、虚偽の申し立て・証言の禁止、不服 申し立て、規程の改正から成っている。
【点検・評価等】
学生からのキャンパス・ハラスメントに関する相談は、2007(平成 19)年 9 月現在、ま だ寄せられていない。とはいえ、学生からハラスメントに関する相談が寄せられていない からといって、本学におけるキャンパス・ハラスメントの発生が皆無と考えるのは早計か も知れない。過去において、教職員によるセクハラ(教員不信)・誹謗中傷・プライバシー 侵害・不適切な関わりなどの「セクハラ等相談」が寄せられた事実があるからである。規 程の制定は確実にするとともに、学生と教職員の日常の好ましい人間関係の構築が重要で ある。しかし、「好ましい人間関係」の捉え方が人により差があることを認めなければなら ず、この点は深く銘じて行動するほかないのかも知れない。
【改善方策等】
セクシュアル・ハラスメントを始め、キャンパスにおける様々なハラスメントは、学生 個人の深刻な問題として発生するので、その相談、解決には、常に困難を伴う。したがっ て、ハラスメントのない心豊かな学院、そして教育・研究環境を構築するためには、今後、
キャンパス・ハラスメント防止のパンフレット配布や定期的な講演会の実施などと共に、
真に学生個人の切実な声を聞くために相談と防止のためのアンケート調査や、学生が気軽 に相談できるような、ハラスメント対応のホームページの開設、窓口相談員への研究機会 の提供などの実施も必要であろう。
c)生活相談担当部署の活動上の有効性(B群)
【現状】
学生相談等においては、オフィスアワー(学生が予約なしで教員の研究室を訪れて、質 問・相談ができる時間)などの機会を利用して、教員のもとに相談に訪れる学生を、教員 が個別に対応している。本学では、少人数制の講義のほか、1年生から少人数制ゼミ形式
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の演習が必修となっているなど、学生と教員が個別に対話できる機会が多く、教員による 研究室での健康相談・生活相談が常態化してきた。とはいえ、こうした状況は、教員個々 の活動ととられかねなかったため、2005(平成 17)年度からは、教員への相談を、普遍的・
制度的なものとして整備して明示する工夫がなされた。具体的には、文学部では、学生か らの相談の窓口となったり、個別に解決できない案件を抱えた教員が協議できる教員の担 当が明示されたほか、社会福祉学部と看護学部では、さきにあげた1年生で必修の少人数 制ゼミ形式の演習の担当教員が、学生の健康相談・生活相談等にあたることを明示した。
また、これとは別に、より深刻な内容や教員に相談しにくい内容の相談については、学 生相談室という組織を設け、カウンセリングの専門知識をもつ少数の教員が相談員として 相談に当たってきた。学生相談室は、各学部の教員および学生課職員から構成される学生 相談室が運営することにより、全学的な組織として活動をみとめられている。学生相談室 が行う学生相談については、相談に訪れる学生のプライバシーに最大限の配慮が必要であ り、相談の会話が外部にもれない相談のための専用の部屋を設けている。また、学生相談 室では、2005(平成 17)年度から、学内の相談員に加え、学外から専門カウンセラーによ る学生相談の機会を設けた。相談時間は原則予約制であるが、予約時間の合間であれば、
予約なしの相談にも応じている。専門カウンセラーは、学生の様々な相談(ときには教職 員の相談)に応じるとともに、学生のプライバシー保持に最大限の配慮のもと、必要に応 じて、学長や学生課を通じて、大学が委嘱している学校医、精神科医を学生に紹介したり、
あるいは、学生個別に学外の医療機関を紹介したりしている。この専門カウンセラーによ る学生相談は、不定期ではあるが、相談の予約を希望する学生と専門カウンセラーの都合 のよい時間を中心に時間が設定されていて利用しやすいためか、おおむね月2~5回程度 行われ、8月を除く4月~9月の5ヶ月間に、のべ53名が利用している。また、相談内 容も学生生活に関する相談から精神的相談までと多岐にわたっている。
【点検・評価等】
少人数教育を特色とする本学では、学生と教員の距離が近いことから、教員による学生 相談が伝統的におこなわれてきており、相当の成果をおさめてきた。近年、大学における 学生相談についての理解や関心が社会的に高まってきているなかで、本学においては、全 学教職員が相談の窓口の役割を担うことができる体制を、いちはやく整えてきたことは評 価に値する。
また、より深刻な相談については、カウンセリングの専門知識をもつ教員による対応が 一定の成果をおさめてきたが、2005(平成 17)年に導入された学外の専門カウンセラーに よる学生相談は、思いのほか大きな成果をあげている。同時にそのことは、相談する学生 が増えていることを意味し、相談内容もデリケートであり、深刻なものも少なくないこと の証であろう。こうした専門のカウンセラーや精神科医、必要に応じた医療機関の紹介等 の相談体制の明確化と実施は評価されるべきものである。
その一方で、教員に持ちかけられた学生の相談内容を、学生のプライバシーに最大限の 240
配慮をはらいながら、教員間でどのようにどの程度共有し、学生の利益をはかっていくか が、今後の課題といえる。また、学外の専門カウンセラーや精神科医による学生相談は始 まったばかりで、学内の相談員との連携や学生のプライバシーに配慮した相談内容の共有、
継続的な財源の確保など、いくつかの課題が残されている。
【改善方策等】
教員による学生相談の体制は、今後も維持・発展させていきたい。そのためには、全学 体制で学生の相談に応じ、支援を行う際の情報の伝達及び共有にかかわる事項についての 検討と合意が必要となる。つまり、学生の相談の内容、特にプライバシーにかかわる内容 の共有の度合いと守秘義務についての周知徹底の確立である
また、学生相談室の活動については、2005(平成 17)年度前半の実績から、専門カウン セラーによる相談に対する需要の大きさと成果の大きさが再認識されたが、2006(平成 18)
年度以降は、2005(平成 17)年度の実績をふまえて、予算を確保し、量と質の向上をはか っていく必要がある。同時に、学内の相談員と学外の専門カウンセラーや精神科医との連 携や機能分担のあり方も検討されなければならない。
d)個人情報の保護
【現状】
本学では、文部科学省告示第百六十一号「個人情報の保護に関する法律(平成十五年法 律第五十七号)第八条」に基づき、大学・大学院における学生・院生等に関する個人情報 の適正な取り扱いを確保することを目的として、「弘前学院大学における個人情報保護に関 する基本方針」を定めた。これは、「個人情報は個人の重要な財産である」ことを明確にす るとともに、具体的な規程の制定に向けて、個人データの第三者への提供の制限、個人デ ータの開示、個人情報の利用範囲について、基本方針を示したものである。
これを 2006(平成 18)年度からは学生便覧にも掲載・配布し、教職員のみならず、学生 間においても個人情報保護の意識を高めることとした。
【点検・評価等】
「個人情報の保護に関する法律」の施行にともなって、本学でも、個人情報の保護が行 われてきたが、ともすると第三者へ個人情報の提供を一律に制限するばかりで、場合によ っては新入生等に有益な情報(例えば弘前学院生協からのアパート情報など)が届かなく なるなど弊害も生じたこともあった。さきの基本方針の制定により、「個人情報の保護に関 する法律」の趣旨を適正に具現化していく道筋が示され、一定の改善に向けて踏み出した といえる。
【改善方策等】
できる限り早急に、適正な個人情報の取り扱いを定めた「個人情報保護に関する規程」
を制定し、学生・大学院生の不利益にならないように運用していきたい。
241
e)生活相談、進路相談を行う専門のカウンセラーやアドバイザーなどの配置状況(C群)
生活相談等について、専任常勤の専門のカウンセラーは配置していないが、不定期に、
学生の相談が発生し、専門家のカウンセリングが必要と判断された場合、来学し、相談 に応ずる専門家(学外専門カウンセラー)を確保している。
日常的な相談活動は、各学部の教員の中に学生の相談に応ずる役割を設け、次のよう な相談形態により対応している。
1学生相談
① 教員の研究室および学生課窓口を訪ねる
大学での学習や学生生活の中で、困ったこと等が発生した時に、誰に相談したら いいのか分からない場合、学年担当教員(文学部・看護学部)・相談に応ずる担当教員 (社会福祉学部)の研究室を直接訪ねるか、学生課窓口を訪ねて適切な相談者の紹介を 受けるなどの対応を行なっている。
② 「学生相談室」の相談員を訪ねる
「学生相談室」での相談には、健康相談や学習を含む学生生活全般にわたる相談があ るが、健康相談については、学校医が月1回来学して保健室において相談に応じている。
その他の生活や「こころ」の問題などについては、学生相談室委員会が推薦して学長が 委嘱する学内相談員(教員)と、学外専門カウンセラーが応談している。相談者の相談 内容等については、相談員が守秘義務を徹底し、教員の場合は主として研究室で直接相 談に応じるほか、電話での相談にも応じており、学外専門カウンセラーが来学した時は、
学生相談室を活用している。
2. キャンパス・ハラスメント対策委員会
キャンパス・ハラスメント等の人権侵害的行為の防止に必要な活動や、被害が申し立 てられた場合の調停を行うなど、事案の問題解決を図ることを目的とし、すべての学 生・教職員等が対等な個人として尊重され、公正で安全な環境下で学習、教育、研究、
就労の機会と権利が保障されるように努めている。相談員は各学部・事務職員から原則 として男女1名ずつ選ばれる。
3. オフィスアワー(Office Hours)
学生が、事前にアポイトメントをとらなくても、各教員の研究室を訪れることができ るよう、教員ごとにあらかじめ設定された時間帯のことで、毎年度始め、学生にはプリ ントを配布する他、掲示でも周知している
f )学内の生活相談機関と地域医療機関等との連携関係の状況(C群)
現状において学長が医師であるので、学長が医師として面接し、精神科医の診察が必 要であると判断した場合、学外の精神科医を紹介するための地域医療機関等とは緊密な 連携がとれている。
242
(c)就職指導
a)学生の進路選択に関わる指導の適切性
【現状】
本学卒業生の進路状況は、年度別就職率(就職希望者に対する割合)でみた場合、2004 年(平成16年)88.1%、2005年(平成17年)92.2%、2006年(平成18年)91.2%であ る。なお、卒業者に対する割合も下表に併記した。
就職内定率の推移
2004(平成16)年 2005(平成17)年 2006(平成18)年
卒 業 者 143人 157人 175人
就 職 希 望 者 109人 129人 137人
就 職 者 96人 119人 125人
就職率 1(注1) 88.1% 92.2% 91.2%
就職率 2(注2) 67.1% 75.8% 71.4%
注1:就職希望者に対する就職者の割合 注2:卒業者に対する就職者の割合
学部ごとの卒業者に対する就職者の割合を見ると、文学部においては、2004年度50.0%、
2005年度64.8%、2006年度70.6%と上昇しており、社会福祉学部では、それぞれ、77.5%、
81.6%、72.2%と推移している。看護学部は、2007年度においては第3学年までの途中段
階であり、卒業生は出ていない。
本学学生の特徴としては、地元青森県内就職希望者が圧倒的に多い(全体の 70%超)こ とがあげられる。また、文学部では、一般企業を希望する学生が全体の4分の3を占め、
他に教員、公務員を希望する学生もいる。一方、社会福祉学部では、社会福祉施設・医療 機関を希望する学生が4分の3を占め、他に一般企業を希望する学生は約2割である。(下 図参照)
【点検・評価等】
文学部においては、これまで、就職希望率自体が低い(2004年度57.4%、2005年度74.1%、
2006年度75.3%)水準であった。それは、本学の置かれた環境・地域性に起因するもので、
以下の3つの要因が考えられる。①当地においては第一次産業が大きな比率を占めており、
その出身の学生も多い。これを含め、いわゆる「家業を継ぐ」学生が少なからずいること、
②就職先が少ない地域の経済状況から、安定している公務員・教員志望の学生が多い。し かし、青森県をはじめ、北東北における公務員・教員の採用数が激減し、臨時職が常態化 しており、新卒採用は低迷している。そのため、特に教員志望の学生は、いわゆる「教職 浪人」が当たり前の状態にあり、他の求職者と同様には扱えないこと、③青森県は就職状 況の指標となる「求人倍率」が、毎年全国最下位レベルにあり、希望の就職先がなく、就 職をせず取り敢えずアルバイトという学生が少なからずいること、などの事情を考慮する 必要がある。
243
【改善方策等】
文学部においても、就職希望率は次第に高くなり、したがって、就職者の割合も改善 の兆しを見せている。社会福祉学部においても概ね一定の成果をあげており、今後の推移 を見守りたい。しかし、卒業者に対する就職者の割合が70%台という数値は改善の余地が あるというべきであり、地域の経済情勢を十分考慮しながら、適切な進路選択ができるよ う指導したい。
2 0 0 6 (平 成 1 8 )年 度 弘 前 学 院 大 学 卒 業 生 産 業 別 進 路
日本語・ 日本文学科 産業別
卸売・小売
% 32
サービス 教育 19%
13%
建設・製造 9%
銀行・証券 6%
公務 6%
施設等 6%
医療 保険 3%
3%
印刷 3%
英語・ 英米文学科 産業別
サービス 28%
卸売・小売 24%
教育 18%
その他 14%
建設・製造 4%
銀行・証券 4%
医療 4%
保険 4%
社会福祉学科 産業別
施設等 医療 60%
16%
卸売・小売 11%
公務 6%
サービス
3% その他
2%
建設・製造 2%
b)就職担当部署の活動の有効性(B群)
【現状】
244
就職担当部署には、就職課と就職委員会がある。就職課には民間企業出身者1名を含む2 名が配属され、就職先企業開拓や企業との折衝、学生との個人面談や就職情報の提供など を行っている。就職委員会は、各学部2~3名の教員と就職課員の計10名で構成され、教 職員連携のもと、就職支援方針や支援行事を決定している。
就職に関わる施設としては、就職相談室と就職資料室が設置されている。就職相談室に は就職課員が常時おり、学生との相談にあたっている。また、これに隣接する就職資料室 には、就職関連資料がおかれているほか、求人情報が掲示され、学生が自由に閲覧できる ようになっている。また、資料室には、インターネットの利用が可能な 7 台のパソコンが 配置され、学生が自由に求人情報の検索や電子メールを使った企業との連絡もとれるよう にしている。また、求人情報については、希望する学生に対し電子メールでの情報も配信 している。
進路指導に関しては以下の行事を実施している。
①就職ガイダンス(年間4回開催)
就職に関する心構えなどの講演のほか、進路選択に関する情報提供を行う就職ガイダンス を開催している。
②各種の対策講座
志望者の多い公務員や教員を中心に以下の各種就職試験対策講座を実施している。
イ 公務員試験対策講座 ロ 教員採用試験対策講座
ハ 就職活動実践講座(就職活動に関わる実践的な知識を中心に全 9 回実施、エントリ ーシートの書き方、履歴書の書き方、模擬面接の実施など)
ニ 各種就職試験模擬テスト(一般常識・SPI・コンピテンシーテスト)
③個人面談
本学の就職支援では少人数制のメリットを生かした「少人数制ならではのきめ細かなサ ポート体制」をモットーに個人指導にあたっている。具体的には、文学部では、3年次の6 月から7月にかけて、社会福祉学部では、11月から12月にかけて、それぞれ全員から「求 職票」の提出を受け、希望者全員と進路希望の聴取やその指導を中心とした個人面談を実 施している。指導にあたっては、本学学部ごとの特徴や各学生の個性を踏まえ、十分な時 間をかけて話し合うことを基本として実施している。
④ インターンシップ
キャリア教育の重要性に鑑み、その一環としてインターンシップ事業を夏休み期間に実 施している。実習先は一般企業が中心であるが、ほかに福祉施設、市役所など官公庁も実 習先に加えられている。この他に、2006(平成18)年度から文学部では、「企業等実習」(自 由選択科目・2単位)を実施している。
⑤ 地区別父母懇談会
学生の進路選択にあたっては父母の理解が重要であり、毎年弘前市、青森市、盛岡市の 245
3地区で行われる地区別父母懇談会に就職課員が出向き、個別に説明、相談にあたってい る。
⑥ 学内就職セミナー(合同企業説明会)
採用予定のある企業を本学に招き、直接、就職希望の学生と面接する場として就職セミ ナーを学内で開催している。学生も本行事を就職活動のスタートとしてとらえ積極的に参 加している。セミナーに先立ち、参加する学生にはその意義と参加にあたっての注意事項 について事前オリエンテーションを開催し徹底している。本行事は今後とも継続して実施 していく。その他、個別の企業説明会も随時実施している。
2006(平成18年)年度セミナー開催状況
参加企業 67社 86名 参加学生 121名
⑦ 企業研究講座
実際に企業の現場で働く方を外部講師に招き、生の企業情報を聞き企業研究をする講座を 開催している。2006(平成18年)年度は4企業の担当者に2回にわたって実施した。更に、
そのフォロー講座として実際にそれぞれの企業を見学するバスツアーも実施した。
【点検・評価等】
本学の就職内定率については、前述の通り向上が見られ就職率90%台となっており、
就職課による進路選択における指導は概ね適切と評価できる。また、教職員一体となった 就職ガイダンスや対策講座などの就職支援行事、インターンシップの実施も、一定の成果 をおさめてきたといえる。
その一方で、圧倒的に多くの学生が希望している青森県内の求人数は決して多いとはいえ ない状況である。また、教員や公務員についても青森県内においては高倍率が続いており、
就職指導担当者は、専門職としての自覚とスキルアップがよりいっそう要求されることに なろう。
【改善方策等】
今後も、就職指導においては、教員や他の職員をも含めた大学全体で取り組む必要があ る。
また、更なる就職内定率向上のためには、以下の課題があるといえよう。
①低学年次からの就職に関する意識付け
低学年次からの職業観育成を目的とするキャリア教育を推進していく必要がある。それ は入学時から一人一人に将来について考えさせ自主的に行動させる力を身につけさせるこ とであり、それが社会の求めている人材でもある。そのためには教職員が連携して対応し ていく必要がある。
②対策講座のさらなる強化
教員や公務員を目指す学生は依然として多いものの、青森県内では年々その競争倍率は 高くなり難しくなっている。そのため各対策講座の内容を見直し強化する必要がある。
246
③就職情報提供の多様化
インターネットでの求人情報増加に呼応し、学生のインターネットによる情報収集のた め以前にも増して環境を整えていくことや、学生に対する個別の携帯電話・メールによる 情報配信も強化していくことが必要である。
④就職支援行事
学内就職セミナーのような全学規模での就職支援行事は、学生の評価も高く、ニーズも 認められる。今後も継続的に開催していくことが必要である。
2007(平成 19)年度 就職支援行事日程
時期 行 事 内 容 対象学年
14 地方上級模試 4 年
4 21 国家Ⅱ種模試 4 年
月 21 教採試験模試 4 年
24 北東北三県私立大学合同就職セミナー 4 年
21 教採試験模試 4 年
5 24 インターンシップガイダンス 2、3 年
月
31 文学部3年対象 就職オリエンテーション 3 年
6/4~ 7/6 個人面談 文学部 3 年生 3 年 6 23 教採集団討論実習(4 年生) 4 年
月 28 教採試験ガイダンス 1~3 年
5 東北地区私立大学合同就職セミナー 4 年 7 7/7~ 教採講座開講(前期) 1~3 年 月 12 公務員試験ガイダンス 1~3 年
19 就職活動実践講座 Ⅰ 3 年
8 インターンシップ実習 2,3 年 月 公務員試験対策講座 1~3 年 9 27 就職活動実践講座 Ⅱ 3 年
月 29 就職試験模擬テスト 3 年
247
4 就活実践講座 Ⅲ 3年 10 11 社会福祉学部3年 就職オリエンテーション 3年 月 10~ 12 コンピテンシーテスト 3年生 3年 10/6~12/15 教採講座(後期) 1~3 年
27 就職ガイダンス 3年
11 11/6~12/7 個人面談 社会福祉学部3年 3年 月 11/1,15,22,29 就活実践講座 Ⅳ~Ⅶ 3年 12/6,13 就活実践講座 Ⅷ~Ⅸ 3年 12 20 就職ガイダンス(内定報告会) 1~3 年
月 〃 学内就職セミナーオリエンテーション 2、3 年
1 11 学内就職セミナー 2、3 年
月
2 教採試験対策講座(教職教養) 1~3 年 月 公務員試験・SPI 試験対策講座 1~3 年
c)就職指導を行う専門のキャリアアドバイザーの配置状況(C群)
【現状】
就職課には民間企業出身者1名を含む2名が配属されているが、キャリアアドバイザー の有資格者はいない。
【点検・評価等】
民間企業において人事業務等幅広い経験を持つ担当者(課長)が配置されており、資格 はないものの実質的にアドバイザーとしての役割を果たし学生の相談にも対応している。
また、東北地区私立大学就職問題協議会等キャリア支援の研修にも積極的に担当者を派遣 しておりスキルアップに努めている。
【改善方策等】
大学におけるキャリア支援はますます重要となっており、キャリア支援担当者としては 専門職としての自覚とスキルアップがいっそう要求されることになる。
d)就職活動の早期化に対する対応(C群)
【現状】
近年における企業の採用活動の早期化の状況から、学生の就職活動の早期化も避けられ 248
ない状況にある。そのため、本学では就職支援のための各種行事も前倒しで行っている。
一般企業への就職希望の多い文学部については、2006年度より学生からの求職票の提出を 6月までに求め、個人面談を6月~7月にかけて実施するなど、以前に比し4ヶ月ほど早 めている。また、福祉施設への就職希望の多い社会福祉学部においては、採用の早期化は さほど見られないため以前と同様の日程で行っているが、一般企業へ就職希望する者に対 しては文学部と同様の日程で行っている。
【点検・評価】【改善方策等】
就職支援行事の実施にあたっては、参加率の向上が課題となっており、実施の方法・時 間の設定などで他の部門とのコンセンサスが必要となっている。
また、就職のため必要な「人生観や職業観の醸成」といったものは簡単に身につけられ るものではなく、1,2年次からのキャリア教育が重要となってくる。
e)就職統計データの整備と活用の状況(C群)
【現状】
本学でまとめている就職支援に関するデータは「求人情報」「就職支援スケジュール」
「卒業生進路先」「内定状況」などである。
「求人情報」は各企業より送付された求人票をまとめたもので就職資料室にて閲覧でき、
「就職支援スケジュール」「卒業生進路先」はホームページで閲覧できるようになっている。
【点検・評価等】【改善方策等】
就職支援に必要なデータはすべて就職課において一元管理している。
(d)課外活動
a)学生の課外活動に対して大学として組織的に行っている指導、支援の有効性(A群)
【現状】
課外活動を含む学生生活全般に対する組織的対応機関として、各学部から選出された教 員から構成される学生委員会があり、事務室に学生課が置かれている。これらは全学生が 組織する学友会を支援することを通して、学友会傘下のクラブ・サークル活動を後援して いる。2002(平成 14)年に、学友会が自主的に会則を改定した際も、学生委員が助言する 形で支援した。
特筆すべきは、近年集中的に進められた体育関係施設の拡充である。本学院共同施設と しての野球場とラクビー場兼サッカー場および大学管轄施設としてテニス場をそれぞれ新 設し、課外活動の拠点作りにも努力している。また、学生が参加する学会(弘前学院大学 英語英米文学会、弘前学院大学国語国文学会)やフォーラム(つがる福祉創造フォーラム:
2006 年度以降中断)に対して、教職員が必要な助言・助力を与えながら、学生の主体的な 学術活動を促進している。以上の諸団体は、毎年秋に行われる学祭期間にイベントを集中 的に開催し、内外にその活動成果を発表している。
249
【点検・評価等】
自由な学風を伝統とする本学は、学生の主体的活動に多くを期待し、教職員はあくまで その「後方支援」に重心を置いてきた。だが、学生の主体性減退、一学年3学部合計 250 名定員という小規模大学であることから、課外活動の低調ぶりが問題点として近年とくに 指摘されるようになってきた。学友会執行部の選出、学祭の開催が困難を極めたこともあ る。また、1999(平成 11 年)年以来男女共学化後も男女比率の傾斜傾向から、とくに男子 の体育系部活動には制約が大きいのは勿論であるが、共学以前に比べて、相対的に女子学 生数が少なくなっていることが、既存の女子部の部員不足をも助長している。以上のよう な状況から学生の主体性を基軸とした課外活動は、ある意味では限界点に達していると考 えられる。また、本学単体での課外活動にも物理的制約が多く、他大学との協力関係等を 本格的に模索する時期に来ていることも指摘されよう。
【改善方策等】
課外活動における学生の人員あるいは活動の場の確保対策としてこれまでも長い間、近 隣の大学(主として弘前大学)と協力関係を結ぶことで補ってきた部分が大きい。また近 年、運動部の一部では他大学生や卒業生等との合同チームを結成して社会人組織に参加す ることで活動の維持が試みられている。今後、学生の主体的活動を伸張させるために、む しろ一歩踏み込んだ助力・指導が必要である。すべてを学生任せにするのではなく、学生 を後押しするような企画を計画的組織的に大学がする必要がある。すでにその前例として、
学祭期間に本学地域文化総合研究所主催講演や父母懇談会の日程を合わせるなど、学生中 心の行事に教職員が積極的に協力しようとしている。そのような学生との協力関係を他の 領域に拡張することが具体的な改善策として考えられる。
(2)大学院生の学生生活への配慮
大学院生の学生生活への配慮をおこなううえでの、組織・活動は、基本的には、大学の 組織・活動を利用して行っている。そこで、ここでは、大学院独自の事情を中心に述べる。
(a)大学院生への経済的支援
a)奨学金その他学生への経済的支援を図るための措置の有効性、適切性 b)各種奨学金へのアクセスを可能にさせるための方途の適切性
【現状】
(学内奨学金)
学内奨学金は、「弘前学院大学学内奨学金」と称し、学部学生同様、貸与制の「弘前学院 大学学内奨学金(貸与)」と免除制の「弘前学院大学学内奨学金(免除)」がある。
「弘前学院大学学内奨学金(貸与)」は、希望者に月額 50,000 円を無利子で貸与するもの で、日本学生支援機構奨学生推薦基準に準じて選考を行っている。「弘前学院大学学内奨学 金(免除)」は、学業・人物ともに優秀で、経済的理由により就学が困難と認められる本学
250
在学2年目以上の学生に対し、各学部の年間授業料の 2 分の1相当額を免除するものであ る。
(学外奨学金)
① 日本学生支援機構奨学金
(a)第一種奨学金(無利子)と(b)第二種奨学金(きぼう 21 プラン、有利子)がある。
貸与額は、一ヶ月当り 88,000 円、(b)は 50,000 円・80,000 円・100,000 円・130,000 円の 中から希望額を選択する。採用人数は毎年日本学生支援機構から内示される。貸与期間は 標準修業年限を限度とする。
② 地方公共団体奨学金
青森県教育厚生会の奨学金(貸与)を紹介している。これは、青森県に5年以上住居をも つ者の子女に対し、無利子で貸与されるものである。額は、年額 30 万円と 40 万円から希 望額を選択する。
③ 民間団体奨学金
交通遺児育英会、あしなが育英会の奨学金の紹介をしているが、2006(平成 18)年度及 び 2007(平成 19)年度は申請がなかった。
(特待生制度)
成績優秀者に対し、各研究科とも各学年 1 名を特待生とし、授業料が全額免除される制 度がある。社会福祉学研究科については、2003(平成 15)年度に1名、2004(平成 16)年 度に各学年各1名(計2名)が、特待生に採用されている。一方、2005(平成 17)年度は 2年次学生1名が採用された。2006 年度以降は両研究科とも入学者が少なく特待生採用は 見送られている。
(TA制度)
学部・大学院教員の要請をうけて、大学院生が講義等のない時間を利用して学部の講義 等に参加し、そこで講義の補助的な役割を果たすことにより、報酬を受けられる教務補助 の制度を設け、これを本学独自の「TA制度」と呼んできたところである。学部学生に較 べて豊富な経験を有する大学院生自身にとっても、報酬のほかに、自らの学習上の効果や 教育経験となる点で、有意義な制度と受け取られてきた。
社会福祉学研究科においては、これまで、TAの採用により、社会福祉学部の実習に効 果をあげるとともに、大学院生に対する経済的支援の役割も果たしてきた。
しかし、TAは、経済支援を目的としたものではないとの指摘もあり、また、その他学 内的事情もあって、2007 年度は実施していない。
【点検・評価等】
一定の奨学金制度に加え、TA制度を整備するなど、一定の経済的支援をおこなってき たといえる。ただし、特待生については、2005(平成 17)年度以降は、入学者数が定員を 大きく下回っているため実現していない。
【改善方策等】
251
特待生制度を活用する手だては、まず学生定員の確保が前提であり、至上課題であると 言える。それへ向けて大学院生の募集活動に努力したい。
(b)学生の研究活動への支援
a)学生に対し、研究プロジェクトへの参加を促すための配慮の適切性(C群)
【現状】
〈社会福祉学研究科〉院生指導の一環として、研究活動の支援眼目には社会福祉学会の発 表と修士論文作成が主要事項になるが、そのための情報収集、図書・文献整備が必要とさ れる。院生たちは積極的に研究会・学会参加をしている。海外事情、国内事情はネット情 報を利用して理解を広めている。
【点検・評価等】
一般学生の専門研究への取り組みは、文献・図書資料中心のデスク・ワークに傾きがち であるし、社会人学生は現職の業務上の現実的な問題に焦点が当てられる傾向がある。若 干理論的取り組みが希薄なままに問題意識だけが先走りしてしまうようである。一年次は こうしたふぞろいなレディネスを整え、論理的な帰結としてテーマ設定できるようにする ことである。2年次に入ると大部分所定の単位取得を終えている関係もあってか、中には 登校する回数が急減する院生も出てくる。
【改善方策等】
1年次学生のフィールド・ワーク不足をカバーするために、福祉施設での資料収集、ス ペシャル・オリンピックスへの参加、各種研修会などへの参加をすすめている。2年次学 生のカリキュラムは、週1回の演習が通年でセットされ、出校が義務づけられている。ほ かにも情報処理、福祉法学(家族法)、高齢者福祉など実務に直結する科目がセッティング されているので、オーバー単位取得になっても聴講をすすめている。学生の研究活動を活 性化するためにも、院生を主要なメンバーとして、学内学会の立ち上げを急ぎたいと考え ている。
(c)生活相談等
a)学生の心身の健康保持、増進及び安全・衛生への配慮の適切性(A群)
b)ハラスメント防止のための措置の適切性(A群)
【現状】
生活相談等については大学院生についても学部の組織、活動によりカバーされている。
【点検・評価等】
大学院独自の組織、活動を持たないが、院生を含めた大学全体の組織、活動で十分カバ ーできる状況にあり、現状として問題を生じていない。ただし、講義時間が遅い場合には、
事務部、保健室の利用ができない場合の対応策を考えおく必要があった。しかし、平成 19 年度からは昼間講義のみで問題はない。
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【改善方策等】
今後も大学全体の組織、活動を利用していく方針である。問題が生じそうな箇所に関し ては、その都度迅速な対処を講じていく。
(d)就職指導等
a)学生の進路選択に関わる指導の適切性(A群)
【現状の説明】
研究科に在学する大学院生には、仕事を持ちながら大学院での勉学・研究を行っている ため就職指導の必要がない者も多い。就職に関する情報を必要とする大学院生には就職課 が適切に対応している。
【点検・評価および長所と問題点】
現状として順調に推移していて、問題を生じていない。
【将来の改善・改革に向けた方策】
就職を希望する大学院生に対しては、引き続き就職課員が対応していく。
253