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日本におけるキャッシュレス社会化の展望 - Sophia

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2016 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

日本におけるキャッシュレス社会化の展望

A1341103 山野 颯士 2017 年 1 月 15 日 提出

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2 はじめに

現金、クレジットカード、デビットカード、電子マネー。皆様はどの決済手段を多く利用する だろうか。おそらく、大学生だとほとんどが現金と答えるであろう。しかし、お隣の韓国やアメ リカなどではその回答が返ってくる確率は日本よりも下がる。果たして、日本が他国と比較して 現金に執着しているのは何故だろう。

私がこのような現状を知ったのは 2016 年の春、就職活動を行っていたときだ。クレジットカ ード会社を受けていた私は、説明会で人事の方が“キャッシュレス社会”を連呼していたことが 非常に印象的だった。グループディスカッションにおいても、クレジットカードに代わる新たな 決済方法を考えさせられるなど、各社が我々就活生に現金の撲滅キャンペーンを普及している ように感じるほどだった。それ以来、新聞でも頻繁にフィンテックがどうのこうのと書かれた記 事を目にするようになり、社会はキャッシュレス化へ向かっているのだということを実感した。

以上のような理由がきっかけとなり、私の中に「なんで日本人は現金のことがこんなに好きな のであろうか。」「どうすれば日本で非現金決済が普及するのだろうか。」といった疑問が芽生え 始めた。よくよく考えれば私は経済学部生。就職先は一応金融機関。そうなれば、卒論ではお金 にまつわることをテーマにすべきなのではないか。ちょうどいいタイミングであると思い、今回 は気になっていたキャッシュレス社会にまつわることについてまとめようと決断した。ここで は少しでも、日本がキャッシュレス社会を実現するためにはどうすればよいかという結論に近 づけることができればと思う。

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3 はじめに

目次

第1章 非現金決済の概要

1.1 決済の歴史 1.2 様々な決済手段

1.3 各国の決済比率の現状分析

第2章 現状から見える疑問に対する先行研究

2.1 先行研究による要因分析 2.2 先行研究に対する著者の意見

第3章 日本がキャッシュレス社会化を成し遂げるには

3.1 キャッシュレス社会がもたらす恩恵

3.2 他国から学ぶキャッシュレス社会化への軌跡 3.3 キャッシュレス社会化を加速させる新たな刺客

第4章 結論

おわりに

参考文献

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4 第1章 非現金決済の概要

1.1 決済の歴史

出典:決済の歴史 三井住友カード

http://www.smbc-card.com/jinji/2016/about/history.html 今どうして電子マネーなのか

http://www.kt.sakura.ne.jp/~ksugi/e-money.html

普段、我々が毎日のように行っている決済。その行動には 3000 年を超える歴史があると言わ れている。ここでは決済がどのような変化を遂げてきたのかを述べていきたい。

まず、紀元前 7 世紀まで決済は物々交換によって行われていた。物々交換は、自分が欲しいモ ノと相手が欲しいモノを交換する最も原始的な決済手法である。そして、その中で様々なモノの 価値基準として誕生したのが、物品貨幣である。麦、塩、貝殻など、各共同体において利用価値 の高い、あるいは貴重な財物が物品貨幣に採用された。物品貨幣の誕生は、人類の交換取引を広 範化させた。そして、人類はさらに価値を安定させるため、さらに価値を均一化させるために、

銀や銅など耐久性や運搬性に優れた金属を貨幣素材に利用するようになった。こうして、価値の 保蔵と価値の安定を満たした、鋳造貨幣が誕生した。

貨幣は目に見えない価値を抱えて存在している。目に見えないがゆえに、不届き者の温床にも なりやすく、偽造されたり悪用されたりすることが多くなっていった。必然的に、貨幣の発行を 管理し、その価値を保証する機関が必要になってきた。中央銀行はそんなニーズに応えて 17 世 紀に生まれてきた機関である。現在もなお、個人、企業、国や地方公共団体などにお金という血 液を送りこむ心臓のような役割を担い続けている。

20 世紀半ばにとあるアメリカの実業家がレストランで食事をしたが、財布を自宅に忘れてい ることに気が付いた。充分な支払い能力があるのにもかかわらず、支払いができない。そんな恥 ずかしい体験から、現金を持たなくても支払いができる制度を、彼は考え出した。これが、クレ ジットカードの誕生といわれているエピソードである。クレジットカードの誕生は、人類を貨幣 から解放させ、自由自在な取引が可能となった。これにより消費額は飛躍的に上昇し、世界中の 経済が高成長を遂げていくことになる。

また、決済手段の一役を担っている手形の歴史についても述べたいと思う。手形が使われ始め たのは 12 世紀頃、イタリアおよびその他の地中海沿岸の諸都市で両替商が使い始めたというの が通説になっている。当時のイタリア半島はヨーロッパ文明の中心地であると同時に、東方諸国 と西ヨーロッパとを結ぶ交通の重要な接点だったが、地中海貿易の支配権を巡って各都市国家 が争っていた時代でもあり、各都市国家の貨幣は流通を制限され、金銀貨の流出も禁止されてい た。そこで異なった都市国家に住む商人の間では、何らかの方法で貨幣の両替、送金をする必要 があり、それが手形を利用する原因になった。つまり、当時すでに両替商が生まれており、各都 市国家の両替商の間に団体が作られていて、お互いに取引関係を持っていたので、商人が他地へ 送金する場合には自分の都市の両替商にその地の貨幣を支払って、両替商から送金先の貨幣で

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支払う旨の証書をもらい、これを取引の相手方に送ってやると証書と引き換えにそこの両替商 から支払いを受けられるというやり方だった。この方法では、費用も手間もかかり、あまり便利 とはいえないものだったが、この方法はこれ以降オランダやイギリスを中心に普及していくこ とになった。日本でも、今日の手形に類する機能は「替銭」として、鎌倉時代から行われていた。

替銭というのは、銭を交換するという意味で、これを「かわし」と読ませているが、最古の記録 としては公安二年(1279 年)のものが残っている。

1.2 様々な決済手段

出典:おしえて!にちぎん 日本銀行

https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/kess/i02.htm/

今どうして電子マネーなのか

http://www.kt.sakura.ne.jp/~ksugi/e-money.html

決済の歴史を振り返って分かる通り、今現在多くの決済手段が存在している。ここでは主な決 済手段を紹介していきたい。

・銀行券と貨幣

銀行券と貨幣を総称して「現金通貨」という。現金通貨は、中央銀行や政府が発行しているた め信用度が高く、決済手段として広く利用されている。現金通貨は、以下のような点に特徴があ る。

(1)法律の定めにより、現金通貨を支払った場合には、相手が受取りを拒絶できない性質(強 制通用力)があること

(2)現金通貨を取引相手に支払うことによって、取引相手との決済を直ちに終了させることが できる性質(支払完了性)があること

(3)現金通貨を用いる決済は、いつ、どこで、何の目的で使ったか分からないという匿名性が あること

・要求払預金

個人や企業が金融機関に保有している要求払預金(当座預金や普通預金)も、決済手段として 広く利用されている。例えば、給料を口座振込で受け取ったり、毎月の電気料金の支払やクレジ ットカードを使って買い物をした代金の支払いを預金口座からの引落しで済ませたりするとい ったことが、日常生活の中で頻繁に行われている。決済手段としての要求払預金は、次のような 点に特徴がある。

(1)決済システムや金融機関の決済機能を活用することで、現金通貨にまつわる搬送・保管の コストや紛失・盗難のリスクを回避しながら、多額の取引や遠隔地との取引も預金の入金・引落

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6 しによって効率的に決済できること

(2)わが国の決済システムの下では、現金通貨と同様に、取引相手との決済を直ちに終了させ ることができる性質(支払完了性)があること

・信用決済

信用決済には企業間信用と消費者信用がある。企業間信用とは主に手形や小切手を、消費者信用 はクレジットカードなどの販売信用、金銭の貸し付けを行う消費者金融のことを意味する。しか しここでは決済手段について見ていくため、企業側の信用決済手段として手形と小切手につい て、消費者側の信用決済手段として販売信用とパーソナルチェックについて見ていこうと思う。

(1)手形決済

手形は権利の発生、移転および行使のいずれにおいても、必ず手形そのものが必要になること から、完全な有価証券であるといわれている。約束手形であれ、為替手形であれ、いずれも手形 としてこうした特色を持っている。例えば、約束手形を例にとってみれば、約束手形には振出人 に対する権利が付与されているが、この権利は約束手形の作成によって始めて発生し、権利を譲 渡するためには約束手形という証券を相手方に交付しなければならない。さらに、約束手形上の 権利を行使して手形金を請求するためには、必ず約束手形という証券を、債務者である振出人に 提示しなくてはならず、呈示がなされないで手形金の請求がされたとしても、それは権利の行使 としての効果を発生しないので、振出人もこの請求に応じる必要はない。

(2)小切手決済

小切手は、特色としては手形とほぼ同じものを持っている。では手形と比べてどのような働き をしているのか。手形は信用証券であるが、小切手は支払証券であると言われる。小切手の主な 働きは現金の代わりに利用される支払手段である。そのため、小切手は手形と違って流通する期 間は短く、普通振り出された日の翌日から 10 日間のうちに小切手の支払いを求めるため呈示す ることになっている。また、性格的には為替手形と似ており、自分が支払う約束をする形式は取 らず、他人に支払いを依頼する形式を取る。ところが、その「他人」は預金業務を営んでいる“金 融機関”でなければならず、小切手を利用するためには銀行と当座勘定取引をしていることが必 要になる。つまり、小切手決済においては、口座決済としての性格を多く併せ持っているといえ る。

(3)パーソナルチェック

個人の信用決済の方法としても、欧米を中心に小切手が消費生活上の支払いのために利用さ れている。これをパーソナルチェックと呼び、商取引用の当座勘定取引とはいくつかの点で異な っている。まず、パーソナルチェックでは、記名捺印によらず、サインだけで振り出し、銀行は このサインをあらかじめ届け出の署名鑑と照合する方法を取っている。サインは印影ほど恒常 性をもたないため、照合が比較的難しいといえるが、銀行が小切手支払いにあたり署名鑑との照 合を相当の注意をもって行えば、偽造などの事故があっても免責される。もう一つの特徴は、パ ーソナルチェックでは、当座勘定取引の本人以外に、配偶者など一定範囲の人に当座勘定の共同

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7

利用を認めている点だ。個人当座勘定の上ではこれを代理人としており、この代理人はいわば本 人の当座勘定を利用するわけだから、その効果は当然本人におよぶ。

パーソナルチェックは、こうした方法により、個人の消費生活の広い範囲において決済を行え るようにしたもので、小切手の不正利用に対する安全性の高さを個人決済に流用したものだと 言える。だから、安全性のニーズの高い欧米で広く普及し、現在でも日常的に行われている方法 である。しかしその利用が増大しすぎた結果、小切手の利用をできるだけ少なくするための工夫、

努力がなされているほどで、新しい決済手段への移行が進んでいるというのが現状である。

(4)販売信用

販売信用とは、「消費目的のために財貨・サービスの購入を行う個人に対して、その支払いを一 定期間猶予する取引形態」と定義することができる。現在行われているサービスでは、クレジッ トカードがそれにあたると考えられる。

現在のようなクレジットカード産業が発達してきた背景には、前述したようなパーソナルチ ェックの利用が増大しすぎて、その処理が煩雑化してきたことがある。パーソナルチェックが店 舗から上がってくるたびに決済していたのではとても事務処理上対応できなくなってくる。こ のため、パーソナルチェックに代わる決済手段としてクレジットカードは欧米を中心に発達し てきた。

(5)電子マネー

電子マネーとは、現金の代わりに、予めチャージまたは自動チャージしたカード、もしくはク レジットカードでの自動引き落とし(後払い)を設定したカードやスマホなどで支払いをするこ とが出来るものの総称である。チャージの必要があるカードを先払いという意味のプリペイド 型、 チャージの必要が無く後払いのものをポストペイ型と言う。また、電子マネーは交通系と 商業系に分類することができる。交通系は Suica や PASMO をはじめとする、全国で様々な交通機 関が出している電子マネーである。全国で 30 種類以上あるが、その中で主要 10 社が 2013 年 3 月より全国相互利用できるようになっている。1 枚のカードで全国の電車、バスに乗ることがで きる。また、近年ではコンビニなどでも利用することができる。商業系は、Edy や iD、WAON、

nanaco をはじめとする、コンビニやスーパーや自販機など様々な場所で利用できる電子マネー である。

1.3 各国の決済比率の現状分析

先ほど紹介した様々な決済手段が、それぞれどのくらい利用されているのかを主要国別で述 べていきたい。

(1)日本

日本における支払手段別の利用金額は以下の通りであるが、見て分かるように現金の構成比

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がおよそ 6 割を占めており、他国と比較してもかなり高い水準にある。中でもクレジットカード とデビットカードの構成比が低く、日本は現金主義国家であることが分かる。

図表 1-1 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより

(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf)

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(2)米国

米国における決済手段別の利用金額は以下の通り。先ほど紹介した、日本の現金利用構成比が 6 割ほどあったことを考えれば、米国では 2 割とかなり低い。最も利用率が高いのがクレジット カードであり、米国では非現金決済の文化が発達しているということが分かる。

図表 1-2 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより

(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf)

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(3)英国

英国における決済手段別の利用金額は以下の通り。米国と同様、現金利用率は 2 割ほどと日本 に比べて圧倒的に低い。着目すべき点は、デビットカードと電子的支払の利用率が高いことであ る。

図表 1-3 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより

(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf)

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(4)フランス

フランスの決済手段別の利用金額は以下の通り。米国、英国同様に現金比率は 2 割と低い。こ こでいう支払カードとはクレジットカードとデビットカード利用額の合計であり、内訳は不明 である。

図表 1-4 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより

(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf)

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(5)韓国

韓国の決済手段別の利用金額は以下の通り。米英仏と比べて現金利用率は高いものの、日本と 比較するとかなり低い。また、キャッシュレス社会化が進んでいる米英仏と比較しても圧倒的に クレジットカード利用率が高いことが分かる。

図表 1-5 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより

(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf)

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ここまでのデータを見て分かる通り、米・英・仏・韓という先進諸国は現金利用率が 2~3 割 と低水準であるのに対し、日本はおよそ 6 割と過半数を超えるほど現金に対してこだわりが強 い状況にある。なぜ日本はここまで現金主義国家になっているのか。逆に、他の先進諸国はどの ようにしてキャッシュレス社会化していったのか。次の章ではそういった疑問についての先行 研究を紹介し、それに対して私の意見を述べる。

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14 第2章 現状から見える疑問に対する先行研究

2.1 先行研究による要因分析 第 1 章で挙げた、

・なぜ日本は現金主義国家であるのか

・どのようにして他の先進諸国はキャッシュレス社会化を成し遂げたのか

この 2 つの疑問に対しての三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング社による先行研究をここで紹 介したい。

先進諸国の非現金決済普及要因分析

(日本よりクレジットカードまたはデビットカードの利用率が高いもののみ)

(1)米国

①クレジットカード

「米国においてクレジットカードは、店頭での支払において、現金や小切手に代わる支払手段と して普及が進んできた。

米国におけるクレジットカードの普及要因としては、ビザ、マスターカードをはじめとする汎 用ブランドによって銀行間相互での加盟店の開放が進み、広範な加盟店ネットワークが形成さ れてきたことが第一にあげられる。米国における加盟店端末数は、人口 100 万人あたり少なく とも 18,500 台にのぼり、欧州全体(人口 100 万人あたり約 12,000 台)と比べても 1.5 倍 以上の普及状況となっている。

また、米国の消費者は消費性向が高く、クレジットカードの与信機能が活発に利用されたこと も、クレジットカード普及の一因である。

クレジットカードの 1 件あたりの平均支払額は 98 ドル(2006 年)となっており、実質金額 では低下傾向にある。これは、小額決済分野でのクレジットカード利用の拡大を反映したもので あると言える。近年クレジットカード・ネットワークは、売上承認処理のスピードアップや小額 支払時のサインの免除、加盟店手数料体系の見直しなどの施策により、従来は現金払いが主流で あった業態(ファーストフードなど)での加盟店開拓を積極的に進めており、こうした動きが小 額決済分野でのクレジットカード利用拡大につながっているものと考えられる。」

②デビットカード

「デビットカードは、小切手による支払を代替するものとして金融機関が中心になって普及を 進めてきた。小切手は金融機関にとって処理コストが高いほか、加盟店にとっても回収リスクが ある、現金化までに時間がかかるといったデメリットがあり、デビットカードによってこうした デメリットの解決を図ろうとしたものである。

米国で主流となっているオフライン型デビットカードは、決済インフラや加盟店での利用方 法・処理方法がクレジットカードとほぼ共通であったことも、普及を容易にした。また最近では、

クレジットカードの金利負担を嫌う利用者が、使い勝手がほぼ同じであるデビットカードのほ

(15)

15 うを好むようになってきているとも言われる。」

(2)英国

①デビットカード

「英国のデビットカードは 1980 年代末の導入以来、金利負担がなく、小切手と同様の感覚で利 用できることが消費者に広く受け入れられ、順調に拡大を続けてきた。

デビットカードの普及要因としては、カード発行銀行にとって小切手の利用件数を削減した いという動機が強かったために、小切手に代わる決済手段としてデビットカードを積極的に推 進してきた点があげられる。具体的には、デビットカード決済端

末の設置推進、戦略的な加盟店手数料設定(定額手数料の導入など)、消費者にとって利便性の 高いキャッシュバックサービスの提供などがあげられる。」

(3)フランス

「フランスでは古くから高額の支払を現金で行うことが法令によって禁止されており、これに よって小切手をはじめとするキャッシュレス決済手段の利用が普及していたという事情がある。

また、フランスでは ATM の設置状況に地域的な偏りがあり、特に地方部では現金の入手が容易 でないことが、キャッシュレスでの支払に対する利用者ニーズを支えているという状況がある。

しかもバカンスの習慣があるため、この現金入手が困難な状況を都市住民も共有している点も 指摘されている。」

① デビットカード

「デビットカードは、銀行の小切手処理の効率化ニーズに対応することを目的として、銀行カー ド協会(カルト・バンケール、CB)によるイニシアチブのもと、決済インフラの整備や加盟店開 拓が進められ、定着した。フランスにおいてデビットカード決済が普及した要因の第一は、CB の 主導によって、全ての金融機関に共通のスキームを確立し、全国に統一的なサービスを提供でき た点にあると言える。また、1980 年代末という早い段階で IC カードを導入し、加盟店店頭での オフライン処理を可能として運用コストを引き下げる一方、カードの不正利用を押さえ込むこ とができたことも普及要因としてあげられる。」

(4)韓国

①クレジットカード

「韓国でのクレジットカード普及に大きな役割を果たしたのが、政府によるクレジットカード 振興策である。2000 年以降、韓国政府は付加価値税の脱税防止を目的として個人及び企業の小 口経費支出におけるクレジットカード利用を奨励し、税制上の優遇措置(個人のクレジットカー ド利用額に応じた所得控除、法人の接待交際費の損金扱いなど)、非クレジットカード加盟店に 対する税務調査の強化、カード利用に対するクジなどの政策を導入した。このため、クレジット カードの利用は急速に拡大した。拡大のスピードがあまりに急速だったために、2002~2003 年 には不良債権の問題が発生しいったんは利用が落ち込んだが、クレジットカードを利用する習

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16

慣は定着し、ショッピングでの利用に関してその後は拡大が続いている。

カード会社各社もクレジットカードでの支払に対する割引やポイント還元などの利用促進策 を積極的に展開している。」

日本の非現金決済制約要因分析

(1)クレジットカード

① 利用者意識の面で、クレジットカード利用に抵抗がある

「日本では、盗難・紛失や偽造など、クレジットカードの安全面に対する懸念や、使いすぎの懸 念、借金への抵抗感といった利用者の意識の面でクレジットカードの利用に対する抵抗感が根 強く、このことがクレジットカードの利用拡大を阻害する要因となっている。

このたび実施したアンケートにおいても、回答者の 4 分の 3 以上が「カードを盗まれたり紛失 したりして、他人に使われてしまわないか不安である」と考えており、「自分のカードが偽造さ れ、知らないうちに使われてしまわないか不安である」と考える利用者も 7 割以上にのぼってい る。また、「カードで買い物をすると、無駄づかいや使いすぎになりやすいと思う」と考える回 答者が 6 割以上、「カードでの買い物は借金をしているようで抵抗がある」という利用者が 4 割 程度となっている。」

図表 2-1 日本人のクレジットカードの利用に対する考え方 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより

(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf)

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②小額支払でのクレジットカード利用が進んでいない

「消費者の意識において、日本ではクレジットカードは金額の大きい支払での利用が中心で、

日常の小額の支払では現金のほうが好まれる傾向がある。アンケート調査でも、4 割の回答者 が「支払う金額によってクレジットカードと現金とを使い分ける」と回答しており、そのう ち、クレジットカードを使うのは 1 万円以上の金額のとき、という利用者が約 50%、5 千円以 上という利用者を合わせると 7 割以上となっている。

一方、米国、韓国などではより小額の支払でのクレジットカード利用が浸透しており、クレ ジットカード利用の拡大につながっている。」

(2)デビットカード

①日本では元々、個人小切手を利用する習慣がなかったこと

「米、英、仏ではもともと、キャッシュレス決済の主役は小切手であった。しかし、小切手の 取立にかかる処理には、金融機関、加盟店の両方にとって多大なコストがかかっており、これ を効率化したいというニーズが強く存在していた。デビットカードはこのような背景によって 導入され、金融機関による積極的な利用促進や、加盟店での受入が進んでいる。デビットカー ドは、利用額が直接預金口座から引落されるという点で小切手と共通しており、小切手の代替 としてのデビットカードは利用者にも受け入れられやすかった。

一方、日本では個人小切手が一般的ではないため、金融機関や加盟店にとって、デビットカ ードがコスト削減、効率化につながるというメリットがなく、金融機関による強力な推進につ ながりにくい。」

②日本ではオンラインデビットが主流であり、新たなインフラが必要であったこと

「日本で主流となっている J-Debit はオンライン型のデビットカードであり、従来のクレジッ トカードとは別にインフラ構築が行われた。そのため、加盟店は J-Debit を導入するために、

新たな端末の導入や回線の契約等が必要となる。

一方、海外ではオフライン型デビットカードがデビットカード取引のかなりの部分を占めて いる。オフライン型デビットカードはクレジットカードと同じネットワークで処理されるた め、必要な投資額は小さく、加盟店にとって導入が容易である。」

③日本ではクレジットカードの商品性がデビットカードに近い

「海外では、クレジットカードの金利負担を避けるためにデビットカードを利用するという利 用者が多くなってきているが、日本のクレジットカードはマンスリークリアでの利用が主流で あり、クレジットカードの支払猶予機能は利用者にそれほど評価されていない。このたび実施 したアンケートにおいても、クレジットカードを利用する理由として「支払から口座引落しま でに猶予がある」や「リボルビング払いや分割払いを利用できる」と回答した回答者はそれぞ れ 21.3%、8.9%と低い割合に留まっている。」

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ここで、先行研究の分析による、先進諸国でキャッシュレス社会化を促進させた要因と、日 本が現金主義化した要因をまとめる。

(1)クレジットカードやデビットカードが普及した国は、日本と比較してインフラ整備が整っ ている

日本における人口 1 万人あたりのカード端末台数は約 134 台であるのに対し、米国は約 185 台、英国では約 178 台、フランスでは 215 台、韓国では 649 台と比較的少ない水準であるた め、我が国でカード決済を行いたいと思う人がいても出来ないという場面が多いということが 想定される。つまりこれは、日本におけるキャッシュレス社会化の制約要因と先進諸国におけ るキャッシュレス社会化の普及要因であると考えられる。

(2)非現金決済の進んでいる国は、国民にカードを利用させるような政策や制度を実施してい る

フランスでは現金での高額決済を禁止したり、韓国ではカード決済を行うことで税制が優遇 され、様々な特典を得られたりなど、カードを利用せざる負えない状況や、カード利用者が多 くのメリットを享受できるような政策や制度が実施された。こうした国では必然的に現金決済 を行う場面が少なくなると考えられるだろう。

(3)小切手の代替手段としてデビットカードが用いられるようになった

小切手は金融機関にとって処理コストが高く、また加盟店にとっても回収リスクがあるた め、それに代わる手段としてデビットカードが利用されるようになった。日本では小切手を利 用する文化がほとんど無いといっても過言ではなく、そういった点でデビットカードを使う文 化に移行できなかったと考えられる。

(4)日本人はカード決済に対して強い抵抗を持っている

カードの偽造や盗難、また使いすぎてしまうかもしれないなどの不安がカードの利用を阻害 しているとアンケートの結果から読み取れる。

以上を、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング社はキャッシュレス化に関する先進諸国の促進 要因と日本の制約要因としている。

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19 2.2 先行研究に対する著者の意見

ここまで、先行研究によるキャッシュレス化の促進要因と制約要因の紹介をしたが、それぞ れの要因に対する私の意見を述べたいと思う。

(1)クレジットカードやデビットカードが普及した国は、日本と比較してインフラ整備が整っ ている

確かに人口に対するカード端末台数は諸外国と比較して少ない。というのも、加盟店がカー ド会社に支払う手数料が米国は 2.2%、韓国は 1.9%であるのに対し、日本は 3.6%と比較的高 くなっているのが原因と考えられる(2016/12/24 日本経済新聞 手数料にメス より)。しか し、図表 2-1 のアンケート結果で「カードを使えるお店や場所が少なすぎると思う」という質 問に肯定的な利用者は 2 割にも満たない。よって、キャッシュレス化の制約要因がインフラ整 備の問題であるのかは懐疑的である。

(2)非現金決済の進んでいる国は、国民にカードを利用させるような政策や制度を実施してい る

日本もこれまでにクレジットカード利用を促す政策を打ち出してきた。しかし、その内容は 安全面の強化や決済スピードの向上、利用できる店舗数を増やすなどといったもので、これら の政策はあくまでもカードを利用できる“環境”を整えただけにすぎず、国民がカードを使い たくなるような政策ではない。よって、韓国のようにカードを利用したくなるような政策を打 ち出せば、日本国民も進んでカード決済を行うかもしれない。

(3)小切手の代替手段としてデビットカードが用いられるようになった

諸外国の小切手文化は、発祥の地英国はもちろん、米国では西部開拓時代に安全にお金を持 ち運ぶ手段として、フランスでは高額の決済を現金で行うことが禁止されているため、韓国で は最も高額な紙幣が 50000 ウォン札(日本円で約 5000 円)であり、高額な決済が不便であるな どの理由で発達した。日本は治安が良く、現金決済に対する障壁が少ないため小切手が登場す る場面がなかったのかもしれない。よって小切手文化がない日本ではデビットカードが普及し にくいと考えられている。しかし、同様に小切手文化のないドイツでは、現金主義国であるこ とは日本と変わらないが、デビットカード利用率は 23.3%と日本の 0.3%と比較して圧倒的に 高い。その理由として、ドイツの銀行が発行するキャッシュカードにはデビットカードのサー ビスが付随されているためだと考えられている。よって、日本でデビットカードが普及しない のは小切手文化がないからとは一概には言えないかもしれない。

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図表 2-2 ドイツの決済手段内訳 日本デビットカード推進協議会 HP より

(https://www.debitcard.gr.jp/about/dl/j-news-050415-4.pdf)

(4)日本人はカード決済に対して強い抵抗を持っている

図表 2-1 の調査で、日本人はクレジットカードに対してネガティブなイメージを持っている ことが判明した。確かに、先ほど述べた通り日本人はクレジットカードを使う環境が整っていな いとは考えていなく、また図表 2-3 を見て分かる通り、他のクレジットカード大国と比較して一 人当たりの保有枚数は少ないどころか多い状態にあるため、保有している本人の意識の差が他 国とはあるのかもしれない。しかし、日本のクレジットカード利用率は 15%であるのに対し、

キャッシュレス化の進んでいる英国では 10.6%と低い水準にある。こういったことを考慮する と、日本では思っている以上にクレジットカードは普及しているのではないかと考えられる。

日本 アメリカ 韓国

クレジットカード発行枚数 3.2 億枚 8 億枚 1 億枚 国民一人当たりの保有枚数 2.7 枚 2.6 枚 2.1 枚

図表 2-3 各国のクレジットカード発行枚数と国民の保有枚数

世界標準のクレジットカードビジネスモデルを実現する 【フェアカード】より

(http://www.faircard.co.jp/index.html)

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21 第3章 日本がキャッシュレス社会化を成し遂げるには

3.1 キャッシュレス社会がもたらす恩恵

ここまで日本が先進諸国と比較してキャッシュレス化が遅れている事実とその要因について 述べてきたが、ここではキャッシュレス社会化を成し遂げることでどのようなメリットがある のかを述べていきたい。

(1)安全性の向上

キャッシュレス社会化が進むにつれて、多額の現金を保管したり持ち歩いたりせずに済むた め、盗難や紛失の恐れが少なくなるというメリットがある。

(2)利便性の向上

現金は持ち運べる数に限りがあるため、緊急時に所持金が不足していたりすると ATM に行か なければならないなどの不便が発生する。しかし、クレジットカード等を利用すればその心配は なく、またスピーディーな決済を可能にするため、現金での決済と比較すると利便性は向上する。

(3)購買機会の拡大

近年、Amazon や楽天などの電子商店街や、自社の商品やサービスをインターネット上のウェ ブサイトで販売する EC サイトを利用する人が増えている。そういったネットショッピングを手 軽なものにするのが、非現金での決済である。現金だとコンビニまで支払いしに出向かなければ ならなかったり、代引きでも手数料が発生する上に、支払いの際に購入者と配達業者ともに手間 がかかったりと、購入に障壁が発生してしまう。

また、海外旅行をする際にも両替の手間がなくなり、消費意欲の向上につながる。

(4)カード加盟店にとって手間が省ける

キャッシュレス化が進む北欧では、非現金決済を推進するどころか、現金を排除するような取 り組みが進んでいる。デンマークは小売店やレストランで現金支払いを拒否できるような制度 を検討している。これは加盟店の現金を仕分ける作業をなくす効果が見込めるためであり、利用 者だけでなく店側にもメリットが存在するということである。

これらのほかに、クレジットカードを利用する人は、

・ポイントやマイレージが貯まる

・支払いから引き落としまで猶予がある

・リボルビング払いや分割払いが利用できる

などのメリットを享受していることが、以下のアンケート結果から分かる。

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図表 3-1 クレジットカードを利用する理由 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより

(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf)

また、利用者や加盟店だけでなく、マイナス金利政策が広まる今、現金の保有が増え、金融緩 和の効果が薄まる流動性の罠を防ぐためにもキャッシュレス社会化は国にとっても喜ばしいこ とである。

以上のように、非現金決済がもたらすメリットは数多く存在するため、現金主義国家である日 本も他国に見倣ってキャッシュレス社会化を目指すべきだというのが私の意見である。

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23 3.2 他国から学ぶキャッシュレス社会化への軌跡

第 2 章では先行研究による、キャッシュレス社会化のための先進諸国の普及要因と日本の 制約要因の分析を紹介し、それに対する私なりの意見を述べた。それらを通じて、他国から見倣 って日本がこれからキャッシュレス社会化を果たすためにはどうすべきかをここでは述べてい きたい。

まず、2.2 で述べた私の意見を振り返る。

・カード端末台数で見ると、確かに日本は他国よりも劣っているが、クレジットカードを使える 場所や店が少ないと感じる日本国民は少ないため、インフラの問題がカードの利用を阻害し ているとは言い難い。

・フランスは高額の決済を現金で行うことを禁止し、韓国はクレジットカードを利用することで 税制が優遇されるなど、クレジットカード大国ではカードを利用せざるを得ないような制度 や政策を打ち出しているため、日本もそういった動きを見せればカード利用率は上がるかも しれない。

・米国や英国、フランスでは小切手の代替手段としてデビットカードが普及したと考えられる が、小切手文化のないドイツにおいても銀行のカードにデビットカードを付随させることで 広まったため、日本でもデビットカード市場は開拓の余地が十分存在する。

・日本人はクレジットカードの利用に対して強い抵抗を持っているが、実際にはキャッシュレス 社会化が進んでいる英国とクレジットカード利用率を比較すると、日本のほうが高い状況に ある。よって日本が現金主義国家である理由はクレジットカード以外にあるのではないか。

これらの意見をまとめ、私なりに考えた日本がキャッシュレス社会化を成し遂げるためにす べきことは以下の通りである。

(1) 政府や各クレジットカード会社は、国民がクレジットカードを安心して、かつ気軽に使 えるような政策や制度を作ることはもちろん、“使いたい”と思えるような政策や制度を 打ち出す。

(2) クレジットカード利用率を上げることはもちろん、日本ではほぼ未開拓であるデビット カードの利用を促進させるために、各銀行が新規口座を立ち上げる顧客などに対して積 極的な案内やキャンペーンを始め、所持者が問題なく利用できるようインフラの整備を 行う。

(1)に関しては、上で述べた通り日本ではクレジットカードを使いやすくなるような政策や 制度は存在したが、韓国のように“使いたい”と思えるようなものは少ないように感じたためこ のような考えを出した。図表 3-1 で分かるように、クレジットカードを利用する主な理由とし て、ポイントやマイレージ等のサービスがあるということが挙げられている。ここで、今世界を

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席巻しているネットショッピングとクレジットカードを掛け合わせることで、利用者がより“お 得”と感じるサービスを提供することができるのではないか。その 2 つが上手くマッチングして いるのが、楽天が発行する楽天カードである。楽天カードを用いて楽天で買い物をするとポイン トが 2 倍になり、カード所持者は進んで楽天を利用するため、楽天、利用者双方にとって Win- Win のサービスであることが分かるだろう。

このように、クレジットカードは現金に代わるものといった考えから脱却し、カード決済は現 金決済よりも我々にメリットをもたらすという印象を国民に植えつければ、日本人はよりクレ ジットカードを利用するのではないか。

(2)に関しては、デビットカード市場は今後の日本においてのびしろがあると判断したから だ。図表 3-1 にある通り、クレジットカードには支払いから引き落としまで猶予があるというメ リットがあると思う利用者がいる一方、図表 2-1 のアンケートではクレジットカードでの買い 物は借金をしていると考える利用者がいるのも事実である。これと逆の機能を持つのがデビッ トカードであり、口座からすぐに引き落とされるというシステムはそういったネガティブなイ メージを持つ層にも問題なく利用してもらえる。現金決済と何ら変わりのないと言っていいほ どのものであるにもかかわらず、ここまで普及率が低いのはまだ日本人がデビットカード決済 という選択肢をほとんど持っていないからであると考えられる。よって、日本の銀行はドイツの ようにキャッシュカードにデビットカードの機能を付随させるような取り組みを行えば、日本 人にもデビットカードを利用するという選択肢が芽生え始めるのではないか。近年、Suica など 交通系 IC カードの普及でインフラの整備は進んでいるため、今がデビットカードを推進する絶 好の機会であると私は考える。

これら 2 つの提案は、キャッシュレス社会化を進めた他国に見倣ったものであるので、日本に おいても不可能ではないことは確かだ。日本国民にとってのクレジットカードとデビットカー ドに対する意識の改革が、キャッシュレス社会化に向かうための第一歩であると私は考えてい る。

3.3 キャッシュレス社会化を加速させる新たな刺客

ここまでは主にクレジットカードとデビットカードについてのみ述べてきたが、それらとは また異なる新たな決済方法が現れ始めている。それは、電子マネーや仮想通貨を用いた決済だ。

電子マネーの中でも主流なのが Suica などの交通系 IC カードである。これは切符を買う煩わ しさが省略されるといった利点から普及したものであるが、そこから駅ナカのコンビニや自動 販売機で使えるようになり、今は様々な小売店などでも利用できるようになった。また、クレジ ットカードと連携させることでチャージする手間も省けるため、さらに人気が高まった。つい最

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近では Apple Pay が登場したため、これからも需要は高まっていくだろうと考えられる。電子マ ネーはクレジットカードやデビットカード同様に小銭を扱う煩わしさがなかったり、決済時に 残高が表示されるため計画的な利用が可能であったりとメリットも多い。

仮想通貨についてはまだまだ発展途上であるが、三菱東京 UFJ 銀行やみずほ銀行は独自の仮 想通貨を開発し、いずれ一般利用も打ち出す予定だ。ビットコインとは異なり、価格変動がない ため安心して利用できる。仮想通貨の特徴である、利用者同士で交換ができるという点は、飲み 会等の会計で効果を発揮する。従来では割り勘となったらクレジットカードなどは使えず、現金 決済を余儀なくされたが、仮想通貨が普及すれば幹事がスマホを通じて参加者から各自の支払 額を回収できる。各種非現金決済では不可能であったことが可能になり、仮想通貨は“痒い所に 手が届く”ための一役を担うかもしれない。

以上のように、電子マネーや仮想通貨はクレジットカードやデビットカードとは似て非なる ものであり、これらがキャッシュレス社会化の障壁の一つとなっている少額支払という課題を 解決するかもしれない。

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26 第4章 結論

日本と先進諸国における決済比率の現状を分析すると、日本は他国と比較して圧倒的に現金 決済比率が高いことが分かった。そこから、

・なぜ日本は現金主義国家であるのか

・どのようにして他国はキャッシュレス社会化を進めることができたのか

といった疑問が浮かび上がった。その要因を、

・日本は国民がクレジットカード決済に対して魅力を感じていない

・デビットカード決済という選択肢を持っていない

と判断した。それに対して、

・クレジットカード決済に魅力を持たせるための政策や制度の作成

・デビットカード文化を芽生えさせるためにキャンペーンなどを打ち出す

といった提案をした。

これらの要因に加え、今後は電子マネーや仮想通貨の登場により、さらなるキャッシュレス社 会化が望める。

ここまで述べてきたことは理想論に過ぎず、日本人が持つ現金に対する執着心は到底消え去 るとは思えない。しかし、政府や関連企業が重い腰を上げ、積極的にキャッシュレス社会に向け た行動をすれば、日本はより便利な国になることは間違いない。2020 年に控えた東京オリンピ ックにあたって、巨大な需要を取り込むためにキャッシュレス社会化は必要不可欠である。

この論文では主に日本人の意識に焦点を当てていたため、諸外国のカード利用者の意識調査 をすることで、よりよい比較が可能になったかもしれない。また、カード決済についてばかり述 べたものであるため、今後はその他の非現金決済について諸外国との比較を行った研究をした い。

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27 おわりに

ほとんど活字を読まない(読めない)私にとって、レポートはもちろん、リアクションペーパ ー程度の長文を書く作業ですら苦痛と感じる。インプットをしない者がアウトプットをしよう など論外だ。と言い訳をして今までほとんどテストで評点が決まる授業を履修していた。レポー トすらほとんど書き上げたことがない私が挑んだ卒業論文、まさに地獄であった。内容も目を覆 いたくなるようなレベルの完成度で、網倉先生を始め、全ゼミ生に対して謝罪したい気持ちで一 杯だ。後輩には、このような卒業論文を反面教師として、是非ともコツコツと計画的に取り組ん でもらいたい。

最後になるが、2 年間非常にお世話になった網倉先生と、共に過ごしたゼミ生にはここで感謝 を申し上げたい。大変なこともいくつかあったが、皆と過ごした時間はかけがえのない宝物であ る。

これからも“何が面白いの?”を問い続け、立派な社会人になれるよう努力したい。

参考文献

電子マネーとは!? 電子マネー比較.com http://kuchikomi0.com/products.html

我が国におけるキャッシュレス社会の今後の進展に関する調査分析 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001270.pdf

世界のデビットカード 日本デビットカード推進協議会 https://www.debitcard.gr.jp/about/dl/j-news-050415-4.pdf

図表 1-1  三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより
図表 1-2  三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより
図表 1-3  三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより
図表 1-4  三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングより
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